いつからだろうこの街にいるのは...
いつからだろうこの国にいるのは...
いつからだったろう...
ここにはいくつか私の知っているものとは違うものがある。
まず、ここの住人は笑わない。もとい、表情がない。
ここにきて、初めてあった人にかけられた言葉は
「そのマスクいいね!どこで買ったの?もしかしてオーダーメイドだったりするの?」
だった。
ここでは、マスクをしているのが当たり前のようだった。
他にも生活している上でわかるのだが、外で飯が食えるようなところがない。
一軒だけだがあることにはある。でも、そこにいるのは自分の回りにいる人とは明らかに違った。
そこにいる者達は満面の笑みというか、いやらしい笑みを浮かべて食事をしているのだ。
まるでそこにいない者たちを蔑むように...。
ここで食事をしているのは、”マスク”をしている者達。上位階層の者達のようだった。
反対にマスクをしていない者達。彼らは”仮面”をしている。
この仮面はいかにも大量生産品というような感じで、下級階層の者達が身につけていた。
私は明らかに彼らとは違うが、ここに住み続けていてもなんの支障も無かった。
扉を叩く音で目が覚めた。
まだ、夜が明けて間もない頃だったが特に苛つきもなかった。
隣の部屋の住人はこの時間から起きだし、仕事に行くのだ。これまでも何度かその音で目が覚めていた。
扉を開けると、小さめのダンボール箱がおいてあった。
それは、案の定お隣さんからで中には”仮面”と紙切れが入っていた。
紙切れには、ここでマスクをしていると目立つから仮面を使ってほしいという旨の内容だった。
確かに周りには仮面をつけている人しかいないのだから、そうして欲しいというのも納得できる。
もらったものだから、使わないわけにはいかないと思い早速つけてみることにした。
つけようと裏向けると、少々違和感を覚えた。
仮面の内側は凹凸がなく滑らかだった。
大抵こういう物は、鼻の部分や口、目などが凹凸になっているのが普通だと思うのだがそうなってはいなかった。とにかく、滑らかな曲線状だった。
このままでは、つけられないので少し加工することにした。
鼻の部分を削り、目の部分をくり抜こうかと思ったが、街にいる者達の目は動いてはいないように見えたので、くり抜くのはやめた。
代わりに、全部は抜かずまばらに抜いて外が見えるようにした。
なかなか、よく出来た気がしたので満足して眠りに落ちた。
朝、扉を叩く音で目が覚めた。
お隣さんぐらいしかこの時間に起きている人はいないので、誰かはすぐにわかる。
すぐに出ようと思ったが、仮面をもらったことをすぐに思い出しつけてから出ることにした。
扉を開けると、お隣さんが立っていた。
お隣さんと顔をあわせるのは久々だった。でも、どうせ仮面をしているのだから気にすることはないと思っていた。そう、お隣さんは仮面をしていなかったのだ。
初めて、この国の者達の素顔をみて驚愕した。
彼らには顔が無かったのだ。おおよそ顔のパーツがあるべき場所には何もなかった。
そして、顔は真っ白だった。白い楕円球が首の上に乗っていた...
その時、私はどんな顔をしていたのだろうか。仮面をしていたから良かったものの、していなかったら今頃どんな反応をされていたのだろうか。
お隣さんは自身が仮面をしていないことにも気が付かずに、仮面似合っているよと言って行ってしまった。
それから数日の間私はこの街から出ようと奮闘した。
でも仮面は外れないし、街に出ると吸い寄せられるようにして仮面をつけた人達のもとに行ってしまう。
お隣さんはもうどこかに行ってしまった。
仮面を外そうと躍起になっていると、次第に顔に感覚が無くなっていった。
口は動かせないし、匂いもわからない。目だけは不思議と見えていた。
でも、それももう見えなくなった...
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またひとり、だれかがこのまちにまよいこんだみたいだ。