無関係の迷惑団体が型月世界の爆弾を次々回収していく話   作:獅子村中心

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大聖杯回収業務編3 撤退、即ち魔力の無駄

「副頭取、資産番号1097521の魔法化を申請します」

 

眼前で、白い髑髏をずらし、ランサーの心臓を絶賛テイスティング中の暗殺者を見ながら、俺は制服に内蔵された異界通信機に向かって淡々と声を出す。

 

『……必要なのか?』

「えぇ。それに、あの魔法ならば大した魔力は必要ない。(わたくし)のオドで事足ります」

 

通信機から、若い男の声。アドリブでの資産魔法行使には、ローカパーラNo.2である彼に申請する必要がある。俺? 俺は万年(文字通り)平銀行員(バンカー)なんでね。

 

『……ならいい。稟議を通す、少し待て』

 

一瞬の逡巡の後、口頭での許可が降りる。当行の副頭取はドケチなので、ローカパーラの魔力供給が必要になる大きな資産魔法の申請は渋るのだが、その分こちらのオドやマナで賄うという言葉には弱いのだ。しかし、すぐに資産魔法が発動できるわけではない。

 

本来ならば、資産魔法の発動には複雑な計算を要するからだ。今日の俺がそんな手間なく資産魔法を扱えていたのは、それが武器や刺青に予め刻まれているものだったから。それを限定発動と呼び、限定発動の紋章は一つの資産魔法しか使えない。

 

「……意外だな。貴様は手出しをしないと思っていた」

「一度仕事をすると決めたものですので。貴方は、随分と流暢に喋るようになりましたね?」

 

言いながら、即座に抜刀。二刀が暗殺者の体躯を容赦なく襲う。が、おおよそ普通の人間ではあり得ない身の捩りでアサシンはそれをかわし、跳びたちざまに黒い短剣をこちらに投げつける。

 

俺にはさっき死んだ青いのとは違い、自動で飛び道具を飛ばしてくれる加護なんてものはないので、自力で防がないといけないが、難なく全ての短剣を切り払っていく。

 

「副頭取ー?はやくしてくださーい、取り逃しそうでーす」

『今やってる! 少し待て!』

 

戦闘が始まってなお、事前に申請した資産魔法の準備が終わらない。まぁこれは当然のことで、資産魔法の計算というのは非常に複雑なのだ。数学オリンピックくらい。仕事歴万年のはずの俺でも5分はかかるね。あ、もちろん非戦闘時の話ね、戦闘中に計算とか無理無理。

 

俺の言葉の通り、アサシンは逃げる腹づもりだったようで、不自然なほど唐突に気配が消える。おそらくは、かなりランクの高い気配遮断的な能力だろう。こうなったら普通追跡は無理だ。だが。

 

『できた!……頭取、魔法化に関する稟議書です。ご決裁を』

『……良いだろう』

 

通信機から、一瞬浮き足だった副頭取の声と、渋い男性の声……ローカパーラの頭取であるマッチョダンディの声が響く。その声を聞いたと同時に、俺は二刀をしまいホルスターから二丁の銃型ヴァイシュライザーを引き抜いた。

 

「ヴァイシュラヴァナ、開門」

『資産魔法──真実看破(アルテュス)、発動』

 

銃身をガチンッ!と打ち合わせ、門を開く。あらゆる真実を見通す資産魔法により、俺の視界がアサシンを捕捉する。

 

資産魔法、真実看破(アルテュス)。北欧神話における司法神の神性、その魔法化。どうしてローカパーラが神性なんか保有しているのかって話だが、向こうの方から預けてきたのだ。天の楔が失敗してなお、星の内側に消え去りたくなかった神はいつか再びの神代の為に我が行にその神性を預けた。そんな時代が来る保証はないし多分来ないが、不透明な未来に希望を託してコールドスリープを望む人間と似た心理かもしれない。

 

「──なっ!」

「逃がしませーん」

 

見破られるとは思っていなかったアサシンに完全不意打ちの銃撃が決まり、総崩れになりかける暗殺者へ向けて、追い打ちを仕掛け──ようとするが。

 

「あ、なんか嫌な予感するな……逃げよ」

「……?」

 

途中で面倒な気配を読み取り、俺は撤退を選んだ。これ以上ここにいれば更に資産魔法を使うことになると、そういう予感だ。割に合わない。こういう勘は本当に当たるしね。

 

「開門」

ローカパーラのコインを持ち、魔力を込め、そう呟くと、何もなかった場所に扉が出現する。銀行員(バンカー)はどこにでもローカパーラと世界を繋ぐ扉を開くことができる。なんなら理想郷にも影の国にも開くことができる。やらないが。

 

そのまま、困惑するアサシンを尻目に、俺は扉の中へと歩を進めた。

 

 

 

 

「……フン。(オレ)に喧嘩を売り、あまつさえ我の財宝に手をつけた痴れ者の銀行員(バンカー)の気配で来てみれば。既に失せた後であったか……」

 

 

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扉の先は、荘厳な銀行のロビー。あの嫌な予感もここに戻りさえすれば追っては来れないだろう。なにせ、非正規の方法でここへ侵入を果たしたことがあるのは花の魔術師と宝石の爺や(年下)と新米魔法使いと根源接続者(和服)とあと根源接続者(金髪)とセファールくらいで……いや結構いたな。

 

「只今戻りました」

「……撤退か」

「そうなりますね」

 

待ち構えていた現頭取であるマッチョダンディに挨拶する。当たり前だが、俺はこのマッチョダンディが赤ん坊の頃から銀行員(バンカー)である。

 

「交渉は?」

「あー、失敗しましたね。これはもう、この世全ての悪(アンリマユ)が出てきてから掻っ攫うでいいのでは?」

 

今回俺に課せられた業務は、あの汚ねー泥の回収・封印。交渉の線が潰えた以上、下手に介入せずに泥の本体が出てきたところを叩くのがベストだろう。戦争の過程に介入する理由がない。ローカパーラが誰かに肩入れする時は、それに見合う担保が必要であり、サーヴァントクラスの戦力に見合うだけの担保を持つ人間などいな──

 

「いや、我々には介入する理由がある。それに足る資産を見つけた」

「へぇ? どんな?」

 

「……騎士王の鞘だ」

 

 

 

 




まぁAUOはこの後油断して桜にパクりんちょされるので出会わないんですけどね
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