世界と友と渡り人   作:テムテムLvMAX

1 / 10
閲覧数1万突破記念に書いてみた、カルデアの皆と戯れるガデル。本編に出てきたり出てこなかった英霊たちと絡ませてみた。





寄り道話 イブァーブ・カルデア(星見台の親友たち)

 カルデアのオカンことエミヤが深く溜息をつきながらガデルにグイッと冷えたジョッキを押し当てた、長い話なので飲み物を差し入れしたのだ。ギルガメッシュは既に自前の酒にほろ酔い気分、エルキドゥは水分補給の必要はない。

 

 今は話に疲れた英霊たちの休憩タイムだ。

 

 

「うーんフレッシュ! イイ!」

 

「特製のレモネードだ、気に入ってもらえたようだな、イブァーブ・ガデル」

 

「ガデルでいいよ、エミヤさん」

 

「ならば私もエミヤでいい」

 

 

 エミヤがガデルの横に座る、持っていたコップにはホットほうじ茶だろうか、香ばしい茶の匂いが漂っている。

 

 英霊エミヤはにこやかにガデルがレモネードを飲み干す所を見ていた、それは自分のレモネードを気に入ってくれた事もあるが、エミヤにとってガデルが憧れた存在で好ましい人間だからだろう。

 

 

「ガデル、話をしてもいいだろうか」

 

「うん? 良いぞ、なんでもこい。ガデルさんは人生経験豊富だぞ?」

 

「あぁいや、そこまでのものではない。

 話というのは──」

 

 

 エミヤが語ったのは一人の英雄の話だ、その英雄は元は力を持たないただの夢見る少年で、ある日を境に争いに巻き込まれ、大事な人を失い、死んでいった。しかし、世界は少年を見捨てなかった、いや、残酷にも拾い上げたのか。そして少年は英雄となり、あらゆる戦場を駆けた、その中で光を見たという。

 

 何が理由だったかはもう擦り切れた記憶の彼方にしか確かめる方法がないが、ギルガメッシュ叙事詩から始まる世界の歴史を股にかけるイブァーブ・ガデルの伝承に己を重ねていた。あらゆる戦場を股にかける英雄と世界を股にかけるガデル、その生き方は似ていた。

 

 

「──と、言うわけでその英雄はガデルに憧れたのだよ」

 

「ふぅん、成る程、よくわかった。エミヤも大変ね、相当振り回されたんだ」

 

「いや、まぁ、私の場合は自分で望んだ面もある」

 

「その心は」

 

 

 ガデルの質問にエミヤは少し恥ずかしそうな表情で、ゴホンと咳払いして、周りに聞こえない程度の声で

 

 

「正義の味方、と言ったら笑うかい?」

 

 

 そうガデルに返した。ガデルは頷き、レモネードを飲み干した。

 

 

「真面目だねぇ、偉いよ、偉い偉い」

 

「偉い、とは?」

 

「誰かのために働く、それは褒められた事だな。なりたかった正義の味方になろうとした、行動を起こしたことも偉い。悩みとか不安とかあって当然、理想を抱えてここまで来たなら結構結構! 落っことしてもまた拾えばいいだけだしな」

 

「そう言い切れてしまうのは、やはりあんな旅の成功者だからか」

 

「そりゃそうだ、出来たから自信を持って語ってるんだ」

 

 

 エッヘン、ガデルは胸を左手で大げさに叩いて見せた。コミカルな動きだ、でも、確かに英雄だという力を感じる。

 

 

「もし貴方が私の立場だったなら本物の正義の味方に成れただろう、そう思って仕方がない」

 

「このヴァッカヤロー! 救われた人間までバカにするんかオメーは」

 

「それは……」

 

「その時の行動の意味はどうやっても後からついてくるもんだ。そうしょげんなよ、ほら、お返しに特製のカクテルやるから元気だぜって、偶には酒の勢いでドカーンとぶつかってみろ、悩むより百倍スカッとするぞ!」

 

 

 懐から3種類の瓶を取り出しグラスに注ぎ、エミヤに差し出した。その輝きは何故か飲んではイケないような、良いような、飲んだら何が失いそうな、増えそうなそんな不思議な酒である。

 

 

「え、遠慮しよう。それを飲んだら後戻り出来ないと直感が告げているので」

 

「あらら、ざんねーん。一口でもだめ?」

 

「一口なら」

 

 

 ガデルに進められ怪しげな酒をグッと一口飲む、すると口の中に灼けるほど甘く辛い味わいが広がりすぐにスッとした清涼感と旨味が支配し、もう一口飲みたくなった。また飲むと次は弾けるような口当たりとどろり溶けたヨーグルトと魚介系の風味が鼻を抜けた。でも不味いとは感じ取れない。また飲むと、その次も、また飲む。それを繰り返すこと十回、グラスは空になっていた。

 

 

「こ、これは……これは何だ!?」

 

「ネクタル、アムリタ、そんでもって八塩折之酒をブレンドしてデュオニソス神に教わったようにやさしーく魔力を込めたのよ?」

 

「の、飲んで害はないのか?!」

 

「うーんなし! 効能が殺し合ってただのヘンテコな味になるだけだ、心配するな……たぶん大丈夫」

 

 

 必死に目をそらすガデルをエミヤは目線を合わせようと躍起になった、それを見ていた酒呑童子はジュルリと狙っているようだった。茨木童子はエミヤの背中にだんだん羽根が生えてきたので黙って逃げた。

 

 

「くっ、もういい、しかし……とてつもない事をするものだ。それぞれが神秘的な品であるものを混ぜるなどと。話の続きだがでは、結局はどこを目指していたのかね。伝承では最後は平安時代頃に途絶えている」

 

「そうさな、目的地は東の果てだったからな、つまりここ。色々経由したぜ〜、話す機会もあるだろうから待ってな、とりあえずここで死にたかったんだよ。誰よりも遠くに行けば何か有るかもなっていう好奇心だけだったからな、メソポタミアじゃ王様に勝ちたいって目標だった、でも次の所では変わってるし、人生そんなもんだ」

 

 

 ガデルはあくびをしながらぐぅぅと背伸びをして背もたれに持たれ、少しだけ息を抜いて立ち上がる、その目には何が見えていたのだろうか。

 

 

「ふっ、変わった人だ」

 

「周りの人のが癖強いさ、ギルとかエルとかアルトリウスとかよりみっちゃんとか諸々がね」

 

「誰がアルトリウスだ、この大馬鹿者がぁぁぁぁっ!!!」

 

「え!? アルトリウス! あ、あーっ!? ひゃー! エミヤ助けて!」

 

「レディの名を間違える人は私の知り合いには居なくてね、さらばッ!」

 

「そんな殺生な! アバーッ!」

 

 

 こうしてアルトリアによって一人の阿呆が討伐されたのだった、まる

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ふぁーやばっ、眠たいぞ」

 

「おっ! ガデル!! ガデルではないか!」

 

「おおっ! ネロっちオッス! 相変わらず素敵だね? どう今夜は俺とカルデアデートしない?」

 

「これはまた魅力的な提案、が今は追われる身なのだ、いずれまたの機会に! さらばッ!」

 

「なーんか今日はさらばッ! って言われてる回数多いな」

 

 

 ガデルは通りすがりのネロ・クラウディウスと廊下ですれ違いつつカルデアを散策していた、はじめはマシュや藤丸立香が案内してくれるという話だったが二人共『イベント特異点』なる時空間に捕らわれたらしくしばらくは戻ってこないそうだ。なのでガデルは一人寂しくお散歩ということになった。

 

 

「おー、スゲェなぁ……俺の時代とはまるで違うもんなぁ、自動ドアにセンサー、この鉄だってどうやって加工して、あぁそういう事ね……技術の進歩は素晴らしいね」

 

「おやおや、そっち方面も得意なのかい」

 

「あ、美少女だ」

 

「私はダ・ヴィンチ、以後よろしく頼むよ。世界の渡り人さん」

 

「そんな大層なもんじゃございやせんよ、あっしはしがない渡世人でやんす、よろしければあっしとこのカルデアを巡りませんか? お嬢様」

 

「ふふっどうやら話に聞いた通りの人みたいだね、いいよ、新しいカルデアの一員に手取り足取り教えてあげよう」

 

 

 こうして万能の天才ダ・ヴィンチとガデルはカルデアを巡ることになった、一通りをぐるりと周り最後は食堂についた。そこではハレンチな水着がアレな水着と取っ組み合って猫? 犬? 狐? 6割イヌ科のバーサーカーが全部まとめて片付けた。

 

 これがカルデア……ガデルは改めて身を引き締めた、いずれは自分もああなるのかと不安を覚えながら。

 

 カルデアの案内が終わるとダ・ヴィンチから質問がガデルに出された、万能の天才が万能と認めるのがガデルであること。ではガデルの万能の出処は何処なのだろうかと、気になったという。

 

 

「イブァーブ・ガデル、世界を渡る旅人はその技術の高さ故に現代まで残る建築物や道具を作り上げた。と言われているけど。天才肌? それとも秀才? どちらなのだろうか?」

 

「あーうん、その二択なら秀才かな? やりたいことの脇道だったり延長線にある技術を一つ一つ極めて行ったらそうなった、まぁ努力故の必然と言うやつですよ」

 

「努力ねぇ、私もそう考えたけど、いくら天才だと自覚していてもふと考えることがある、この才能の出処は? まさかこの才能は神に与えられたものであって今までの研究は全て神の筋書き通りなのでは? そんな無益な考えを巡らせることもある。

 あぁ別に神が嫌いなんじゃなくて自分の物が自分の物じゃないと気がすまないというだけなんだけどね」

 

「はっきり言おう、天才だよダ・ヴィンチちゃん。俺が1から生み出す秀才だとするなら君はゼロから1を生み出すしその1を100にも1000にも出来る天才だよ、それはとても凄いと俺は思うし、真似できない。そこに関しては新旧は無いでしょ」

 

「先人にそう言われると気分が良い、ありがとうガデル、心のモヤモヤが晴れた」

 

 

 ニコリと笑ったダ・ヴィンチは丁度戻ってきた藤丸立香たちのメディカルチェックに向った、ガデルはこのカルデアというところはやっぱり良いところなのだと、改めて認識したのだった。

 

 

 

 




次は2万になったら書こっかな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。