赤き覇を超えて   作:h995

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フェニックス邸滞在編の最終回です。

今回、あるキャラが原作を大幅に逸脱してしまいます。予めご了承ください。

追記
2018.11.18 修正


第五話 さよならフェニックス! ただいまグレモリー!

 本当に色々な事があったフェニックス邸の滞在もついに最終日。……つまり、レーティングゲーム当日となった。

 実体化の期限が過ぎたロシウ老師達は、媒体とした悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と共に僕の元へと戻って来ていた。なお、僕とリヒトはフェニックス家から集合場所となるオカ研の部室に直接転移する事になっている。僕達は共に個人で転移術を使えるのだが、フェニックス家のご厚意で何とフェニックス卿が送っていく事になった。

 この十日間で感じたのは、フェニックス家はとにかくアットホームな雰囲気だった事だ。この点にはリヒトも同意しており、この十日間の事は念話を通じてはやてとリインにも伝えている。はやてもこの温かな雰囲気を持つフェニックス家と、そのフェニックス家の者がいるにも関わらずに僕とリヒトに土下座で謝罪したサーゼクス様に対しては態度を軟化させていた。

 

 ……この家族を大事にするフェニックス家の血縁者となら、婿に迎えても上手くやっていける。

 

 グレモリー家もそう考えた上での婚約であり、持ち掛けられた結婚の繰り上げに無条件で賛同したのだろう。しかし、今回はそれを利用された形となってしまった。ライザーも、今では焦り過ぎたと反省している。

 

「もっと時間を掛けて、少しずつリアスと解り合っていくべきだった」

 

 ライザーはそう零していた。しかし、時計の針はもう戻らない。後は、後悔しない様に駆け抜けるだけだった。

 そうして、僕は見送りに出ていたフェニックス家の方々に最後の挨拶をしていた。

 

「皆さん。短い間でしたが、本当にお世話になりました」

 

 僕の挨拶に対して、フェニックス卿は笑顔で応えてくれた。

 

「いや、それはこちらの台詞だよ。おかげでライザーもすっかり目が覚めて、フェニックス家の才児の名に相応しい男になったからな。何より、ライザーには君という対等の友が出来た。父親としてはこれ程嬉しい事はない。兵藤君。こちらこそ我がフェニックス家に来てくれて、本当にありがとう」

 

 ライザーの眷属ではレイヴェルさんに次ぐ実力を持つ女王(クィーン)であるユーベルーナさんも少々苦笑している。

 

「フフフ。リアス様もさぞ驚かれるでしょうね。おそらく今まで私達が出場したレーティングゲームの対戦データから、私達の事はかなり深い所まで研究して来る筈。ですが、その情報が殆ど役立たずになってしまっているのですから」

 

 彼女がそう言ったのには訳がある。「爆弾女王(ボム・クィーン)」の呼び名が付く程の実力者であるが、本人はその呼ばれ方を嫌がっていたので、だったら爆発以外の炎熱系の魔力も積極的に使っていけばその内に呼ばれない様になるのでは、とアドバイスし、実際に幾つか炎の精霊魔法を使ってみせたら凄く喜ばれて、それを参考に攻撃以外にも炎の魔力を扱えるようになった。現在の目標は、新しく「爆炎女王(プロミネンス・クィーン)」と呼ばれる事だ。……実はこの時点で、ユーベルーナさんは成長著しいライザーの眷属達の中でも特に頭一つ飛び抜けて成長した事で、あくまで僕の判断であるが上級悪魔の域にまで達してしまっていた。

 そして、某大魔王様の最大攻撃魔法を習得した事でユーベルーナさんを凌いでライザーの眷属内では最強となったレイヴェルさんは、上級悪魔でもおそらくは中位クラス。

 極めつけは、元々フェニックス家の中で最も才能に恵まれている上に某大魔王様の三大奥義の内の二つを習得したライザー。おそらく、最上級悪魔クラスに片足を突っ込んでいるだろう。

 ……皆の成長次第だが、僕はあの時点での力量での難易度をハードからマニアックに、ライザー相手に至ってはルナティックにまで引き上げてしまったのだ。

 

「ユーベルーナさん、これ以上は勘弁して下さい。対戦相手を強くしたなんて知られたら、僕は何て言われるか……」

 

 僕はそう言いながら、同時にガックリと肩を落としてしまった。その様な僕の様子を見て、ユーベルーナさんは微笑みながら語りかけていった。

 

「あら、ごめんなさい。でも兵藤殿、ライザー様が貴方にご期待を掛けるのも解りますよ。何せ一目で私達の欠点を指摘した上に、たった数日でそれを無くしてしまう程の教え上手。更には紅白戦で(キング)を務めてもその指示を誰も信じて疑わない程に信頼関係を築き上げて、最後には勝ってしまったのですから。ましてや、リヒト殿という強さと礼節を兼ね備えた超一流の騎士が心服する程の大器もお持ちになられているのです。ライザー様ではありませんが、私も貴方を王とする赤龍帝眷属と対戦するのが本当に楽しみですね」

 

 ……そこまで期待されると、流石に少し嬉しかったりする。ユーベルーナさんの話が終わると、次はライザーが話しかけて来た。

 

「一誠、お前には本当に感謝しているぞ。今なら、もっと物事を広く見られる様な気がする。……できれば、今のこの状態でリアスと向き合いたかったな。そうすれば、もう少し俺の話を聞いてくれたかもな」

 

 ライザーがこの様な事を言ってきたので、僕も正直な気持ちをライザーに伝える。

 

「僕もここに来てよかったよ。正直に言うと、最初はライザーに余り良い印象を持っていなかったんだ。何せ、リアス部長は思い余って「僕に処女を貰ってくれ」だなんて言い出して来たから。流石に焦りを指摘して冷静になって頂いたけど、それを考えるとやっぱりね」

 

 僕の抱いたライザーの第一印象を聞くと、ライザーは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「あぁ。確かに、あの時の俺はリアスとの結婚の繰り上げに浮かれて踊らされた唯のバカだったからな。今思えば、浮かれる余りにグレモリーの次期当主としてしかリアスの事を見ていなかった気がする。リアスにとって、そんな俺との会話はさぞ不快だっただろう。……リアスには、本当に悪い事をしたよ」

 

 リアス部長に対する態度の不味さに自省するライザーを見て、僕は言葉を掛ける事にした。

 

「まぁ今のライザーを見たら、少なくとも今すぐ婚約破棄だなんて言い出したりはしないと思うけどね」

 

 因みに、これは僕の本心だ。今のライザーだったら、リアス部長も真剣に今後の将来を共にする事について考えてくれていただろう。

 

「左様でございますな。今のライザー殿であれば、私も主上に主兄殿のご友人としてご紹介できます」

 

 リヒトもこう言ってくれている程に、ライザーは相当に高く評価されている。……それだけに、本当に残念だった。

 

「お前や、冥界最強で魔王の女王であるグレイフィアさんに冷や汗を掻かせたリヒト殿にそう言われると、俺も幾分気が楽になるな。だが、もはや賽は投げられた。後はフェニックス家とグレモリー家、更にはサーゼクス様、そして俺とリアスが最善となる様にするだけだ。ただ一誠、例の奥の手はおろか赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)さえも使えないハンデがあるお前には悪いが、手加減はできんぞ?」

 

 ライザーがそう言って来たので、僕ははっきりと頷いてから返事した。

 

「解っている。でもそれくらいの不利を乗り越えないと、王手詰み(チェックメイト)の一歩手前まで追い詰められていたのを引っ繰り返す事はできないよ」

 

 僕の発言を聞いたライザーもそれには納得する一方、僕以外のグレモリー眷属に注意を促す様に言ってきた。

 

「確かにな。……一誠。余計な事だろうが、他の奴らに無様な真似はさせるなよ?」

 

 これに対し、僕は静かに頷いて返事をした。

 

「あぁ、解っているよ」

 

 そして、僕達は拳と拳を突き合わせた。

 

「兵藤様、こちらを」

 

 すると、レイヴェルさんが一枚の緋色に染められたローブを、綺麗に畳まれた状態でそっと差し出して来た。

 

「……これは?」

 

 僕がローブについて尋ねると、レイヴェルさんは少々恥ずかしげにしながらも答えてくれた。

 

「その……。私が自らの羽根を織り込んで作りました特製のローブです。できれば、魔法や魔術を多くお使いになる兵藤様にお召しになって頂きたくて。あっ、接近戦もできるようなデザインにしてありますし、作りもかなり頑丈に致しました。後、私の羽根を織り込んだ事でフェニックスの「不死」の加護がありますから、魔力を供給すれば完全に消滅しない限りは切れ端からでも修復が可能ですわ」

 

 ……何だろう、この健気さといじらしさは。僕はそう思いつつ、試着の許可をレイヴェルさんに求めた。

 

「試着してもよろしいでしょうか?」

 

 僕の許可を求める声に、レイヴェルさんは笑顔で応えた。

 

「はい! どうぞ!」

 

 レイヴェルさんからローブを受け取った僕は、早速目の前で広げてみた。その形状をはっきりと確認した時、僕は内心驚いていた。

 ……以前ラビルーナに十日間だけいた時、前半の五日間においては魔動戦士の中で唯一戦えた大地君が負傷してしまった為、大地君の代わりにスーパーグランゾートに搭乗した事があり、その時には大地君の物とは異なる法衣を纏っていた。今手渡されたローブは、その時の法衣のコート部分から肩当てが外され、色を白主体から緋主体に替えた物だったからだ。しかも鮮やかな緋色の生地に縁取りを金糸で拵えてあった事から、礼装として十分通用するだろう。

 僕は早速、このローブを纏ってみた。最初は少し大きかったが、僕の魔力に反応して直ぐに僕の体に適応した。そして軽く体を動かして、具合を確かめる。

 ……しっくり来た。動きは阻害されないし、着心地もいい。それにフェニックスの羽根を織り込んであるだけあって、法衣としての質も相当に高い。これなら、後でロシウ老師、計都(けいと)師父、そしてニコラス神父に協力してもらえば、実戦での使用にも十分耐えられるだろう。

 僕はローブを脱いで折り畳むと、レイヴェルさんにお礼を言った。

 

「レイヴェルさん。この様な非常に良き品を私ごときに下さり、誠にありがとうございました。流石に様々な都合につき、今回の対戦での着用は敵いませんが、式典に出席する時や今後の重要な戦いの時にはぜひ着用させていただきます」

 

 すると、レイヴェルさんはとんでもない事を言い出した。

 

「はい。どうぞ、お好きなようになさって下さい。それと、対戦が終わってからは私を呼び捨てにして、敬語もおやめになって下さいませ。何せ、全てが終われば……」

 

 ……まぁ、確かに一理はある。あるのだが……。

 

「……駄目でしょうか?」

 

 返事を中々返せないでいる僕に対して、レイヴェルさんはそう言いながら潤んだ瞳で僕を見上げて来た。何だか、自分が凄く悪い事をしている様な気になってしまうので、これ以上は止めて欲しかった。

 

「……解ったよ、レイヴェル。これでいいかな?」

 

 結局、僕が折れる形でレイヴェルの希望に応える事になった。

 

「はい、一誠様!」

 

 レイヴェルが輝く様な笑顔を浮かべて返事をすると、フェニックス卿から提案があった。

 

「兵藤君、念の為だ。私が一先ず、レイヴェルお手製のローブを預かろう。そして後日、フェニックス家からの君への褒賞として、グレモリー卿を通じて下賜される様に手配しておこう」

 

 確かに今は微妙な時期であるので、このまま僕が持っているのを見られると、変な横槍を入れられかねない。僕はフェニックス卿のご厚意に甘える事にした。

 

「フェニックス卿、そのご厚意に甘えさせて頂きます」

 

 フェニックス卿は一つ頷くと僕から緋色のローブを受け取り、その出来具合を確認しながら転移用の魔方陣を展開した。

 

「それにしても、本当に良く出来ているな。この短い時間でここまでの物を仕立て上げるとは、レイヴェルも頑張ったものだ。後はローブに合わせて下の服装をしっかりとコーディネイトすれば、礼装としても十分通用するだろう。では、私はリアス殿の元へ兵藤君とリヒト殿を送って来るぞ。その後、私はそのまま見届け人のリヒト殿と共に主催者席へ向かう事になる。ライザー、お前の意地を貫いてみせろ」

 

 フェニックス卿から声を掛けられたライザーは力強く応えてみせた。

 

「はっ、父上。……一誠、次は対戦フィールドで会おう。今のユーベルーナ達と戦ってお前とリアス以外に何人残るか、試させてもらうぞ」

 

「兵藤殿、私達も全力でお相手させて頂きます。……流石に兵藤殿のお相手が務まるのは、ライザー様のみでしょうけど」

 

「今回、私は戦闘を行わずにこの対戦の一部始終、そして一誠様とお兄様を見届けさせて頂きますわ。……一誠様、どうかご武運を」

 

 そして、ライザーとユーベルーナさん、そしてレイヴェルの声を背に受けて、僕達は転移魔方陣の中に入った。

 

「では行こうか。兵藤君、リヒト殿」

 

「はい、お願い致します。それでは、また後で!」

 

 こうして、僕とリヒト、そしてフェニックス卿は集合場所になっているオカ研の部室へと転移した。

 

 

 

Side:木場祐斗

 

 部長の将来を決めるライザー・フェニックス氏の対戦が開始される午前0時まであと一時間。僕達グレモリー眷属は駒王学園の旧校舎にあるオカ研の部室に集合していた。

 ライザー氏からハンデとして与えられた十日という準備期間の間、僕達はグレモリー家が所有する山の別荘を拠点として、イッセー君を鍛え上げたという歴代でも最高位の実力者である三人の赤龍帝にきっちり鍛えられた。

 

 ……あの時の事は、正直言って思い出したくもない。それだけキツイ内容だった。しかし、その甲斐は十分にあった。

 

 僕はレオンハルトさんから騎士(ナイト)の特性である速さに頼る余りに体の強さも剣の基礎も全く足りないと指摘され、実際に模擬戦を行った結果、受け払いで攻撃はまったくしなかったにも関わらずに完膚無きまでに叩きのめされる形ではっきりと突き付けられた。

 その後はひたすら剣術の基礎である八種類の斬撃と突きを繰り返し行った。しかも少しでも型が崩れると即座に棒で足を払われ、体で直接思い知らされた。正直に言って、十日間では到底成果が出ない様な長期的な視野に立った修行だと思った。

 でも、やり終えた今なら解る。今までの僕は、剣を振るう時に重心が僅かながら崩れていたのだと。だから、速さの割に威力がなかったり、受け払いだけで全ての攻撃をあっさりと弾かれてしまっていたのだ。しかし、レオンハルトさんによって体幹の扱いを矯正されて重心が完全に安定した結果、速さは殆ど変わっていないにも関わらず、攻撃の威力や重さ、鋭さが段違いに向上していた。しかも重心が安定しているので、体勢を崩されても剣の振りはそこまで崩れない。

 ……確かに事、剣においては歴代の赤龍帝でも最高にして最強と呼ばれていた方だった。

 実体化が切れる前に今後も指導をお願いするつもりであることを伝えた時。

 

「祐斗、私が君に教えられるのは後一つ。それは己の生きた証を絶える事無く己の剣に刻んでいく事のみ。その為には、迷いも疑いも躊躇いも捨て、立ちはだかる困難を全て乗り越え、ただ打倒の意と共に敵に踏み込み、そして己の心魂を剣に重ねて振るうのだ。君が本当に望んでいるモノは、おそらくその先にあるだろう。……若き騎士よ、いつか騎士と剣の頂きで相見えよう。その時を楽しみに待っているぞ」

 

 レオンハルトさんはそう言って、イッセー君の元へと戻っていった。……それは、剣を扱う者にとっての一つの極みだった。正に剣を極めた剣帝(ソード・マスター)。僕はこの方に出会えて、本当に良かったと思う。そして、いつか必ず騎士と剣の頂きに上がって、この方に勝ってみせる。僕はそう誓っていた。

 

 ……話が少し逸れてしまった。

 

 僕と同様に、魔導帝(マギウス・ロード)武闘帝(コンバット・キング)と呼ばれる最高位の赤龍帝の教えを受けた他の皆も大きく成長した。

 

 アーシアさんは初めて魔力を扱ったにも関わらず、ある程度魔力の扱いに習熟した様だ。流石に魔力量はけして多いとは言えないけど、治癒と補助に特化している為に魔力を使った防御障壁や能力強化はかなり強力だ。しかもそれに合わせて治癒系神器である聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の能力も強化され、手を触れずとも自身の周辺にいる対象を一度に回復できるようにもなっていた。

 それに、アーシアさんには使い魔として、子供とはいえ上位ドラゴンである蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)のラッセーもいる。仮に孤立した所を襲われても、救援が来るまで持ち堪える事は十分に可能だろう。

 

 朱乃さんは魔力の制御が著しく改善され、炎や雷に変換した魔力を遠隔操作できるようになっていた。以前であれば魔力攻撃は撃ちっ放しで乱戦には不向きだった事を考えると、この差はかなり大きい。

 ただロシウさんから「今のままでは、近い内に必ず成長が止まる」と言われて、かなりショックを受けていた。……やはりロシウさんには気付かれていた様だ。朱乃さんの本当の力は別のものである、という事を。

 

 部長も朱乃さん同様に指摘されていた魔力の制御を一から鍛え直されて、「滅び」の魔力の精密な制御ができるようになっていた。部長は「滅び」故の絶大な攻撃力からかなり大雑把な攻撃が多く、ある程度戦場や戦い方が限定されてしまうのだが、その欠点が改善された形になった。

 しかし部長もまたロシウさんから「グレモリーが持つ本来の能力も併せて使い熟せれば、もう一段上に行ける筈」という指摘を受けていた。

 

 ……グレモリーとしての本来の力。

 

 部長はその話が理解できなかったようで問い質そうとしたけど、自分よりもグレモリー直系の片親に詳細を聞いた方がいいと言われて引き下がった。この分だと、部長はまだまだ強くなっていきそうだ。

 

 そして、最も大きく変わったのは間違いなく小猫ちゃんだった。因みに比喩表現でも何でもない。小猫ちゃんはこの十日間で一回り大きくなって身長が150 cmに届こうとしていた。体付きも、以前に比べて女性らしい丸みと膨らみを帯びてきて、今なら小柄な中学生くらいに見てもらえるだろう。しかも、まだ成長しているらしい。最終的には、少なくともアーシアさんと同じ位までは成長しそうだ。

 詳細な話を聞くと、基礎固めしかできない状況ですっかり行き詰っていた時にベルセルクさんから言われた事を思い出し、一日掛けて自分の生まれとしっかりと向き合い、その上で受け入れて生きていく事を決心した結果。

 

「翌日に目が覚めたら、体が一気に大きくなっていた」

 

 ……という、今時の漫画やアニメでも早々ない事が起こっていた。

 これによって、ベルセルクさんが本格的に小猫ちゃんに技を仕込み始めたという事だけど、残り三日では流石に仕上げ切れなかったらしい。しかし、止まっていた体の成長が一気に進んだ事で小猫ちゃんの基礎能力が著しく向上しており、それに比例して耐久力も以前とは比べ物にならなくなっていた。

 今回の対戦では流石にもう間に合わないけど、小猫ちゃんは今後、イッセー君とベルセルクさんが揃って師事を勧めているという計都という名の赤龍帝から鍛えてもらえばいいだろう。

 

 だけど皆がここまで強くなれたのは、指導者としても優れた三人の赤龍帝を僕達につけてくれたイッセー君のお陰だ。そのイッセー君がもうすぐ帰って来る。皆、イッセー君を待ち侘びていた。

 

 やがて、部室の中に魔方陣が展開された。この魔方陣の紋章はフェニックス家の物。ライザーが来たのかと思ったが、魔方陣から現れたのは、フェニックス家のご当主様とフェニックス家に身柄を拘束されていた筈のイッセー君、そして同行していたあのリヒトという屈強の騎士だ。

 

「では兵藤君、確かにリアス殿の元に送り届けたよ。私はこのまま主催者席に向かい、そこで今回の戦いを拝見させてもらおう。楽しみにしているよ?」

 

「フェニックス卿。わざわざ僕達をお送り下さり、ありがとうございました。それと、ご期待に添えるように微力を尽くさせて頂きます」

 

 ……状況が全く見えてこない。何故あの二人は和やかな雰囲気で会話をしているのだろうか? そして、それを何故あの屈強な騎士が受け入れているのか?

 

 すると、フェニックス卿が部長に対してお声を掛けてきた。

 

「リアス殿。当家の賓客として招待させてもらった兵藤一誠君は、確かにお返しした。しかし、彼は本当に不思議な男だな。この十日間で、すっかり我が家の者と打ち解けてしまったよ。特にライザーとは、対等の友人として友好関係を築いているから驚きだ」

 

 何とも信じ難い事実を伝えられて僕達が言葉を失う中、フェニックス卿から続けて今回の対戦における忠告を受ける。

 

「だからこそ、忠告しておこう。今のライザーは十日前とは全くの別人だよ。歴代でも最高位という赤龍帝を指導者として相当にキツイ修行を積んで来たであろう君達には悪いが、それでもまともにライザーの相手ができるのは兵藤君だけだろう。私に言えるのはここまでだな。では、グレモリー眷属の健闘を期待する。リヒト殿、参ろうか」

 

「承知した。主兄殿。此度の一件、しかと見届けましょう」

 

 簡単なやり取りの後、フェニックス卿と騎士は転移していった。

 

 ……イッセー君。君はこの十日間、フェニックス家で何をやっていたんだい?

 

我が君(マイ・ロード)。兵藤一誠、只今戻って参りました。……失礼を承知で、堅苦しいのはここまでに致します」

 

 でも、その疑問は一誠君の帰還の挨拶。

 

「リアス部長、朱乃さん、木場、小猫ちゃん、アーシア、ラッセー」

 

 そして、陰り一つない笑顔で完全に吹き飛んでしまった。

 

「皆、ただいま!」

 

 ……本当に得な悪魔だね、君という男は。

 

Side end

 




いかがだったでしょうか?

小猫についてですが、「白音モード」が示す様に本来ならもっと大きく成長してもおかしくないにも関わらず成長があまり進まなかったのは、とある過去に由来するトラウマが原因だったのではないかと思い、それを自分の意志で向き合い、受け入れ、そして自分一人の力で乗り越えた結果として、肉体の急成長という形で表してみました。

なので、近い将来、小猫はグレモリー眷属における最小キャラの地位を返上する事になるでしょう。

では、次の話でお会いしましょう。

追記

なお、レイヴェルが一誠に渡したローブの色違いだという一誠の法衣ですが、OVAで大地がハイパーグランゾート搭乗時に纏った、俗に言う第三法衣の事です。

また、活動報告で次の更新に関するお知らせがございます。
ご確認ください。
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