赤き覇を超えて   作:h995

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本文中に流血等の描写がありますので、苦手な方はご注意下さい。

追記
2018.11.28 修正


第六話 訪れる嵐

Side:木場祐斗

 

 瑞貴さんの呼びかけとイッセー君の立ち合いの下で薫君やカノンちゃんと面会し、色々とお互いの話をしていく中で逸脱者(デヴィエーター)というイッセー君の本当の姿を知ることとなり、世界で孤立しかねないイッセー君の力になる事を改めて誓ってから、一週間が経った。

 僕は歴代最高位の赤龍帝である「剣帝(ソード・マスター)」レオンハルトさんに僕の決意を聞いてもらった上で、「いつか騎士と剣の頂きで相見える」という約束を反故にしてでも「騎士」としての弟子にして頂きたいと願い出た。

 

「祐斗。君の決意、そしてそれに伴う覚悟は確かに受け取った。君が一誠様と共にあらんと心より願うのであれば、君を「騎士」としての私の後継者とした上で一誠様と同様に私の持つ「騎士」としての全てをその体と魂に叩き込もう。だが、それ故に今度は以前の様な血反吐を吐く程度では到底済まない。文字通り、命を含めた己の全てを懸けてもらうぞ」

 

 レオンハルトさん、いや師匠(マスター)は僕の願いを受け入れて後でこう宣言した次の瞬間、手に持っていた剣の切っ先を僕の鼻先から1 cmにも満たない所で突き付けていた。……見えなかった。いや、それどころか「気が付いたら、剣の切っ先が目の前にあった」と言うべきだろう。当然、反応なんてできる訳がない。これが戦場で師匠が敵だったら、僕は斬られた事すら気づく事無く死んでいた。初めて師匠達とお会いした時、離れて立っていた筈のベルセルクさんに、気が付いたら目の前に立たれて囁かれていた小猫ちゃんの気持ちが良く解った。

 

「成る程。まずは、そこから始めなければならないか」

 

 師匠は剣を鞘に収めてながらそう言うと、剣の捉え方についての講義を始めた。

 

「祐斗。剣とは、何も目で見るだけのものではない。体と心、そして魂という己の全てを以て感じ取るものだ。……私が繰り出した、今の一撃。速さは今の君でも十分反応できる程度に抑えていた。それにも関わらず、君は「起こり」を捉え切れずに全く反応できなかった。つまり、君はまだ剣を捉えるのに目しか用いていないという事になる。それでは、君は自分の持つ力を十分に発揮しているとは言えない。だから、まずは目以外で剣を捉える事を覚えてもらう」

 

 ……目以外で剣を捉える。言葉で言うのは簡単だけど、それを修得するまでに僕は何度も死の淵に臨む事になった。

 まずは目を閉ざす事で耳を鍛え、音で捉えられる様になると今度は耳も塞がれ、全身で風の流れで感じ取れる様になると更に触覚すらも封じられ、殺気を始めとする意志の流れを読み取る事で太刀筋を見極められる様になるとロシウ老師の協力で自動誘導式の為に意志の宿らない魔力弾をぶつけられ、それを防ぐ為に力の流れを感じ取って切り裂くといった訓練をさせられ続けた。

 この「厳しい」とか「過酷」といった言葉すら陳腐に思えてくる様な拷問染みた特訓の最中、僕は何度も心が折れかけた。だけど、その度に脳裏に浮かんだのは、逸脱者の証である天使と悪魔、そしてドラゴンの翼を広げて前を見据えているイッセー君の背中だった。

 ……あの背中を、けして一人きりにはさせない。そして、その余りに特異的な存在であるが故に世界で孤立しかねないイッセー君の隣に立ち、その背中を守る。その為には、この程度の地獄など幾らでも乗り越えないと絶対に無理だった。

 傷つき倒れてはまた立ち上がり、心が折れかけては踏み止まりを何度も繰り返し、僕は三カ月かけてこの地獄の様な特訓を終了させた。ただし、この三カ月とは意識だけを超加速させる結界をロシウ老師と道士(タオシー)の赤龍帝である計都(けいと)さんに展開して頂き、その中で師匠を含めて四人で過ごした体感時間の事で、現実時間ではほぼ一瞬だった。

 その後、イッセー君や師匠はもちろん、はやてちゃんの守護騎士で師匠に匹敵する腕前のリヒト・ツァイトローゼさん、その直弟子である瑞貴さん、更には十分に達人と言える剣士の赤龍帝達と真剣勝負で剣を交え続けた。

 また、和剣鍛造(ソード・フォージ)については、主にイッセー君のアドバイスを基にしてその可能性を開拓していった結果、様々な新能力の魔剣や聖剣を創造したし、切り札である聖魔剣を創造する熟練度も向上した。そして、最終目標である「剣の王」については、これまたイッセー君の知恵を借りる事で大体のイメージを構築し終えている。後はその「核」となる何かを決めれば創造に取りかかれるけど、その「核」にしっくりくる物が中々思い付けないでいた。だからと言って、焦って作った結果として「剣の王」とは名ばかりの駄剣となってしまっては意味がない。こればかりは、じっくりと腰を据えて取り組んでいくべきだろう。

 

 そうした事を積み重ねていった結果、僕はこの一週間で格段に強くなっていった。今なら、僕一人でライザー氏の女王(クィーン)であるユーベルーナさんはおろか、レイヴェル様に勝つこともそう難しい事ではないだろう。剣の腕前はイッセー君以上である瑞貴さんともある程度は渡り合えていたり、師匠やリヒトさんの太刀筋もかろうじて残渣の様なものを捉えられるようになった点も踏まえると、それだけの強さは得たつもりだ。

 ただ、修練にいつもついて来るイッセー君の愛犬である銀とも何度か戦ったけど、神器(セイクリッド・ギア)をフル活用してもかなり苦戦した。何せ、炎や氷といった超常現象を目にしても全く怯む事がなく、騎士(ナイト)である僕すら凌駕する程の俊敏性を持っているのだ。それどころか、初めて戦った際には切り札である聖魔剣を一撃で噛み砕かれてしまい、完全に呆然となった隙を突かれて負けてしまったくらいだ。お陰で、次からは最初から本体の魔鞘で強化した上で、防御についても剣で受ける事はせずに必ず躱す様にしている。そのお陰で見切りに関する技量が向上したのだから、人生何が功を奏するかわからないものだ。

 なおイッセー君曰く、銀の銀色の毛並みと共に特徴的な虎毛は熊用の狩猟犬、通称熊犬として最良とされるものであり、それ故に生まれつき高い戦闘能力を持っているのだろうとの事だけど、絶対にそれだけじゃないと思う。きっと飼い主であるイッセー君の尋常ならざる修練をいつも見ていた事で、イッセー君について行きたくて必死に強くなっていったんだろう。……神話とは一切関わりのない普通の犬でありながら、今や上位の上級悪魔すら打倒しかねない辺り、本当に似た者主従だった。

 

 こうして、僕にとっては激動の一カ月だった五月も終わり、六月に入ってからしばらくすると、僕は僕の「因縁」と向き合うことになった。しかも、余りにも意外な形で。……尤も、イッセー君のお陰で復讐心とか後悔とか色々と乗り越えた後だったし、瑞貴さんが以前言った通り、もはやそんな些細な事に拘っていられる状況ではなくなったから、本当に今更だったんだけどね?

 

Side end

 

 

 

Overview

 

 木場祐斗が復讐と後悔の念を超え、更に剣帝に師事する事でその身に秘めた才能を開花させ始めてから、四日後の夜。

 激しく降りしきる雨の中、人気のない公園で何者かが仄かな光を放つ剣によってその体を切り裂かれた。切り裂かれた被害者は傷口から大量の鮮血を吹き出し、断絶魔を上げながら地面へと倒れていく。……そして、そのまま動かなくなった。

 一方、仄かな光を放つ剣で人を一人切り裂いた加害者である白髪の少年は、その一部始終を見届けるとさぞ楽しそうな表情を浮かべて悦に浸っている。

 その場面を、学生服を着た一人の少年が公園の入口で立ち止まって白髪の少年の方を見てしまった。その小柄な体形から、おそらくは中学生だろう。

 

(目撃者は、()さなきゃいけないなぁ)

 

 そう考えた白髪の少年は、次の瞬間には通りがかりの少年へと切り掛かっていた……。

 

 

 

 兵藤一誠の家の近くにある教会が運営している孤児院において、大きな声で帰宅の挨拶をする小柄な中学生の少年がいた。

 

「ただいま!」

 

 その声に応じて、少年の義父で教会の主でもある神父が少年を出迎える。

 

「お帰りなさい、薫君。いつもよりかなり遅い帰宅でしたが、少し息が乱れていますね。何か、ありましたか?」

 

 出迎えてきた義父の質問に対して、少年 -武藤薫- は呼吸を整える間もなく答えを返した。

 

「義父さん! 大変だ! この街に今、とんでもない物が持ち込まれているよ!」

 

 義息子が焦りを隠せずに話す内容に要領を得ない神父 -武藤礼司- は、どういう事なのか説明を求めた。

 

「……どういう事でしょうか?」

 

 すると、薫の口から驚くべき事が物証込みで説明された。

 

「エクスカリバーだよ! 今、この駒王町にエクスカリバーの複製品が持ち込まれているんだ! その証拠に、ほら! これ、あの施設で実物を持たされた事があったけど、天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)に間違いないよ! 帰宅途中で公園を通りがかった時に「はぐれ」の悪魔祓い(エクソシスト)がオレの知らない神父さんをこれで斬り殺した上に偶々それを目撃したオレを口封じの為に襲ってきたから、返り討ちにして分捕ったんだ! ただあの「はぐれ」、これ以外の複製品も盗み出してるみたいなこと言っていたから、教会の連中は今頃躍起になって複製品を探している筈だよ! どうしよう、このままだと複製品を取り返しに来る連中にイチ(にぃ)の事を知られちゃうよ!」

 

 薫の話す内容を聞いた礼司は、この駒王町に深刻な事態が起こっている事を理解して、更なる情報を薫に求めた。

 

「……その話、もっと詳しく聞かせて下さい」

 

 その義父の真剣な表情と声色に応えて、薫は乱れていた呼吸を整えてから、襲われて返り討ちにした時の詳細な状況を説明し始めた。

 

「ウン、解った。それで、この天閃の聖剣を手に入れた時の話なんだけど……」

 

 ……駒王町に、嵐が訪れた。

 

 

 

 薫が襲撃されてから三日後の放課後、私立駒王学園の正門では意外な人物が待ち合わせをしていた。その人物は丸眼鏡を掛けて神父服を纏った不惑前後の年齢と思われる男性で、穏やかな雰囲気を纏っている事も相まって、誰かがイメージした「優しい神父さん」がそのまま現実に現れてきた様な感すらある。

 その余りに珍しい光景から下校途中の生徒からは注目を集めていたが、やがてある人物が訪れた事で大きな変化を生じた。

 

「義父さん!」

 

 神父に対してそう呼びかけたのは、駒王学園の二大王子と評される銀に近いアッシュブロンドの美少年、武藤瑞貴であった。そして、武藤瑞貴が義父(ちち)と呼ぶ存在は、この世にたった一人。

 

「久しぶりですね、瑞貴君。元気そうでなによりです。折角の放課後に、この様な形でお呼び出しして申し訳ありません。ですが、話は少々深刻でして。できれば、貴方の知り合いに話を通して頂きたいのですが」

 

 ……駒王町にある教会の主にして孤児院の経営者、武藤礼司その人である。

 

「それは構いませんが、よろしいのですか?」

 

 瑞貴は義父に対して、折角今までその身分を隠してきたのにここで明かして大丈夫なのかを確認した。しかし、礼司の意志はとても強かった。

 

「えぇ。それは重々承知の上です。ですが、ただ己が身の可愛さ余りに、孤児院の子供達を危険に晒す訳にはいきません。それだけの事が、今この駒王町で起こっているのですよ」

 

 ……自身の知る限り、匹敵し得るのは友である一誠の他には教会が誇る二大巨頭、そして師である夜天光の騎士と歴代最高位の赤龍帝と数える程しかいないという強者である義父がここまで言っている以上、相当の事態が起こっている。

 

 そう判断した瑞貴は、早速携帯端末を用いて一誠に連絡した。現在、シトリー眷属内では(キング)である支取蒼那ことソーナ・シトリーに次いで指揮権を持っているのが眷属悪魔の総括役を担っている一誠である。その為、瑞貴はまず直接の上司に当たる一誠に連絡を入れたのだ。

 瑞貴からの連絡を生徒会での作業中に受けた一誠は、その場にいたソーナに連絡内容を報告して指示を仰いだ。一方、一誠からの報告を受けたソーナはそれならまずは自分が話を聞く事にし、一誠を伴って校門へと向かう事にした。校門に向かった二人はそこで礼司と軽く挨拶を交わし、とりあえずは場所を変えようと礼司と帰宅途中だった瑞貴を生徒会室へと案内する。

 生徒会室では生徒会役員であるシトリー眷属達が揃っており、そこで改めて礼司の紹介を行った。如何にも「優しい神父さん」といった風貌の礼司を見て、一誠と瑞貴、そしてソーナ以外のシトリー眷属の面々は少々呆気に取られている。

 

 ……これが一誠を除いたフルメンバーで挑んでも一分持たなかった「水氷の聖剣使い」の義父なのか、と。

 

 その屈強なイメージから遠くかけ離れている礼司に、少なからず戸惑っていたのだ。尤も、屈強なイメージから遠くかけ離れているのは、外見上は華奢な美少年である瑞貴もまた同様なのだが。

 そして、双方の自己紹介も終わったところで、礼司は本題に入った。

 

「さて、本日こうして正教会に所属する神父である私がここを訪れたのには、当然ながら理由(わけ)があります。それは、現在この駒王市で発生している重大な事態を皆さんにお知らせする為です。神父である私の言う事を信じられないかもしれませんが、まずは私の話をお聞き下さい」

 

 ここで一端言葉を切った礼司は一誠を含むシトリー眷属の面々の顔を見渡した。礼司と繋がりが深い一誠と瑞貴は最初から、そしてここ最近の成長が著しい元士郎は礼司の声色から偽りなしと判断して真剣に話を聞こうとしていたが、他の面々は戸惑いを隠し切れずにいた。何せ、本来なら敵対関係にある筈の悪魔に対して、神父である礼司が礼節を尽くしているのだ。正直なところ、戸惑わない方がむしろおかしいのだ。このままでは不味いと判断したソーナは、主である自分が進んで話を聞くという姿勢を見せる事で一誠達以外の眷属の動揺を収める事にした。

 

「……解りました。とりあえずはお話しを伺う事にしましょう。それでよろしいですか、武藤神父?」

 

 このソーナの言葉によって一誠達以外の眷属の動揺が治まったのを確認した礼司は、ソーナの眷属の主としての器の確かさに感嘆しつつも了解の意を伝えた。

 

「えぇ。今なら、しっかりと話を聞いてもらえそうですから。では、お話しを始めましょう。心してお聞きください」

 

 そして、礼司は三日前の夜に遡って、話を始めた……。

 

Overview end

 

 

 

 礼司さんが瑞貴を通じて面会を求めてまで、シトリー眷属に伝えてきた事。それは、エクスカリバーの複製品が複数、この駒王町に持ち込まれているという事だった。

 礼司さんはまず、三日前の夜に薫君の帰りが遅かった事から話し始めた。

 

「今から三日前の夜の事です。私の義息子(むすこ)の一人で瑞貴君の義弟(おとうと)でもある薫君が、普段より明らかに帰りが遅かったのです。私はもう少し遅かったら探しに行くつもりだったのですが、その前に薫君が帰ってきました。しかし、息を切らしていて明らかに急いで帰ってきたと思われる薫君の様子を不審に思い、何があったのかを尋ねてみたのです。そこで返ってきた答えが、この街にエクスカリバーが持ち込まれているという事でした。本当なら到底信じられない事なのですが、私はそれを信じざるを得ませんでした」 

 

 礼司さんがここまで話した時点で、ソーナ会長が礼司さんに確認を取った。

 

「どういう事でしょうか?」

 

 この確認の問い掛けに対して、礼司さんは複雑な表情で答えてくれた。

 

「あろうことか、薫君はその場で実物を見せてくれたのですよ。七本のエクスカリバーの一つ、天閃の聖剣を。しかも、その時薫君を襲ってきた者の人相を確認したところ、どうやらフリード・セルゼンという指名手配中の「はぐれ」の悪魔祓いの様でして、公園にて悪魔祓いと思われる神父を一名殺害したとの事です。そこを偶々通りがかった事でその場面を目撃した薫君を口封じの為に襲ったそうですが、薫君は彼を危険だと判断して返り討ちにした上、これ以上の被害者が出る前にという事で彼の持っていた天閃の聖剣を取り上げたとの事でした。また、フリード・セルゼンの言い様では、天閃の聖剣以外のエクスカリバーも何本か持ち込んでいる様ですね。……十中八九、各教派の本部から盗み出された物でしょう。薫君もその可能性に気づいて、相当に慌てていましたよ」

 

 ……確かに、これは礼司さんが複雑な表情になる訳だ。おそらく、薫君はエクスカリバーの複製品による凶行がこれ以上行われるのを防ぐ為に取り上げたのだろうが、十字教の各教派の本部という警備が厳重である筈の場所からエクスカリバーを盗み出すという難事を為し得るだけの実力者がフリード・セルゼンのバックに付いているという可能性までは考えついていなかった。そして、その行動が孤児院の子供達を命の危険に晒すという事も。

 礼司さんにしてみれば、ある程度は周りを見た上で冷静に物事を判断できる様になった薫君の成長が嬉しい半面、それによって自分が目を付けられ、ひいては孤児院の他の子供達の身を危険に晒す事になる可能性には考えが及ばなかった点については叱りたいところなのだろう。

 ここまで礼司さんが話したところで、ソーナ会長が疑問に思った事を言葉として出してきた。

 

「一つ、お聞きしたい事が。正教会本部には問い合わせたのですか?」

 

 これは、礼司さんの事情を知らない故の疑問だろう。礼司さんもそれを理解したのか、少々恥ずかしげな表情で自らの実情を説明し始めた。

 

「実は、私は以前にそれしか方法がなかったとはいえ、悪霊に取り付かれた信徒の方をお救いする為に異教の儀式を執り行った事がありまして、その結果として破門一歩手前の重い処分を受けているのですよ。悪魔の領地であるこの駒王町に宣教師として赴任しているのも、その為です。……まぁ瑞貴君達を通じて数年来の付き合いがあった一誠君がこの街に住んでいたのは知っていたので、こうして言葉にしている程に酷い状況ではありませんでしたけどね」

 

 この礼司さんの暴露話に、僕と瑞貴以外の面々は呆気に取られてしまっていた。

 

 ……神父を勤める以上は相当に深い信仰心を持っている筈なのに、人を救う為に禁忌である異教の儀式に手を出した。しかも、礼司さんが超一流の悪魔祓いである事を知れば、その驚きは更に増すことだろう。尤も、礼司さんが誰かを救う為なら躊躇いなく己の全てを投げ出せる人である事は僕も重々承知しており、この話を聞いた時には、むしろ礼司さんらしいなと思ってしまったのだが。

 そうして少し時間が経って、明らかに話が逸れてしまった事を感じた礼司さんは一言断ってから話を元に戻した。

 

「話が少々逸れてしまいましたか。まぁ、要するに破門同然の状況である私が正教会本部に問い合わせをしても、門前払いを食らうのがオチなのですよ。実際、一度この件について来訪の連絡が来ていなかった神父が一名殺害された事も含めて問い合わせようとしたのですが、本部の受付は相手が私だと解った時点で即座に対応を打ち切るなど、私の話を全く聞こうとしませんでした。取りあえず、薫君が襲われたその夜の内に速報の形で報告書を提出しましたが、これとて上層部の目に留まっているかどうか。なので、現状ではエクスカリバーを盗み出した敵が誰なのか、手元にある情報とこれから情報を収集する事で推測していくしかないのです」

 

 実は教会内で孤立している自分の事情を語った後、礼司さんは自身の推測を語っていく。

 

「ただ、これだけは言えるでしょう。このままでは、この駒王町を舞台としたエクスカリバー争奪戦が大々的に繰り広げられる事になると」

 

 ……確かに、このままだと礼司さんの言う通りになるだろう。虎の子のエクスカリバーを少なくとも二本も盗み出されるなど、十字教教会としては正に組織の存続に関わる大失態だ。その上位者である天使達もまた、この事態をまず放ってはおかないだろう。そうなると、エクスカリバーの奪還を使命とする名うての悪魔祓いが、間違いなくこの駒王町に派遣される事になる。しかし、駒王町は魔王を務めるサーゼクス様の妹君であるリアス部長が管理する悪魔の領地だ。しかも、領地の中心といえる駒王学園では、同じく魔王の妹であるソーナ会長がリアス部長と共に勉学に励んでいる。その様な所に聖剣奪還の任を受けた悪魔祓いが動き回るとなると、天界と冥界は一気に緊張状態に陥るだろう。……もし、そんな状況下でこちらと悪魔祓いが本格的に衝突する様な事になれば。

 そこまで考えた時点で、礼司さんがソーナ会長に対してリアス部長への仲介を依頼し始めた。

 

「そこで、まずは一誠君や瑞貴君の主である支取蒼那さん、いえあえてこう申し上げましょうか。四大魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹君であるソーナ・シトリー殿に、この街の管理者で朋友でもあるリアス・グレモリー殿への仲介をお願いしたいのです。破門寸前とはいえ、一応は十字教教会の末席に名を連ねている私がこの街で悪魔祓いとして活動するには、管理者である彼女の許可が必要となりますからね。その際、今回の私の活動が悪魔に害を為すものではない事の証の為に、私に対する監視者を付ける様に併せて申し出るつもりです」

 

 仲介の依頼の後に自らに対する監視者を付ける様に申し出た礼司さんに対して、今度はこの場にいる全員が息を飲んだ。礼司さんは本気だ。本気で、十字教教会が本格的に動き出す前に、そして孤児院の子供達に危害が及ぶ前に事態を収拾するつもりだ。その為に、今後は悪魔に目を付けられる事を承知の上で、今まで隠し続けてきた全力を出そうとしている。

 

 ……結局の所、この人は何処まで行っても「優しい神父さん」だった。

 

 礼司さんの決意と覚悟を本物と判断したソーナ会長がリアス部長への仲介を承諾したのは、それから間もなくのことだった。

 




いかがだったでしょうか?

原作と異なり、駒王町在住で主人公との関わりの深い教会関係者がいる以上、こうなってもおかしくはないと思うのですが。

では、また次の話でお会いしましょう。
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