コカビエルの口から「聖書の神の死」という余りに衝撃的な事実を伝えられた事で絶望の淵にあったアーシアだったが、ニコラス神父の「神の愛は生命の中で生き続ける」という考え方と「絶望を希望に変える」という僕の行動指針を伝えた事で何とか立ち直ってくれた。それを確認した僕は皆から離れて、空を飛ぶ事無くコカビエルと再び対峙する。すると、コカビエルは笑みを浮かべながら僕に話しかけて来た。
「女を慰めるのは、もう良いか?」
……女を慰める、か。コカビエルが言外に含めた様な意図は全くなかったのだが、ここはあえて乗っておく事にする。
「あぁ。一応、礼は言っておこう。その間、一切手は出して来なかったからな」
しかし、僕の礼に対してコカビエルは苦々しい表情を浮かべた。
「フン。その間、サーゼクスを始めとする男達が揃って俺を見張っていて、単純に手を出せなかっただけだ」
……それについては、僕も解っていた。だからこそ、あそこまで無防備に背中を向けられたのだ。そして、コカビエルはそこまで言うと表情を一転、好戦的な笑みを見せる。
「それに、想像以上に面白い物も見れたしな。それよりも続けるぞ、赤龍帝! いや、
……コカビエルには悪いが、その期待には応えられそうにないな。
僕は今回の戦いを終わらせる為、コカビエルに致命傷を与えない程度に威力を調整した龍拳を発動しようとした。しかし、それは驚愕に満ちたゼノヴィアの声で思い留まる事になる。
「エ、エクスカリバーの核が!」
その声に反応して振り向くと、祐斗によって砕かれた統合体から零れ落ちた五個の欠片が眩い光を放ち始めた。やがてその光は五条の閃光となって天に立ち上ると、そのまま僕の腰に携えていた真聖剣の鍔にある赤い宝玉へと吸い込まれていく。
Interlude
オリジナルのエクスカリバーの欠片から閃光が天へと立ち上ったのを、駒王学園の外から目撃した巴柄は驚嘆の声を上げた。
「何なの、アレ!」
一方、一度だけそれと同じ光を目の当たりにした事があるはやては、封時結界を維持しながらも一誠が最終的に行うことになる決断をいち早く読み取っていた。
「アレ、あの時と同じ光や。二年前、わたし達夜天の主従がアンちゃんと一緒になのちゃん達と協力して世界をヒドゥンから守った時、アンちゃんが最後の切り札として使うた、あの真なる聖剣の大いなる光と。……そうか。アンちゃん、遂にこの時が来たんやな」
その言葉を聞きつけたソーナは、治癒の
「そういえば、はやてさんは一誠君から全てを教えられていましたね。……それでどうしますか、イリナ?」
ソーナからの問い掛けに対して、イリナは即答で現場に向かう事を伝えた。
「もちろん行くわ!」
すると、イリナの護衛を名乗り出ていたトンヌラがイリナに自分も同行する旨を伝えた上で許可を求める。
「どうせ乗りかかった船だ。俺もお嬢さんに同行しねぇとな。……構わねぇだろ?」
このトンヌラからの申し出に対して、イリナは感謝を伝える事で返事とした。
「有難うございます、トンヌラさん」
すると、トンヌラは少々むず痒いものを感じながら、礼が不要である旨をイリナに伝える。
「礼はいらねぇさ。テメェの不始末をテメェで処理しているだけだからな」
そんなトンヌラの様子に、何処か素直でない男の可愛らしさの様なものを感じてしまったイリナは少々笑みを零しつつも学園の中へ入ろうと声を上げた。
「トンヌラさんがそう言うなら、そうしておきます。じゃあ、行きましょう!」
……そうして、イリナとトンヌラは一誠とコカビエルの戦闘が最終局面へと移行した駒王学園の中へと入っていった。
Interlude end
オリジナルの欠片から発せられた閃光が天に立ち上ると、そのまま真聖剣の鍔にある赤い宝玉の中へと吸い込まれていった。欠片に込められていた星の力が真聖剣に直接回収されたのだ。そして、真聖剣は自らの意志で
《……イッセー》
そのような中、カリスが恐る恐る精神感応で話しかけてきた。……カリスの言いたい事は既に解っていた。
〈解っているよ、これがカリスの意志じゃない事は。……そうか。今こそ、世界にその全てを示し、そして起て。そういう事か。星の意思よ〉
僕は真聖剣、正確には真聖剣が繋がっている星の意思が何を求めているのかを理解した。そして、ドライグに声を掛ける。
「ドライグ」
『あぁ。どうやら今回の俺の出番はここまでらしい。後は高みの見物といこうか。……相棒。この際だから、しっかりと見せつけてやれ。お前という存在が、実は世界が生み出した奇跡そのものだという事をな』
長年の相棒は、すぐさま僕の言いたい事を理解してくれた。
『Burst』
ドライグはそこまで言うと、今まで蓄積してきた倍化を解除してしまった。続いて、僕は赤龍帝の聖剣であるクォ・ヴァディスとその守護精霊であるアウラに語りかける。
「クォ・ヴァディス、アウラ。お疲れ様。後は、僕達お父さん組に任せて欲しい」
『……ウン、解った。パパ、頑張ってね?』
そして、そのままクォ・ヴァディスを
「おい、赤龍帝。赤龍帝の籠手の力を解除した揚句に剣まで仕舞うとは、一体どういうつもりだ?」
コカビエルは僕とドライグのとった行動の意味が理解できずに、思わず僕に問い質してくる。
……安心しろ、コカビエル。答えはすぐに出る。
念の為にサーゼクス様の方を向くと、サーゼクス様は一度だけ深く頷いた。これで許可は下りた。それなら始めよう。まずは、今までずっと待たせ続けていた愛剣に謝罪の言葉を掛ける。
「……済まない。随分と長い間、待たせ続けてしまったな」
そして、今まで愛剣を使おうとしなかった理由を愛剣へと語り始めた。
「先代がその身を以て示した「使い時を間違えるな」という教訓を胸に、今までは極力お前を戦いに連れ出さない様にしていた。それは、お前とそれを扱う僕が受け入れてもらえるだけの下地がこの世界のどこにもなかったからだ」
……世界で孤立するのは、余りにも辛い。そんな思いを、自らの手で再誕させたエクスカリバーに味わせたくはなかった。
「でも、聖書の神の死を知らされてしまった今、はっきりと理解したよ。世界のどこにもないのなら、僕がこの手で作ってしまえばいいと」
僕はそこまで言うと、目の前に浮いた愛剣を手に取って僕の決意を直に伝える。
「そして今、神も魔王もいないという絶望を聖魔和合という「聖」と「魔」が手を取り合って生きていける新たな希望へと変えてみせるとアーシアに約束した。ならば、それを以て数多在る騎士達を統べる王としての決意表明とし、王位の継承を宣言しよう」
そして、僕は愛剣を天に掲げ、愛剣の名と自らが継承した称号を高らかに宣言した。
「その身を収めし
宣言の後、僕は剣を振りかざしてコカビエルを見据えて、カリスに二代目騎士王として出陣する事を伝える。
「行くぞ! これが、僕達の初陣だ!」
《オウともさ! オイラ、全力全開で張り切っちゃうよ! 妹のアウラだって見てるんだから、尚更さ!》
一方、僕の二代目騎士王宣言を聞いたコカビエルといえば、しばらくは沈黙していたがやがて笑い始めた。
「ククッ。ハッハッハッ。ハァッハッハッハッ!」
そうして一頻り大笑いしたコカビエルは、心底面白いといった表情を浮かべていた。
「面白い! 面白過ぎるぞ、逸脱者! まさか一度は折れたエクスカリバーが既に復活していたとはな! これでは、バルパーの奴はいい面の皮だ! 聖剣計画も、今までの研究成果も、全てが全くの無駄だったのだからな! しかも、その使い手はよりにもよって悪魔陣営と来ている! 余りにも愉快過ぎて、もう笑いが止まらんわ!」
僕という存在を愉快だと評したコカビエルは、今後僕に対して起こり得る事態について言及し始める。
「赤龍帝の籠手に復活したエクスカリバー、そして全てから逸脱した証であるその翼! 貴様はもはや、存在そのものが神の死を証明する
コカビエルはここで自身の勝利を宣言した。……それについて、僕には反論の余地がない。僕自身、それこそが最大の懸念材料だと思っていたからだ。しかし、コカビエルの戦意は無くなるどころか更に高まっていく。
「だが、それでは余りにも面白くない! 旧い聖剣を奪い、三大勢力の旧い戦争の再開とその決着を望む俺と、再誕した新しい聖剣を振るい、「聖」と「魔」が手を取り合う聖魔和合という夢物語を現実に変えようする貴様! 戦争再開の前哨戦として、正に相応しいではないか! 行くぞ、逸脱者! 俺は俺自身の手で俺の望みを叶えてやる!」
そう言って無数の光の槍を作り出すと、僕に向かってその全てを発射した。それに対して、僕はエクスカリバーの切っ先を光の槍に向けて能力の一つを使用する。
「止まれ」
その瞬間、僕に向かっていた全ての光の槍はその動きを止めた。
「そして、征け!」
僕がそう命じると、光の槍はコカビエルに向かってさっき以上の速度で飛んでいく。余りに想像の枠から外れた光景だったのだろう、慌てて対処するが初動が遅れて数本掠っていた。
「バ、バカな。一体、何が起こった?」
困惑するコカビエルに対し、僕が何をしたのかを皆への説明を兼ねて教えていく。
「
光輝の説明を聞いたコカビエルは、その表情を驚愕のものへと変えた。
「なっ!」
驚愕したコカビエルの隙を逃すことなく、僕は追撃の為の能力を使用する。
「驚いている暇はないぞ? 真聖剣の力はまだまだこれからだ。……
今回の一件で星の力が一気に欠片六個分となった為、柄にある赤い宝玉には光の魔法陣が形成されていた。これによって、真聖剣の核となったゾーラブレードに宿る「一撃殲滅」「護り」「力の回復」という三種の力が完全な形で発動する上に基本的な出力も桁違いに跳ね上がった。更に、今までは鞘に一端収めないと使用能力の切り替えができなかった欠点も改善され、その場での能力の切り替えはおろか併用すら可能となっている。
「ギィアァァァァッ!」
その結果、
「ク、クソッ! このままでは、まるで歯が立たん! ……だが!」
コカビエルはそう口にすると、全力を込めた光の槍を作り出した。
「こうすれば、貴様から当たりに行ってくれるだろう!」
そして、攻撃の矛先をアーシアへと変えて全力で投げつける。一応、光輝による攻撃の無効化は可能なのだが、どうやらコカビエルは焦りの余りに忘れている様だ。それにこの際だから、はっきりと知らしめる事にしよう。
「ラッセー! 消し飛ばせ!」
「クアァァァァッ!」
……この真聖剣がある限り、まずは弱い者から叩くという戦いの常道すらも通用しないという事を。
Side:木場祐斗
……この光景は、早々忘れられるものではないだろう。
「何故だ? 何故こうなる? 何故、たかが
何せ、聖書に記載される程の大物で歴戦の強者でもあるコカビエルが全力を込めた一撃を、まだ幼いラッセーによる雷撃のブレスで完全に相殺されたのだから。そして、アーシアさんを守らんと勇ましくコカビエルを睨みつけるラッセーを微笑みと共に見守っているイッセー君による真聖剣講座が再開された。
「
……これ、以前に聞いた事があったけど、本当にシャレになっていないよね。これを持っている人がもし軍を率いたら、それこそ無敵の軍団が誕生するわけだから。その意味では、真聖剣は正しく数多在る騎士達を統べる王の為の聖剣だった。
「だから、弱い味方を守らせる事で僕を消耗させようとしても、今なら味方全員が自力で対処できるから意味がないぞ、コカビエル」
イッセー君はそう言って、コカビエルを追い詰める言葉を放つ。しかし、それがいけなかったのだろう。
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!」
追い詰められた事で肉体のリミッターが外れたのか、かなりの重傷を負っているコカビエルが突如立ち上がった。そして、僕の目でも捉えるのがやっとという速度で駆け寄り、その手に持った光の槍で刺し貫く。それを成し遂げたコカビエルは、満足げな笑みを浮かべた。
「ふん、油断が過ぎたな。逸脱者。あの大戦では、これくらいの傷を負いながらも戦い続けたのだ。あの程度で動けないと思ったのが、貴様の運の尽きだったな……」
……僕にはさっぱり理解できない。何故、コカビエルは
「完全にハマってるわね、コカビエルは」
後ろから掛けられた声に反応して振り向くと、そこにはイッセー君の纏う
「お嬢さん。あの堕天使の状態が解っているのか?」
その彼がイリナさんにコカビエルの状態を把握しているのかを確認すると、イリナさんは頷きと共に肯定する。
「えぇ。私には解るわ、トンヌラさん。伊達にイッセーくんの幼馴染をやってるわけじゃないもの。それにしてもアレ、本当に反則よね?」
そう言ってイリナさんが視線を向けた先では、雪だるまから離れた場所に立っていたイッセー君がコカビエルに声を掛けているところだった。
「気が済んだか? ……
声を掛けられたコカビエルはそこでハッとした表情を浮かべて、イッセー君の方を向く。それを確認したイッセー君は、またもや真聖剣講座を始めた。
「
……ねぇ、イッセー君。本当の愛剣である真聖剣を使い出したら、君にはもう誰も勝てない様な気がするよ。真聖剣の能力がどれも常識外れの規格外だって事もあるけど、それ以上にそれらを様々な形で完璧に使いこなす君の技能と頭脳の方がよほど恐ろしいから。
そして、イッセー君はもはや戦意が殆ど折れていそうなコカビエルに追撃を加えて決着をつけようと動き始める。
「これで決めるか」
イッセー君はそう言うと、エクスカリバーを一端静謐の聖鞘に収めてから天使の力である光力を右手に圧縮していく。
「光よ!」
そして、それをそのままコカビエルに放った。圧縮された光力は物凄い速さでコカビエルに当たると、コカビエルの周囲を一気に取り囲む。まるで、コカビエルが光の監獄に囚われたみたいだった。
「クッ、たかがこの程度!」
コカビエルは光の監獄を破壊しようとするけど、その前にイッセー君の追撃が来た。
「闇よ!」
左手に圧縮された事で闇の力と化した悪魔の魔力をイッセー君が放ったのだ。光の監獄に囚われたコカビエルはそれを躱す事ができなかった。
「な、何だ?」
そして、光力と魔力が融合した事で今まで見た事のない様な魔方陣が球体状に展開された。その立体魔方陣とも言うべきものは、次第に回転を速めていく。
「グッ、ウオォォォォォッ!」
すると、コカビエルの激痛に苦しむ絶叫が辺りに響き始めた。
「光と闇の交わる地にて、生死の狭間を彷徨うがいい!」
そして、立体魔方陣の回転が最高速となり、膨大なエネルギーが立体魔方陣の中に満ちたところでイッセー君が仕上げに入る。
「デッド・オア・アライブ!」
エネルギーに満ちた立体魔方陣は中の空間諸共一気に崩れ去り、その空間崩壊にモロに巻き込まれたコカビエルは満身創痍の状態で地面に倒れ伏していた。
「ウッ、グッ。お、おのれぇ、逸脱者めぇ……!」
やがて、コカビエルからは苦しげな呻き声が零れてきた。驚いた事にまだ生きているらしい。
「流石だ、兵藤君。先の宣言通り、コカビエルを無力化する為の戦い方をしていた様だな。後はコカビエルの身柄を拘束して、アザゼル達に引き渡せばそれでお終いだ」
……前言撤回。イッセー君はコカビエルが死なない様に手加減していた。しかし、これでエクスカリバーの奪取に始まる今回の一件は終焉を迎えるだろう。
僕がそう思った、その時だった。
「いえ。まだ、最後の仕上げが残っています」
イッセー君がそう言うと、一度静謐の聖鞘に収めたエクスカリバーを今一度抜き放ち、倒れ伏したコカビエルに一閃した。……しかし、コカビエルの体には一切の傷がついていない。
「グッ、逸脱者。貴様、この俺に一体何をしたぁ……!」
異変を察したコカビエルは地面に倒れ伏し、苦しげな呻きながらイッセー君に問い掛けてきた。イッセー君はそれに応える形で、おそらくこの場では最後になるだろう真聖剣講座を開始する。
「
このイッセー君の問い掛けには、能力の説明を受けている僕ですら良く解らなかった。例外はイッセー君との付き合いが特に長い瑞貴さんとイリナさんだ。二人共、半ば呆れた様な苦笑いを浮かべている。そして、イッセー君が問い掛けに対する答えを言い始めた。
「僕は一度実際に触れて認識・理解した概念なら、その全てを「なかった」事にできる。そう言ったんだ。それがたとえ重力だろうが、空間だろうが、怪我という状態だろうが、光力を操るという能力だろうが、それを認識・理解している僕にとっては等しく「滅ぼせる」対象だ」
……この時、僕は間違いなく息を飲んでいただろう。
「そ、それでは、俺が今、光力をまるで扱えないのは……!」
「そうだ。今のお前からは、光力を操るという堕天使なら誰でも扱える能力が失われている。それに希望を持たれても困るから、予め言っておこう。討伐は非常に強力である為に、色々と制約がある。流石に「死」や「無」という存在が既に失われた結果は滅ぼせない事や物理的な干渉が一切できない、つまり「斬る」事ができない事もそうだ。そして、その最たるものは一度「滅ぼした」物は二度と元には戻らない事だ。だから、お前が堕天使として戦う術を取り戻す事は、もう永遠にない」
イッセー君はコカビエルを文字通り無力化したのだ。しかも永遠に。更に、その体をそれ以上傷つける事も無く。……ここまで来ると、もはや神の領域かもしれない。その余りに強大な真聖剣の力に、僕は改めて畏怖の念を覚えた。
「……殺せ。俺を殺せ、逸脱者! こんな、こんな戦う事すらできない生き地獄など、俺は真っ平だ! 頼む! せめて、せめて俺を戦場で死なせてくれぇぇっ!」
やがて、自らが永遠に戦えなくなった事を悟ったコカビエルは、イッセー君に自分を殺す様に懇願してきた。……しかし、それに対するイッセー君の返事は何処までも冷酷だった。
「駄目だ。それは絶対に認めない。ただ戦争の再開とその勝利のみを望み、世界の現状を顧みなかった罰として、お前の望みとは逆へと進んでいく世界で無様に生き恥を晒し続けてもらう。それが、敗者であるお前に対する勝者としての命令だ。何よりお前には、志敗れた戦争の敗者としての潔い「死」ではなく、自分から売った喧嘩で敗れた負け犬としての無様な「生」こそが相応しい。さぁ
つまり、イッセー君はコカビエルに対して戦士として死ぬ事すら許さないという事なのだろう。イッセー君は真聖剣を静謐の聖鞘に収めつつ、まるでドライアイスの様に感情の全く感じられない冷め切った声と表情でコカビエルにそう命じていた。
「アァァッ……。アァァァァァァッッ!」
このイッセー君の言葉を聞いたコカビエルは、戦場で戦士として死ぬ事すらできない事実に絶望し、やがて頭を両手で抱え込むと髪を激しく振り乱しながら絶叫を上げ始める。
……イッセー君。君は厳しい時には本当に厳しいんだね。
「どうやら、兵藤君はやる時にはトコトンやる男だった様だ。確かに、アザゼルからはコカビエルを無力化するに留めてほしいとの要請は受けていたが、それが永続するかどうかまでは特に言及されていなかったな。おそらくはコキュートス行きになる以上、向こうもやり過ぎだとこちらに文句は言えないだろう。……結局の所、兵藤君は最後まで神の頭脳と悪魔の智謀を見せつけてくれたな」
サーゼクス様はイッセー君を称賛していた。イッセー君は最後まで戦争再開の火種を消す為の行動を取り続けていたのだから、それは当然だろう。……ただ、最大級の火種となる逸脱者、エクスカリバーの真聖剣としての再誕、そしてその担い手である二代目騎士王の公表は完全に想定外だっただろうけど。まぁ、これでエクスカリバーの奪取に始まる今回の一件は終焉を迎えるだろう。
……僕がそう思った、正にその時だった。
「驚いたな」
突如上空から声が掛かってきた。
「アザゼルからコカビエルを鎮圧した後、そのまま連行するように頼まれてここに来たんだが、まさか今代の赤龍帝の力をこんな最高の形で見られるとはね。これだけでも、アザゼルの依頼を引き受けた甲斐があったな」
声の主を確認する為に見上げたその夜空には、光の羽で形作られた翼を持つ白い
Side end
いかがだったでしょうか?
今回は完全に真聖剣無双となりました。
ある意味、原作においてエクス・デュランダルを完璧に使いこなした場合のゼノヴィアの完成形といえるかもしれません。
なお、今回出てきた雪だるまは、間違っても「さよならなのだ」とは言いませんので悪しからず。
では、また次の話でお会いしましょう。