ファイッ!
「伝え聞くギルガメッシュ叙事詩とは何だったのか、ここで聞く話は書かれていませんね」
「当然でしょ? 紀元前の粘土板が保存状態良くても何千年も持つわけ無いだろって話よ、ガウェイン君よ」
「あ、そうか、そうですね……これじゃ我が王の敵討ちはまだ遠い話ですか」
「まだ覚えてたのか、もう忘れてしまった方が良いぞ」
「出来ますかそんなこと! 貴方が我が王にした仕打ちを忘れるなんてあり得ません!」
「仕打ちって言い方やめろよ? 誤解を招く。ほらマシュちゃんが死ぬ程ジト目で見ているだろ? あれ心が痛いんだ」
◆
ガデルの提案で始まった姉妹神による決闘、ギルガメッシュが取り仕切りエルキドゥがレフェリーとなり決闘をコントロールすることになった。発案者のガデルはフンババの魂と入れ替わって冥界より舞い戻った。冥界には法がありその原則に則って生き返ったので彼を咎める者はいないだろう。
「ふぅ体がいてぇがやっぱ生きてるって実感できる」
「良かった良かった、私も頑張った甲斐がある」
「マジでありがとうエルキドゥ、所で胸に空いた穴が埋まってるんだけどこれ何?」
「私の泥で疑似的に心臓と脊椎を作ったよ、肉体は完全に死んでいたから治すにはそうするしかなかったからね……ごめん、勝手にすることじゃなかったね」
「そんな顔するな、生き返れてラッキー! 体も治って更にラッキー! 前向きに考えたらいい事いっぱいだぜ!」
「ありがとう、その言葉が救いだよ」
人類で初めてのサイボーグとなった彼は今回の戦場となる山脈へと足を運び、そこで開戦を待つギルガメッシュに会いに行った。
鬱蒼とした杉の木が視界を狭め歩くものを惑わせるがかつて狩人から森の歩き方を教わっているガデルには苦労をするほどのものではない。
「よっほっ、おっと。ふぅここに居たのか王様」
「来たな馬鹿者、今回の主犯め」
「いやいやまさか本当にこうなるとは思わなかったんだって、あの時王様達が冥界まで迎えに来てなかったら俺の要求が通らずイシュタル様死んでたよ、その点は本当に感謝したい、あと誠にすいませんでした」
「許す、だが、この悪行は永劫に忘れることはないからな? 我に忖度させたのはお前が初めてだなのだぞ? ん?」
「本当にすいませんでしたっ!!!」
自然と土下座をしていたのは彼の罪悪感なのかギルガメッシュの威圧なのか……何がどうあれガデルは迷惑を掛けた立場何も言い返せることはないのだ。
「ふむ、そろそろ約束の時間だな……来たか」
ギルガメッシュの視線は空を見ていた、太陽が輝く時間に光る星が一つある、それこそイシュタルの星、金星。
ガデルがその星を見ていると空に巨大な弓ような何かに跨り何もない空間から出てきたイシュタル、いつもの様にその金髪をなびかせながらギルガメッシュの元へ降り立つ
「ふぅん、もういたの」
「神の監視があるのでな」
「あらそう、せいぜい頑張りなさい」
「イシュタル様! 頑張って下さい!」
「ありがとうガデル、最近は神託が無くてごめんなさいね」
「いえいえ! 貰えるだけありがたいってもんです!」
「ふふふ、また神託を送るからよろしくね」
「はい!」
そこまで言うとイシュタルはまた空へ上がっていく、決闘ではどうやら上空に位置取りをするようだ。
そのすぐ後に地の底からぬるりと現れたエレシュキガルがギルガメッシュに話をしていたようだ、ガデルが気配に敏感だったらイシュタル到着と同じタイミングでギルガメッシュの影に滑り込んだ事をわかったかも知れない。もちろんギルガメッシュは気付いていた。
「ギルガメッシュ、此度は感謝します」
「神の尻拭いも人の役目よ、気にするな」
「……正式に冥界へ来たならばもてなすぐらいはしてあげます」
「はっ、ラブコメの波動を感じる」
「冥界神、いくら引きこもりとはいえホイホイ男に心を許すものではないぞ?」
「余計なお世話なのだわ!」
エレシュキガルはぷんすこしながらまた影へ沈んでいった、地上に陣取りイシュタルを迎え撃つ様だ。
役者は揃ったのでギルガメッシュはエルキドゥに合図を送り決闘の開始を伝えた、対等の条件で禍根を残さぬように殺し合えと。
そしてガデルは己の考えの浅はかさを思い知るのだった
◆
「ここが第二位の悪行よな、神を争わせたこと。イタズラではすまん話だなぁガデルよ?」
「う、今聞いても胃が痛い……本当に悪かったった思ってます。でも、その引き換えに二人の「はぁ?」うぐっ、何も言えねぇ」
「ちょっとギルガメッシュ、あまり虐めないでくれる? 私のオモチャが無くなるじゃない」
「イシュタル様ぁ! ありがとうございますありがとうございます!」
「オモチャの部分は何も言わないのか(困惑)」
◆
それは、決闘と言うにはあまりにも大規模だった。
「天の星は全て私よぉっ! 光よ! 穿てぇ!」
イシュタルが星々より光を放ち大地を撃ち抜く、そこにあったはずの山が削れ山が嘘のように平地になった。
「地の底より衝き上げろぉ! 溶岩弾フルバースト!」
エレシュキガルの号令に合わせ地の底からドロドロのマグマが放たれ、大地に新しい山ができた。
天地創造の一場面を見ているかのような荘厳さすら感じる光景だが、これがたった二つの存在が引き起こしている事に驚きが隠せないガデルだった。驚きのあまり顎が外れていた。
「えぇなにこれ」
「分かったかガデル、貴様の愚かさが」
「これは……うん、神の本気って怖いね」
「エルキドゥでなければこの中で死んでいたかもな」
「あは、あはは、ヤッベェ事になったなぁ……」
どちらも本領ではないにしろ、天地を動かしてしまう力を振るって相手を倒す事だけを考えている、『神』という存在の大きさというものを解らせられたガデルはせめて周辺都市に被害が及びませんようにと祈った。『お前のせいだろ!』という神託が下ったのは気のせいじゃない。
「いい加減くたばりなさい!」
「そっちこそいつまでも偉そうにぃ!」
煽りあい更に攻撃は激化する、イシュタルの跨がるそれは弓として機能して巨大な光の矢を乱射するとたちまち大地に大爆発が起こり星の光の比じゃない破壊をもたらした。
エレシュキガルは冥界から更にマグマを吹き上げた、何本も火柱が地面から生えてイシュタルに向かっていく。
「そろそろヤバくないですかね」
「何を言うガデル。これが望みではなかったのか?」
「こんなの予想できるかぁ!?」
「ま、それもそうであるか。そろそろ決着をつけてもらわねばな」
そういうギルガメッシュは二人に対して一言
「そろそろ決着をつけてもらわねば我とエルキドゥが貴様らを撃つ!」
停戦の申し出ではなく、撃破するぞと脅迫した。ガデルは胃袋が爆発してしまった、凡人にはギルガメッシュの行動はストレスが高すぎたのだ、争う二人も頭に血が上っていて冷静ではないのでギルガメッシュを睨みうざったらしい虫を払うように攻撃を飛ばしてくる。
ギルガメッシュは新たに蓄えた財宝でその攻撃を打ち消して、怒号を発する
「成る程それが答えかぁっ!!!」
「やるんだねギルガメッシュ」
「つくづく思っていたことがある、一度は神にも痛い目に合ってもらおうとな」
ギルガメッシュは迷わず至宝『エア』を取り出した、これから始めるのは人を弄び自らの駒のようにこき使おうとする神々に対する当てつけで見せしめ、人を代表して神に鉄槌を下し人の存在はお前たちの自由とするところではないと実際に行動で解らせる。それがたまたま今回の二人だっただけである。
まぁあの暴れっぷりを見ていたら奥の手を温存することはギルガメッシュでも無理な話なのだが。
そこからは天変地異すら生温い地獄絵図、いや星そのものがいくつも地上に降り注いだような……筆舌に尽くし難いが、言えることは一つ。彼らはやりすぎた。
天の神々たちはしばらく地上を見る気が失せた。想像を超えた局所的原初の地獄、本当のエヌマ・エリシュがそこにあったから。あぁ創造神アルルよ太陽神ネルガルよ嵐の神エンリルよ、願わくば地上を元に戻したまえ。
◆
「結局やらかしてるじゃないですかやだー!」
「何を言う? 我は王ぞ?」
「出た王様構文! そんなんだから暴君とか言われてるんだ! 同じ王としてなんか言ってやれアルトリウス!」
「アルトリアだ、次間違えたらそのケツアナにエクスカリバー突き刺してモルガーンしてやるぞ」
「あれいつもより黒いぞぉっ!?」
「だってオルタだし……ね?」
「マスター助けて! アルトリア二人に殺されるぅ!」
「うんガデルが悪いからね! 頑張ってね! 一応なにかあったら令呪切るから! 大丈夫!」
この日あまりにもアルトリア(剣)とアルトリアオルタ(剣)からのヘイトを買いすぎたガデルはケツが爆発したのだった。
この調子ではブリテンの話を始める頃には座に帰ってそうだ。
アルトリアマジギレ案件はブリテン編にて語りますのでお楽しみに