赤き覇を超えて   作:h995

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今回のクロスオーバーはもう二十数年も前の作品で、私の中ではレトロの領域に入っています。その為、今や知っている人の方が少ないかもしれません。

追記
2018.11.11 修正


第二話 「想い」の力が呼ぶ奇跡

 ()(どう)(りき)

 

 「魔」を「動かす」力であり、魔法の上位体系でもある根源の力。その為、魔法力つまり魔力はある程度修行を積めば強弱の差はあれど基本的に誰にでも扱えるのに対して、魔動力は生来の素質が無いと扱えないと言われ、それ故に生命としてより根源的な所から発生していると思われる。

 そういった理由から、同じ魔法や魔術でも魔力より質や出力が劇的に上がる一方で、神はおろか天使や悪魔、妖怪といった人外の他に猫や狐といった人間よりも霊的に高次元な種族では扱う事ができない。だから、言葉を悪くすれば、「野蛮な種族が扱える原始的な力」とも言い換えられるだろう。

 何故、突然この様な話をしたのかと言うと、答えは単純明快。……僕が、その魔動力に覚醒してしまったからだ。

 

 それは、僕が小学六年生の頃。デジタルワールドで初めて赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発現してから、間もなくの事だった。

 ……夏休みのサマーキャンプからしばらく経ったある日、自分の部屋にいると僕の体が突然強い光に包まれた。僕を包んでいた光が治まると、目の前には五人の人間が立っていた。赤いジャケットと黒のTシャツ、白のジーパンという活発な格好をした少年。肩当てを備えた濃緑の武闘服を纏い、八重歯が見える矮躯ながらも鍛えられた肉体を持つ少年。水色の衣服を纏い、頭にターバンを巻いてスラリとした体形の少年。小柄で兎の付け耳をしていると思われる、ショートカットの可愛らしい幼女。そして、ニンジンのマークのついた三角帽子を被り、黒のローブを纏った、少女と似た顔立ちをした小柄な老婆。

 彼等は僕が目の前に現れた事に驚きを隠せないでいた。それは僕も同じだ。……でも、突然召喚された事ではない。そういう事に対してすっかり耐性ができてしまったからだ。ただ、僕はドライグに「赤龍帝とはこんなトラブルまで呼び寄せてしまうのか」と文句を言いたくて仕方がなかった。それに、召喚された先で前世の記憶を思い出してから幼心に憧れた存在達がいた事については素直に驚いてしまった。

 

 彼等の名前は、先に上げた順番で大地と炎の魔動戦士、遥大地。風の魔動戦士、山本ガス。水の魔動戦士、ラビ(本名マリウス・フォン・ラーマス)。月の先住民族である耳長族の少女、グリグリ。そして、グリグリの祖母にして炎を司る大魔法使い、V-メイ。

 

 そう。僕は「()(どう)(キング)グランゾート」の世界に呼び出されていたのだった。

 

 僕のこの世界での滞在期間は十日間だった。時期的には一度月面に飛ばされた後、ゾーラクラウンを手に入れてラビルーナの第三エリアへと帰還した直後だったみたいだ。そして、そのまま第三エリアでの旅を続けていく中で、僕は急速に魔動力を目覚めさせていった。

 

 その一例を示す話をしよう。

 

 大地君が乗るスーパーグランゾートは、胴体が動物の頭部を模っている敵のロボットである邪動神を相手に少し押されていた。何とか援護できればと思っていた僕は、ふと風が吹いているのを感じ取り、そこで閃いた。僕は早速ガス君にある事をお願いする。

 

「風? ……そうだ! ガス君、()(どう)(きゅう)を貸してくれ!」

 

 僕の突然の頼みに、ガス君は困惑しながらも返事をしてきた。

 

「えっ? 確かに一誠さんならウインザートは応えてくれると思いますけど、まだウインザートは……」

 

 因みにこの時、ウインザートとアクアビートはラビルーナ帰還の際に力を使い果たしてしまい、眠りに入っている最中だった。しかも、未だに復活の目処が立っていない。当然、僕もその事は理解していた。でも、今回はウインザートの召喚が目的ではなく、その事をガス君に説明していく。

 

「解っている。だから、ウインザートと繋がっている魔動弓を媒体にして魔動力を使いたいんだ」

 

 ガス君は未だに僕の言っている事が理解できていないみたいだったけど、魔動弓を僕に差し出してくれた。

 

「……未だに良く解りませんが、解りました。どうぞ」

 

 僕を信用してくれたガス君に感謝しつつ、僕は魔動弓を受け取る。

 

「ありがとう。……感じる。魔動弓を通して、風の精霊が僕に力を貸そうとしてくれているのを。相棒となる魔動王がいない僕が大地君とスーパーグランゾートを援護するには、最大最強の一撃しかない。だったら!」

 

 魔動弓を通じて風の精霊の意志をはっきりと感じ取った僕は、目覚めさせたばかりの魔動力を高め始めた。

 

「風が、一誠さんの所へ集まっていく?」

 

 ガス君は僕の周りの変化に気付いたみたいだ。この辺りは風の魔動戦士の面目躍如と言った所だろう。

 

「……まさか、あの子!」

 

 V-メイもまた、僕のやろうとしている事に気付いたらしく、その表情には驚きの色が見えていた。そして、僕は呪文の詠唱を始める。

 

「ジーク・ルー・フリーズ……。出でよ、シュトルムカイザー!」

 

 呪文の詠唱が終わると同時に右手を天に掲げると、その掌から魔動力が天へと延びていき、そこから細い竜巻が僕の目の前へと降りて来た。竜巻の中には、羽を象った装飾を持った緑色の弓があった。風の神の弓、シュトルムカイザーだ。

 この時、最も驚いたのは間違いなく本来の使用者であるガス君だろう。

 

「シュ、シュトルムカイザーを生身で呼び出したんですか? しかも、私がウインザートで呼び出した時よりも遥かに強い魔動力が感じられます!」

 

 ガス君の驚きの声に対して、僕は説明を始める。

 

「呪文の中に属性を司る部分があるんだけど、そこを地の神獣の名を携えた「ガイ」から風の神獣の名を携えた「ルー」に変えたんだ。それで「ガイ」によって削られてしまった風の魔動力が完全な形で出て来ているんだと思う。多分、今の状態こそが本当のシュトルムカイザーじゃないかな? さて、ここからが本番だ。石板を解読して得たガイアドラゴンを元に組み上げた、新しい魔動力。それを、今ここで使う!」

 

 そしてこれが、僕がこの世界に来た事で見出した新しい可能性。

 

「ゼーマ・ルー・ドルーガ! 魔動力、ゼニスフェニックス!」

 

 僕は呪文の詠唱と共に全く新しい魔動力を発動させると、シュトルムカイザーを力の限り引き絞り、そして魔動力で形成された光の矢を天に向かって放った。その後に現れた変化を見て、ラビは驚嘆の声を上げる。

 

「おい! 空に矢を放ったら、そこから風で出来た鳥が雷や雲を纏ってやってきたぜ!」

 

 ラビの言った通り、風の(おおとり)が僕に向かって飛んできた。風の鳳は僕の元まで来るとそこから旋回して、邪動神と僕を結ぶ射線の上をただ真っ直ぐに飛んでいく。それと同時に、僕は弓道の八節に従ってシュトルムカイザーの弦を限界まで引き絞る。その過程で魔動力を圧縮した光の矢が番えられているので、後はその矢を放つだけだ。シュトルムカイザーの召喚に始まる一部始終を目の当たりにしたグリグリちゃんは、もう興奮しっぱなしだ。

 

「キャッワァァァ! 凄いグリ! カッコイイグリ!」

 

 そして、驚愕に打ち震える声でV-メイは言葉を重ねていく。

 

「か、風の魔動力による神獣召喚。まさか、今までガイアドラゴン以外に存在していなかった最上位の魔動力を自力で組み上げた挙句、生身でやってしまうなんて。……新しい魔動力を作り上げてしまう発想と開発力といい、Vの称号を持つアタシですら限界が未だに見えてこない程の魔動力といい、あの子の魔動戦士としての才能には限度というものが存在してないのかねぇ?」

 

 やがて、邪動神がこちらに気付いた。ここまで派手に動いていたのだ、幾らスーパーグランゾートを相手取っていても流石に気付くだろう。

 

「な、何だ! アレは!」

 

 邪動神に乗り込んだ敵 ―邪動族― は僕が繰り出したゼニスフェニックスに驚いて慌てて回避行動を取ろうとしているけど、もう遅い。

 

「一発必中!」

 

 ……何故なら。

 

「と、鳥の嘴から大量の電撃が! ギャアァァァァ!」

 

 既に必殺技発動の最終段階に入っていたのだから。

 

「シュトルムカイザー!」

 

 僕が放った矢は、敵を拘束する為の電撃を嘴から放ちながらなお突撃する風の鳳と重なり、強力無比な一撃となって邪動神を貫いた。

 

「な、生身の人間の魔動力に、邪動神が敗れるなんてぇぇぇぇっ!」

 

 そして、邪動神は大爆発した。余りに想定外な事態に、僕は少々首を傾げてしまった。

 

「……あれっ? 大地君とスーパーグランゾートの援護射撃のつもりだったのに、僕がやっつけちゃった。意外と邪動神も大した事はないんだなぁ」

 

 僕はそんなものだと思い込んでいたけど、実際には違っていたらしい。

 

「一誠さん、凄いや。生身でシュトルムカイザーを呼び出した上に、ガスがまだ使った事のない魔動力を使って邪動族をやっつけちゃうなんて」

 

『以前、大地が負傷した時に大地の代役として急遽乗り込んだ際、一誠が強大な魔動力を秘めている事は解っていたが、よもや全く新しい魔動力を創造し、更に生身で使用してしまうとは。歴代の魔動戦士でも、ここまでの高みにいた者はいなかった。大地、今後は一誠を目標として魔動力を高めるのだ』

 

「ウン! とりあえずは、その時に一誠さんが見せてくれたガイアドラゴンだ!」

 

 こんな会話を大地君とスーパーグランゾートが交わしていたとは、思いもしなかったのだから。

 

 ……とりあえず、初めて生身で魔動力を使用した時の話を例に挙げたけど、細かい所は気にしないでくれると嬉しい。なお、僕が風の神獣を携えた魔法用語である「ルー」を知っていたのは、この時までにV-メイが持っている魔動書の数々を並列思考(マルチ・タスク)と検索魔法、そして速読魔法を使って全て読破していたからだ。本が僕の周りで飛び交う光景を始めて初めて見せた時、大地君達三人は開いた口が塞がらず、グリグリちゃんは珍しい光景に興奮しっぱなし。そして、V-メイからは後でこっそり検索魔法と速読魔法について教える様に頼まれてしまった。

 また、この時の少し前に僕がいた事で大地君達が月面で手に入れた石板の解読が原作より早く終わり、その直後の戦いで大地君が負傷してしまった為に大地君に頼まれて急遽僕がスーパーグランゾートに搭乗する事になり、そこで最上位魔動力であるガイアドラゴンを使用してみせた。ただ、発動の際に使用した僕の魔動力が余りに多過ぎたらしく、体を構成する土が熔けてマグマとなった小説版のガイアドラゴンになってしまったんだけど、まぁご愛敬だろう。

 

 そして、僕は第二エリアでアクアビートの復活を見届けた所で元の世界に戻ってきた。どうやら期間限定だったらしく、十日が過ぎた時点で送還魔法が発動してしまったのだ。お陰で中途半端にしか関わる事ができず、大地君達にはかえって迷惑をかけてしまったのかもしれなかった。それについて、僕は非常に申し訳ない想いで一杯だった。

 

 

 

Interlude

 

 なお、実際には一誠が思った様な事は無かった。

 

「一誠さん、見ていて下さい。貴方から示して頂いた私とウインザートの可能性を今、ここで実現してみせます! ジーク・ルー・フリーズ……。出でよ、スーパーシュトルムカイザー!」

 

「何ぃ! 魔動力が今までと桁違いだと!」

 

「まだです! これからが本番! ゼーマ・ルー・ドルーガ! 魔動力、ゼニスフェニックス! はぁぁぁぁっ!」

 

 まず、ガスが大地と同様に神獣召喚の魔動力を扱えるようになっていた。

 

「一誠はおろか、大地やガスにだってできたんだ。オレも同じ魔動戦士として負けてられないぜ! 見てろよ、一誠! ……ゼーマ・サラ・ドルーガ! 魔動力、オケアノスレオ! いっけぇぇぇぇぇ!」

 

 更に、それに触発される形でラビもまた神獣召喚を成し遂げていた。なお、ラビの場合は二つに分けたスーパーウェーブカイザーを地面に突き刺す事で、水で形成された獅子を呼び出す形式を取っている。

 

Interlude end

 

 

 

 やがて、別れの時が来た。僕の体から光の粒子が発生している。……何度か使用した事がある、送還魔法の前兆だった。

 

「どうやら、僕はもう元の世界に帰らないといけないみたいだ。そもそもがイレギュラーなものだったらしいし、その限界が来たってことかな?」

 

 僕の言葉を聞いたガス君が心なしか落ち込んだような表情を浮かべる。

 

「そうですか。折角、私と一緒に修行してくれる仲間が出来たと思ったんですが」

 

 僕との別れを惜しんでくれるガス君に、僕は伝えるべきだと思った事をそのまま伝える。

 

「ガス君なら心配ないよ。聞くと矛盾した事を言っているかもしれないけど、僕は一人の人間が独り立ちするには家族や友達といった自分以外の誰かが必要だと思っている。確かに格闘家を志しているガス君にとって体を鍛えるのは大事なんだけど、友達と語り合う事も一人の人間として強くなる上では大切な事なんだ。それを心の片隅にでも置いておいてくれたら、僕としては嬉しいかな?」

 

 僕としてはあくまでちょっとした助言のつもりだったけど、ガス君にとってはそうではなかったらしい。

 

「心の片隅だなんて、とんでもありません! その金言、しかと肝に銘じておきます!」

 

「……ちょっと大袈裟だよ、ガス君」

 

 余りに真っ正直に僕の言葉を受け取ってくれたガス君に対して、僕は少々引いてしまった。そんな僕達のやり取りを見ていたラビは、少々拗ねた様な感じで自嘲していた。

 

「……ちぇ。本当に俺達の中では一番大人でやんの。これじゃ、今まで散々偉ぶっていたオレがガキみたいじゃねぇか」

 

「今はガキでいいんだよ、ラビ。ガキでしか見えてこない事だって、確かにあるんだから」

 

 ラビの自重を耳にした僕は一歳しか差が無いけど一応は年長者として助言すると、ラビは手をヒラヒラさせつつ一応返事をしてくれた。

 

「ヘイヘイ。最後だからな、聞くだけは聞いておいてやるよ。……ったく。折角大地やガスと違って、頭が良くて頼りになる兄貴分が出来たってのに」

 

 僕には聞こえなかったけど、ラビの側にいたから聞こえていたのだろう。大地君はラビの悪態に苦笑いを浮かべていた。そして、僕に対してラビルーナを救う決意を新たに語ってくれた。

 

「ラビも素直じゃないな。……一誠さん。俺、頑張るよ。そして、ラビルーナを救ってみせるんだ」

 

「あぁ。大地君達ならラビルーナを救えるよ。僕はそれを信じている。後は、ニンジン嫌いを克服できれば完璧かな?」

 

 僕が大地君の好き嫌いについて言及すると、大地君はズッコケてしまった。

 

「ダァァッ! 何で俺をオチに持って来るワケ?」

 

 大地君は不満そうに僕をジト目で見て来る。それが何処か可笑しくなって、つい顔に出てしまった。

 

「ハハハ。でも、僕に言われたからといって、ニンジン嫌いの克服を慌ててやる必要はないよ。大人になると味覚が変わって、嫌いだった食べ物が美味しくなって逆に好きになるって事が結構多いんだ。まぁそうなるには、大人になるまでずっと食べ続ける必要があるけどね」

 

 僕が成長に伴う嗜好の変化について言及すると、大地君は納得してくれたようだ。

 

「……そっか。結局、続ける事が大切なんだね。一誠さん。俺、頑張るよ。アレ? なんか、さっきも同じ事を言った様な気が……」

 

 大地君が惚けた事を言って来たので、僕もそれに乗ってツッコミを入れた。

 

「ハハハ。それ、気のせいじゃないよ?」

 

 そして、最年少であるグリグリちゃんともお別れの挨拶を交わした。

 

「一誠、バイバイグリ!」

 

「グリグリちゃんも元気でね」

 

「ウンだグリ!」

 

 すると、グリグリちゃんの祖母であるV-メイもこちらにやってきた。

 

「一誠や。アタシからもお礼を言わせてもらうよ。たった十日だけだったけど、アンタがいてくれたお陰でこの子達は随分と大きく成長できた。年の離れたアタシじゃ、多分こうはいかなかっただろうね」

 

 少々自嘲染みた事を言い出して来たので、僕はこちらに来て得られたものがあった事をV-メイに伝えた。

 

「お礼の言うのはこっちの方ですよ、V-メイ。僕の方も色々と勉強になりましたから」

 

「そうかい。……一誠、アンタなら大丈夫だとは思うけど」

 

 少し心配そうな表情をしているV-メイの言いたい事は解っていた。だから、それを自分の口でV-メイに伝える。

 

「えぇ。強過ぎる負の感情で魔動力を(じゃ)(どう)(りき)に変化させない為にも、今の純粋な想いを忘れない様に気をつけます。魔を動かすという根源的な力、魔動力。それって、結局は何かを想う事で生まれる力だと思いますから」

 

 魔動力に対する僕の考えをV-メイに伝えると、V-メイはその通りだと大きく頷いた。

 

「……アタシがアンタに教える事なんて、本当に何もないみたいだね。そうさ。魔動力とは本来、誰もが持っている力なんだよ。ただ、それに気づいていないだけなのさ」

 

「そして、「想い」というものに秘められた可能性に誰もが気付いた時、人は初めて争いを乗り越えて本当の意味で解り合えるのかもしれませんね」

 

 V-メイの言葉に続く様に僕が魔動力を実際に使ってみて感じた事を口にすると、V-メイの表情は大きく変わった。

 

「本当にアンタって子は。逆にアタシの方が教えられてばかりだよ」

 

 そんな事を言い出したV-メイに、僕はつい本当の事を口に出してしまった。

 

「唯の知ったかぶりですよ。……そろそろ時間か」

 

 僕を包む光が急速に強くなっていくのを見て、皆が各々の言葉で別れを伝えてくれた。

 

「一誠さん、さようなら!」

 

「お元気で!」

 

「じゃあな、一誠!」

 

「バイバイグリ!」

 

「一誠、元気でおやり!」

 

 そうして、皆の優しい想いを受け取りながら。

 

「それじゃ皆、元気で!」

 

 僕は笑顔で元の世界へと帰っていった。

 

 

 

 ……ラビルーナから帰ってから一カ月後。

 

 僕は新たなるエクスカリバーの錬成に挑戦しようとしていた。ヒントになったのは、前世で見た魔動王グランゾートにおける最終決戦の終盤に登場した太陽王。光の三魔動王を宿代として降臨した太陽王は、各々が司る力を一つにする事で本領を発揮する。ならば、各々の武器を何らかの形で一つとすれば、惑星をも切り裂くゾーラブレードを疑似的に再現できるのではないか。そして、それ程の力を秘めた剣であれば、最終幻想(ラスト・ファンタズム)であるエクスカリバーの核としても使えるのではないか。僕はそう考えたのだ。

 既に隠蔽用の隔離結界を展開し、カリスも静謐の聖鞘 (サイレント・グレイス)から外に出て待機している。

 

「カリス。今からエクスカリバー再誕の第二段階として、エクスカリバーを新しい形に錬成する。何とか形にしてみせるから、仕上げは任せるよ?」

 

 僕は側にいるカリスに声を掛けると、カリスもしっかりと返事をしてくれた。

 

「ウン。守護の剣精(セイバー・ガーディアン)の名に懸けて、それは必ずやり遂げてみせる。だからイッセーも頑張って、としかオイラには言えないよ。今回のこれは本当に世界でたった一人、イッセーにしかできないことだから」

 

 確かにそうだろう。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

 何せ、今からやる事は三魔動王が司る全ての魔動力に目覚めた僕にしかできない事だから。

 

「ジーク・ガイ・フリーズ……。出でよ、エルディカイザー!」

 

 まずは「一撃殲滅」を司る地の神の大剣、エルディカイザーを召喚する。

 

「ジーク・ルー・フリーズ……。出でよ、シュトルムカイザー!」

 

 次に「護り」を司る風の神の弓、シュトルムカイザーを召喚。

 

「ジーク・サラ・フリーズ……。出でよ、ウェーブカイザー!」

 

 そして最後に「力の回復」を司る水の神の銛、ウェーブカイザーを召喚した。

 

 これらは、魔動力の最高峰である物質の形成によって顕現した神の武器である。流石にスーパーエルディカイザーを始めとする強化武器の全てを生身で召喚するのは不可能だと判断して、通常のものを呼び出したのだ。……ただ、どれか一つだけなら強化武器を召喚可能という時点で、最近は自分でも常識というものを投げ捨てつつあるのではないかと思わなくもない。

 こうして独力で揃い踏みさせた三種の神の武器を、予め書いておいた光の魔法陣の上に自らの手で持っていった。すると、三種の神の武器がお互いに共鳴を始めて、光を放ち始める。

 

「……仕上げだ」

 

 それを見届けた僕は、光の呪文を唱え始めた。

 

「ドーマ・キサ・ラムーン……」

 

 僕はひたすら光の呪文を唱えると共に、高めた魔動力を光の魔法陣へと注ぎ続ける。すると、魔法陣の光が次第に強くなっていき、三種の神の武器もまたそれに同調して光を強めていく。やがて三種の神の武器の中心に光が集まり出したのを境に、急激に魔動力が光の魔法陣に奪われ始めた。余りの吸収量の増加に、僕は一瞬意識を失いかけた。頭を振って意識をはっきりとさせると、僕は再び光の呪文を唱え始める。

 

「……まだだ。まだ足りない! ドーマ・キサ・ラムーン……、ドーマ・キサ・ラムーン……!」

 

 光の魔法陣と神の武器からの光が更に激しくなり、それと共に魔動力の吸収量も加速度的に上昇していく。その結果、息は絶え絶え、全身からは冷や汗が吹き出し、膝はガクガク震え、意識は既に朦朧として来ている。だが、ここで諦めたら、折角用意した儀式が全て台無しとなる。それに、カリスはきっと他にも何かできた筈だと自分を責めるだろう。

 

 だから、踏み止まる。踏み止まってみせる。

 

「くっ、ドーマ・キサ・ラムーン……! もう少し、あと少しだけ持ってくれ、僕の体と魔動力! ……ドーマ・キサ・ラムーン……!」

 

 魔動力は、誰もが持ち得る想いの力。そして、どんな形であれ、想いは生きている限り、けして尽きる事が無い。

 

「魔動力は、人の想いは無限大だ! 地の神の剣よ! 風の神の弓よ! 水の神の銛よ! 今こそ一つとなりて、太陽を宿す神の剣となれ!」

 

 だから、人はどんな困難も克服できる。

 

「ドーマ・キサ・ラムーン! 光、出でよ! 汝、ゾーラブレード!」

 

 僕はもはや絶叫に近い形で最後の呪文を唱えると同時に残っていた魔動力を全て注ぎ込み、光の魔法陣から激しい光を放たれたのを確認した所で気を失ってしまった。

 

 

 

Interlude

 

 一誠が全ての力を使い果てして気を失った後、一人残ったカリスは燃えていた。

 

「イッセー。オイラ、最高の幸せ者だよ。こんなにも強くて、そして優しい力に満ち溢れた、正に太陽と神の名に相応しい剣に出逢えるなんてさ。そして、そんな剣を「想い」の力だけで作り上げたイッセーがエクスカリバーの担い手だって事も。だから、今度はオイラの番だ! 必ず、必ず完成させてみせる! 複製された七本はおろか在りし日のエクスカリバーをも超えて輝く、イッセーの為の新たなエクスカリバーを!」

 

 カリスは力強くそう宣言すると、未だかつてない程の力を用いてエクスカリバーとしての能力を付与し始めた……。

 

Interlude end

 

 

 

 温かな光を感じて、僕は意識を取り戻した。まだ意識が朦朧としている僕の目の前には、笑顔を湛えたカリスの姿があった。

 

「……イッセー。たった今、完成したよ」

 

 カリスのその言葉を聞いた僕は、一気に意識が覚醒した。そして、光の魔法陣のある場所へと視線を向けた。そこには、スーパーエルディカイザーの形をした一本の剣があった。どうやら僕が創り出したゾーラブレードは、形状が近しい上に実際に一度振るった事があるスーパーエルディカイザーを雛型としたようだ。……しかし、その剣に秘められている力が全く異なっていた。

 

「魔動力、いや想いの力で形成された三種の神の武器。それらが融合する事で降臨した太陽を宿す神の剣、ゾーラブレード」

 

 ……剣より放たれる温かなオーラは、消耗し切った僕の力を回復していく。

 

「それは、人々の希望の結晶であるエクスカリバーの新たな核に最も相応しいものだった」

 

 同時に、いかなる力をも防ぎ切る力強さをも感じさせてくれる。

 

「そして、イッセーが考えていた新たな能力の全てを完璧に発現しうる器を持ち、更に光の三魔動王が司っていた力をも宿した新たなエクスカリバーが本当の意味で再誕した時、もはや最高にして最強の称号を以てしても語るに足りないよ」

 

 そして、如何なる障害をも一撃のもとに殲滅する意志を僕に伝えてくる。

 

「よって、エクスカリバーの守護精霊の名において」

 

 ……それに勘違いしそうになるが、まだエクスカリバーの力の根源である星の力を回収できていない為、使えるのはあくまで核となったゾーラブレードの力だけだ。実際に剣を錬成した僕だからこそわかる。アレはまだ中身のない器に過ぎないのだと。

 

「エクスカリバー再誕の暁には、以前のエクスカリバーはおろかあらゆる聖剣を超越した唯一無二の真なる聖剣、すなわち「真聖剣」の称号を与える事を宣言する!」

 

 そのカリスの宣言の最中、光の魔法陣の中で静かに佇んでいた新たなエクスカリバーは静謐の聖鞘を引き寄せると己の鞘を自らに合う形へと変えて、ゆっくりとその身を収めていった。

 

 こうして、新たなエクスカリバーの錬成は無事に完了した。後はエクスカリバーの欠片から一つでも星の力を回収すれば、エクスカリバーは本当の意味で再誕する。そして再誕の暁には、唯一無二の真なる聖剣、真聖剣へと至るのだ。

 

 ……その時は、確実に近付いて来ていた。

 




いかがだったでしょうか?

因みに、この物語における魔動力の設定は小説版の方に準拠しており、耳長族は魔法を使える代わりに魔動力を使えません。また、小説版では母親が地球人だったラビについては、アニメ版の母親と地球人の父親の間に生まれたという裏設定で帳尻を合わせています。

そして、今回の話でまずは再誕の為の「器」を手に入れたエクスカリバー。
しかし、本格的に再誕するにはまだまだ時間がかかります。
私の物語におけるエクスカリバーが完全に再誕するに至るまでの過程をしっかりと描いていきたいと思っているので、今後ともよろしくお願い致します。

追記
今話で表記されている「魔法陣」についてですが、原作であるグランゾートでは一貫してこの表記なので誤字ではありません。
なので、今後はハイスクールD×Dのものを含めた通常のマホウジンは「魔方陣」、グランゾートに関わるマホウジンは「魔法陣」で統一させていただきます。
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