赤き覇を超えて   作:h995

81 / 125
年末年始の更新について活動報告で報告していますので、ご確認をお願いします。

追記
2018.12.21 修正


第九話 現れる闇

Overview

 

 これは、ギャスパー・ヴラディがその身に宿す神器(セイクリッド・ギア)である停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)を新しい形で暴走させてしまい、後の回顧録において「永い生涯の中で最も影響を与えた」と言わしめた言葉を一誠から与えられた後の事である。

 その日は少し時間を置いた方がいいという判断で解散となり、その後でギャスパーは早めに寝ようと部屋の中にあるベッド代わりの棺桶に入って目を閉じた。この日はニンニク克服を始めとして色々とあった為か、ギャスパーはすぐに寝息を立て始めたのだが、気が付くと周りが闇に包まれた空間の中に立っていた。

 

「あれ? 僕、確かに眠ってた筈なのに……」

 

 すると、ギャスパーは自分に非常によく似た声の持ち主に声を掛けられる。

 

「心配しなくても大丈夫だよ。ここは、君の心が作り上げた精神世界。現実の君は今、棺桶の中でぐっすりと眠っている最中だ」

 

 ギャスパーはその声の聞こえた方向へ顔を向けると、そこには、アルカイックスマイルを浮かべる、紛う方なき自分自身がいた。

 

「……しかし、おかしな事もあるものだね。まさか「僕」が怒りや憎しみ、悲しみ、そして絶望といった負の感情じゃなくて、歓喜の感情を糧として目覚めるなんてね」

 

 もう一人のギャスパーは、ギャスパーが驚愕しているのを半ば無視する様に自らの話を続けていく。

 

「君を信じる僕を信じろ。あの人はたぶん「僕」には気づいていないと思うけど、あの人の言葉とそれに込められた想いは、まだ眠っていた「僕」の心にまで届いたよ。そのお陰と言うべきかな? あの人の言葉は、「僕」にもまた大きな影響を与えてくれた。本当に面白い人だよね?」

 

 姿形は全く同じでも、精神性は全く異なっているもう一人の自分を見て、ギャスパーは酷く戸惑っていた。……気が付いたら、その正体を問い掛ける言葉がギャスパーの口を衝いて出ていた。

 

「君は、一体……?」

 

 すると、問い掛けられたもう一人のギャスパーは己の正体を明かし始める。

 

「……「僕」は、君さ。ただ、君が生まれる前に宿してしまったモノが僕の元になっているけどね」

 

 しかし、「生まれる前に宿してしまったモノ」とはどういう事なのか、よく解らなかったギャスパーは改めて尋ねた。

 

「僕が、宿してしまったモノ?」

 

 ギャスパーに尋ねられたもう一人のギャスパーは、その答えを語り始める。……即ち、ギャスパーが生まれる前に宿してしまったモノが一体どういったモノなのかを。

 

「そう。ケルト神話において孫である太陽神ルーに滅ぼされた古の魔神、バロール。その断片化された意識の一部を、君は宿してしまった。そしてその結果、視線で相手を殺すバロールの邪眼を模倣したであろう停止世界の邪眼が君に宿る事になったし、君自身は特に何もしていないのに神器の力が勝手に高まっているんだよ。贋物(フェイク)本物(オリジナル)へと作り変える為にね。そして、紆余曲折の果てに「僕」が生まれた。まぁ「僕」の元になっているのはあくまで断片化された意識の一部だから、「僕」は持っているのは「魔」の力だけ。神性なんてモノは、とっくに失われているよ。君と区別する上で名乗るとするなら、元になった意識の持ち主に因んで「ギャスパー・バロール」と言った所かな?」

 

 ―― 古の魔神、バロール。

 

 余りに意外にして大物過ぎる名前が出てきた事に加えて、今まで自分を苦しめてきた元凶が目の前にいるという事実にギャスパーは混乱した。しかし、自らギャスパー・バロールを名乗った彼は混乱の最中にあるギャスパーに対して自分と話し合う事を提案する。

 

「さぁ、これからじっくりと話し合おうか。君はこれからどんな風に「僕」と付き合っていくのかをね」

 

 ……だが、全てを知る事となった今のギャスパーにとって、これはけして避けては通れないものだった。

 

Overview end

 

 

 

Side:塔城小猫

 

ギャスパー君育成計画 ミッションNo.3 神器を完全に制御しよう!

 

 ララバイ事件(イッセー先輩が名付けたギャー君の新能力から取りました)の後、少し時間を置こうという事になってその日は解散となりました。

 そして、その翌日。この日は日曜で学校は休みだったのですが、イッセー先輩は予めギャー君の神器制御訓練のサポーターとして声をかけていた匙先輩を連れて来ました。何故匙先輩なのかと言えば、ギャー君の封印を解く前に聞いた話によると、匙先輩の神器である黒い龍脈(アブソープション・ライン)には相手の力を繋いだラインを通して吸収する能力があり(実際は少し違うそうですが)、それを利用してギャー君の暴走の原因である神器の過剰な力を吸収してギャー君が制御しやすい状態にするとの事です。……イッセー先輩は、この様な事を本当に幾つも思いつきますね。

 

 ただ、今日は休日を利用してのプール掃除を生徒会で行う事になっていて、イッセー先輩も本来はそちらの方に回る事になっていました。それが何故こうなっているのかと言えば、例のララバイ事件によって生徒会としてもギャー君の神器制御訓練を最優先で行わないといけなくなった為、イッセー先輩は暫くこちらに専念すると共に匙先輩の訓練参加も繰り上げたとの事でした。なお、プール掃除に参加できなくなった自分達の代役として、私より一つ下の武藤先輩の兄弟二人とコカビエルとの最終決戦に参加したセタンタ・マク・コノルさんを呼んだとの事です。

 コカビエル事件が終わり、駒王町の情勢が落ち着いた頃からイッセー先輩の紹介で歴代最高位の赤龍帝の一人である「仙帝(ハーミット・ソブリン)」の計都(けいと)師父から正統の仙術や道術、更には自ら武術と融合させて編み出したという闘仙術の基礎を教わり始めた事で私も結構強くなりましたし、気配察知も随分と上達したと思います。

 ……でも、だからこそ解ってしまいました。今の匙先輩には仙術や道術を齧った程度では到底勝てない。それどころか、会長との共有眷属であるイッセー先輩を除くとグレモリー眷属の中では祐斗先輩しか相手にならないと。尤も、その匙先輩以上に恐ろしいのが、エクスカリバーを再誕させた二代目騎士王(セカンド・ナイト・オーナー)でもあるイッセー先輩以上の剣の腕前を持ち、祐斗先輩と匙先輩の二人掛かりでも分が悪いという武藤先輩なのですが。

 私が改めてグレモリー・シトリー眷属の男性陣の事について考えている中、イッセー先輩は予定が変わって急遽呼び出した事を匙先輩に謝っています。

 

「ゴメン、元士郎。もうちょっと後の予定だったんだけど」

 

 そのイッセー先輩からの謝罪に対して、匙先輩は気にしない様に言ってきました。

 

「神器が制御できないと、他の予定が消化できないんだろう? だったら仕方ないさ。それよりヴラディだったな。準備はいいか?」

 

 匙先輩がそう言って呼び掛けたその先には、女顔な上に今やアーシア先輩と同じ位にまで成長した私より少し小柄ですが、男物のジャージを着た凛々しい表情の金髪の男の子がいます。その男の子は、ギャー君に対する匙先輩の呼び掛けに元気よく応えました。

 

「はいっ! お願いします!」

 

 …………ハッ! アレは一体誰ですか!

 

 私はおろかレイヴェル(同い年なので、公の場でなければ呼び捨てにして欲しいと頼まれました)を含めたオカ研メンバーが驚愕している中、いち早く驚愕から立ち直った祐斗先輩がまるで呟く様に言葉を零しました。

 

「確かに、昨日のイッセー君の「あの言葉」を切っ掛けに前向きになるとは思っていたし、その兆候は既に見られたんだけど、まさかここまで変わるなんてね……」

 

 祐斗先輩もあの様に言っている以上、アレはギャー君で間違いありませんが、アレが本当に女装趣味があって女の子よりも女の子らしかった、あのギャー君ですか? よく見ると、髪型も女の子らしいボブショートだったのが、耳元と襟足をバッサリと切り落とした事で清々しさを感じさせる男らしい髪型になっていますし、目つきも何処か男の子らしくて精悍な感じすらあります。

 

 ……アレでは、まるっきり別人なんですが。

 

「良い返事だ! それじゃ行くぞ! 黒い龍脈!」

 

 私達が未だにギャー君の変貌に対する困惑からまだ立ち直れずにいる内に、ギャー君の女装趣味など全く知らないであろう匙先輩は初めて見る小さな蛇を何匹も撒き付けたのような神器を右腕に発動させると、ギャー君に舌の様な光のラインを伸ばして取り付けました。これで、準備完了です。

 

「それじゃあ、神器にかかっている余計な力を吸収するから……」

 

「待って下さい! その前に、一つだけ試させて下さい!」

 

 神器の力の吸収を開始しようとする匙先輩を遮り、ギャー君は懐から昨日使った笛を取り出しました。……人が話している途中で遮るなんて事、今までのギャー君には決してできなかった事です。

 

「昨日、僕が推測して言ったことかな?」

 

「そうです! まずは、それを試させて下さい!」

 

 昨日イッセー先輩が停止世界の子守唄(フォービトゥン・バロール・ララバイ)から推測して言った事。それはハーフヴァンパイアであるダンピールの能力の中に、笛を吹く事でヴァンパイアを退治できるというものがあり、それと同様に笛を演奏することでギャー君の力が引き出され、ギャー君の神器である停止世界の邪眼の制御が容易になる可能性があるという事です。確かに、まずはそれを確かめるべきでしょう。でも、それをギャー君が自分から言い出すとは思いませんでした。今までと違って、ギャー君が凄く積極的です。

 

「どういう事だ、一誠?」

 

 匙先輩が尋ねて来たので、イッセー先輩は昨日のララバイ事件に至った経緯を説明しました。

 

「……成る程な、それで俺の出番が早まったわけか。それじゃ、神器が暴走し始めたら神器の力を吸収する。そういう事でいいな、ヴラディ?」

 

 匙先輩も納得してくれたようです。そして、匙先輩から念押しされたギャー君も元気に返事をしました。

 

「はい! お願いします!」

 

 ですが、イッセー先輩は訓練を開始する前に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発現させると、匙先輩に対して強化する事を伝えます。

 

「その前に、元士郎。今のお前ならドラゴン系神器の加護もあるから停止世界の邪眼が暴走しても十分動ける筈だけど、念の為に強化しておこう」

 

 そして、神器の倍化能力を起動してから十秒後。

 

『『『『Boost!』』』』

 

 ……あれ? 今、倍化発動の機械音が重なって聞こえた様な? 私が首を傾げていると、イッセー先輩とドライグの会話が聞こえてきました。

 

「倍加は四回で十分かな?」

 

『あぁ。そもそもが念の為の保険なんだ。素でも耐えられそうなコイツなら、それで十分だろう』

 

 一体、どういうことなのでしょうか? その言い方では、匙先輩を直接強化する様に聞こえるんですが。私が立て続けに起こった事に対して疑問に思っている一方で、イッセー先輩はドライグの助言を受け入れて譲渡能力を発動させます。

 

「解った。赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 

 ……ただし、赤龍帝の籠手を装着した左手の掌を広げて匙先輩に向けただけで、匙先輩に触れる事はしていません。譲渡するには、対象への接触が必要だった筈なのですが。

 

『Transfer!!』

 

 でも、その機械音と共に譲渡能力が発動し、匙先輩から強大な魔力が吹き上がりました。……そう、本人の魔力です。けしてイッセー先輩の物ではありません。

 

「元士郎。全体的な能力を2の四乗倍、つまり16倍に強化した。これで万全な筈だ」

 

「助かったぜ、一誠。俺は確かにドラゴン系神器を持っているけど、お前や木場、瑞貴先輩みたいな特別製という訳じゃないし、異世界の神竜の力を宿している紫藤さんに魔力で防げる会長やリアス様、レイヴェル様、それに聖剣のオーラでそれが可能なゼノヴィアさんと違って、地力で耐え凌げる自信が余りなかったからな。流石にお前や瑞貴先輩はおろか、木場より地力で強い自信はまだないよ」

 

「まぁそうだな。扱える能力の相性差もあるしね」

 

 そんなイッセー先輩と匙先輩のやり取りには、確かな信頼関係が感じられます。それに、匙先輩は「祐斗先輩より地力で強い自信はまだない」と言っていました。……ということは、手が届く範囲の強さには既に達していると自分で言っている事になります。何故なら、少なくとも今の私にはそんなことを言える自信がないからです。しかもイッセー先輩は匙先輩の言葉を否定していません。匙先輩の言葉が過大評価でも過小評価でもないから、ということでしょう。

 ……でも、そんな些細な事よりも遥かに重大な事があります。どうやら、イッセー先輩の赤龍帝の籠手がパワーアップしている様です。私は、後でイッセー先輩に詳しい話を聞く事を決めました。

 

「それじゃ、ギャスパー君。始めてくれ!」

 

「はい!」

 

 全ての準備が整い、イッセー先輩の声と共にギャー君は静かに笛を吹き始めました。実はギャー君が笛を吹き始めて間もなく、イッセー先輩と祐斗先輩以外は全員時間を止められていました。だから、ギャー君の演奏を聴くのはこれが初めてになります。因みに、演奏を聴いた祐斗先輩の感想は「初めてにしてはなかなか良かった」そうです。

 

「小猫ちゃん、ギャスパー君の演奏の感想は?」

 

「……心地いい音色です」

 

 イッセー先輩から感想を訊かれたので、素直に答えました。

 

「停止世界の子守唄は発動していないか。ギャスパー君、このボールだけを止めてみてくれ!」

 

 そう言うと、イッセー先輩はギャー君に向けていきなりボールを投げ付けました。時速150 kmは出ているんじゃないでしょうか。でも、ギャー君が笛を吹きながらこちらを見た次の瞬間、ボールは見事に止まりました。

 

「小猫ちゃん、どう?」

 

「……はい。見事に止まっています」

 

 イッセー先輩からまた意見を訊かれたので、これまた素直に答えました。

 

「ギャスパー君の視界に入った小猫ちゃんは時間停止の影響を受けていない。という事は、殆ど奇襲だったにも関わらず、ボールだけが時間停止の影響下にある。……元士郎!」

 

 ……あっ。

 

「一誠。ヴラディに頼まれた通り、俺はまだ神器の力を吸収していない。今神器を制御しているのは、間違いなくヴラディの独力だ」

 

 匙先輩の返事を聞いて、イッセー先輩の顔に笑顔が浮かびました。

 

「凄いよ、ギャスパー君! 君は今、停止世界の邪眼を完全に制御している! 誰の手も借りずに、自分一人の力で!」

 

 このイッセー先輩の言葉に、ギャー君は笛を吹きながら静かに頷きました。その瞳から、歓喜の涙を流しながら。

 

「よし、このまま制御訓練を開始しよう!」

 

 こうしてイッセー先輩の宣言で始まった制御訓練は、疲れ果てて笛が吹けなくなるまで続けられました。その結果、流石に最後の方は匙先輩の手助けが必要になっていましたが、少なくとも笛が問題なく演奏されている間は一切暴走しませんでした。また、笛のお陰でコツを掴んだのか、笛の補助なしでもある程度は制御できるようになっていました。正に大成功と言っていいでしょう。

 こうしたギャー君の急成長ぶりを目の当たりにした匙先輩は、感嘆の溜息を交えながら小声で呟きました。

 

「流石、一誠シンドロームの発症者は成長が早いな。でも、もう誰も信じないだろうな。ヴラディが実は対人恐怖症の引き籠りだ、なんてな」

 

 匙先輩の近くにいた事でその声が聞こえていたのか、祐斗先輩は匙先輩に尋ねています。

 

「一誠シンドロームかい?」

 

 すると、匙先輩は自分の独り言が聞かれていた事に少々驚きつつも祐斗先輩の問い掛けに答えました。

 

「聞こえていたのか? あぁ、そうだ。兵藤一誠に深く関わるとほぼ例外なく自己変革を引き起こし、その後は爆発的に成長する。それが一誠シンドロームだ。特に精神的に大きく成長するから、それにつられて色々な面も成長するのが一番怖い所だ。発症例は一誠と同じクラスになった事のある奴全員、それに瑞貴先輩だ。……それに、お前も心当たりがあるんじゃないか、木場?」

 

 質問に答え終えた匙先輩は、今度は自分が祐斗先輩に訊き返してきました。しかし、祐斗先輩は質問には答えず、同じ質問を匙先輩にぶつけます。

 

「……という事は、君もだね? 匙君?」

 

 そこで、匙先輩は苦笑交じりで祐斗先輩の質問に答えて来ました。

 

「わかるか、やっぱり。もし一誠がいなかったら、俺は俺の抱いていた夢の叶え方を勘違いしたままだった。まぁ今となっては一部変わっちまったけど、それでもアイツには感謝し切れないよ」

 

 匙先輩はそう言うと、ギャー君と笑い合っているイッセー先輩の方を向いて笑っていました。

 

「……そうだね。僕も多分、ここまでは来られなかったと思うよ」

 

 そして、祐斗先輩もまたイッセー先輩を見て、静かに微笑んでいました。……このお二人、どうやらイッセー先輩という共通の親友を通じて、これから仲良くなっていきそうです。

 一方、ギャー君の神器制御の成功を受けて、部長と朱乃さんが意見を交わしていました。

 

「あらあら、どうしましょうか? ギャスパー君、何だか予想外な速さでどんどん強くなっていきそうですけど」

 

「元々、その下地はあった子なのよ。でも、本当にどうしようかしら? イッセー、いくら何でもやりすぎよ。これじゃ、いよいよ(キング)である私の立つ瀬がなくなっちゃうじゃない……」

 

 ……部長、しっかりして下さい。このままだと、本当に名ばかりの王だと言われてしまいますよ?

 

ギャスパー君育成計画 ミッションNo.3 神器を完全に制御しよう! 達成!

 

Side end

 

 

 

Side:姫島朱乃

 

ギャスパー君育成計画 ミッションNo.2 自分の力を理解しよう! 

……神器制御に目処が立った為、再開!

 

 ギャスパー君の神器制御訓練を終えてから三十分程の休憩の後、イッセー君の監督の元でギャスパー君の能力を改めて確認した。

 

 ……その結果。

 

・接近戦の対処については、まずはシトリー眷属の協力の元での鬼ごっこを行い、体の使い方と回避技能を覚える。また、爪の長さの調節は可能な上に鋼程度まで強度が向上しており、爪を伸ばした状態で試しに中古品の机に振り下ろしたら、机が六分割された上に床にも傷が入る程の威力を発揮。その為、鬼ごっこと並行して小猫ちゃんと祐斗君を教師として白兵戦の基礎訓練も行い、爪を主体とした格闘術の確立を目指す。

・狼や鼠、虫には現時点で変身可能。霧は要練習だが変身の兆候はあり。

・自然現象の操作については、まずイッセー君の指導の元で精霊との感応から取り組む事に。最終的には、水・風・闇の精霊魔法と独力での天候操作の修得を目指す。

・バラの花を食べた所、大変美味しい上に血液摂取と同等の精気を得られる事が判明。また、手から生気を吸収する事も可能で、バラ以外の植物や生き物でも可能な手応えあり。

・笛以外の楽器で確認した結果、音楽の精霊との感応が可能なのはあくまで笛のみ。また、演奏する楽曲とその時の意志で効果が変わる事も判明した為、詳細の調査が必要。 例)行進曲(マーチ)でスピードに関する能力が向上、哀歌(エレジー)で意欲減退、鎮魂歌(レクイエム)で悪霊の浄化等。

・防御結界を張った私の周りを駆け回った所、五分程度で結界が破壊されることが判明。更に駆け回った結果、私の魔力と体力の減退も確認。おそらくは駆け回る際に自身の周辺にある力や精気を削り取る効果がある模様。

・魔力を付与したコップに魔力のみを壊すよう魔力弾で試したところ、なんと一発で成功。特性として、精神世界面(アストラル・サイド)への干渉が常時可能である事を確認。

 

 ……以上のことがわかった。

 

 ギャスパー君は変異の駒(ミューテーション・ピース)僧侶(ビショップ)の駒を使って転生している。だから何となく理解していたのだけど、改めて見るとハイスペックという言葉さえも通り越していて、流石のイッセー君もこれにはやや苦笑いしていた。

 

「あははは。まさか、昨日可能性として挙げた能力がほぼ全て使えるとは思っていなかったよ。正直な話、三つに一つはハズレかなって思っていたから。でも凄いね、ギャスパー君。この分なら、一月ぐらい鍛えたらレイヴェルにも勝てるようになるかもしれないよ。だから、もっと色々試してみようか?」

 

「はい! 僕、頑張ります!」

 

 ギャスパー君は相変わらず元気に返事をしている。……ギャスパー君、本当に変わったのね。

 このままイッセー君にギャスパー君が鍛えられていったら、一ヶ月後に私達グレモリー眷属の中で勝てそうなのは師匠のイッセー君と祐斗君だけかもしれない。一方、リアスはギャスパー君に秘められていた可能性に絶句していた。

 

「こうして改めて見ると、有り得ないほどの可能性を秘めた子を私は眷属にしていたのね。……というよりも、いくら変異の駒だからって、当時の私はよくギャスパーを眷属にできたわね? あの駒、ひょっとして変異の駒でも更にイレギュラーな代物だったのかしら?」

 

 ……私自身、ギャスパー君の可能性には驚愕以外の言葉を持ち合わせていなかった。

 

「ひょっとしたら、本来は四大魔王の方々でもない限り、ギャスパー君を眷属にはできなかったのかもしれませんわね」

 

 そんな私達の言葉を受けて、小猫ちゃんが意見を言ってくる。

 

「……でも一番凄いのは、ギャスパー君をここまで変えてみせたイッセー先輩だと思います」

 

 真理を突いた小猫ちゃんの言葉に、私はただ頷くだけだった。

 

「結局は、そうなる訳よね……」

 

 リアスもとうとう諦めた様で、苦笑いするだけだった。

 

 ……そして、また一つ私の破滅までのカウントダウンが少なくなったのを確かに実感した。

 あらゆる意味で私よりリアスの腹心に相応しいイッセー君を筆頭に、グレモリー眷属の中で私より優れた人材が増えつつある今、生まれ持った力を何時まで経っても扱えない名ばかりの女王(クィーン)である私が、そういつまでもリアスの腹心でいられる筈がないのだから。

 

ギャスパー君育成計画 ミッションNo.2 自分の力を理解しよう! 達成!

 

Side end

 




いかがだったでしょうか?

これからのギャスパーにご期待下さい。

……プール回?
はて、何のことやら。

では、また次の話でお会いしましょう
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。