「あれは嫌な争いだった、ギルガメッシュも僕もウルクの人々も、誰もが被害を被っただけの無益な争い」
「我としてはエルキドゥ、お前に出会えた事が嬉しいがな」
「僕もだよ、二人目の友よ、もっと良い形で出会いたかったけどね」
「ふむ、そうならずままならぬ事、それこそが運命よ。宿命、天命、神の導き、それが何するものぞ……自ら掴み取る運命が『人間』たらしめるのだからな」
ギルガメッシュとエルキドゥの会話に割って入る英霊が一人、それは単純な興味だったのだろう、同じガデルを知る者同士、知らぬガデルに疑問を持つのは当たり前のことだった。
「少しいいか」
「アルトリアか、何だ?」
「その後の二人を止めに入った後のガデルは、どうなった? 死んだ事は承知している。それが物語だからな、その後はどうなった? 記されていないぞ? その後も二人だけで物語は進んでいくからますます分からないのだが?」
「気が早いね、もう少し先に話すけど、結果だけ言ってしまえばガデルは生き返る、そこに縮こまっているエレシュキガルの所から連れ戻したよ」
「まぁ何だ、ガデルは我を毒殺しようとした犯人として名が広まってその存在は無かったことにされた、その話はおいおい、早くとも我らの争いの後であろうよ」
◆
ギルガメッシュとエルキドゥの二人、神々すら恐れる暴威は天を穿ち、かき混ぜ、曇天と雷鳴と豪雨を呼んだ。稲光に照らされた二人はその事に気が付いていないのかと疑いたくなるまでに無心、その目に映るのは互いの姿だけである。
「
「ほう、中々やるではないか……我が宝具の数々! 存分に味わえ!」
エルキドゥの体の一部が鎖となりてギルガメッシュに襲い来る、本来鎖とは繋ぎ止めるもの、非殺傷性であるはずのそれが人の四肢を引き千切らんと伸びてくる。一個二個の話ではなく、十や二十の鎖がギルガメッシュを捕らえんとするのだ。
だが、ギルガメッシュも暴君であり、力を持つ者。蓄えた財を宝物庫より直接撃ち出し鎖を全て撃ち落とす。その全ては風より早く、音速を超えて繰り返される選び抜かれた特攻兵器。いわれを持った宝具達を無造作に放てる事こそギルガメッシュの強さの表れである。
「ほれ! ほれ! ほれ! その程度なのか! 神々に! 星の力で造られ生まれし者よ! 我が財をくれてやるのだ、もっと抗ってみよ!」
「人よ、天を繋ぎ「隙だらけだ」がアッ!?」
「貴様……ぬるい生活の中で如何ほどの力を失ったのだ? それでは粗製と変わらんではないかっ! 見せよ! 見せてみよ! 我に歯向かう愚か者の醜き本性を!」
迫る鎖は全て迎撃しエルキドゥの懐へ飛び込む、不意をついて空中へ投げ捨て上下左右、斜め、後ろと前から、予測可能対処不能の全方位からの宝具爆撃、その一つ一つが英雄一人分の破壊力を持ってエルキドゥの体を貫き、抉り、削り取り、爆裂させ、砕き、微塵に引き裂く。
地上に落ちた頃には見るも無惨な、人の形が辛うじて分かるほどの損傷。両腕足はない、目はまだ左目が残り胴体は右腹部がきれいに円形に無くなっている。でも、一滴も血が流れていないのは、被造物、兵器、人でないものである紛れもない事実を語っていた。
「いやいや、私はまだ本気ではない。ここでお前を殺さなければガデルが死ぬんだ、だから私は『私』を捨てる……ぅぅう! は、がぁっ!
──我が身は泥ゆえに千差万別の形となり、姿を変え、あらゆるを模倣する。慄き竦め
「飲まれた? いや戻ったか、それが本来有るべき力だな。もう人の言葉を解せぬか」
エルキドゥの体は崩れ、輪郭を無くし、一つの泥となり、新たに作り上げたのは獣の形。その姿は初めてガデルが出会った頃と同じ姿だった。あの頃ならば赤子のような無知で純粋なだけであったが、人の心を得て正と負の感情を理解した今は、欠陥だらけの兵器は、暴走するしかなかった。
その力はまさに神の創造物に相応しく、放たれたギルガメッシュの宝具を飲み込み無力化するだけでなくお返しとばかりに撃ち返し、取り込んだ宝具の魔力を吸い取り泥の体を大きくより大きくしていく。行動こそ雑把で幼稚になっていくがその分力を増していく反撃すればするほどエルキドゥは強くなっている。
「アアァァァァ!」
「獣め! 雑に知恵をつけよって! うがっ!?」
エルキドゥがギルガメッシュを巻き取り泥の中へ沈める、その泥はただの泥ではなく、神性を強く縛る鎖と同じ意味を持っていた。神と人のハーフであるギルガメッシュには抜け出し難く、自分すら巻き込んだ宝具の爆撃、結局はガデルと同じ自爆で抜け出した。
「ウォォォォオオオオウウゥゥゥゥ!」
「仕方あるまい! 一斉射でカタを付けてやろうっ!」
ギルガメッシュは断腸の思いで決心した、自身の持つ財を同時に全て使いこれ以上ない飽和攻撃で一切合切を吹き飛ばすつもりだ。宝物庫中の宝具をかき集めリロードし、壊れた幻想として放つ、エルキドゥに勝つにはこれしかない。
タイミングを見計らい、行動阻害の宝具を打ち込む
「ガァァァァウウウウァァァァァォォォォア」
「お前は強かった! 故にこれは手向けである! 受け取れぇい!」
全砲門開放、ギルガメッシュの背から続々と現れる黄金の波紋、その数二百。エルキドゥを囲うように配置されたそれから降り注ぐのは壊れた幻想と化した宝具、一発で勝敗を決するほどの威力を持つそれを、数百数千あるいは数万の輝かしき武具達を撃ち尽くす。
エルキドゥの体は瞬時に粉微塵に砕けるも再生する、しかしまた粉微塵に砕け、また再生する、また砕け、また再生した、砕け、再生、砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け再生砕け──
終わったのは夜明けであった、朝日が差し込むとそこには土塊の山だけが残されていた。
◆
「我ながら派手にやったものだ、初めて真剣に確実に相手を殺す為に全力を出したのだからな」
「あのときはそれで良かった、むしろ、もっとやって良かったかもね」
「後の展開を考えるとな、その時の千里眼はガテルを見ておらなんだ。そのことだけが悔やまれる」
◆
「エルキドゥ! エルキドゥゥゥゥ!」
「……」
「ギルガメッシュ……っ! エルキドゥはどうした? 俺の、俺の友はどこへ?」
「その土塊が見えるか、それこそが貴様の探す友である」
「あ、うぁ、ァァァッ、エル……」
ガデルがここに来たのは二人の勝負に決着が付いた後だった。
エルキドゥを止められなかった己の力不足を悔やみ、友を殺したギルガメッシュを恨み、ここに至るまでの運命を呪った。
ガデルがギルガメッシュに立ち向かうことはない、心は復讐ではなく死んだ友へ向けられているから、死んだ友の亡骸は土塊であるがそれをそっと抱きしめる。
「!? っ離れるぞッッッ!」
突然ギルガメッシュがガデルの襟首引っ掴んでその場から飛び退いた、ガデルは驚くよりも先にギルガメッシュの目線の先にあったものを見つけ行動の意味を理解する。
先程の土塊から大地を突き上げそれは大きな泥の巨人が現れた、複数箇所に輝きを放つ宝具が刺さっているがもはやあの巨大な体では毛の一本より小さな物だろう。
山一つの高さがあるそれは、ガデルとギルガメッシュには考えたくもない魔力量を蓄えて、周囲の土を吸いまだ大きくなろうとしている。
「よもやこれ程とはなぁ、アハハハハ! ウァハハハハハ! あるもの全てを使い果たし、容赦なく打ちのめした。しかしお前は強く立ち上がる! 良い! 結構! その力を認めよう! だがこれから先は児戯では済まされぬ、ガデルよ、あの友を止めたいのであろう?」
「もちろん! あんなのはエルキドゥじゃねぇ、死んでも止める!」
「今は貴様の力に頼らざるをえん、ザババが認めたその技量、しかと我が目に見せてみよ! 余りの防具であるがこれをやろう、あの巨体の攻撃は数発程度は防げよう、生憎武器は品切れ故な勘弁せよ」
「いやいやありがてぇって、ん? これ俺の作った奴じゃね? あ、そうだよ、銘が入ってる」
「友を倒すのに自分の力以外は要らぬ、そうであろう?」
「粋だねぇ! いっちょやったりますよ! ……ギルガメッシュ王、俺はアンタを恨んでるけど、本気の本気で悪いやつじゃないのも今分かった、この戦いが終わったらエルキドゥに謝ってくれよ、エルキドゥにも謝らせるからさ、そしたらチャラにしよう。恨み続けるのも恨まれ続けるのもの疲れるって話だぜ」
「王に説教か、たわけ。そのようなこと百も承知だ。ただ一つ言うならばその場にお前が居なければ和解出来ぬと心得よ、我ではなく、お前の友が許すまい」
変わり果てたエルキドゥを止めるために二人は立ち向かう、そこには何か奇妙な友情が芽生えていた。同じものを友と呼ぶ二人だけに分かる友情が。
(思った以上に話がまとまら)ないです