無関係の迷惑団体が型月世界の爆弾を次々回収していく話   作:獅子村中心

1 / 3
大聖杯回収業務編1 なぜ昼に話しかけないのか

くうくうおなかがなりました。

 

いじわるなおにんぎょうをやっつけて、あめだまたべておなかいっぱい。

 

「お辛そうですね」

 

いじわるぬいぐるみとはちがう、おちついたこえ。

 

「間桐桜様で、間違いないでしょうか?」

 

あおいろのぬいぐるみが、ぺらぺらなにかしゃべってます。

 

(わたくし)、幻想銀行ローカパーラにて雑務を任されております。銀行員(バンカー)のキーグシャーと申します」

 

くうくうおなかがなっています。まだまだおなかはすいたまま。

 

「貴方の中にある小聖杯(ソレ)を当行に預けてはどうでしょうか? そうすれば、魔力の欠乏も収まり、人間の捕食も必要なくなるかと」

 

このあおいぬいぐるみからも、おいしいあめだまがでるかもしれません。

 

「ご安心を。当行の封印は絶対のもの。貴方とソレを完全に切り離すことが可能で──」

 

ぱくり。

 

……あれ。

 

あおいぬいぐるみは、にげていきました。

 

 

---------------------------

 

交渉失敗したった。

 

夜の街で聖杯の端末と化した少女がパンピーをパクパクしてるマーダー現場に遭遇したので、一応預託の提案をしてみたが、全然相手にされなかったわ。

 

ありとあらゆるものを封印し、資産として保管する力を持つローカパーラとはいえ、基本的に了承がなければ他人のものには手を出さない。そういうルールだ。

 

そういうわけなので、無理に手出しはできない。規則だから。

 

こういう場合、銀行としてではなく秩序の維持者として事態に関わるしかなくなる。だが、それには対象が秩序を破壊しうると我々のトップが判断してからの話になるわけで、それはこの街全部が犠牲になってからくらいになるだろう。人間のつまみ食いくらいで一々手を出していたら俺たち銀行員(バンカー)は世界から死徒を一掃しなきゃならない。人手不足なのに。

 

というわけで、しばらくは静観かなぁと適当にぶらついていると。

 

ざく。

 

自分の胸からそんな音が鳴り、下を向いて見れば。

 

「ありゃ」

 

胸から、真紅の槍が生えていた。痛覚預けてるから気づかなかったわ。あー、制服新調しなきゃじゃん。

 

そして、即座に槍の持つ体内殲滅の呪いが発動するが──俺は死なない。その程度では。

 

こんくらいで死んでたら、俺は一万年以上昔に死んでいる。というか、この魔槍を刺されるのは三度目だ。

 

「これはこれは。お久しぶりですね、光の御子様」

「──テメェ、まだ生きてやがったのか……」

 

槍が引き抜かれ、それと同時に振り返れば、アルスターの大英雄、クー・フーリン(顔見知り)がそこにいた。そしてその表情からは、呆れの色が読み取れる。

 

「随分と、過激な挨拶ですね」

「ハッ。マスターからの命令でよ、この戦争に銀行員(バンカー)を関わらせるな、問答無用で殺せってな」

「左様でございますか」

 

ほぇ〜、どこの誰がマスターか知らないけど嫌われてるなぁ。いつものことだけど。そんなオーダーを受けているなら、夜とはいえこんな往来でローカパーラの銀行員(バンカー)の象徴である青い制服を着ている間抜け(俺)が狙われるのも当然か。

 

「……あと、()()()()()()()()。その外向きの気色悪い口調をどうにかしやがれ」

「あっそう。久しぶりだねセタンタくん。不意打ちとは相変わらずだなー」

 

客じゃない相手に丁寧な言葉は不要なので、素の口調に戻す。幻想銀行は口調に厳しく、銀行員(バンカー)の研修でも徹底的に叩き込まれるのだ。

 

「……ハァ、本当にあのキーグシャーみてぇだな。何年銀行員(バンカー)やってんだテメェ」

「一万年は超えるけど。んで、どうすんの? 問答無用で殺すんでしょ、無駄だけど指示には従わなきゃダメじゃん。まーローカパーラに大恩があってやり難いのは分かるけどさぁ、ケルトの戦士なら余裕っしょ? やーい親友殺し」

「……テメェらに恩義なんざねぇよ。……ったく、木っ端銀行員(バンカー)ならどうとでもなったがな、テメェが相手じゃ全部無駄。このまま退散する……つもりたったが」

 

そして、青い槍兵は真紅の槍を構える。

 

「……気が変わったぜ。構えろ銀行員(バンカー)

「えー」

 

構えろと言われても、こちらには戦う理由も旨みもない。ましてや戦士の本能とかそういうのもない。大英雄といえど、使い魔程度の格に収まっているクー・フーリンでは俺を殺せないし、このまま朝まで刺され続けるのが最効率まである。が、今回のメイン業務は起動した大聖杯もといこの世全ての悪の回収。ならまぁさっさとサーヴァント減らしておくのもアリかもしれない。

 

まぁ、殺されないとはいえ俺のザコザコ身体スペックでは本当に細切れにされるだけの夜になるが。普通にやれば。

 

とりあえず戦う気になった俺は、徐に両腕を合わせる。それにより、刺青として刻まれた、二つに分たれた紋章が一つとなる。

 

「ヴァイシュラヴァナ、開門」

 

腕と腕が門と化し、魔力が通されることで刻まれた力が呼び起こされる。

 

「資産魔法《武功猛虎(アティクラム)》──限定発動」

 

瞬間、振るわれる槍。先程までとは違い、つよつよスペックと化した俺は容易くその絶技を見切り、装備の一つである双刀でいなす。

 

資産魔法。幻想銀行ローカパーラが神代から収集・保管している資産の概念を取り出した銀行員(バンカー)の力。とはいえ、無制限ではない。使用には魔力が必要な上、各資産魔法に応じた資格が必要となる。

 

例えば、《武功猛虎(アティクラム)》。資産番号4057832、中国最強と謳われた拳法家が愛用した槍の魔法化。使用者に達人並の技量と身体をもたらすが、善悪や殺人に囚われる道徳性を持つ者には使用できない。

 

なんで俺が使えるのか? 道徳性なんて邪魔なもんはとっくの昔に預けてあるからです。

 

「チィッ……!」

「遊んで逃げるつもりだったんだろうけど、さっさと締めさせてもらいまーす」

 

長く付き合ってやる義理はない。俺は、双刀の柄頭をガチンッ!と打ち合わせる。当然、そこにも二つに分たれた紋章が刻まれており、一つになったソレは門となる。

 

「ヴァイシュラヴァナ、開門」

 

双刀に、三色の光が灯る。

 

「資産魔法《軍神滅光(ブリジャール)》──限定発動」

 

それは、あらゆる文明を破壊しうる神の光。

 

軍神滅光(ブリジャール)》。資産番号2303542、フン族の大王と切っても切れぬ関係にあった軍神の剣の魔法化。得物に世界を焼く光を凝縮した力を付与するが、精神に戦い以外のモノの比重が大きい者には使用できない。

 

なんで俺が使えるのかって? そりゃ万年単位で封印業務という名の戦いばっかしてきたし。それにあたって邪魔な心は全部預けてあるからね。

 

さて。

 

「お引き取り願いまーす」

 

 

 

幻想銀行、ローカパーラ。神代以前、完全なる領域外から渡来したシステム。星から神秘を奪い去る簒奪者にして、時に救いの手を差し伸べては担保として資産たる神秘を持ち去る高利貸し。

 

ただ、ローカパーラは地球にて直接の活動はできない。だから、その星、その時代の存在を使徒、銀行員(バンカー)として雇用する。

 

だが、約一万年と少し前、この法則にバグが生じた。

 

それこそが、不死性を手に入れ、不要な記憶や感情の全てを銀行に預けることで数多の資産魔法の発動資格を有し、神代より生き続ける現存最古の銀行員(バンカー)、キーグシャーである。

 

 

 

 

 

 




え、続かないが……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。