無関係の迷惑団体が型月世界の爆弾を次々回収していく話   作:獅子村中心

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大聖杯回収業務編2 ランサーが死んだ!

絶技と絶技が、極限まで緊迫した空気を震わせる。まぁ、俺の方の絶技は100%……いや97%くらい借り物なんだけど。

 

人外の足捌きの音と得物が空気を切り裂く音が淡々と響くなか、刃が打ち合う音だけはしない。それも全て、眼前の槍兵が三色の光を帯びた双刀型のヴァイシュライザーを警戒しているが為。つくづく勘が良い。

 

あ、ヴァイシュライザーっていうのは資産魔法発動用の紋章が刻まれた武装のことで、その全てが二つで一対になっていたりする。

 

「鼻が良いねー」

「ありがとよ……ッ!」

 

流石の危機管理能力だと賞賛したいところだが、これでは《軍神滅光(ブリジャール)》の発動し損である。いや、まぁこんなにピカピカしてたら警戒されるのも当然ではある。

 

ともかく、《軍神滅光(ブリジャール)》が付与された今のヴァイシュライザーは宝具換算でランクA+。打ち合わせればあの朱槍もタダでは済まないだろう。その分魔力の消費キツいけど。神代人的にオドには自信があるし、いざとなったらローカパーラから魔力が供給されるのが銀行員(バンカー)だが、無駄遣いはよくない。

 

「というか、その槍は当行が保管してたはずなんだけど」

「……ハイエナが。サーヴァントの宝具に現物の在処は関係ねぇよ」

 

それもそうか。英霊の宝具は伝説の具象化なわけで、オリジナルがローカパーラにあろうと関係ないのは当たり前の話だ。

 

……ゲイ・ボルク。資産番号1986541。影の国の女王が弟子に与えた魔槍。後の持ち主から担保として取り立てて封印に至った資産。当然資産魔法もある。《因果逆転(ヴィパーリャ)》。簡単に言えば絶対心臓に当たる投擲ができる資産魔法。発動資格は『どれだけ親しかろうが敵ならば刃を鈍らせずに斬れる精神性』。ケルト戦士の悪いところから由来しているのだろう。

 

あ、もちろん俺は使える。情ねーもん。

 

余談だが、資産魔法の発動資格には常に“無いこと”が求められる。勇気ある英雄の宝具の資産魔法とかだと、“勇気がある”ことではなく“恐怖がないこと”を求めてくる。少しどころじゃなくズレてるかもしれないが、そういうものなのだ。

 

「……不毛な時間だなー」

「思っても口にするんじゃねーよ」

 

そもそも、大英雄といえど使い魔程度の格に落とし込まれたクー・フーリンに俺は殺せないわけだし、そんなことは向こうも分かっているはずだ。

 

だから深く踏み込んで来ないし、撤退前提の動きなのが見え見えだ。あわよくば情報を引き出せれば、程度の思惑だろう。こっちが本気で仕留めようと動けば逃げに徹されるわけだ。乗るんじゃなかったわ。

 

今からでも逃げようか……と考えかけていたところだったが。

 

「そこ」

「……!?」

 

俺の長年の経験から来る違和感。それに従い俺は槍兵を無視して虚空を切りつけた。潜んでいたソレに破滅の光が襲いかかるも、ソレは辛うじて免れる。あー、結局《軍神滅光(ブリジャール)》の無駄じゃん。

 

「キ──ラン、サー──バン、カー──!」

 

気配遮断が破られ、顕になったのは、月のような髑髏の面。百点満点のアサシンのサーヴァントは、次の瞬間には逃げに転じていた。

 

「ッ! 待ちやがれ──!」

 

続いて、ランサーがそれを追跡する。俺を置いて。

 

「……」

 

え、どうしよ。

 

 

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武功猛虎(アティクラム)》の身体強化がまだ残っていることもあり、結局あの二人を追うことにした俺だが、高速やらビル群やらを飛び回る羽目になるとは思っていなかった。

 

「わお」

 

執拗なチェイスの末に彼らが辿り着いたのは、何処ともしれない水面。少し遅れて追いついた俺は、そこが決定的な死地であることに気づく。

 

「───!」

 

ソレに、ランサーも気づいたのか、青い身躯が水面から飛び退く。

 

黒い、薄っぺらな何かが蠢いている。というか明らかなこの世全ての悪さん達が、そこに大量に潜んでいた。さっき見たし。これ、さてはアサシンに誘い込まれたな?

 

宙に居る槍兵に、逃げ場はない。使いたがらないはずのルーンを使ってまで結界を張るも、容易く侵食される。

 

「チッ──キーグシャー!」

「え、()()あんの?」

「ほんっとうに変わんねぇなぁ!」

 

四方八方を黒いのに囲まれたランサーは俺にかけるも、当然手出しはナシだ。理由がないし、なにより。

 

幻想銀行ローカパーラは、帳尻が合わない施しはしない。人に力を貸す、人に力を与える、人の力になる、いずれも、相応の担保を持つ者にのみこれを行うのが決まりだ。ただの使い魔に、払える物は何もない。

 

だが、ランサーも本気で期待していたわけではないのか、槍を支点に跳躍し、安全圏から嘲笑っているアサシンを仕留めにかかる。距離は30メートルあまり。あの大英雄であれば、充分な殺戮圏内。

 

刺し穿つ(ゲイ・)──」

 

──が。突如肥大化した暗殺者の右腕を見て、俺はランサーの敗北を識った。詰んでいたのだ、俺が来る前から。

 

「──妄想心音(ザバーニーヤ)

 

異形の右腕に、そこにあるはずのないものが現れる。

 

心臓。ランサーのそれと同期した鏡面存在が、容赦なく握り潰される。

 

水面に沈み、黒いのに取り込まれていくアルスターの猛犬を、俺は感慨なく眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 




とりま一万字までやってみるか……
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