異女子   作:変わり身

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「山」の話(上)

 

これまで何度も主張しているが、私は長い休みがあんまり好きじゃなかったりする。

 

いや、好き嫌いというよりは、得意不得意の問題と言った方が正しいか。

とにかく私は、春休みや夏休みなどの長期休暇がすこぶる苦手なのである。

 

理由は言うまでも無く、家の居心地が悪すぎたからだ。

 

少し前、『親』を『うちの人』と呼んでいた頃は、そりゃもう酷かった。

何を話しかけても無表情の無反応で、そんなのが家のそこら中に立っていて、四六時中ずーっと私を見つめて来るのだ。

その不気味さたるやノイローゼになるレベルであり、そんな家で寛ぎたいと思う奴なんて居る訳がない。

 

まぁ家の外にだってアイツらはワラワラ居たけど、それでも家よりはだいぶマシだった。

特に学校ではほとんど無表情を見かけなかったから、たとえ爪弾きにされようが何だろうが、心落ち着く場所として自然と拠り所となっていた。

 

……後から『親』に聞いた話では、学校だと私との距離が近すぎて、身体を送り込んでも事あるごとに無反応モードになり周囲に溶け込めなかったからだそうな。よかったマジで。

 

ともあれそんな感じなもんだから、学校に行けない休みの日は中々に困ってしまう。

 

週末祝日の一日二日であれば、日中どっか遊びに行って暇を潰すだけだから問題は無い。

だが、それが五日十日と続いてしまうと話は別だ。

 

毎日毎日過ごす内に行く場所の選択肢は狭まっていくし、何度も行けば飽きも来る。

かといって家でダラダラなんて出来る筈も無く、最後には一日一日の時間潰しに大層苦慮するハメになるのである。

 

特に夏休みなんて一か月以上の長期休暇だ。

八月の序盤で行ける場所には行き切って、残りはそこらの森や川をウロウロしてやり過ごすのが通例となっていた。

いやあれはあれで楽しかったような気はするが、じっくり考えないと思い出せないくらいには虚無の時間でもあった。

 

去年になって、やっと純粋に長い休みを楽しめるようになったけれど……それも今となっちゃ終わった話だ。

 

楽しかった理由は居なくなったし、『親』とは多少話すようになったとはいえ嫌いな事に変わりは無いし、家の居心地だってどっちかと言えばまだ悪いまま。

だからこの夏休みだって、色々最悪だった今年の春休みとまではいかないとしても、以前と同じつまんないものに戻るんだろうなって、漠然とそう考えていた。

 

 

(…………)

 

 

……なのでまぁ、何というか。

重めの溜息と共に迎えたその夏休みに、まさか『親』と一緒に遊びに出かける事になろうとは、私は夢にも思わなかった訳である。

 

 

 

1

 

 

 

七月の末。

夏休みに入ってすぐのとある朝、私は街中を車に揺られて進んでいた。

 

運転しているのは、当然『親』の身体のひとつ。

市内にある大学の三年生だという、根元が黒い金髪女性のその身体は、やはりいつもの無表情でハンドルを握っていた。

 

 

「……もう少しで目的地だ。降りる準備をしておきなさい」

 

 

無言だった車内、突然バックミラー越しの視線がこちらを捉えた。

私はそれを小さく見返し……わざとらしく大きな溜息を吐き出した。

 

 

「なぁ、マジでついて来る気なん? ほんとヤなんだけど……」

 

「いいや、ここは譲らん。逆に問うが、お前の話を聞いて放っておけると思うのか」

 

「……思わないですぅ」

 

 

それを言われると何も言えねぇ。

 

そうしてしわしわ顔で肩身を狭くする私に、『親』はこころなし満足げに頷きを一つ。再び無言になり、どこか軽やかなハンドルさばきで道を左折する。

すると少し先に看板が立っているのが目に入り、通り過ぎ様目をやった。

 

――『ようこそ、芦高ふれあい自然キャンプ場』

 

 

「……はぁ」

 

 

また溜息。

私は車の窓際に頭をもたれ、流れる景色をうんざりと眺めていた。

 

 

 

 

――今日と明日、私と『親』はとあるキャンプに参加する事となっている。

 

以前アゴ男から誘われた、あわよくばの出会いを目論まれているキャンプ会である。

ここ芦高川の付近にその施設があるそうで、話では一泊二日を予定しているとの事らしい。

 

参加者は私とこの『親』の身体を含めて五人。

主催のアゴ男と、アイツと何か仲良さげな髭擦くん。そして女側の保護者役にするつもりで急遽呼びつけた黒髪女という、いつぞやのカラオケボックス(偽)生還メンバーだ。嫌なメンツ。

 

……いやまぁ、ただでさえ気が進まんというのに、その上『親』まで一緒だなんて正直とってもイヤだった。

しかしキャンプの件を伝えた瞬間、一緒に行くと言って聞かなくなってしまったのだ。

一体何でそこまで――そう聞けば、『親』はやたらと剣呑な雰囲気で一言。

 

『中学生と合コンするような大学生どもに、泊まりの保護者が務まるか』

 

ぐぅの音も出ず。

脛に傷ある身じゃハッキリとした抵抗も難しく、私はしわしわと『親』の参加を受け入れざるを得なかったのであった。ちくしょう。

 

 

 

 

「……つーか、保護者がどうのこうの言うなら、あんただってさぁ……」

 

「自覚はしている。故に参加する事への口出しはしないが、しかし看過もまた出来ない」

 

 

ぼそぼそとした呟きだったが『親』の耳には届いていたようで、しっかりと返されてしまう。

……何となく気まずくなって黙り込んでいると、バックミラーの目がまた私に向けられた。

 

 

「……お前こそ、どういったつもりなのだ」

 

「何が」

 

「何故このキャンプに参加する気になった。髭擦くんへの義理があるにしても、我々が一緒に行くとなった時点で、お前であれば断りそうなものだが……まさか、また何か弱みを……」

 

「ねーよ! 今度はちゃんと自分の意思だっつーの」

 

「では、何故」

 

「…………」

 

 

私は暫くぼんやり窓の外を眺め、バックミラーの視線が離れない事に舌打ちひとつ。

窓の外を向いたまま、ただの独り言として呟いた。

 

 

「……みんなで行くか、後で行くかの違いなんだってさ」

 

「……?」

 

「ならまぁ、付き合ってやろっかなって。そんだけ」

 

 

それきり私は黙り込み、後は何と声をかけられようと無言を貫く。

『親』もやがて諦めたのか、私から視線を外して静かに運転へと集中した。

 

朝も早いというのに、既に小さな陽炎が道の先で揺らめいていた。

 

 

 

 

 

 

芦高ふれあい自然キャンプ場は、芦高川から近辺山中までに渡る、そこそこの規模の施設である。

 

田舎エリアと森林エリアの境目付近にあり、街自体からはそう離れていない。

パンフレットを見た限りではロッジやシャワー設備、アスレチックエリアなどもキチンと用意されているらしく、傾向としてはガチではなくエンジョイなキャンプを堪能する場所のようだ。

 

とはいえ決して自然の空気が薄い訳では無く、緑は濃いし空は広い。

高い山から流れる川も澄んでいて、少し登れば綺麗な渓流も楽しむ事が出来るだろう。

少なくとも、キャンプ場の入口受付へと続く道に見えた景色では、そんな雰囲気だった。

 

 

「――あっ、おーいタマちゃあん! こっちこっちー!」

 

 

そうして停まった車から外へと降りた瞬間、私を呼ぶ大声が響き渡った。

 

見れば少し離れた場所に停められた車の前に、三つの人影が集まっていた。

アゴ男と黒髪女、そして白目少年――もとい、髭擦くん。今回のキャンプ会のメンバー達だ。

向こうは向こうで勝手に集まるとの事だったが、私達より早く着いていたようだ。

 

鬱陶しいくらいにぶんぶんと手を振ってくる黒髪女にひらひら振り返し、『親』と一緒にそちらへ向かう。

 

 

「おひさ~、元気だったあ? いやー呼んでくれて嬉しいなぁ、こういうお出かけもう絶対一緒にやってくれないだろうなーって思ってたからワタシねぇ――ぐえー」

 

「だから抱き着いてくんなや鬱陶しい……!」

 

「……お前とその人、そんなだったのか?」

 

 

顔を合わせるや否や腕を開いて駆け寄って来た黒髪女をアイアンクローで拒否していると、後から来た髭擦くんが意外そうな顔を向けて来る。

まぁ彼は瞳の濁ってた頃のコイツの姿を知っている。あの時からすれば、いっそ気持ち悪いくらいの変わり様ではあるだろう。

 

 

「……こっちも色々あったんだよ。つーかそれ言うなら、あんたとあのアゴだって――」

 

「――どーーーも初めまして! タマちゃんの親戚の人っすよね! 聞いてますよぉ!」

 

 

と、丁度その時、件のアゴからやたらとハイテンションな挨拶が飛び出した。

黒髪女をぺいっと投げ捨て「ひどいよお~……」振り向けば、そこでは件のアゴがだらしない顔で『親』にぺこぺこ媚びていた。

 

 

「いやーやっぱタマちゃんのお姉さん? いとこ? だけあってめっちゃ美人さんっすねぇ! 今日明日、ご一緒よろしくお願いしますぅ!!」

 

「……二山(にいやま)。おかまいなく」

 

 

対する『親』はバチバチに開けられたピアスの一つを弄りつつ、いつもの無表情とは違うダルそうな様子でそう名乗る。『親』ではなく、『二山』としての振る舞いだ。

 

……私の前では自動的に素の人格たる鉄仮面になる『親』だが、最近は私が近くに居ても、他人とのやり取りであればそれぞれの身体の人格を出せるようになっている。

そして今回のキャンプにあたっては、私とのやり取りでいつ鉄仮面が引きずり出されても違和感を持たれにくいよう、それと近い人格の身体を見繕ったとの事だった。

 

素っ気なく不愛想で、冷たい印象を受ける女……私からすれば不気味さ無機質さが足りない気がするのだが、何も知らん人からしたら急に『親』に切り替わってもそんなに違和感は無い、のだろうか。

 

 

「いやぁ構いますてぇ! ガッコ違っても先輩なんでしょ? ならやっぱ敬意とかそういうアレとか、ねっ! むしろ二山(ニャマ)先とか姐さんとか、ねっ! でへへへへ」

 

「……チッ」

 

 

……どうだぁ?

『親』はしねーぞあんな鬱陶しげな舌打ちなんか。

 

微妙にモヤモヤしながらそのやり取りを眺めていると、同じくそちらを見ていた髭擦くんが何やら言い辛そうに話しかけて来る。

 

 

「……なぁ、あの人ってアレか? お前の親戚って言うんなら、その……保護者というか何というか」

 

「ん。つーか私んとこはアイツと私しか居ないから、親戚ってなると全部アレ」

 

「……何度聞いても意味分からんな、お前の家族は」

 

「ほんとだよ――うぐ」

 

 

引き気味に呟く髭擦くんに心底から頷く内、いつの間にか復活した黒髪女が「内緒話まーぜてよお」と背中からもたれかかって来た。

薄紅色のイヤリングがすぐ横で揺れ、うっと呻いて顔を離す。

 

 

「ワタシ、保護者役だよーって聞いてたんだけどなぁ。何で違う人も呼んじゃうかなぁ……もしかしてあんま信用ない?」

 

「そうだよ最低値割ってっからアイツ強引について来ちゃってんだよ文句言うより反省しろボケ」

 

「ひ~ん……」

 

「……まぁ、仲良さそうでよかったな」

 

 

仲良くねーです。

纏わりつく黒髪女をまた引きはがし、私は一際大きな溜息を吐き出した。

 

 

 

 

 

受付を済ませ移動した先は、川の流れるだだっ広い平野だった。

 

川の流れに沿ってある程度の範囲が整地されており、その外側には山に繋がる雑木林が広がっている。

川辺というから小石の敷かれた河原を想像してたけど、思ったよりも山成分が強めだった。山成分って何だよ。

 

 

「――よーし、じゃあここらへん拠点にすっかぁ」

 

 

アゴ男はそう言って、駐車させた車のトランクを開け放つ。

 

雑木林に程近く、川からはだいぶ距離をとった場所だ。

他の利用客のものらしきテントも近くには無く、木々で日差しも程よく遮られている。さわやかな風の吹き抜ける、静かで雰囲気の良い木陰だった。

 

 

「ふーん……ここにテント二つ並べんすか? 男女分けで」

 

「や、今回はタープ……屋根だけなのと昼間過ごす用のやつだけね。あっちぃし女の子多いしだから、泊まりは部屋借りてんのよ」

 

 

そう言って指さされた先を見れば、雑木林の奥の方に大きめの建物が見えた。

すぐ近くには看板もあり、宿泊施設や食堂があの中に入っている事が読み取れる。あそこに予約を入れているらしい。

 

 

「キャンプとは……?」

 

「ままま雰囲気よ雰囲気! どうしてもってんならテントの方で寝てもいいしさ! ま、張っちゃお張っちゃお!」

 

 

アゴ男はそうヘラヘラしつつ、車からテントのパーツを取り出していく。

 

そうしてみんなで協力してテントの設営にかかる訳だが、どうもアゴ男はここをアピールタイムにしようと目論んでいたらしい。

妙にカッコつけた動きで黒髪女と『親』へと近付き、得意げにテントの張り方指南を始めた――のだが。

 

 

「へへ、クロユリちゃぁん、ニャマ先ぱぁい、これねペグっつって――」

 

「もう打ち終わった。次」

 

「えっ、あハイ……じゃ、じゃあね、この幕と縄は――」

 

「終わった。次」

 

「ォァ、えっと、えっと――」

 

「終わった。次」

 

「……あ、あれぇ、もしかしてニャマ先たら経験者――」

 

「おっけ、タープ完成」

 

「わぁすごーい」

 

「ワァーーー!? 俺のいいとこ全部取られたァーーー!!」

 

 

私と髭擦くんの子供組がテントのシートをどこに敷こうか迷っている間に、タープとやらはいとも容易く聳え立ち、アゴ男の計画は木っ端微塵に砕け散っていた。

 

まぁ何百年分、多種多様な人生経験を持つ『親』だ。

その中には兵隊とか冒険家とかやったプロの身体も居たんだろうし、趣味で多少かじったレベルじゃ及ぶべくも無いのだろう。

そうして哀れに項垂れるアゴを気にもせず、『親』がこちらをじっと見た。

 

 

「…………」

 

「……なんだよ」

 

「……いや……、……、手伝いなどは、要るだろうか」

 

「私達が手伝ってる側なのに更に手伝われちゃ意味ねーだろ、ほっとけ」

 

 

しっしと手を振り視線を散らせば、『親』は微妙に俯きながら目を逸らす。

 

何だアイツ。

そう首を傾げていると、何故だか髭擦くんが気まずげな顔で青空を仰いだ。何だよ、何か文句あんのかおら。

 

 

 

 

 

そんな感じだから当然、テントの設営は予定よりもだいぶ早く終わった。

 

昼時まで結構な時間が空いたが、キャンプはまだ始まったばかりで楽しみはまだ幾らでもある。

昼食の準備も大人組の方でやっておくとの事だったので、お言葉に甘えて軽く周囲を散策してみる事にした。

 

同じく手隙の髭擦くんと共に、川や広場をぶらぶら回る。

夏休みだからか他の利用客も多いようで、そこらを駆け回る子供の姿も目に付いた。

 

なんとなくそれを眺めていると、髭擦くんが独り言のようにぽつりと零した。

 

 

「そういえばお前、他は連れて来なかったんだな……」

 

「んあ? あぁ、足フェチ? 一応誘ったけど、陸上の大会と被ってんだってさ」

 

「…………そうか」

 

 

正直メンツがメンツだし不参加でホッとしているのだが、足フェチは本気で悔しがっていた。

まぁ長い夏休みだし、その内に改めて誘ってみてもいいだろう。そう一人検討していると、髭擦くんは何やらまだもごもごと言い淀んでいた。

 

そんな様子に私は軽く眉を寄せ――そこでようやくピンと来た。

 

 

「……あのなー、前のアイツなら幻みたいのだったって言ったろ。往生際悪いぞ」

 

「ぐ、な、何も言ってないだろう……」

 

 

この前遭遇した、陽炎みたいなオカルト。

どうやら髭擦くんは、このキャンプについて来たいといった彼女の言葉をまだちょっと期待していたらしい。

 

 

「……うーん、何かさ、あんたちょっとあのアゴに似て来てない? 大丈夫?」

 

「え……長くなってるか……?」

 

 

そういう意味じゃねーよ。

 

などなどぐだぐだ駄弁りつつ、その後も適当に歩き回る。

その内に自然と雑木林の方に足先が向き、浅い部分を覗いてみる事にした。

 

林の中は一応申し訳程度の歩き道が整備されていたけれど、やはり夏だけあってかそこら中が草だらけ。

道の外側も大量の雑草に溢れていて、分け入っていくのは結構苦労しそうだった。

 

 

「うーん……鉈のレンタルとかしてないかなぁ」

 

「……あるにはあるが、森を切り開くのは許してくれないんじゃないか――っと、すいません」

 

「っ……」

 

 

途中、髭擦くんが向かいから歩いてきた人とぶつかりそうになっていた。

真っ赤なパーカーを深くかぶった、高校生くらいの少女だ。咄嗟に髭擦くんが身を躱したため衝突はせず、そのまま軽い会釈を残し立ち去って行った。

 

 

「……この先はアスレチックだったか。割と人居そうだな」

 

「へぇ、でっかいとこだったらお昼の後にでも……ん?」

 

 

途中、景色の一点に目が向いた。

 

道の横、とある木の幹にビニール紐が結び付けられていた。

ピンと弛みなく張られたそれは雑木林の中へと伸びており、幾つもの木々を経由して、先の見えない奥深くまで続いている。

 

 

「……何だろ、立ち入り禁止みたいな?」

 

「剪定の範囲を区切る目印とかじゃないか? 色々伸び放題だしな」

 

 

見れば、他にも同じようなビニール紐があちこちにあった。

 

通りがかりに覗き込めば、やはりそのどれもが雑木林の奥に消えている。

だからどうしたという話だが、見つけてしまえばなんとなく気にはなり――その中の一か所だけ、辛うじて奥の方まで見通せた場所があった。

 

 

「……?」

 

 

……木の枝、だろうか。

草木の隙間から僅かに見える遠い地面の上に、細長い木の枝らしきものが垂直に突き立てられていた。

 

目を凝らせば他にも幾つか同じものが見え、ビニール紐はその周囲を囲むように繋がれているようだった。

 

 

「……どうした?」

 

「んー……や、別に」

 

 

お墓みたいでちょっと不気味な光景ではあったが、かと言ってそれ以上の不穏な意味も読み取れない。

 

まぁ髭擦くんの言う通り、ここら辺の剪定とか整備をするための目印的な何かなのだろう。

私はひとまずそう結論付け、ビニール紐を意識の外にやっておく。

そしてまた雑談に興じながら、アスレチックエリアへの道を行き……、

 

 

「…………」

 

 

なんとなく、背後を振り返る。

 

目に映るのは、深い雑木林と雑草の茂る山道だけ。

他に人の気配は無く、さっきすれ違った真っ赤なパーカーも、とっくの昔に道の向こうへ消えていた。

 

 

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