「あれはまさに熾烈、我の至宝を使う一歩手前であった」
「その時のことはよく覚えてないけど、よほど暴れたんだね。僕は」
「そりゃもうグガランナがあっふーんって言えるぐらいにはな! グガランナはいっちゃ悪いがデカいだけ、エルキドゥはデカくて更に変に反応するからやりづらかったねぇ」
「正直エアでまるごと消し飛ばしたほうが速かった、そのようなことはするはずもないが頭を二度三度過ぎったな」
「まぁ良いじゃないか、今はこうしてガデルが僕のそばにいる。これほど幸せなことはないよ」
「よしよし……そろそろ離れてくれないか? ぬぐぐ、力つぇぇ!?」
「君が神性なのがイケないんだよ、ふふふ」
◆
暴走するエルキドゥに二人の勇者が立ち向かう、ガデルとギルガメッシュだ。泥の巨人となったエルキドゥには生半可な攻撃は通じない、最も今の彼には星の聖剣の一撃でも生半可だと言えてしまうだろう。
「王様、作戦は?」
「時間を掛けてあれが蓄えた魔力を使い果たすまで粘る、だがこれは最後の最後だ。なぜかは分かるな?」
「そーなると被害が増えるか、なら隔離してとか?」
「無論策としては悪くないだろうが状況がそれを許さん、我の宝物庫はほぼ空である」
「むむむ手詰まりじゃのう、王様なんかない?」
いっそ清々しいほどにガデルはギルガメッシュに思考を投げた、今はそれが最善手なのには変わりないが少々情けない話である。
しかし、悠長に話すことはエルキドゥは望んでいないようでウルクを食らわんと暴れる
「チッ! 一先ずはあれをウルクから離す!」
「了解!」
ガデルは身体機能を強化魔術で引き上げ巨体を蹴り上げるがびくともしない、それでも注意を引くことができ、ギルガメッシュの全力をぶち当てる猶予ができていた。
「ハーフAUOキャストオフ、どっせぇぇぇい!」
「フォァァァァァアァァァァァ」
「はあっ!? 浮いたぁ!?」
上半身の鎧を脱ぎ捨てエルキドゥの体を持ち上げた、山を持ち上げた? あ、英雄王だし良いか、そんなもんか……
流石の英雄王と言えどそこまでが限界で苦しそうな表情に怒りを浮かべてガデルに怒鳴る
「何を見ておる! 手伝え! これを蹴り上げろ!」
「お、おう!」
ガデルは言われたままエルキドゥを全力で蹴り込んだ、助走をつけたドロップキックにギルガメッシュも合わせて力を更に込めウルクから僅かながら遠くへはすことに成功した、僅かでもウルクから出してしまえば守りようがあるとギルガメッシュは豪語する。
そして一つ気付き、やむ無しと言いった思いでつぶやく。
「……そうか、それしかない」
「いい策思いついた?」
「あぁ、エルキドゥは今周りから魔力と泥を集め自身をかさ増ししている、だがそれは元のエルキドゥが大きくなった訳では無い。
そも神々が創り上げたエルキドゥと言う泥の複製はただ土や魔力を吸い上げ取り込むだけでは不可能だ、何かしら別の機能があるならまだしもな。故にエルキドゥと泥は本質的には混じり合わない、あの巨体はいわばハリボテ、本体は別にいる。狙う隙はそこだけだ」
「その本体はどこに? 見えるの?」
「見えている、だがあの巨体の奥深くだ、山を切り開く苦労が要るだろう」
ギルガメッシュが指差す先には泥の巨人の中心、人で言うなら心臓部分のあたり。流動的で意志ある山のような巨体が相手となれば、英雄も無理の一言で片付ける所だ。
「あーマジかよ、こんな時に神様が助言くれたらなぁ」
「神に頼るな……と言いたいが今回はケジメを付けさせるか、イガリマを一度使わせてもらうとしよう、あれならば同じ神造兵器に有効打に成り得る」
「あぁ良いねぇ、コイツなら扱いも大体分かる、神様の武器を無断で使うのは恐れ多いがそこは事後承諾してもらおう」
「ますますお前だけが頼りだな、我は守護を主に立ち回る、対処は任せたぞ場合によって」
「作戦が決まった! あとはお任せあれってね!」
「なっ!? おい貴っ……行ってしまったか、むぅ、んん、いずれにせよ気付くことか。我が言うまでもない、せいぜい対処に苦しめ、己の撒いた種にな、おっといかんつい愉悦ってしまった」
作戦が確定したところでガデルは飛び出す、ギルガメッシュはあとに続きウルクの被害を減らすために防御宝具による障壁を張り、余裕があればガデルへの攻撃を減らすために注意を引く。
ガデルといえばイガリマを片手に泥を切り開いていく、泥の触手がムチのようにしなり、槍のように尖った泥の塊が無数に撃ち出され、剣山のような突き立つ地面が行く手を阻むが彼はその程度では止まらない。
「エルキドゥ! 今行くぞ!」
イガリマの一振りでムチを切り落とし撃ち出され槍は一つを掴み振り回す事で防ぐ、剣山の足場は突き立つ針の側面を蹴るという変態的な方法で駆け抜けてぐんぐんと泥の巨人の中心部に登っていく。
高く高く登っていけば、酸素は薄くヒヤリとした空気が肌を刺す。たがそれで止まるのは今更である、白い息を吐きながら泥を切って切って切り続ける、そして心臓部分にやっと辿り着くとそこにはエルキドゥが
「いない! どこだエルキドゥ!」
「こ、こ、だ、よ」
油断した所に足元へ引き摺り込む、泥の中へズルズルと。今度は縛るものではなく優しく包み込むように、それでいて蕩けるようにほぐすように、どこか官能的に泥が蠢く。息苦しさは無く、呼吸は出来ていた。泥の中に引き摺り込んだのはやはりエルキドゥだった。
「エルキドゥお前この野郎!」
「な、に、?」
「勝手に突っ走って暴走しやがって!」
「ふ、ふ、きみの、ため、だよ、?」
「もういいよ、もう戻ろう。王様もエルキドゥに謝るって言ってるしさ」
「わ、た、し、はここ、に、がでる、と、ずっと、いっ、しょ」
「エルキドゥ!? イダダダ痛いっ! 痛いって! おーい! エルキドゥさーん!?」
エルキドゥは抱き着いたガデルを離さず強く強くいっそ潰してしまうほどに強く抱き締めた、その顔には何も表情はない、いやその目には確かに感情が渦巻いている、ドス黒い粘着性の欲望が。
「ガデル、ガデルはさ、私は嫌いかい?」
「いや全然」
「ならなんで私を否定して、私のやることに邪魔をするのかな」
「友達だからな、なんだやっといつものエルキドゥに戻りやがって心配したぜ。早く出ようこんなところ、暴走なんていいことないだろ?」
「……暴走したのは認めるけど、この暴走含めてこれが私だよ、偽らない私の本心だよ。君のために、友のために頑張るのは当たり前じゃないか? 君はそう言ったよ」
「その頑張りが間違えてるから友として止めに来た、友達ってのは難しい、だから良いんだ。俺はもう王様だって友達だと思ってる、一緒にエルキドゥの為に頑張ったからな!」
「ならもう、私は要らないのかい、人は新しいのものが好きだろう」
「ないない! いつだって『お前が一番』さ!」
「ふぇっ?!」
「え、そこで照れるの? まだまだ不思議じゃのうエルキドゥさんや」
「いや、そうか、友達以上なんだね、私達は(恋人並感)」
「まぁ、そういう言い方もするかもな(親友並感)」
ここに、歴史的すれ違いが発生したのは言うまでもなく。
このあとはエルキドゥが暴走から開放された事で泥の巨人はその存在を保てなくなり大量の泥から這い出てきたエルキドゥとガデルを見てギルガメッシュは頬が緩んだ。
「ギルガメッシュ王! 戻りましたぜ!」
「よくやったガデル、我が友よ」
「うへへどーも聞こえてたの?」
「地獄耳なのでな」
「その、すまない、ギルガメッシュ」
「良い、我と競り合い勝ったのだ、我もカッとなってしまったことは謝ろう、それが約束だったなガデル」
「おうともさ! さぁこれで万事円満に解決!」
「そう、そうだな」
「ふふ、ガデルらしいね」
こうして三人は和解して友となり、朝日が物語の始まりを告げるように照らしていた。
エルキドゥ、その存在の有り方は神の尖兵であるだろう。思考する兵器は本来の命令を忘れていた、しかし体は、センサーは働いていた。抹殺対象が近くに居ることを、それもこれ以上ない程に弱っている。対してこちらはこれ以上ない程に魔力が滾っている。
「私の体がやめっ!?」
「避けろっ! があっ!?」
「!? っ……エルキドゥ! 貴様ぁっ!」
そしてシステムはプログラムを走らせる、心をノイズと断定して一時的に封印し、目の前のギルガメッシュの油断仕切った懐に突き刺す『
ギルガメッシュを庇ったガデルの命を。
「私が、いやだ! 私がそんなこと! いやいやイヤいやいやあぁぁぁぁ! 死ぬな死なないでくれガデル! お願いだ! 私をを置いて行くなぁぁぁ……あ、ぁぁぁ」
深く突き刺さった鎖はガデルの心臓を貫き、背骨を砕いて反対側へ見えていた。もうどうあがいても助からない、ガデルは既に事切れていた。息も心臓の鼓動も生命活動の全てが止まっている。
血溜まりの中でエルキドゥは項垂れ膝をついてガデルの体を抱え上げ胸で抱き締める。優しく慈しむように、ずっと、ずっと、体が朽ち果てるその日までそうしていようと。
エルキドゥの凶行にギルガメッシュは怒り心頭になるがそれが直ぐに誰の仕業であるか察するだけは冷静さを残していた
「……クソッ忌々しい神共め! 我から友すら奪う気か!」
ギルガメッシュの声が空の上にある神々まで届いたのかは分からない。
曇らせ良いっすねぇ?いや?なら次回ザオリクしましょうねー