一誠がフェニックス家でやってしまった事の一部がここで判明します。
……前世では、研究の息抜きとして色々観たり読んだりしていたようです。
追記
2018.11.20 修正
リアス部長が当初立案した作戦に従って、まず朱乃さんが上空と裏庭に幻術を掛ける一方、木場と小猫ちゃんが裏庭に罠を仕掛けていた。そして三人が戻ってきた所で、僕達は行動を開始した。因みに、今回は赤龍帝の力を使わないのでオーラブレイドが使えない。その代わりとして木場に強度を重視した魔剣を一本作ってもらっている。木場は裏庭からの侵攻に対する迎撃の為に裏庭で待機、朱乃さんは作戦の第一段階の準備の為に魔力のチャージを開始、そして僕は小猫ちゃんと共に体育館に向かった。ライザー陣営の本陣がある新校舎に攻め入る上で、体育館とグラウンドは侵攻ルートの重要拠点となる。まずはそこを抑えようというのだ。それぞれが任務遂行の為に動いている中、僕達は体育館まで後少しと迫っていた。しかし、どうやら向こうが先に占拠したらしい。
「小猫ちゃん、ストップ」
僕は小猫ちゃんを呼び止めた。
「イッセー先輩?」
小猫ちゃんはまだ体育館に到着する前に僕が呼び止めたことで、首を傾げているようだ。
「……先手を打たれたようだ。体育館は既に向こうが占拠している。この十日間で感じた気配の種類と強さから、おそらく
小猫ちゃんは僕の言葉を聞いて少し驚いたようだ。
「この距離で、そんなことまで解るんですか?」
……この程度で驚いてもらうと、却って困ってしまうな。
僕は小猫ちゃんに赤龍帝の実力を示す意味合いも兼ねて、察知した敵味方の現状を伝える。
「この程度の隠行術なら、集中しなくても気配と力量を読み取れる自信はあるよ。それに今も、異相空間内の全員の居場所と状況を把握できているしね。体育館の上空では
すると、小猫ちゃんの目が大きく開かれた。今僕の言った事にかなり驚いているらしい。しかし、これくらいは別に大した事ではない。
「小猫ちゃん、驚いているみたいだね? だけど、それぐらいはできないと、赤龍帝なんて到底名乗れないよ」
……僕にしてみれば、それが赤龍帝を名乗る最低ライン。
そう思っていると、小猫ちゃんは感心してしまった様だ。それが言葉として出て来てしまっていた。
「……改めて思いましたけど、赤龍帝って凄いんですね」
正直言って、この程度で感心されても困ってしまう。特に小猫ちゃんの場合、本領さえ発揮すれば今僕がやっている事など簡単にできる様になるのだから。
〈……それで、さっきのはアレで全て合っているのかしら?〉
〈はい、それで全て正解です。今はここまでで十分ですから、次の課題に入りましょう。こちらの方は時間を掛けて、少しずつ範囲を広げていけば結構です〉
〈……でも、私は
〈正確には道士の術なので、仙術というより道術ですけどね〉
Interlude
レーティングゲーム観覧席において、グレモリー卿とサーゼクス・ルシファーが今の一誠の発言についてお互いの意見を交わしていた。
「サーゼクス、お前ならできるか?」
「父上、本気でお尋ねになられていますか? 確かに気配感知や識別はできますし、魔力の大きさの変動から動向もある程度は推測できますが、彼ぐらいの精度に把握するのは私でも困難です。この分では、たとえ何らかの形で相手が見えない状態であっても、感知技能だけで戦闘が可能なのでしょう。彼にとって、赤龍帝とは一体どのような存在なのでしょうか?」
「彼にとっての赤龍帝とは、謳われている通りの神をも凌駕し得る存在なのだろう。しかし、既に地力でリアス達を上回っている彼が言うと、説得力が違うな。まして、今は「あの状態」からだからな」
Interlude end
「だから、ここは堂々と行こう。向こうも僕達を捕捉しているし、模擬戦をした事がある僕がいる以上は油断も隙もないだろうね」
僕はそう言うと、そのまま体育館の中へと入っていき、その扉をゆっくりとしかし堂々と開けた。小猫ちゃんは慌てて僕について来る。体育館の中では、中華系の服を纏った戦車の
「参ったわね、よりにもよってこっちに兵藤君か。まぁ、ライザー様の命令はきっちりこなさないといけないわね」
一方、兵士の一人で、和服を纏い棍を抱えたミラさんが敵として対峙した僕に対して「そう簡単には負けない」と決意を露わにする。
「前に模擬戦の相手をしてもらった時には全く歯が立ちませんでしたけど、今度はそう簡単には負けませんよ?」
そして、猫娘型悪魔の兵士であるニィとリィが決死の覚悟でこちらを見ている。
「私達、きっとコテンパンにゃ」
「でも、せめて掠り傷くらいは入れたいにゃ」
やはり、皆の気合の入り方が違うな。特に元々通常の眷属悪魔における女王と同等クラスの実力があった雪蘭さんは、一切の出し惜しみをしないつもりで身構えている。
……他の三人とは切り離すべきか。
そう判断した僕は、残りを僕が相手取るので残った彼女の相手を任せる事を小猫ちゃんに伝える。
「小猫ちゃん、兵士のミラさん、ニィ、リィは僕が相手をする。君は残った戦車の雪蘭さんとの一騎討ちに集中してくれ。彼女は炎を手足に纏う格闘家だ、注意して」
「解りました」
そして僕と小猫ちゃんは二手に分かれた。
〈では、しっかりと見ておいて下さい。魔力と体の正しい扱い方を〉
〈解ったわ〉
Side:塔城小猫
私は今、イッセー先輩の指示で雪蘭という名の戦車と対峙しています。
「ところで貴女、十日前にいたリアス様の戦車は参加していないの? 見た感じ、逃げ出す様な子じゃないはずなんだけど。……そう言えば貴女、あの子の血縁者なの?」
すると、相手の戦車は変な事を尋ねてきました。
「……どういう事ですか?」
私が問い返すと、戦車は首を傾げながら答えて来ました。
「だって、あの子に容姿も魔力の波長もよく似ているし、一回り大きいもの。あの子の姉かと思ったんだけど、違うの?」
……そう言えば、この十日の間で私の体は一回り大きく成長しています。確かに十日前の姿しか知らなかったら、今の私を見ても私本人であると解らないのも無理はないのかもしれません。
「……信じられないかもしれませんけど、本人です」
そう答える私の言葉を聞いても、戦車からその場で否定されました。
「いや、冗談は止めておきなさい。いくら悪魔でもたった十日で10 cm以上伸びるなんて、……本当なの?」
戦車からの確認に対し、私は頷く事で肯定します。戦車はその事実に動揺を隠せません。
「そ、そう。……成長期なのかしら?」
そう言いながら、戦車は両拳に炎を纏って構えてきました。
……正直言って、こんな事で平常心を奪ってもちっとも嬉しくありません。
だから、平常心を損なっている内に憂さ晴らしを兼ねて一発ぶち込む為に踏み込もうとした時、戦車は突如構えを解いて左拳の甲に右の掌を添えると、まるで忍者が手裏剣を放つように炎の弾幕を張ってきました。
「まずは挨拶代わりよ!」
それを見て私は慌てて回避しましたけど、体勢を少し崩してしまいました。
「先手は貰ったわ!」
するとその隙を突いて、拳に宿っていた炎をそのまま正拳打ちを放つように二発放って来ました。何とかクロスガードが間に合って防御できましたが、私は驚きました。どうやら本戦で十戦中八勝、しかも二敗は家の事情で相手に勝ちを譲ったものなので、実質全勝しているのは伊達ではなかったようです。
「中々やるわね。歴代でも最高位の赤龍帝に鍛えられたのは伊達じゃないってことかしら? 一応、さっきのバーニング・サラマンダーは防御の上からでもダメージを通せる威力がある筈だけど。でも、少し安心したわ。これでお互いに無様な戦いにはならないでしょう」
私が自分の攻撃を上手く防いだ事に対して素直に称賛してきた事に、私は少し驚きました。ただ、そこで戦車は私から視線を少し外しました。
「……でも、やっぱりというべきかしら。あちらの方は持ち堪えられなかったみたいだけどね」
明らかに溜息混じりである戦車の言葉に、イッセー先輩が戦っている筈の方へ視線を向けてみると、既に全てが終わった後でした。
「にゃ~。教えてもらった四足戦法で頑張ってみたけど……」
「やっぱりコテンパンだったにゃ。特に牙通牙は、結構良い線行ってたはずにゃのに~」
「ライザー様、申し訳ありません。纏糸功を使っても、やっぱり兵藤さんには歯が立ちませんでした」
イッセー先輩は既に相手をしていた兵士を全員無力化していて、そのまま三人を拘束魔法のチェーンバインドで拘束しています。この光景を私より先に確認していたであろう戦車はもう一度深く溜息を吐きました。
「……はぁ、流石に相手が悪過ぎたか。この子との一対一なら互角だったかもしれないけれど、一対二かつもう一人は兵藤君じゃまるで勝負にならないわ。ならばせめて、これだけでも!」
戦車はそう言うと、戦車の周りを逆巻く炎の竜巻が包み込みました。そしてそのまま私の懐に入ると、炎の竜巻の勢いを乗せて炎を纏う渾身の回し蹴りを繰り出してきます。
「サラマンダァァァ、ブレイク!」
私は足を一歩引いて真っ直ぐに魔力を集めた拳を突き出す事で対抗しました。炎の蹴りと魔力の拳が真っ向から激突し、衝突による衝撃波が体育館の全ての壁に傷を付けていきます。
「……今ので、足の骨に罅が入っちゃったか。まさかボクシングスタイルの貴方が、中国拳法の退歩を使って来るとは思わなかったわ」
そして、私の目の前には足を痛めて跪いている戦車の姿がありました。あえて足を一歩引いて体をしっかり固定することで、敵の攻撃の勢いをそのまま返す中国拳法の技法である退歩。イッセー先輩によって自我を取り戻したベルセルクさんが、現代のあらゆる武術を研究して自身の糧にした結果でした。
足を負傷した戦車は、もはやまともに動けません。私と戦車の勝敗が決したところで、イッセー先輩が私に撤収を呼び掛けてきました。
「時間だ。小猫ちゃん、行くよ」
それから少し遅れて、朱乃さんから準備が出来たという連絡が入って来ました。……さっき言った事は、全て事実だったみたいです。そして、戦いながらも周りの状況を把握していたんでしょう。私にしてみれば、それはとんでもない事なんですが、イッセー先輩曰く「赤龍帝ならできて当然」との事。
……ここまで凄いイッセー先輩がまだ
私はそんな事を考えながら、既に撤収を開始していたイッセー先輩に着いて行きました。重要拠点である体育館を早々に放棄したことに驚く彼女達の声を背に受けて。
……体育館を全壊する程の強烈な雷が落ちて来たのは、私達が体育館を出てからすぐの事でした。
「ライザー・フェニックス様の兵士三名、戦車一名、リタイア」
その後、間もなく
「ライザー・フェニックス様の兵士三名、リタイア」
……人数から判断して、旧校舎の裏の林から攻めて来ていたチームです。伏せていた祐斗先輩が撃破したのでしょう。序盤戦は上々の滑り出しと言えます。
「……上手くいきましたね」
私はイッセー先輩にそう言いましたが、イッセー先輩の表情はむしろ険しいものでした。
「小猫ちゃん、一つ教えておこう」
イッセー先輩はそう言って祐斗先輩から預かった魔剣を握り直しました。
「戦いの場において」
そして、私では目にも留らない程の速さで振り向きざまに振り下ろしました。
「残心を忘れた者は必ず死ぬ」
その次の瞬間、私の後ろの両脇で爆発が起こったのです。……もしイッセー先輩が切り払っていなかったら、私はこの攻撃をまともに喰らって撃破されていたでしょう。そう断言できてしまう程に、爆発の威力が強烈でした。
そして、イッセー先輩が上を見上げているので私も視線を上げると、体育館跡の上空には一人の女性が浮かんでいます。その女性は自分の不意打ちを完璧に対処したイッセー先輩に対して、邪魔した事に憤るどころかむしろ称賛してきました。
「流石ですね、兵藤殿。普通なら、作戦や戦闘が終了した瞬間には気が抜けて、最も注意力が散漫になるもの。現に、その戦車の子は完全に油断していたというのに」
……そう言えば、上空に女王が待機しているとイッセー先輩は言っていましたね。私はそのことを完全に忘れてしまっていました。
「剣術において、相手を制しながらもなお心を残して備える事を残心と言います。それができない者に、剣を取る資格はありません。しかし、小猫ちゃんの油断を見逃さないのは、流石はライザー様が特に信を置く最良の女王というべきなのでしょうね? ……ユーベルーナさん」
イッセー先輩はそう言って、上空の女王を見据えています。……私はさっきからイッセー先輩に助けられてばかりで、少し情けないです。
「お言葉を返す様ですけど、流石は赤龍帝と言うべきですね。貴方の強さは、レーティングゲームの本戦で今まで戦って来た方の中でも最上位に位置する事はまず間違いありません。……まぁ、フェニックス家のご滞在で親しくさせて頂いた私達にとっては、既に解り切っていた事なのですが。だからこそ、私はけして無理はしません。ここで、少しでも戦力を削らせて頂きます!」
女王はそう言うと、炎の魔力弾を幾つも展開してきました。……その魔力弾は、戦車の私ですら一撃で落とせそうな威力を秘めていそうです。しかし、イッセー先輩は全く動揺してはいませんでした。
「済みませんけど、貴女の相手は僕ではありませんよ?」
「そういう事ですわ」
朱乃さんの声と共に、女王に向かって雷が飛んで行きました。ですけど、イッセー先輩からユーベルーナと呼ばれた女王は一瞥すらせずに、右手をさっと一振りして炎の壁を一瞬だけ展開し、朱乃さんの不意打ちを完璧に防御しています。
……イッセー先輩と私に意識を向けながらも周囲への警戒を怠らない事といい、魔力弾を幾つも展開しながらも不意打ちに対して炎の壁を一瞬だけ展開して防御するなど魔力制御の錬度が相当に高い事といい、今の私ではあの女王にとても敵いそうにありません。
「イッセー君、女王は私が引き受けましたわ。貴方はこのまま、小猫ちゃんと一緒に祐斗君に合流して下さいな」
一方、相手の強さを目の当たりにしてそれまでは余裕の笑みを浮かべていた表情を真剣な物へと変えた朱乃さんの指示を聞いて、イッセー先輩は承知しました。
「承知しました。ですが、朱乃さん。作戦開始前に僕が言った事、けして忘れない様にして下さい。……小猫ちゃん、行くよ」
「はい」
そして私は祐斗先輩に合流する為に、先行するイッセー先輩の後ろを着いて行きます。敵の本陣へ進攻する為の拠点となるグラウンドを確保するという、部長の作戦を遂行する為に。
Side end
〈ご理解頂けましたか?〉
〈……そうね。本当に、色々と学ばせてもらったわ。私の魔力の扱い方や体裁きが如何に無駄の多いものなのか。それに、作戦が一つ終わっても戦いはそこで終わりじゃないって事もね。さっきのもそうよ。もしあの場にいたのが私だったら、あの時点で小猫をやられているか、あるいは私自身が攻撃されて
〈では、そろそろ実践してみましょうか。おそらくは策が成るまで、こちらが戦う事にはなりませんので〉
〈……イッセー。私、今日ほど貴方が味方で良かったと思った事はないわ〉
Side:塔城小猫
「参ったな。ライザー様はどうやら本気で僕達を試されている様だ。威力偵察に単独侵攻すら可能な戦力を割いて来るとはね」
合流した祐斗先輩から、旧校舎の裏林においてこちらの本陣である旧校舎に攻めてきた兵士三名と戦い、仕掛けた罠を利用して撃破したものの、その後グラウンドを押さえている騎士、戦車、僧侶の三人が誘いに乗らず、現在は様子を窺っている事を聞いたイッセー先輩が呟いた言葉がそれでした。
イッセー先輩の話では、祐斗先輩と戦ったシュリアー、マリオン、ビュレントの三人は三位一体の連携攻撃を得手としていて、真っ向勝負は自分でも少しばかり梃子摺るとの事です。
「確かに罠で弱体化していたから比較的楽に撃破できたけど、あの錬度の高い連携攻撃を攻略するのがかなり困難だったから、もし万全だったらと思うと正直ゾッとするよ。流石に負けはしなかっただろうけど、確実に消耗させられただろうね」
祐斗先輩も、高い錬度を誇る敵の連携攻撃には舌を巻いていました。今までぶつかったのは本当に強敵ばかりで、あの方達に鍛えられていなかったら、きっと手も足も出なかったことでしょう。……少々癪ですが、ライザーの見立ては当たっていたという事です。
「でも、威力偵察自体はしっかりとこなされてしまったか。これで木場の力を上方修正して来る筈だ。お前の能力も暴かれてしまったんだろう?」
イッセー先輩は祐斗先輩に確認を取って来ます。
……ですけど、能力を暴かれたとは?
私が首を傾げていると、祐斗先輩はイッセー先輩の問い掛けに苦笑交じりに答えて来ました。
「……そうだね。結局、あの三人相手に僕の
……本当に気配察知だけで動向が解るんですね、イッセー先輩。私は本当に驚きっぱなしです。その上、イッセー先輩はグラウンドを抑えている敵の詳細な情報を私達に教えて来ました。
「それで、グラウンドにはレイヴェル様がいる訳か。後は手数重視のテクニックタイプであるカーラマインさんとイザベラさんもこっちに来ているな。明らかにスピード重視のテクニックタイプである木場を意識した布陣だ。まぁ、イザベラさんはフリッカーを使うボクシングスタイルだから、小猫ちゃんは却ってやり易いんじゃないかな?」
……さっきからおかしいとは思っていましたが、ひょっとしてイッセー先輩、ライザーの眷属全員と模擬戦をしているんでしょうか?
私はそれを疑問に思いましたが、祐斗先輩は違ったみたいです。私が疑問に思った事とは別の事をイッセー先輩に尋ねます。
「イッセー君、レイヴェル様ってどういう事かな?」
ただ、それに対するイッセー先輩の答えが正直言って驚き物でした。
「レイヴェル様はライザー様の妹君だよ。だから、同じフェニックスの「不死」を持っている。普通は無理だけど、特殊な手段を使って眷属としたらしいね。その時にお聞きした話だと「別に妹好きじゃないけど、妹属性の子をハーレムに加えることに意味がある」と何とも首を傾げたくなる様な事だったんだけど、実際のところは「自分が認めた相手にしかレイヴェル様を任せたくない」というお考えだったんじゃないかな?」
妹可愛さにそこまでやりますか? ……そう思った私ですが、同時に嫌な予感もしました。今でこそイッセー先輩は公私をしっかりと区別していますが、イッセー先輩やフェニックス卿曰く、「ライザーはイッセー先輩を対等の友人として認めている」とのことです。
まさかとは思いますが……。
しかし、そんな私の思考はそこで止まる事になりました。
「私はライザー様に仕える騎士のカーラマイン! もはや腹の探り合いをする時間は終わった! そちらに最強の兵士たる兵藤もいる事は解っている! だが、リアス・グレモリーの騎士よ! まずは騎士である我等が刃を以て語らおうではないか!」
……どうやら、イッセー先輩の声は向こうには聞こえていたみたいです。三人揃って大した聴覚ですね。イッセー先輩はそんなに大きな声で話していたわけではないのですが。
すると、イッセー先輩が明らかに失敗したという表情を浮かべました。そして、それが何故なのかを私達に説明していきます。
「……しまったな、魔力による風の操作能力だ。周囲の風を操って僕達の会話を拾えるほどの錬度から考えて、使用者はレイヴェル様だね。風の操作能力はその普遍性と隠密性から、特に索敵や偵察、盗聴といった諜報戦に向いているんだ。おそらくレイヴェル様は、グラウンドを確保した時点で周辺の風を魔力で支配下に置き、そのまま諜報活動をしておられたのだろう。もちろん風の魔力でも同じ事ができるけど、それだと感知技能が高い者にはすぐに解ってしまうんだ。だけど、風そのものを使った諜報行動に関しては魔力が殆ど含まれないから、精霊魔法の使い手か同じ風に関する能力者でもない限り、感知するのは極めて困難だよ」
イッセー先輩の考察の正しさは、お互いに見合わせて苦笑いを浮かべた騎士と戦車の反応が証明してくれました。でも、「こちらの会話を聞かれていた」という事実と持っている知識だけで相手が使用していた能力を読み取ってしまったイッセー先輩は、一体どこまで凄いんでしょうか?
そこで敵方の方を見ると、レイヴェルというライザーの妹は敵である筈のイッセー先輩に褒められたことで少し、いえかなり嬉しそうです。……気のせいか、頬を赤らめているようにも見えます。どうやら、さっきの嫌な予感はこの事だったようです。それにしてもイッセー先輩。貴方はこの十日間、一体何をやっていたんですか?
「……参ったね。決闘を申し込まれた以上、「騎士」としては黙っているわけにはいかないんだけど」
私がそんな事を考えている一方で、祐斗先輩は言葉ではそう言って悩んでいる風を装っていますが、実際には既に出る気満々の様です。すると、イッセー先輩も打って出る事を決断して私達に伝えて来ます。
「この際だ。木場、小猫ちゃん、出よう。既に気付かれていて盗聴すらされているんだ、隠れている意味がない」
……確かに、イッセー先輩の言う通りです。私と祐斗先輩もイッセー先輩の意見に同意しました。そして、私達は敵の前に出ていったのです。
Side end
〈……と、まぁこういう事です。こちらと直接対峙していないからと言って、敵が何もしていないとは限りません。今後はその点に留意して行動して下さい〉
〈……ゴメンなさい、イッセー。これで、こちらの策がバレたかもしれないわ〉
〈ご心配には及びませんよ。バレたらバレたで、こちらに合流してチーム戦にしてしまえばいいだけです。戦力は現時点で既に半減、回復手段は元から有限。こちらが余程の手落ちをしない限り、向こうはこちらの手からは逃れられません。なので、後は堂々としてその時をお待ちになっていれば、結構です〉
〈解ったわ。それなら、胸を張って堂々と待つ事にしましょう。イッセーの策が成る、その時まで〉
いかがだったでしょうか?
……この時点で主人公が味方のグレモリー眷属を強化する作品は数あれど、敵方のライザー眷属を強化したのはおそらく拙作だけでしょうね。
お陰で、小猫のライザー眷属の評価が凄い事になっています。
……尤も、そこまで敵が強くなった諸悪の根源は、彼女の側にいるお人好しなんですけどね。
正に「志村!後ろ、後ろ!」状態。
なお、活動報告にお盆期間中の更新について記載していますので、確認をお願いします。
では、次の話でお会いしましょう。
追記
ASSDICK様のご意見を参考にして、視点変更の場面に加筆修正致しました。
これにより、拙作がより読みやすくなったと思います。