赤き覇を超えて   作:h995

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レーティングゲーム編です。

一誠が仕掛けた策略が明かされます。

なお、グレモリー家に関して独自設定を盛り込んであるので、苦手な方はご注意ください。

追記
2018.11.21 修正


第八話 神の頭脳と悪魔の智謀を持つ男

Side:塔城小猫

 

 序盤戦は部長の作戦が見事に当たり、兵士(ポーン)を六騎、戦車(ルーク)を一騎撃破(テイク)するなど優位に進めていました。でも、そんな私の油断を突かれて、ユーベルーナという相当の実力者であろう敵の女王(クィーン)に危うく撃破されかけてしまい、イッセー先輩によってフォローされて事無きを得るという何とも情けない姿を晒してしまったのは、悪魔の先輩としてとても恥ずかしいです。

 

「戦いの場において、残心を忘れた者は必ず死ぬ」

 

 その時の事をイッセー先輩から教えられた事と合わせて教訓として、私は今後二度と忘れないようにします。……あんなに恥ずかしくてみっともない思いは、もう二度とゴメンですから。

 その後、女王については同じく女王の朱乃さんに任せて祐斗先輩と合流した私達はグラウンドを押さえていた騎士(ナイト)、戦車、僧侶(ビショップ)と真っ向から対峙する事になり、イッセー先輩が僧侶でライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスと睨み合っている間に祐斗先輩と私が戦い始め、何とか騎士のカーラマインと戦車のイザベラを撃破できました。

 ……ただ、カーラマインは炎の魔力を持つ片手剣と風の魔力を持つ短剣の二刀流で攻め立ててきましたが、炎の攻撃力と風の機動力、そして双方の相互作用で凄まじい攻撃の数々を繰り出してきました。祐斗先輩は魔剣創造(ソード・バース)で炎と風をそれぞれ無効化する魔剣、炎凍剣(フレイム・デリート)風凪剣(リプレッション・カーム)を創って対抗しましたが、それでも少なからぬ傷を負ってしまったのです。

 一方、私もフリッカーにこそ対処できましたが、そこに意識が集中する余りに至近距離から虎を模る魔力を纏った強烈な飛び膝蹴りを一発まともに食らってしまいました。その後で痛みを堪えながらしっかりと捕まえ、変形式のスープレックスを叩き込んで気絶させましたが、ダメージはけして小さなものではありません。

 私達がそれぞれの相手を撃破した直後、朱乃さんがこちらに満身創痍かつ墜落同然で合流すると同時に、ユーベルーナと残ったライザー眷属がグラウンドに駆けつけて来ました。……巨大な爆発音がオカ研の部室の方から聞こえて来たのは、その直後です。

 

「……お兄様が其方の本陣に単独で攻めに行かれたみたいですわ」

 

 レイヴェル・フェニックスが淡々とした調子で語っていきましたけど、不味いです。あそこには今、部長の他には回復要員のアーシア先輩とその護衛のラッセーしかいません。そこを攻められてしまったら……!

 私は最後の手段として、戦車の特性で(キング)との位置を入れ替えられるキャスリングを使って、こちらに部長を呼ぼうとしました。先程女王が私を狙って来たのも、このキャスリングを使わせないようにする為です。でも突然、部室の方から光の球が飛んで来たと思ったら、その光の球からアーシアさんとラッセーが現れたのです。

 

「ア、アーシアさん! 一体何故ここに!」

 

 祐斗先輩は驚きを隠せません。私も声には出しませんでしたが、驚きで一杯です。アーシア先輩は私達の状態を確認するとすぐさま近付いてきて、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)で私と祐斗先輩、朱乃さんの治療を開始します。既にアーシア先輩は自身を中心とした半径1 mの範囲であれば、一度にまとめて治療することができます。その分回復速度は遅くなりますが、元々が相当に速いのでそこまで気になりません。

 でも、驚いたのは私達の回復を終えたアーシア先輩の次の言葉でした。

 

「イッセーさんの作戦は成功しました! もう話しても大丈夫ですよ、()()()()!」

 

 そのアーシア先輩の言葉と共にイッセー先輩の姿が紅い魔力に覆われると、そこにいたのは本来なら本陣にいる筈の部長でした。

 

「フウ。意識を保ったまま別の存在に体を動かされるなんて経験、滅多にあるものじゃないわね。でも、お陰で凄く参考になったわ。無駄のない魔力の扱い方に無理のない体裁き。私も並以上の才能はあると自負しているけど、それだけじゃ駄目だって改めて実感できたわ。今後はあのレベルを目指さないと駄目ってことね」

 

 私はどうなっているのか、全く解りません。

 

「……やっぱり、そうでしたのね」

 

 すると、レイヴェル・フェニックスが密かに抱いていたイッセー先輩への違和感について語り始めました。

 

「対峙する前からおかしいとは思っていたのです。何故、精霊魔法の使い手で常時精霊達の助力を得られる筈のいっ、十一駒の兵士(イレヴン)が風を用いた諜報に気付けなかったのか。そして、十一駒の兵士から本人だけでなく、極微量でしたがリアス様の魔力も感じられたのか。でも、これで納得致しましたわ。尤も、普通はこんな事を考え付いても、実行しようとは思いませんけど」

 

 最後にそう断言した彼女は苦笑いを浮かべています。それだけあり得ない事なんでしょうか? ……それよりも途中で慌てて言い直していたみたいですけど、イッセー先輩を最初はどう呼ぼうとしていたんでしょう? どちらかと言えば、そっちの方が気になってしょうがありません。

 でも、本当に驚くべきは部長の解説が始まってからでした。

 

「えぇ。私も最初は凄く不安だったわ。しかも敵を欺くにはまず味方からという事で、作戦の準備でその場にいなかった三人には黙っていたし。何せ……」

 

 ……後で聞いた話なのですが、この時、旧校舎にあるオカ研の部室では、部長の説明に重なる様にイッセー先輩が自ら仕掛けた策のタネ明かしをしていたそうです。

 

「最初に、仙術の応用で幽体離脱致しました私と我が君(マイ・ロード)がお互いの体を入れ替えた上で変身魔法で姿を変え、我が君が行動開始をお告げになった後、我が君はそのままご自分の体に戻って頂き、引き続き私が我が君に憑依して体を動かす事で、あたかも兵士であるかの様に演じるという、ある種の禁じ手にございます。なお我が君の魂が離れた後の我が肉体は、予め構築していた保持用の結界に収めた上で、僧侶とその使い魔に守って頂いておりました。我が君も、その点でかなりご不安がお有りだったご様子」

 

 それを聞いたライザーは呆れた様な表情で、イッセー先輩の策について次の様に語ったらしいです。

 

「確かに普通なら絶対にやらない手だな、十一駒の兵士。動かしているのが兵士とはいえ、実際は王だ。何かの間違いで撃破されてしまったら、そこで終わりだからな。下策、いやもはや愚策とも言うべき最悪手だ。……本当ならな」

 

 そして、部長が通常なら愚策であるというイッセー先輩の策が今回に限っては全く違うものであると説明していきます。

 

「でも、私の体を動かすのが、歴代の赤龍帝によって鍛えられた事で人間が作り上げて来た多くの技能に習熟したイッセーなら、話は大きく変わってくるわ。イッセーは私の力を誰よりも理解した上で、私の意識を残したまま色々な物を見せ、聞かせ、そして使ってみせた。それによって、私は自分がどれだけの事ができて、またできなかったり間違っていたりしていたのかが理解できた。更に途中からは、私の意識と同調して私に実践させる形で魔力操作の指導すらやってみせたのよ。お陰で、今の私は対戦前より体の使い方や魔力制御の精度が格段に向上しているわ」

 

 ……イッセー先輩。貴方はこの僅かな時間で、一体どれだけ多くの事を部長に指導していたんですか? 貴方には、一体どれだけの物が見えているんですか?

 

 私は兵藤一誠という存在がどれだけの高みにあるのか、それを嫌でも理解しました。

 

「だから、今ならこんなこともできる」

 

 そう言って、部長は無造作に右手を振りかざしました。すると、アーシア先輩の頭上に「滅び」の魔力が円形状に展開され、その上空から飛んできた何かが完全に防がれ、いえ消滅してしまったのです。

 

「名付けて、破滅の盾(ルイン・シェイド)。お母様から受け継いだ「滅び」の魔力をこの様に圧縮、固定すれば、あらゆる攻撃を消し去る盾にもなるわ。それに、今の私に不意討ちなど通用しない。そう断言するわ」

 

 今までの部長はどちらかと言えば制御より出力を重視されていましたので、この様な魔力の扱い方はできませんでした。でも、それだけでは不意討ちは通用しない事と結び付かない様な気がするのですが、一体どういう事でしょうか?

 

Side end

 

 

 

Interlude

 

 レーティングゲーム観覧席。

 

 リアスの言葉を聞いたサーゼクスは、思わず玉座から立ち上がってしまった。

 

「……まさか、リアスが目覚めたと言うのか。我がグレモリーの真なる力に」

 

 その顔は、驚愕と歓喜の色が半々といった面持ちであった。

 

Interlude end

 

 

 

Side:塔城小猫

 

 私が疑問を抱く中、部長は正に驚くべき事を発言しました。

 

「私はリアス・グレモリー。ソロモンの七十二柱に連なりしグレモリーの次期当主。だから、現在、過去、未来の三世の事象と隠された財宝を見通すとされるグレモリーとして私が本当に目覚めるべきは、あらゆる物事を見通すことのできる「探知」。イッセーが私の体に憑依していた時に、私の精神を私の魔力の根源へと導いてくれたお陰で得られた、私の本当の力よ。尤も、私は先にお母様から受け継いだバアル家の「滅び」に目覚めたからか、今はまだこの位相空間内、つまり現実世界の駒王学園の敷地内という極狭い範囲しか「探知」できないけど、今ここで皆と共に戦う分には十分過ぎる程に有効な特性よ。実際に今も「探知」によって、今までの私なら完全に決まっていた不意討ちにも対処できたもの」

 

 ……何ですか、その反則的な能力は? もしその通りだとしたら、「探知」によって現在の敵味方の状況を完璧に見通せる事になりますので、眷属を率いて戦う王にとっては非常に有用な能力です。それに成長すればもっと広い範囲での「探知」ができる可能性があるというのですから、凄いです。どうやら部長は一気に別次元へと突入してしまったらしく、もはや私では全く勝てる気がしません。

 

「それにしても容赦がないわね、ライザーの女王。確か、ユーベルーナだったかしら? 真っ先に回復役で戦闘能力が皆無であるアーシアを潰しにかかるなんて。……いえ、貴女も解っているのね。ここから先は、アーシアの使い魔であるラッセーも入れての六対七のチーム戦。数の差がほぼ埋まったこの状況下でなら、回数制限のない回復手段がある私達の方が圧倒的に有利だという事を」

 

 ……そうです。部長の仰る通りです。今のこの状況は完全にチーム戦で、アーシア先輩の存在がこの上なく大きくなります。しかも、今の部長を除けば眷属内でも最高位の防御技能もありますので、ラッセーに護衛を任せれば救援は十分間に合います。

 それを全て見越してアーシア先輩に奇襲攻撃を仕掛けてきたユーベルーナは、全てを悟った様な表情を浮かべていました。そして、イッセー先輩が仕組んだ作戦の目的を解き明かしていきます。

 

「……成る程。この幽体離脱を利用した入れ換わりによって、リアス様の作戦に従い、またそれを補足する形で行動し、まずは私達を重要拠点であるグラウンドへと集結させる。これと共にリアス様が本陣に残ったままと誤認したライザー様をあえて本陣に引き寄せ、私達とライザー様を完全に分断。そしてライザー様が本陣に突入した時点で幽体離脱を解除、ご自身がそのままライザー様と戦い、本陣に残していた肉体の護衛兼維持役だった回復役の僧侶をリアス様の元へと転送する事で、リアス様を含めた眷属全員で戦力を減らした私達に対抗するという訳ですか。……通常であれば、護るべき王を大戦力の前に晒すだけの愚策です。しかし、リアス様の意識を残した状態で戦闘し、体裁きと魔力の扱い方を文字通り体感させたことで、単にグレモリーの特性だけでなく「滅び」の魔力の扱い方さえも向上させるなど、もはや進化と言うべきリアス様の急成長を促す事で我彼の戦力を均衡状態にまで至らしめるとは……」

 

 ユーベルーナはもはや絶句といった面持ちで、言葉を途絶えさせてしまいました。しかし、そこから気を取り直したのか、再び言葉を続けていきます。

 

「ご自身のお仲間とこの十日間で知ることのできた私達の能力や性格を考慮して我彼の動きを全て読み切り、更にはリアス様の真なる力すら見出してみせた叡智は、正に全てを見通す神の如し。更に、ご自身はおろか本来なら何を差し置いても守るべき王すらも自身の策の駒とする冷徹さに加え、審判役(アービター)によって強制退場させられるギリギリの一線を見極め、ライザー様の為に必死に最強の敵を抑えようとする我々をまるで外から嘲笑うかの様に己の掌の上で転がしていく狡猾さは、正に人間界に伝わる悪魔の如し。それらを合わせた事で、敵の誘導と戦力の削減に加えて味方戦力の温存、更には主への実地指導さえも同時に行い、全ての状況をここに集約させたという事ですか。……やはり、兵藤殿は兵士などには到底収まりませんね。正に」

 

 この時、オカ研の部室では全てを悟ったライザーが笑い出していたそうです。

 

「……クッ、ハハッ。ハァッハッハッハッハッ! 参ったなぁ。完全に一杯食わされたぞ、一誠! お前は正に」

 

 そして、二人は図らずも全く同じタイミングで全く同じ意味合いの言葉を発言していました。

 

「「神の頭脳と悪魔の智謀を持つ(男だ!)(お方です)」」」

 

 ……この対戦の後、二人が言い放ったこの言葉がイッセー先輩の数ある呼び名の一つになりました。即ち、「神の頭脳と悪魔の智謀を持つ男」と。

 

Side end

 

 

 

Interlude

 

 レーティングゲーム観覧席。

 

 一誠が仕掛けた策の全貌が明かされた頃、グレモリー卿は驚きを露わにしていた。

 

「……サーゼクス。よもやここまでとは思わなんだぞ。これで転生してまだ一月程度の下級悪魔だと言われても、初対面の者は質の悪い冗談にしか受け取ってくれないだろう」

 

 父であるグレモリー卿に話しかけられたサーゼクスもまた、一誠が見据えていた物を知った事で驚きを隠せないでいた。

 

「私も驚いていますよ、父上。作戦を説明する時には唯の誘引策としか受け取りませんでしたが、実際にはそれだけに留まらないこの一手。今回の一件におけるリアスの最大の収穫は、間違いなく兵藤君の技術を文字通り体感した事になるでしょう。それにしても、力押しの傾向があったリアスがここまで「滅び」の魔力を活用できるようになるとは思いませんでした。それどころか、私がとうとう覚醒できなかったグレモリーの本来の特性である「探知」に覚醒するとは……」

 

 サーゼクスが今回のレーティングゲームで大きく成長した上に己の為し得なかった偉業まで達成した妹に感嘆している中、グレモリー卿はグレモリー家の今後に対する一つの答えを出した。

 

「これで、グレモリー家の嫡流は完全にリアスの物となったな。何せグレモリーの真なる力に目覚めたのだ。如何に強大な力を持つお前がグレモリーに残っていたとしても、リアスを以て嫡流としていたであろう。戦闘に有効な特性を持たぬグレモリー家に本来求められていたのは、敵を倒す「力」ではなく、味方を支える「智」であったのだからな。だが、サーゼクス。こうなった以上、傍流であるミリキャスはリアスの次の当主候補から外すぞ。……構わぬな?」

 

 例え心底可愛がっている孫であっても当主としては容赦をしない父親の言動に対し、サーゼクスは何ら反感を抱かずに受け入れていた。

 

「えぇ。それでよろしいかと。確かにミリキャスは私を通して現当主である父上の血を引くグレモリー本家の者である上、親の贔屓目を抜いても才能豊かと言えますが、私が母上の血を色濃く継いだ事で実際はバアルとルキフグスの子と言っても過言ではない為、おそらくグレモリー本来の特性である「探知」に目覚めることはないでしょう。これでは、グレモリーの嫡流とは到底言えません。それどころか、現当主が子を為さぬうちに亡き者とならない限りは後を継げない次期当主など、ミリキャスにリアスを殺せと言っている様なものです。リアスとミリキャス、そしてグレモリーの為を思うならば、むしろそうなさるべきでしょう」

 

 自慢の息子が賢明なる判断を下した事に内心安堵したグレモリー卿は、一誠に対して改めて感嘆の意を表す。

 

「しかしそうなると、彼はレーティングゲームにおける作戦上の一手によって、今回の婚約で発覚した政治的な問題点すら解消してしまった訳か。一体、彼は何処まで見据えていたのだ?」

 

 サーゼクスはその父親の問いに答えつつ、今後における一誠の処遇を語っていく。

 

「リアスの言い様では、おそらくこれも見越した上での事でしょう。これで兵藤君がいくつか大きな功績を挙げたら、形式的な段階を踏んだ上で上級悪魔に昇格させねばなりませんな。少なくとも、できるだけ早く中級悪魔に昇格させねば却って危険です。……リアスとソーナには申し訳ないが、今後は一刻も早く兵藤君を独立させる方向で動いていくべきでしょう。今、冥界はとにかく人材が足りないのです。最上級の人材には、早急に上へと上がってもらわねば」

 

 冥界を統べる魔王としてのサーゼクスの意志を聞いたグレモリー卿は、しばらく考え込んだ後にシトリー家にもその話を持ちかける事をサーゼクスに伝えた。

 

「幸い、この対戦にはソーナ殿の眷属でもある彼を目的として、シトリー卿がソーナ殿と共に観戦に来ている。彼の独立を視野に入れるなら、後で声を掛けておかねばならんだろうな」

 

 グレモリー家が一誠の今後に向けて動き始めた頃、フェニックス家の親子はライザーの反応を見て、快い気分で笑みを浮かべていた。

 

「ライザーの反応は、やはり驚愕ではなく歓喜でしたな」

 

「ライザーの奴め、嬉しくて仕方がない様だな。自分を完全に出し抜いたのが、自ら対等と認めた好敵手たる友なのだからな。これでライザーも更なる高みを目指す事だろう」

 

 フェニックス卿が三男の今後の飛躍を期待する中、ルヴァルもまた一誠の今後の飛躍に期待を寄せる。

 

「……父上、私は本当に楽しみですよ。マスターズリーグやチャンピオンズリーグの舞台で、眷属を率いた彼と対戦するのが」

 

 もはや一誠とレーティングゲームの頂点で競い合う事が確定事項になっているルヴァルを見て、フェニックス卿は苦笑いを浮かべていた。

 

「随分と気の早い話だな、ルヴァルよ。まぁ、かの「皇帝(エンペラー)」が見ておったら、やはり同じ事を言っているかもしれんがな。レーティングゲームの最中で主の特性を覚醒させる等、前代未聞も良い所だろう。……本当に将来が楽しみな男だよ、彼は」

 

 密かに末娘の婿と見込んでいる男の今後の活躍を楽しみにしている、フェニックス卿であった。

 

 そして、このレーティングゲームを観戦しているグレモリー家の関係者の中に、筋骨隆々とした一人の若者がいた。

 

「最近噂になってきた十一駒の兵士が戦う所を見に来てみれば、まさかこんなものが見られるとはな。伯母上に無理を言って、グレモリー家の縁者として観戦させて頂いた甲斐があった。……リアス、ソーナ。お前達は素晴らしい男を味方としたな。器量と知略は最上。後は武勇か。さて、十一駒の兵士よ。お前はこの俺に一体何を見せてくれる?」

 

 ……彼の名は、サイラオーグ・バアル。

 現時点において若手最強との誉れ高き俊英ではあるが、一誠の運命が彼と重なるのはまだまだ先の話である。

 

Interlude end

 

 

 

 ライザーが突然僕を名前で呼び出したので、僕は窘めるつもりで言葉を掛けようとした。

 

「ライザー様、今は」

 

 しかし、ライザーはどこ吹く風と気にも留めずに気安く話しかけて来た。

 

「別にいいだろ、そもそも友誼と真剣勝負は別の話だ。それに、わざわざ言葉使いを他人行儀にしなきゃ真面目に戦えない様な軟弱者でもないだろう、お前は?」

 

 もはや十日前に初めて会った時とは別人の様になったライザーに、僕は呆れるしかなかった。そして、友人としての言葉使いで話し始める。

 

「……ハァ。何だか最近、父君のフェニックス卿に似て来たんじゃないのか、ライザー? 優雅な外見と異なって凄く豪快な所は特に」

 

 そんな僕の言葉を、ライザーはニヤリと笑って受け止めた。そして、本陣襲撃の目的を告げていく。

 

「今の俺には褒め言葉だな。……実はリアスが自分の眷属を信じて、王として最後まで心折れずに闘い抜けるか試してみるつもりでここに来たんだが、まぁいい。一番戦いたかったお前と無傷でぶつかったからな。じゃあ始めるか、一誠」

 

 ライザーが戦闘の開始を呼びかけたので、僕はその際に条件を付ける。

 

「確かこのフィールドには高さの制限がなかった筈だから、戦うなら少なくとも1000 m以上は上空に行かないと駄目だ。このフィールド全域を「探知」できる上に「滅び」の魔力を防御に回せる今の我が君なら対処して頂けるとは思うけど、僕達の戦闘の余波で我が君が投了(リザイン)して負けました、なんて笑い話にもならないよ」

 

 そして、僕の提案した条件をライザーは承知した。

 

「お前のその提案だが、俺も乗ったぞ。初体験の初心者を相手にそんな勝ち方したら、プロとして却って大恥だ。それに、その時はレイヴェル以外の俺の眷属諸共になるだろうから尚更だな」

 

 ライザーが承知したので、僕は表向きの仕様である悪魔とドラゴンの十一枚の羽を展開する。

 

「とりあえず一旦外に出て、上空に行くか」

 

 ライザーも炎の翼を展開する。

 

「そうだな」

 

 そして、大穴のあいた壁から二人揃って遥か上空へと飛び立った。

 

 

 

Side:塔城小猫

 

 オカ研の部室の方から、二つの人影が物凄いスピードで遥か上空に向かって飛んでいきます。

 

「やはり、最後はあのお二人の戦いで勝敗を決する事になりましたか。……とは言え、あそこまで上空に行ったという事は、私達もまだ戦えという事なのでしょうね。レイヴェル様、いかがなさいますか? 戦闘には参加せずにこの対戦の一部始終、そしてお二人を見届けるとの事でしたが」

 

 ユーベルーナに意向を尋ねられたレイヴェル・フェニックスは、自らの参戦と指揮の委譲を指示してきました。

 

「……状況が変わりましたわ。今のリアス様を相手取るには、いくら貴女でも流石に荷が重いでしょう。それでは、このまま戦えばこちらが圧倒的に不利。リアス様は私がお相手しますわ。だから、ユーベルーナ」

 

「承知しました。他の皆の指揮は、私が執りましょう」

 

 どうやら、向こうの戦闘方針が決まったようです。一方、部長も私達に警告します。

 

「皆、あのライザーの妹には絶対に手を出さないで。ライザーの眷属の中で一番強いのはあの子よ。相手にできるのは、今の私だけだわ。それとアーシア、いつでも全力で防御結界を張れるようにしておきなさい。皆も私かイッセーの指示があったら、直ぐにアーシアの元に集まるのよ。あの二人の戦いは私達とは完全に別次元、下手したら余波だけで全滅しかねないわ」

 

 私達に指示を出し終えた部長は、そこで何故かレイヴェル・フェニックスに声を掛けました。

 

「それとレイヴェル・フェニックス。一つだけ貴女に言っておく事があるの」

 

「何でしょうか、リアス様?」

 

 彼女もそれを受ける構えです。そして、部長は「滅び」の魔力を立ち上らせながら、ある意味で決定的な言葉を放ちました。

 

「けして、渡さないわ」

 

 一方、レイヴェル・フェニックスもまた炎の翼を展開しながらも、真っ向から応えます。

 

「別にお譲りして頂かなくとも、結構ですわ。私はただ、ついて行くだけですもの」

 

 ……イッセー先輩。本当にこの十日間、一体何をしていたんですか?

 

Side end

 




いかがだったでしょうか?

……まぁ途中で散々ヒントをバラまいていたので、皆様にはバレバレだったとは思いますが。

また、リアスについてですが、原作の彼女には「滅び」の魔力という攻撃役の他にスイッチ姫というおっぱいを使ったイッセー専属サポーターという一面がありました。
しかし、攻撃役はともかく、まさか原作の様なサポート方法を拙作で採用するわけにはいかず、そこで行き着いたのが諜報用のオリジナル特性「探知」でした。
これなら、頭脳面、特に得られた情報からの考察と解析に秀でた一誠の強力なサポーターとなれるでしょう。

なお、リアスが覚醒した「探知」という特性、現在は一定範囲内しか有効に機能しませんが、実は行き着くところまで行けば本当にシャレにならなくなります。
……が、ソロモン72柱の中でこの職能を持つ者が他にもいるので、「グレモリーにできるなら、コイツだってできるだろ!」というツッコミはご容赦の程を。

では、次の話でお会いしましょう。
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