赤き覇を超えて   作:h995

42 / 125
第三章、開始です。

原作キャラが一名、大幅に強化されています。

追記
2018.11.24 修正


第三章 超え往く者達 
第一話 例えば歩みを止めぬ亀の様に


 僕が人間をやめた四月以上に激動だった五月も、既に下旬へと入った。その少し前に、第三者による家崩しの策略を孕んだリアス部長とライザーの結婚繰り上げ騒動は婚約破棄の形で終焉し、ライザーの妹であるレイヴェルが後学の為に駒王学園へ編入、そして僕自身は史上最短期間で中級悪魔に昇格した。

 リアス部長の婚約破棄については、最初は赤龍帝に媚びを売って我儘を通したという評価が悪魔の名家の間で出回っていた。この評価の広まりの速さから考えると、おそらくは家崩しの策略を仕掛けた連中の仕業だろう。しかしフェニックス卿自らが公式の場でこれを否定した。

 

「此度の対戦、我が息子ライザーを打ち破ったのは十一駒の兵士(イレヴン)であり、赤龍帝ではない。その証拠に、彼は赤龍帝の象徴たる神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を一切使ってはいないのだ。また、リアス・グレモリー殿と彼女に率いられた他の眷属達は己の為すべき事を見定め、ライザーと十一駒の兵士の一騎討ちを邪魔させぬ為にライザーの眷属を足止めし、見事十一駒の兵士の勝利を呼び込んでみせた。つまり、リアス・グレモリー殿は赤龍帝に頼ることなく、自らの眷属達と共にライザーとの対戦を制したのだ。よって、賢明なる諸兄達がこの様な見当違いも甚だしい悪意ある風評に惑わされる事のない様にして頂きたい」

 

 フェニックス卿はこの様な発言をした上で対戦の記録映像を公開した事で事態は一気に沈静化した。自身の策略を完膚無きまでに潰された事で、家崩しを謀った者達はさぞ臍を噛んだ事だろう。

 また僕がレーティングゲーム直前にレイヴェルから贈られたお手製の緋色のローブについては、フェニックス卿の言葉通りにグレモリー卿に預けられてから、最終的にリアス部長を通して僕に下賜される形となった。建前としては「今回の対戦において自軍の消耗を最小限に抑えて敵を分断した上に主であるリアス・グレモリーを大きく成長させた鬼謀神算に加え、もはや最上級悪魔に匹敵し得る実力を示したライザー・フェニックスとの激戦を制してみせた事を踏まえて、先の対戦のMVPとして褒賞を授ける」との事であり、リアス部長の推測では「タイミング的に昇格試験の合格通知が来た後にイッセーに届く様に手配しているみたいだから、中級悪魔への昇格祝いも兼ねているのでしょうね」との事だった。しかし実際は、ローブ自体が自身の羽根を織り込むなどしたレイヴェルお手製である上に、一度レイヴェルから直接受け取ったが体面を考えてグレモリー卿を通じて下賜される形を取った事が知られたら、リアス部長は間違いなく荒れるだろう。リアス部長自身「紅と赤と緋でお似合いね」と言って、僕がこのローブを纏った姿をかなり気に入っていた様なので尚更だ。

 そして、中級悪魔の昇格と同時にグレモリー・シトリー両眷属の繋ぎ役と眷属悪魔の統括役となった事で、シトリー眷属として活動する事が以前より多くなってきた。その為、多忙となった僕のスケジュールをより正確に管理する必要が出て来たのだが、それを買って出たのがレイヴェルだった。レイヴェル曰く、「自分はあくまで客分なので契約活動をしなくて済む分、スケジュール管理に全力を注げる」との事だった。尤も、僕のスケジュールを管理するという事で僕のマネージャーというべき立場となり、少しでも長く僕と一緒にいられる様にするのが狙いだというのは、僕から見ても明らかだったのだが。実際、レイヴェルからこの話を提案された時にそれを察したであろうソーナ会長とリアス部長は揃って苦虫を噛む様な表情になっている。本当は任せたくなどない事は二人の表情が如実に物語っていたが、二人も眷属の主として多忙の身の上でこれ以上は自分の仕事を増やす事ができない為に僕のマネージャーが必要である事もまた事実だった。結局、二人は渋々レイヴェルの提案を受け入れ、今後の僕のスケジュールはレイヴェルが管理する事になったのだ。これによってレイヴェルは常に僕と一緒に行動する様になり、次第にレイヴェルは僕の彼女であるという見方が学園内で定着しつつある。それに伴い、ソーナ会長、リアス部長、アーシアの三人がソワソワする様になっていった。その一方で、レイヴェルは相変わらず明るい笑顔だ。もしかすると、レイヴェルはそれを狙って、まずは外堀から埋めに来ているのだろうか? もしそうなら、策略家としてのレイヴェルが少し怖い。

 ……話を変えよう。これ以上考えると、怖くてレイヴェルの事をまともに見ることができなくなってしまう。

 レーティングゲーム終了以降、グレモリー眷属とシトリー眷属は日常での訓練のレベルを上げる様になった。グレモリー眷属の皆は、僕とライザーの戦いの余波の影響をモロに受けた事で力の差をはっきりと自覚し、少しでも僕との差を埋めたいと申し出て来た。シトリー眷属についても、どうやらソーナ会長も父親であるシトリー卿と共にリアス部長とライザーの対戦を観戦しており、その時に取った記録映像を他の皆に見せて発奮材料としたらしい。……それにしては、リアス部長とソーナ会長の張り切り具合が尋常ではなかったが。

 ただ、流石に剣の腕前においては僕以上である瑞貴は例外で、自ら課した鍛錬をそのまま継続していた。……尤も、師匠がリヒトである為、鍛錬のレベルは僕が普段行っているのと同等で相当にキツイものがあるのだが。

 そこで、瑞貴を除いた皆が現在取り組んでいる訓練内容について説明しよう。まずは主に一緒に活動している為に、ある程度指導が進んでいるグレモリー眷属から。リアス部長とアーシア、朱乃さんの三人にはライザー達との対戦の終了後、早速ニコラス神父に師事して心霊医術を学んでいる。リアス部長と朱乃さんについては、はやての都合がどうしても付かなかったのとせっかくだから心霊医術に関する知識も得たいという本人達の希望があっての事だ。その際、元シスターの上に悪魔さえも癒してしまう程に偏見を持たないアーシアはともかく、リアス部長と朱乃さんは悪魔であっても真摯に向き合い、丁寧に教えてくれるニコラス神父に驚きを隠せないでいた。もしニコラス神父の様な方が十字教教会の上層部にいれば、アーシアはもっと違った人生を歩めていただろう。

 ……話が逸れた。ニコラス神父の指導は受けていた僕自身が実感した様に非常に解り易いものだったので、アーシアは既に魂や精神に対しても聖母の微笑(トライライト・ヒーリング)の力を届かせられるようになっている。しかも治癒と補助に特化した魔力の為か、解呪や悪霊祓い(エクソシズム)の修得が他の二人よりも早かった。リアス部長と朱乃さんも徐々に心霊医術を修得しつつあり、同時に精神世界面(アストラル・サイド)へ干渉できる魔力の使用方法を模索し始めていた為、この時点ではやて達による非殺傷設定の技術提供を取りやめた。他者に教わるより、自ら組み上げる方がより磨こうとする意志が強くなるからだ。それに加えて、リアス部長はもう少しで過去の時間軸に対する「探知」が可能になりそうな手応えを感じている様だ。

 次に、木場と小猫ちゃんについてはレポート作成の為に僕が時間を割けなかった為に、三人から少し遅れて昇格試験終了の翌日からダイレクト・アタックの技術を教え始めた。しかし、かなり魔術的な要素が強い為、魔術の要素が薄い二人は習得にかなり梃子摺っている。ただ、小猫ちゃんについては生まれの関係上、コツさえ掴めば後は早いだろう。問題は、剣術一筋である為に魔術行使については門外漢に近い木場だ。もしかすると、木場については魂に直接干渉できる魔剣を創造できる様に訓練した方が早いかもしれない。だが、それでは他の攻撃方法が使えなくなる可能性が高い為、やはりダイレクト・アタックは必須だ。

 

 一方、シトリー眷属については、まずグレモリー眷属がライザー達との対戦前の十日間で受けた指導を受けてもらう必要があった為、対戦終了後から早速お三方に指導に入ってもらった。ロシウ老師には、ソーナ会長と僧侶(ビショップ)である憐耶さんと桃さんを指導してもらっている。内容はリアス部長と朱乃さんが受けた指導内容とほぼ同じだったが、他の二人はともかくソーナ会長は既に魔力制御に関しては一日の長がある為に、かなり高度な事まで教えられるとロシウ老師は仰っていた。また、ベルセルク師匠には戦車(ルーク)の翼紗さんと兵士(ポーン)の留流子ちゃんの指導に入ってもらい、まずは体術の基本から鍛え直してもらっている。なおベルセルク師匠曰く、「二人とも成長する前のおチビちゃんよりは体が出来上がっている為、かなり踏み込んで教えられる」との事だった。女王(クィーン)の椿姫さんと騎士(ナイト)の巴柄さんについては、レオンハルト卿に体の扱い方を指導してもらっている。長刀と日本刀と獲物の違いこそあるが、どちらも武器の使用を得手としている為、まずは体幹の正しい扱い方を習得させる必要があったからだ。お三方は十日間という短い制限があったグレモリー眷属の時と違って、時間を掛けてじっくりと教え込んでいる。後でそれを聞いたグレモリー眷属の内、二名程「ズルイわよ!」「依怙贔屓ですわ!」と自身を指導した師に不満を漏らしたが、「そもそも時間があればこの様に指導していた、緊急性が高かったお主達の方が例外だ」と言われて、すっかり肩を落としていた。

 そして、兵士でドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)である黒い龍脈(アブソープション・ライン)の保有者である元士郎については、実は使い魔探しの後から僕が神器の扱い方をいろいろアドバイスしていた。元士郎の持つ黒い龍脈はラインという形状の利点や「ラインを繋いだ相手から力を吸収する」という能力の本質を理解していればかなり応用性が高いので、その辺りを指摘して実際にやってもらった結果、うまく行った事も多かった。特に「ラインを神器本体から切り離してもしばらくは残り続ける上に、任意で再接続が可能」な事や「大地にラインを接続する事で星の力を吸収、その力を活用する事が可能」な事、更に「ライン内の力の流れを自由に操作する事が可能」な事が判明してからは元士郎の戦闘能力が格段に向上し、途中から僕が受けた訓練や自身に課した修行法にも取り組み始め、今やグレモリーとの共有眷属である僕を除けばシトリー眷属内でも瑞貴に次ぐ実力者になろうとしていた。具体的には、開発した能力の相性もあって、今の元士郎は戦略次第ではユーベルーナさんやレイヴェルを相手にしても勝てるだけの実力を秘めている。僕の見立てでは、駒王学園の中でも間違いなく五指に入るだろう。因みに、元士郎はこの件で僕に永遠の友情を誓っていた。流石にそれは大袈裟だと思ったのだが。

 こうしてグレモリー眷属とシトリー眷属の皆は少しずつ、しかし確かに成長していった。

 

 

 

Side:匙元士郎

 

 最初は、凄くいけ好かない奴だった。

 

 会長はコイツの事を凄く気に入っていて、最終学年である自分の後の生徒会会長を任せたいと言っていた程だった。尤も、その話は会長とリアス様によって悪魔に転生した上に、普段はグレモリー眷属として活動する事になった為に流れてしまったんだけどな。そのせいで、会長に惚れていた俺は同じ主を頂く仲間となってもコイツを認められなかった。会長がコイツに思慕している事は傍から見ていて明らかだったからだ。だが時々生徒会の仕事を一緒にこなしてその合間に話している内に、実は評判以上の凄くイイ奴だと分かった。

 

 ……いや、そんなことは半年前の学園祭で知っていた筈だった。

 

 当時一年だった俺達男子全員で合唱した「世界に一つだけの花」。サプライズでやるという事で音楽教諭から初めて聞かされた時に素直に良い歌だと思ったあの歌は、半身不随から回復して辛いリハビリに負けそうになっていた義妹のはやてちゃんや悪魔になるまでよく手伝いに行っていた孤児院の子供達にコイツが良く歌ってやっていた歌なのだから。そして、一人の女の子を助ける為にたった一人で二百人の暴走族相手に立ち向かって壊滅させた伝説も持っているコイツは、駒王学園が誇る生きた伝説にして偉大なる皇帝、駒王帝の名に相応しい男だった。

 それでも俺はコイツを中々認められずにいたんだが、使い魔を探しに行った時に色々あり、その上で恋敵である事と仲間である事は別だと割り切ってからは名前で呼び合う様になった。そうなると、いろんな奴から相談を受けて解決しているコイツは凄まじく頼りになる。だからつい、俺の夢である「会長の作った、誰もが学べるレーティングゲームの学校で兵士の先生になる」事と、「会長とデキちゃった婚する」事を話した。

 ……コイツの表情が一変したのは、その時だった。穏やかな表情が冷え切った無表情に変わってから出て来た言葉は、「元士郎、お前はソーナ会長をバカにしているのか?」だった。俺はこの言葉を聞いて頭に血が上ったんだが、コイツの眼を見て一瞬で血の気が引いた。その眼が、明らかに怒っていたからだ。そして続く言葉に、俺は今度こそ恥じ入ってしまった。

 

「結婚を望むくらいにソーナ会長を好きになったのはいいんだ。だけど、その言い方ではただソーナ会長の体だけを求めている様にしか聞こえない。どうせなら「会長と添い遂げて、一生護り抜いて生きていく」。男なら、それぐらい言ってみせろ。元士郎」

 

 コイツはそう言って、口を閉ざした。

 

 ……俺は、会長とは釣り合っていない。

 

 そう心の何処かで思っていた。だからデキちゃった婚なんて言葉が夢として出て来て、自分の弱さから目を背けていたんだろう。だが、コイツは俺の本心を見抜いた上で問い質したのだ。本気で会長を、いやソーナ・シトリーという一人の女性を男として愛していく覚悟があるのかと。

 

 ……嬉しかった。

 

 コイツは、俺の会長への思いをバカにすること無く真摯に受け止めてくれて、その上で間違った方向に向かいかけていたのを正してくれたのだから。だから、俺はコイツの前で宣言した。「会長は、いやソーナ・シトリー様は、俺が必ず護り抜いて幸せにする」と。

 その言葉を聞いたコイツは表情を穏やかな物に戻して、俺の神器である黒い龍脈の能力開発という形で協力を申し出てくれた。俺はそれを素直に受け入れて、一誠の協力の元で自分の可能性を少しずつ開拓していき、気が付いたらわずか一月足らずの間で劇的なまでに強くなっていた。俺は一誠に対して心から感謝し、そして永遠の友情を誓っていた。

 ……今にして思う。今や無二の親友となった兵藤一誠という男とちゃんと向き合う事がなかったら、俺は一体どういう男になっていたんだろうかと。おそらくは勘違いしたまま、己の非力さを嘆くだけのバカ野郎になっていたんだろう。

 ……「もし」の話をしても仕方がないな。それに、俺には今、三つの夢がある。「会長と添い遂げ、一生護り抜いて幸せにする」。「会長の作った誰もが学べるレーティングゲームの学校で兵士の先生になる」。そして、「一誠の親友として相応しい男になる」。

 尤も、思いを伝えていないだけで、実は敬愛する主が誇れる親友に想いを寄せていることに気付いた時点で、最初の夢は「会長の幸せを、生涯を通して必ず護り抜く」というものへと変わりつつあるのだが。その意味では、ふとした事で口ずさんでいたのを聞いて気に入ったので、フルで聞かせてもらった「君にできるなにか」の歌詞通りだった。俺は本当の夢と新しい夢を追いかけ始めて、本当に全てが変わり始めた。

 ……だからこそ、解る。世界は今、兵藤一誠という男を知り始めている。そして、いずれ一誠は必ず「大物」になる。何故なら、アイツは俺の知る限りで最も偉大な男で、正真正銘の「本物」だからだ。だから、眷属としての顔合わせの時に一誠が赤龍帝だと聞いてその意味を理解した時、俺は納得した。むしろ赤龍帝の事を調べていくにつれて、一誠以上に相応しい奴が他にいるのかと思ったぐらいだ。

 ……それに、俺は一誠が修行している所を一度だけ見た事がある。グレモリー眷属やシトリー眷属を指導する、歴代でも最高位とされる赤龍帝を数人まとめて相手にして、一秒でも長く戦い続けるという自殺行為にすら取れる修行をだ。唯でさえ一人一人があのライザー様を凌駕する程の強者なのに、そんな存在が抜群の連携で襲って来る。正に絶望そのものだった。因みに、俺が見た時にはレオンハルトさんにロシウさん、ベルセルクさん、そして未だ俺達の前には現れていない、銀髪紅眼で道士服を纏った四十代の男性だった。

 

 ……この人達を相手だと、たぶん瑞貴先輩を除いた総掛りでも三秒持てば奇跡じゃないだろうか?

 

 しかし、そんな絶望以外の何物でもない状況下で一誠は四時間も戦い続けた。強烈な攻撃や魔法、おそらくは仙術らしきものを食らって何度倒れてもその度に立ち上がり、血反吐を吐いても心はけして折れる事がなかった。その血と泥に塗れたボロボロの姿とそれに反して強い輝きを放ち続ける眼に、俺は兵藤一誠という男の本質を知った。

 一誠は、けして天才じゃない。ただ諦める事をしなかった、尋常ならざる努力家なのだと。

 だったら、そんな一誠が親友と認めてくれた俺がこの程度で終わっていい筈がない。神器を含めた俺自身の力を鍛え、技量を磨き、そしてそれを最大限に生かせる知識と知恵を身に付ける。そして、歴代の赤龍帝の方々に進んで教えを請い、徹底的に鍛えてもらう。

 俺は必ず一誠の隣に並び立ち、その背中を守れる男になる。俺は自分自身にそう誓った。……だからだろう。後に俺が神器に因んで、「黒龍王」という二つ名を得られたのは。

 

Side end

 

 

 

 合格通知が届いた週の日曜日。

 使い魔に旧校舎を大掃除させる為に休みにするという事で、オカ研の皆が僕の家に遊びに来た。家に来る事は予め言ってあったので、両親とはやては皆を歓迎してくれた。ただ、隣で顔見知りだったレイヴェルを除くオカ研の皆に対して、銀は明らかに警戒していた。僕が悪魔に転生した時も、レイヴェルが引越しの挨拶の為に家に訪れた時もそうだった。おそらく皆の正体を本能で見破っているのだろう。だが、僕が声を掛けてお客である事を伝えると、直ぐに警戒を解いてくれた。……銀は、本当に賢かった。

 家に入ってからは、まずはコーヒーやお茶受けを出して歓迎し、その後は母さんがアルバムを取り出して僕の思い出話をする様になった。その際、ずっと僕の隣にいたレイヴェルについては半ば息子と付き合っている彼女の様に話しかけていた。

 

「ねぇレイヴェルちゃん。一誠とはどんな風に出会ったの? この子、母親の私から見ても顔や性格はけして悪くないのに、浮いた話がなかなか出て来なくて心配だったのよ。でもね、まだ幼馴染のイリナちゃんという最強の敵がいるから、大変なのはむしろこれからよ?」

 

 そんな母さんの問い掛けに、レイヴェルは最初こそ顔を赤く染めて恥ずかしげに、けれども嬉しそうに反応していたが、イリナの名前を聞いた途端にその表情をキッと引き締めていた。……まるで、まだ見ぬ強敵に宣戦布告をするかの様に。すると、それに割って入る様にリアス部長がアルバムを持ち出して、その時の話をせがんで来た。その先をレイヴェルに話させたくないというリアス部長の意図は、傍から見ていても明らかだ。そして強硬手段をとるリアス部長を見て、どうしようかとオロオロしているアーシアの愛らしい姿に凄くホッコリした。

 

「あの気真面目な一誠にも、ようやく春が来たか。それに何より、大本命のイリナちゃんもいるしな。モテるな、一誠?」

 

 それらを見て父さんがニヤニヤしながらからかって来たので、足の小指を狙って踏み付ける事で制裁を加えてやった。

 

「うおぉぉぉ……。母さん、はやて。一誠の、息子の愛が痛いよ……」

 

 激痛に悶絶している父さんにはやてが遠慮なく追撃を加える。

 

「お父ちゃん、それは自業自得や」

 

 はやてにダメ出し食らって凹んでいる父さんを横目に、僕は皆と一緒にこの賑やかな一時を楽しんでいた。……何故かこっちを見て、驚いた様な表情を浮かべる小猫ちゃんとニコニコと生温かい視線を送る朱乃さんの姿がかなり印象的だったが。

 

 

 

Interlude

 

 因みに、この時の二人の反応は以下の通りである。

 

「……意外です。イッセー先輩もあんな子供っぽい事をするんですね」

 

「あらあら。イッセー君は基本的には成熟した男性の様な落ち着いた雰囲気を持っていますけど、凄く可愛らしい一面も持っているのね。ウフフ」

 

 後にこの話を聞いた年下好みの某生徒会役員は、その場に居合わせなかった事を凄く悔しがったという。

 

「一誠君、何でそんなに私のツボばかりを突いて来るのよ! それ、すっごく可愛いじゃない! 何でその時に一誠君の家にいなかったのよ、私!」

 

Interlude end

 

 

 

 そうした和やかな雰囲気の中、僕の幼稚園時代のアルバムを見ていた木場の表情が突然険しくなった。

 

「どうしたんだ、木場?」

 

 僕が様子を窺おうと覗き込んだ時、木場が見たであろう写真が僕の目に留まった。

 

 ……その時、一瞬だけ胸が痛んだ。

 

「あぁ、お父さんが牧師さんだった幼馴染の子と一緒に撮った写真か。……木場、イリナとは知り合いなのか?」

 

 僕がそう尋ねると、木場は首を横に振って否定した。

 

「いや、この写真の子とは面識はないよ。その言い方だと、この子は女の子なのかな? とてもそんな風には見えないけど、それはまぁ脇に置いておこうか。ただ、この剣が何なのか知っているのかい?」

 

 木場は言葉こそ普段通りだったが、偽りはけして許さないと言わんばかりの雰囲気を纏っていた。だから、僕は今まで色々あって実現していない「あの件」を絡めて説明する事にした。

 

「ゴメン、木場。それについては、今ここで話せる事じゃないんだ。できれば、色々あって実現していない瑞貴との件と合わせて説明したいんだけど」

 

 すると、木場は納得した様な表情を見せて、静かに語り始めた。

 

「解った。だったら、今は退く事にするよ。ただ、瑞貴さんと再会して、他にも僕の同士が生き残っていると知ってから大分治まっていたけど、やっぱり忘れられそうもないよ。……この思いはね」

 

 そして写真を見つめながらぽつりと零した木場の言葉には、はっきりと憎悪の念が込められていた。

 

「僕は、聖剣を絶対に許さない」

 




いかがだったでしょうか?

一誠にソーナとの「デキちゃった婚」を夢にしている事を正論を以て叱られた事で、元士郎は見事一皮剥けました。彼には今後、シトリー眷属において一誠が背中を預けられる漢としての役どころを任せる予定です。

なお、第三章執筆の進捗状況ですが、今のところやっと例の二人を登場させる一話前と言った所まで書き進めていますので、このままなら三日から五日に一話程度のペースで投稿できるかと思われます。
ただし、魔剣創造の独自設定を含めて「Where is the original?」と言わんばかりの内容となっていますので、完全に評価が分かれそうです。

では、次の話でお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。