無関係の迷惑団体が型月世界の爆弾を次々回収していく話 作:獅子村中心
絶技と絶技が、極限まで緊迫した空気を震わせる。まぁ、俺の方の絶技は100%……いや97%くらい借り物なんだけど。
人外の足捌きの音と得物が空気を切り裂く音が淡々と響くなか、刃が打ち合う音だけはしない。それも全て、眼前の槍兵が三色の光を帯びた双刀型のヴァイシュライザーを警戒しているが為。つくづく勘が良い。
あ、ヴァイシュライザーっていうのは資産魔法発動用の紋章が刻まれた武装のことで、その全てが二つで一対になっていたりする。
「鼻が良いねー」
「ありがとよ……ッ!」
流石の危機管理能力だと賞賛したいところだが、これでは《
ともかく、《
「というか、その槍は当行が保管してたはずなんだけど」
「……ハイエナが。サーヴァントの宝具に現物の在処は関係ねぇよ」
それもそうか。英霊の宝具は伝説の具象化なわけで、オリジナルがローカパーラにあろうと関係ないのは当たり前の話だ。
……ゲイ・ボルク。資産番号1986541。影の国の女王が弟子に与えた魔槍。後の持ち主から担保として取り立てて封印に至った資産。当然資産魔法もある。《
あ、もちろん俺は使える。情ねーもん。
余談だが、資産魔法の発動資格には常に“無いこと”が求められる。勇気ある英雄の宝具の資産魔法とかだと、“勇気がある”ことではなく“恐怖がないこと”を求めてくる。少しどころじゃなくズレてるかもしれないが、そういうものなのだ。
「……不毛な時間だなー」
「思っても口にするんじゃねーよ」
そもそも、大英雄といえど使い魔程度の格に落とし込まれたクー・フーリンに俺は殺せないわけだし、そんなことは向こうも分かっているはずだ。
だから深く踏み込んで来ないし、撤退前提の動きなのが見え見えだ。あわよくば情報を引き出せれば、程度の思惑だろう。こっちが本気で仕留めようと動けば逃げに徹されるわけだ。乗るんじゃなかったわ。
今からでも逃げようか……と考えかけていたところだったが。
「そこ」
「……!?」
俺の長年の経験から来る違和感。それに従い俺は槍兵を無視して虚空を切りつけた。潜んでいたソレに破滅の光が襲いかかるも、ソレは辛うじて免れる。あー、結局《
「キ──ラン、サー──バン、カー──!」
気配遮断が破られ、顕になったのは、月のような髑髏の面。百点満点のアサシンのサーヴァントは、次の瞬間には逃げに転じていた。
「ッ! 待ちやがれ──!」
続いて、ランサーがそれを追跡する。俺を置いて。
「……」
え、どうしよ。
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《
「わお」
執拗なチェイスの末に彼らが辿り着いたのは、何処ともしれない水面。少し遅れて追いついた俺は、そこが決定的な死地であることに気づく。
「───!」
ソレに、ランサーも気づいたのか、青い身躯が水面から飛び退く。
黒い、薄っぺらな何かが蠢いている。というか明らかなこの世全ての悪さん達が、そこに大量に潜んでいた。さっき見たし。これ、さてはアサシンに誘い込まれたな?
宙に居る槍兵に、逃げ場はない。使いたがらないはずのルーンを使ってまで結界を張るも、容易く侵食される。
「チッ──キーグシャー!」
「え、
「ほんっとうに変わんねぇなぁ!」
四方八方を黒いのに囲まれたランサーは俺にかけるも、当然手出しはナシだ。理由がないし、なにより。
幻想銀行ローカパーラは、帳尻が合わない施しはしない。人に力を貸す、人に力を与える、人の力になる、いずれも、相応の担保を持つ者にのみこれを行うのが決まりだ。ただの使い魔に、払える物は何もない。
だが、ランサーも本気で期待していたわけではないのか、槍を支点に跳躍し、安全圏から嘲笑っているアサシンを仕留めにかかる。距離は30メートルあまり。あの大英雄であれば、充分な殺戮圏内。
「
──が。突如肥大化した暗殺者の右腕を見て、俺はランサーの敗北を識った。詰んでいたのだ、俺が来る前から。
「──
異形の右腕に、そこにあるはずのないものが現れる。
心臓。ランサーのそれと同期した鏡面存在が、容赦なく握り潰される。
水面に沈み、黒いのに取り込まれていくアルスターの猛犬を、俺は感慨なく眺めていた。
とりま一万字までやってみるか……