赤き覇を超えて   作:h995

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本日最後の投稿です。

前話で誰もが抱いたであろう謎、「アレだけで眷属化できるのか?」が今話で解き明かされます。

追記
2018.11.17 修正


第三話 悪魔の眷属、始めました。

 僕が人間をやめて、世界で唯一無二の存在と化す運命を迎えた、その翌日の放課後。

 僕は最近、書記として生徒会に入ったばかりの同級生である匙元士郎の案内で生徒会室に来ていた。そこでまず目に入ったのは、ニコニコ顔で明らかに機嫌のいいグレモリー先輩と、いつものクールな表情を浮かべながらも何処か不機嫌そうな支取会長だった。

 

 ……一体何があったのだろうか?

 

 それに、グレモリー先輩と双璧を為す二大お姉さまと呼ばれている三年生の姫島朱乃先輩に学園の二大王子様と言われる同級生の木場祐斗、更には中等部からの進学組で既にマスコット的な人気のある塔城小猫さんと、学校内でも有名人が揃っているオカ研の部員も勢揃いしている。余談だが、二大王子様のもう一人は三年に在籍する瑞貴だ。

 

 ……いや、オカ研が勢揃いしている、というのは些か語弊がある。

 

 実際はあと一人、確か入学早々に休学届を出している一年生の男子が所属している筈だ。中等部からの進学組だったので余り話題には上がらなかったが、部費等の会計を手伝っているとその辺りが見えて来るのだ。

 

「会長。言いつけ通りに兵藤を連れてきましたけど、どうしてオカ研も来ているんですか?」

 

 匙は支取会長に僕を呼び付けた理由を確認してきた。

 

「サジの疑問も尤もですね。全員揃いましたし、始めましょうか」

 

 支取会長はそう宣言した後、昨日起こった出来事を説明し始めた。支取会長の話が進むにつれて、その場にいた者達は全員不快な表情を浮かべていった。特に生徒会、即ち支取会長の眷属となったばかりの為に人としての感性が大いに残っているであろう匙に至っては、明らかに申し訳なさそうな表情だった。

 

「そこで兵藤君とご家族の安全を確保する為、私とリアスは兵藤君にどちらかの眷属になる事を提案したのですが……」

 

 支取会長はここで言葉を濁してしまった。

 

「何か問題があったのですか?」

 

 姫島先輩が支取会長に尋ねて来る。しかし、答えたのは支取会長ではなかった。

 

「私達の手持ちの駒では兵藤君を転生させる事は不可能だったの。彼は今代の赤龍帝よ。しかも神器(セイクリッド・ギア)を完全に覚醒させているし、そもそも神器を使わなくても私達より強いのは間違いないわ」

 

 もう一人の当事者であるグレモリー先輩だった。このグレモリー先輩の言葉に殆どの者は言葉を失ってしまう。唯一の例外は、転生したばかりの為か、まだ神話の存在に関する知識が浅い匙だった。

 

「済みません、会長。俺は転生したばかりでその辺りはまだよく知らないんですけど、そんなに凄い事なんですか?」

 

 この匙の質問を受けて、支取会長は赤龍帝について説明する。

 

「サジ。赤龍帝とは、嘗て神をも超えると謳われた二天龍と呼ばれる二頭のドラゴンの片割れで、ウェールズ地方の守護神としても有名な赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)の力と魂を宿す者の事です。そして、その赤い龍の魂が宿った神器こそが、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。使い方次第では神をも滅ぼすと言われる十三種の特別な神器、神滅具(ロンギヌス)の一つでもあります」

 

 この支取会長の説明を聞いて、匙は驚きを露わにしていた。

 

「えっ、えぇぇぇっ! 兵藤ってそんなに凄い奴だったんですか! ……でも元から駒王帝と呼ばれる様な奴だからな、むしろ当然なのかもしれないな」

 

 そして、おそらく史上初であろう悪魔二人による転生儀式へと話は移っていく。

 

「足りない分の駒をお互いにシェアした? 会長。この場でその様なご冗談を言うのは、……本当なんですね?」

 

 僕は流石にそこまでは知らないが、悪魔の常識ではおそらくあり得ない話なのだろう。副会長である真羅先輩は半信半疑で支取会長に確認を取りに来た。

 

「えぇ。その結果、兵藤君は私とリアスの双方が共有する眷属という形で落ち着きました。つまり、史上初の十一個の兵士(ポーン)による転生悪魔にして、二人の主を持つ眷属悪魔の誕生です」

 

 支取会長はそう言って、昨日の出来事の説明を締め括った。流石に僕が天使と悪魔、そしてドラゴンの力と特徴を併せ持つ新種の存在となった事は話さなかった。流石に今はまだ話せないと判断したのだろう。正直に本音を言えば、助かった。

 

 ……ただ、それなら僕は両方の眷属としての務めを果たさなければならないのだろうか?

 

 その僕の疑問を感じ取ったのだろう、機嫌がまた良くなったグレモリー先輩が話し始める。

 

「流石に両方の眷属の務めを果たすのは難しいから、普段はどちらの眷属に在籍するかを話し合った結果、手持ちの兵士の駒を八個全て使用した私に優先権がある事になったの。だから兵藤君、これからはオカ研に入ってもらうわよ?」

 

 この話を聞いて、僕は生徒会室に入った時のグレモリー先輩がご機嫌だった理由を理解した。そして、支取会長が明らかに機嫌の悪かった理由も。

 

「それは構わないんですが、それだと駒をシェアしてくれた支取会長が少し可哀そうじゃないですか? それに二ヶ月前に行われた生徒会選挙は例の件で断念せざるを得ませんでしたが、来年こそは生徒会長として立候補してほしいと支取会長から頼まれていまして。ですが、オカ研に入部する以上は無理そうなので、せめて二年の総務委員長としての務めだけでも全うさせて下さい」

 

 僕はせめて自分ができる形で支取会長に恩返しをしたかったので、グレモリー先輩にこう提案した。

 

「ソーナ。貴女、そこまで兵藤君を見込んでいたの? ……確かに、これは鳶が揚げを掻っ攫っていった様なものね。解ったわ、兵藤君。貴方のその条件を呑みましょう。そもそも、余りにも一方的かつ不公平な眷属化だったもの、それぐらいの希望は当然受け入れさせてもらうわ」

 

 グレモリー先輩は、僕と支取会長に対して申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 

「リアス、もう良いわ。それよりも、これで解りましたね? 今日から兵藤君も私達の仲間です。皆、改めて自己紹介を」

 

 支取会長はそう言って全員に自己紹介を促し、それに応じて全員が悪魔の羽を出した。それに反応したのか、僕も肩甲骨と背中の中央から何かが生えてくる気配を感じた僕は、慌てて天使の翼が出ない様に抑え込んだ。

 ……しかし、皆の様子がおかしい。僕の方を見て唖然としている。僕の羽が何かおかしいのだろうか?

 

「……羽が、赤い? 転生した時に赤い龍の力も使ったからなの?」

 

「しかもヒイ、フー、ミー……。嘘! 五対十一枚って、枚数だけで言えば堕天使の総督や熾天使(セラフ)に一枚足りないだけじゃない! まさか、駒の数だけ羽が出て来ているの!」

 

「しかも一番外側の一対と中央の一枚だけ羽の形状が他とは違うし、二回りほど大きいな。どうやらドラゴンの羽の様だ。……会長が使った駒の数と同じか? 成る程、どうやら兵藤と会長との相性は抜群の様だな」

 

「それに、今まで見た事のない羽の組み合わせとバランスの良さで、何だか凄く神秘的だわ。……あれ? よく見たら、実は兵藤君って流石に木場きゅん程じゃないけど、結構カッコいいんじゃ……?」

 

 生徒会のメンバーで同学年の女子達が騒ぎ出している。……天使の翼を抑え込んだ事で、羽の出方が少々おかしなことになっているらしい。

 

「オホン! では気を取り直して自己紹介を始めましょう。まずは私達から。兵藤君はサジと留流子以外との付き合いが長いので、二人以外は名前と駒の種類のみとしましょう。私は支取蒼那。本名はソーナ・シトリー。ソロモンの七十二柱に名を連ねるシトリー家の次期当主です。当然ながら私は(キング)。そして兵藤君、貴方の主の一人でもあります。……正直言って、少々怪しいものがありますが」

 

 生徒会の女子が騒いでいるのを静めた支取会長は、まず自分から自己紹介を始めた。そして、それに続く様にシトリー眷属の自己紹介が進んでいく。

 

「私は真羅椿姫。私はソーナ・シトリー様の眷属で女王(クィーン)です。兵藤君、いざとなれば頼りにさせて頂きますよ」

 

「私は由良翼紗。会長の戦車(ルーク)だ。改めてよろしく頼むよ、兵藤」

 

「私は巡巴柄。シトリー眷属の騎士(ナイト)。今後ともよろしく」

 

「私は草下憐耶。駒は僧侶(ビショップ)だからよろしくね、兵藤君」

 

「私は花戒桃です。憐耶と同じく僧侶です。兵藤君、これからもよろしくね?」

 

「私は仁村留流子です。今年高等部に入学したばかりなので、生徒会でお手伝いを始めたのはつい最近です。なお、私は会長の兵士をさせて頂いています。兵藤先輩、よろしくお願いします!」

 

「最後は俺か。俺は匙元士郎、生徒会の役職は書記。そして、お前みたいに十一個も使ってないけど、俺も駒を四個消費した兵士だ。これから仲良くやっていこうぜ、兵藤」

 

 こうしてシトリー眷属の自己紹介が終わり、次はグレモリー眷属の番となった。

 

「じゃあ、次は私達の番ね。私はリアス・グレモリー。オカルト研究部の部長で三年よ。そして72柱の一門、グレモリー家の次期当主でもあるわ。グレモリー眷属の王、そして貴方のもう一人の主よ。今後ともよろしくね?」

 

「私はオカルト研究部の副部長で三年の姫島朱乃ですわ。グレモリー眷属の女王を務めています。よろしくお願いしますね?」

 

「僕は木場祐斗。グレモリー眷属の騎士だよ。後は今更だから、別に言わなくてもいいよね?」

 

「……塔城小猫。一年。戦車をやっています。よろしくお願いします」

 

 全員の自己紹介が終わったので、後は僕だけとなった。僕に注目する皆の表情は穏やかな物だった。

 

「最後は僕ですね。姓は兵藤、名は一誠。駒王学園高等部二年。皆からは駒王帝なんて呼ばれています。グレモリー・シトリー両眷属の兵士を務める今代の赤龍帝です。それと、僕の事は名前で結構ですから、今後ともよろしくお願いします」

 

 だから、僕は皆の顔を見ながら自己紹介した。きっと僕の表情はこの上ない笑顔だっただろう。

 

 ……大丈夫。皆となら、きっと上手くやっていける。

 

 僕はこれから始まる皆との楽しい日々へと、その想いを馳せていた。

 

 なお、この後でこの場にいた女子生徒全員から名前で呼ぶ様に言われた。……後、何故か憐耶さんからは一君と呼ばれる様になった。

 

 

 

Interlude

 

 グレモリー眷属と一誠がオカルト研究部の部室のある旧校舎へと向かった後の生徒会室では、以下の様なやり取りがあったという。

 

「匙先輩。一誠先輩、とてもいい笑顔でしたね?」

 

 シトリー眷属唯一の男子である元士郎にそう呼びかけたのは、最年少である留流子であった。元士郎も留流子の言葉に応じて、一誠に対して感じた事を語っていく。

 

「そうだな、仁村。俺達に受け入れられた事がよほど嬉しかったんだろうな、一誠は」

 

 その元士郎の言葉に反応したのは、同学年の一人である桃であった。

 

「確かに一誠君、悪魔に使い潰される事を前提にしていたみたいだったから……」

 

 少し後ろめたさを感じている様な桃の様子を見て、元士郎はあえて軽い雰囲気になる様な言い方で元気づけようとした。……それと同時に、他の同学年の面々の様子に触れてもいたが。

 

「実際に父親を人質に取られていた事を考えると、あながち考え過ぎとも言えないよな。まぁ俺達は信じられるって思ってくれたんだから良しとしようぜ、花戒。……だが、あの笑顔はちょっと威力があり過ぎたみたいだな?」

 

「えっ?」

 

 元士郎の最後の言葉に驚いた桃がふと同級生の方を見やると、少々照れた様に頬を人差し指で掻いている翼紗がいた。

 

「参ったね。私は泥臭い感じの男が好みだった筈なんだがな。あの純粋な笑顔に、少々胸が高鳴ってしまったよ」

 

 意外な反応を示す翼紗を見て、桃は他の二人はどうなのかと視線の向きを変えると、まずは何やらブツブツと呟いた後、まるで悟りを悟った様な挙動を取る巴柄の姿があった。

 

「イッセー君は同級生、イッセー君は同級生、イッセー君は同級生……。あっ、でもあのあどけなさを感じさせるイッセー君の笑顔、私的にはとってもアリかも!」

 

 そして、憐耶に至ってはどう見ても完全に恋する乙女と化していた。

 

「今の笑顔で、揺れていた天秤が完全に傾いちゃった。でも、何で? 木場きゅんと違って、一君の事を想うと胸の奥が暖かくなって凄く落ち着くのは……」

 

 それらを見やった最高学年の副会長である椿姫は溜息交じりで三人の様子を主であるソーナへ伝えようとした。

 

「他の二人はともかく、どうやら憐耶は一誠君の純粋な笑顔に撃墜されてしまったようですね、会長。……会長?」

 

 しかし、その肝心のソーナの様子がおかしい。どう見ても、意識があらぬ方向へと向いている。しばらくして椿姫の呼びかけに気づいたソーナは、未だに正気を取り戻していないのか、立て続けにとんでもない事を口走り始めた。

 

「……ハッ! な、何でもありませんよ、椿姫。べ、別に見惚れてなんていませんよ? ただ一誠君の笑顔がいつにも増して素敵だなって、思っただけです。断じて、「そう言えば、一誠君って私の理想そのものね」って、これっぽっちも思っていません!」

 

 誰がどう聞いても「見惚れていた」としか思えない様なソーナの言動に対し、ソーナに密かに想いを寄せている元士郎は大いに動揺した。そして、大声でソーナに呼びかける。

 

「か、会長ぉぉぉ! いきなり何を言い出すんですか! ……あの野郎、最後にとんでもない物を盗んでいきやがった! チクショォォォ! ソイツはここに置いて行けぇぇぇ!」

 

 最後の方は完全に絶叫になっている元士郎の言葉を華麗にスルーしつつ、留流子はその盛大な自爆劇から読み取れるソーナの現状を密かに歓迎していた。

 

「……会長、思いっきり自爆していますね。あれじゃ一誠先輩にゾッコンだって、白状している様な物ですけど? その分、私にとっては好都合ですけどね」

 

 一方、桃もまた、ソーナの自爆劇にについて本人には触れない様に留流子に忠告しつつも、密かに狙っている木場祐斗に対する恋敵が減った事を歓迎していた。

 

「それについては突っ込まない方がいいかもね。……まぁ憐耶が脱落してくれたから、私にとっても都合がいいのは確かなんだけど」

 

 ……私立駒王学園高等部の生徒会室は、何時になく賑やかであった。

 

Interlude end

 

 

 

 シトリー眷属とグレモリー眷属双方の顔合わせが終わり、僕はグレモリー眷属として旧校舎にあるオカ研の部室に向かった。そしてそこで、リアス部長が改めて悪魔の現状について話し始めた。……といっても、歴代赤龍帝から指導を受けていた僕にとって、天使と悪魔、そして堕天使の三つ巴の戦争やその結末については良く理解しているので、特に問題はなかった。ただ、トップである四大魔王が戦争で全滅した後の悪魔の現状については良く知らなかったので、その辺りは有り難かった。

 現在、永い戦争によって純粋な悪魔はその数を正規軍が保持できない程に激減させていて、種の存続が危ぶまれている。何せ、悪魔は一万年以上に渡る寿命の為か子供が出来にくいので、自然繁殖では追いつかないのだという。またソロモンが使役した事で有名な七十二柱の悪魔は冥界では名族とされているが、その半数以上が断絶しているのが何よりの証拠なのだろう。そこで特殊な魔具を用いて他の種族を悪魔へと転生させて少数精鋭の体制を取る一方で純血悪魔を一般社会に回す事で全体数を増やしやすくし、種の存続が可能になるまで勢力を回復するのが最近の悪魔の方針となっている。

 その特殊な魔具こそが、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。チェスに見立てたこの魔具によって、一人の上級悪魔につき最大で十五名まで眷属悪魔を増やせるようになり、悪魔は徐々にではあるがその勢力を回復させつつあるようだ。

 

「その意味では、赤龍帝を悪魔側に引き込む事ができたという事で、私とソーナは高く評価されるでしょうね。……あくまで交渉して双方同意の上で眷属にしたかった私としては、むしろ反吐が出そうだけど」

 

 リアス部長にとって、今回の僕の件は本当に不本意だったようだ。

 

「ありがとうございます、リアス部長。その気持ちだけでも、本当に嬉しいです」

 

 僕はリアス部長の思いやりに対して感謝を伝えた。僕にはそれだけしかできなかった。しかし、リアス部長はむしろ申し訳なさそうな表情で受け答えをしていく。

 

「いいのよ。イッセーには本当に申し訳ないことをしたって、私は今でもそう思っているのだから。それで話の続きだけど、悪魔である以上は契約をこなさないといけないのよ。と言っても、魂を代価に取るとかそういった大きな契約は少なくとも私達にはないわ。物品や貴金属等による代価を頂くのが基本よ。でも、イッセーは精霊魔術を使えるから、かなり多くの事ができそうね。この際だから、他に何ができるか教えてもらおうかしら?」

 

 リアス部長が僕にできる事を尋ねて来たので、僕は答えていった。

 

「そうですね。まだ錬度が不十分ですけど、ドライグに会ってから十二年掛けて何とか一通りは習得できましたから、歴代赤龍帝にできた事はほぼ全てできます。具体的には、剣術や体術を始めとする武術、黒魔術や白魔術、ルーン魔術や精霊魔法といった人間の魔術、心霊医療や悪霊浄化などの悪魔祓い(エクソシスト)の技術、幻想種の知識と召喚契約、神話における様々な知識、仙術や道術の基礎。神秘に関わる技能はこれぐらいですね。後は学者や音楽家出身の赤龍帝もいたので博士課程レベルの知識もありますし、オマケで楽器演奏も一通りはできます。それに、趣味の一環でプログラミングできますし、PCなんかも自作して使っていますよ」

 

 僕が習得した技術をつらつらと並べていくにつれて、リアス部長の表情が変わっていく。その一方で、木場はどうやら僕がここ一年でやった事について納得したらしく、何度か頷いていた。

 

「成る程ね。去年の学園祭や先月の卒業式のサプライズ企画の時に、イッセー君がピアノ伴奏を担当できたのは、そういう訳か」

 

 それで他の二人の反応を見ると、朱乃さん木場とは全く別のことを考えていた。

 

「今後はイッセー君に勉強を教えて頂きましょうか? 博士課程レベルの知識があるのなら、家庭教師も十分こなせるでしょうし」

 

 また、小猫ちゃんは少々首を傾げている。

 

「悪魔祓いの技術を持つ悪魔って、一体何なんでしょうね?」

 

 そして、リアス部長が感情を爆発させた。

 

「何なの、この子は! 赤龍帝じゃなくても基礎能力が十分凄いわ! 下手すると、イッセー自身の素質と能力だけで駒が八個必要じゃない! むしろよく兵士の駒が十一個で済んだわね!」

 

 実際に駒を使用するリアス部長の言う事なら間違いないのだろうが、本当にそうだ。それに赤龍帝の籠手だけで八個全てが必要だったとのことなので、リアス部長の見解が正しければ本来ならソーナ会長も全て提供した上でなければ駄目だったのだろう。

 

『それは一誠がドライグのオーラとお嬢さん方の魔力を融合させたからじゃよ。魔力とオーラが融合すると力の質が一段階引き上がる事が判明しておるから、それによって必要とする駒の数を減らしたのじゃろうて。それに加えて、一誠がドライグのオーラとお嬢さん方の魔力を融合させた事で、一誠を通して転生の術式を発動したという位置づけになったというのが真相であろう。実際に術者が力を供給した割合から言って、一誠が4.5、お主達で残り5.5を半々といった所じゃから、お主達二人掛かりでやっと一誠の主が務まるという事になるのであろうな』

 

 そして、その疑問に対してこの方が答えを出した。

 

「ロシウ老師」

 

 僕がロシウ老師に呼びかけると、リアス部長は思い出したかのように僕に尋ねてきた。

 

「そう言えばイッセー、昨日は緊急事態だったから特に訊かなかったけど、この声は何かしら? 赤い龍の意思にしては、やけに他人事のように自分の事を言っているみたいだけど」

 

このリアス部長の質問に対して、ロシウ老師は自らの事について説明する事で答えとした。

 

『そうじゃな。このままでは誤解したままじゃろうから、説明しておこうかの。まず儂は赤い龍ことドライグではない。名はロシウ、はじまりから数えて三代目の赤龍帝じゃ。……と言っても、六十年の生涯において、神器が発現したのは寝たきりだった最期の数カ月のみ。それ故に神話勢力からはカウントされておらんじゃろうし、実際にはうだつの上がらぬ一介の魔導師じゃったがな』

 

 ロシウ老師が自身の事をそう説明したが、僕は訂正しておきたかった。

 

「真の名店は看板さえも掲げない。それを地で行っている方が、一体何を仰っているんですか? 富や名声に全く興味がなかっただけで、実際はおよそ世界に存在するあらゆる魔導を修めた大魔導師のくせに」

 

 僕がそう言うと、ロシウ老師は魔導師の本分について語り始める。

 

『少しだけ違うぞ、一誠。魔導とは己以外の全てに対して秘匿する物。即ち、魔導師とは無名であることこそが誉れなのじゃよ。つまり儂は魔導師の本分を全うしたという訳じゃ。現に儂が編み出した秘奥については、如何にお主であっても教えるつもりはないぞ』

 

 ……秘奥については伝えるつもりはない。これについては、最初に指導を受ける時にはっきりと申しつけられているので今更だった。

 

「えぇ。魔導とは模倣するものに非ず、己が研鑽によって創造するものである。最初に治癒や解呪を主体とする白魔術を教わった時のお言葉でしたね」

 

 僕がそう確認すると、ロシウ老師は満足そうな声色で返事をしてきた。

 

『うむ。じゃからこそ、儂もお主には教え甲斐があったのじゃよ。基礎を仕込んだ後で、お主が新しい魔導を作り上げていくのを間近で見られたのじゃからな』

 

 この様に僕とロシウ老師が魔道師と魔導のあり方について話をしている所に、リアス部長が割って入ってきた。

 

「……イッセー、確認したいのだけど。要するにイッセーは歴代の赤龍帝と意思を交わせるのね?」

 

 それに対する返答は、当然ながらYesだった。そして、念の為に精神感応でロシウ老師に確認を取った。

 

「そうですね。そのお陰で、僕は魔導師としてはおそらく世界最高峰であるロシウ老師から、ほぼ全ての系統の魔導を学ぶ事ができました。ただ悪魔に転生したので、神や天使の力を行使する神聖魔術は使えなくなりますが」

 

〈……という事にしましたが、実際の所はどうなんでしょう?〉

 

 そこにロシウ老師が補足しながらも、精神感応で僕に答えを返してくれた。

 

『正確に言うとな、相反する力の行使によって自身も重傷を負うという大きなデメリットこそあるが、神聖魔術の発動自体は今でも可能じゃよ』

 

《むしろ以前より出力が向上するし、お主の消費もかなり抑えられる筈じゃ。何せ、今のお主は天使の一面も持って居るからの。神や天使の力を直に使用できるから、魔力による仲介が不要という訳じゃ》

 

〈成る程〉

 

 ロシウ老師の精神感応を通じての返答を聞いて、僕は一人納得した。一方、僕とロシウ老師の説明を聞いて、皆はすっかり沈黙してしまった。そこで、ロシウ老師は更にとんでもない事を言い出した。

 

『ところで一誠。お主に組み込まれた悪魔の駒じゃが、アレを媒体として利用すれば儂等を実体化させる陽神の術の継続時間を一気に十日程に延長する事ができそうじゃ。流石に始祖(アンセスター)はまだ無理じゃが、歴代最強の覇帝(タイラント)女帝(エンプレス)までなら十分対応可能じゃな。既に術式は改良してあるから、お主に見せる意味合いも兼ねて早速試してみても良いかの?』

 

 すると、それを聞いていたグレモリー眷属全員がツッコんできた。

 

「「「「お願いだから、止めてちょうだい(((下さい)))!」」」」

 

 そして、リアス部長が代表して言葉を続ける。

 

「……つまり、イッセーが規格外れな存在である事は十分わかったわ。でも、まずはチラシ配りから始めましょう。下積みを経験する事も大切だから」

 

 その言葉に反論等あろうはずもなかった。

 

「解りました。一生懸命、勤めさせて頂きます」

 

 僕はこうして、あくまで表向きではあるが、悪魔としての第一歩を踏み出した。

 




いかがだったでしょうか?

前話と合わせて「こんなのありか!」と思われるでしょうが、実はこれに関しては伏線がありました。

ネギま世界へネギの様子を見に行った時に偶々来ていたタカミチから教わった究極技法です。

アレは気と魔力という向こうの世界において相反する属性の力を融合させて、より強大な「力」を生み出すものです。

ならば、それをこちらの世界に当て嵌めてみれば。

それが、この物語の一誠の種族を決定する切っ掛けとなりました。

そもそも剣だって聖と魔が共存しているのです。だったら、聖と魔の力が共存する存在だって、いてもおかしくない訳です。

何で、原作でそのような存在を取り扱わないのか、不思議でなりません。
……尤も、大ラス辺りで天使と悪魔との間に生まれた為に双方の特徴を持つ存在が出てきそうな気もしますが。

では、本日はこれまで。
次の話をお待ち下さい。
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