オクランの盾の東、スキムサンド。
巨大な虫の化け物スキマーが多く徘徊する危険な地帯のため、スキマーの砂漠、スキムサンドと呼ばれている。
フーニとグリフィンの二人はスキムサンドを進む。
遠くに見えるスパインキャニオンを目印に。
スパインキャニオンはスキムサンドとストートの中間に位置する小高い山だ。
ここにはサボテンが生い茂り、食詰めた者達が食料(サボテン)を求めて徘徊している。
また、危険なレイダー達(スナ忍者、ブラッドレイダー)が縄張り争いをしている場所でもあり、
腕に自信が無い者は近づかないのが得策である。
二人はここを突破してストートを目指そうとしていた。
代わり映えのしない風景にフーニは飽きつつあった。
「本当に何もないわね。」
「砂しかないからな。聞けばUCは南を除けば、この様な風景ばかりだそうだ。」
「うんざりするわね。」
二人が喋りながら進んでいると、剣戟の音が聞こえた。
どうやらホーリーネーションとUCの兵士達が戦闘しているようだ。
スキムサンドは、最大の激戦区バストの南に隣接する地域でもある。
ホーリーネーションとUCの争いは日常茶飯事だ。
二人は顔を見合わせ、どうするか相談した。
「一応聞いておくけど助ける?」
「関わらないほうが良いだろう。」
「そうよね、さっさと進みましょうか。」
二人の結論は決まっていた。
──"関わらない"一択である。
余程親密な関係でない限りは兵士達に関わるだけ損だ。
特に人が多い戦闘では味方からの被弾のリスクも高まる。
いかな実力者であっても負傷、最悪の場合命を落とす事がある。
関わらない事を決めた二人は更に砂漠を進む。
幸いな事にスキマーや輩の襲撃はない。
無言でひたすら進む。
3時間程歩いたところで二人は岩場で休息を取ることにした。
岩の下は影になっており、陽射しが直接当たるよりも少しは涼しい。
「今どの辺まで来たの?」
「スパインキャニオンまで後3時間程だな。」
「意外とオクランの盾に近いのね。」
「近いも何もあそこは最前線だ。攻め込まれた事は無かったのか?」
「さあ?あったのかも。離れで暮らしてたから、そう言う事には疎くて。」
「ふむ、冷血で知られるヴァルテナ様も君には甘かったみたいだな。私が知る限りここ10年間で何回も戦闘があったはずだ。」
ふーんと興味なさそうにフーニは返事をして伸びをした。
自分の裏でヴァルテナが何をしていてもどうでも良いと言わんばかりに。
しばらく無言の時間が続いて、二人は立ち上がった。
出発の為ではなく、敵を迎え撃つ為に。
◆
その敵は虚無僧の格好をしていた。
──スナ忍者、その出で立ちはまるで忍者の如く。
しかし、幹部クラスは虚無僧の格好をしている奇妙な集団。
リーダーは自らを鬼と名乗り、高額の懸賞金が掛けられている。
その虚無僧から二人は声を掛けられた。
「金と食料を置いていけ。命はとらない。」
「はぁ、オクランの盾を出て初めて会う人が追い剥ぎって。」
「どうする?二人でやるか?」
「この程度私一人で充分よ。」
「舐めるな小娘。」
虚無僧はその手に持った杖の持ち手を引っ張る。
仕込み杖だ。刀身は長く、人に対する殺傷能力は高い。
対するフーニの持つ獲物はポールアームだ。
敵を叩き殺す事に適した武器。
勝負は一瞬だった。
先に動いた虚無僧の斬撃を半身で避けたフーニは、避けた勢いでそのまま回転し、
虚無僧の頭にポールアームを叩き込んだのだ。
ポールアームの一撃で虚無僧の被る笠は破れ、鈍い音が響いた。
そして虚無僧は物言わずどさりと倒れ、死体となった。
フーニは死体から衣服を剥ぎ取り、持ってきていたバックパックに入れ込む。
仕込み杖も重くはないので背負う事にした。
「"荒野の作法"を既に知っていたか。」
「作法?死体から剥ぎ取るのが?聖典にも載ってなかったわ。」
「聖典が全てではないからな。」
「ホーリーネーションで言ったら殺されそうね。」
「幸いここはホーリーネーションではない。」
人を殺したと言うのに軽口を叩き合う二人。
この過酷な世界に倫理観など存在しない。
生まれながらに生きるか死ぬかの価値観が彼らには備わっていた。
スパインキャニオンまで残り少し。
二人は襲撃により時間を無駄にしたため、少し早足でその小高い山を目指した。