「ふむふむ、いい家だ喃!
......しかしアレはどうしたものか。」
リビングにてくつろぐ多聞天が指差したのはキッチンに見える人影であり、ゆうに30分は水道から出る水で手を洗い続けている。
落ち着いてはパニックを起こし、落ち着いては......と、延々とループを繰り返しながらガシガシと爪を立てて手を擦るものだから、手の甲は真っ赤になって今にも血が吹き出そうだ。
洗濯から戻って来たシャルルマーニュがすぐに気付き、羽交締めにして水場から引き剥がす。
年相応の反応ができればその格好に嫌な顔の一つでもしたのだろうが、マスターはそこに嫌悪感を抱くことは無くただただ見えない何かに『ごめんなさい』と謝り続けている。
その光景に何を思うか、多聞天は手を伸ばして瞼を閉じさせる様に上から下へとスライドさせて寝かせる事で静寂が訪れるが、残るのは辛さだけ。
ベッドに寝かせてリビングに戻る中、玄関が空いて神妙な面持ちのマシュ達が帰ってくる。
二人の埋葬を終えて来たのだ、その手には誠が着ていたモッズコート。
「先輩は......」
「我が寝かせたよ、そのうち悪夢でも見て起きるだろうが無いよりマシだわ。
......少し疲れるな、語尾も忘れちゃう喃。」
「そう、ですか......」
茶を啜り、ため息が空間を包む。
人の心の問題であり、どうしようもない個人の問題でもあった。
どうこうしたところで人殺しという称号はゼロにならず、誰かがアシストをして引き金を引かせたのでは無く結果はどうあれ自分で引いたと思われるのがまた。
そうなってくると自分で乗り越えるしかないのだ。
「止められなかった、って事だな......」
「違和感はあったんです。
......でも、確証にはならなくて、信じたくて......」
学校だ。
鐘がなり、4時間目が終わって皆がトイレに行ったり弁当を取り出したりする中でボヤける頭に疑問を持たないまま、ただただぼーっと天井を見上げていた。
何かしなければいけないことがあった様な、もうどうでもいい様な。
ただ疲れた、という事だけは確実だ。 プール後の国語をちゃんと受けられる人間が少ない様に、身体の芯まで疲労が染み込んでいる。
寝てしまおうかと思っていた頃、教室の扉が思い切り開けられて自分の名前を呼ぶ声がした。
友達だ、二人だけの。
手慣れた様子でその辺から椅子を取り、自分の机に断りもなく弁当を置くが全く問題ない。
むしろ嬉しい方。
「プール疲れんだよな〜。
お前は休んでるけどさ、体操服でプールサイドって暑くね?」
「プールはともかく、数学がダメ...... どうにも寝ちゃうんだ。」
「分かるわ!」
楽しいひと時だ。
自分も弁当を取り出そうとカバンの中から、一つしか入っていない硬いものを取り出す。
机の上に置いたそれは銃。
途端、脳内にフラッシュバックする痛みと苦しみ。
「人殺し!」
やめてよと懇願してもダメだ。
「どうしたんだよ、人殺し!」
「人殺し、今日なんか変だよ?」
だんだんと彼らの顔が鳩槃茶になる、かと思えばピシャーチャにも。
ごめん、ごめんなさい。
自分が二人を──
「ゔぁっ!!」
部屋が暗い。
明るかった教室はどこへやら、残ったのはジンジンと痛む手と心配そうに見守るマシュ達。
下を向いて自分の方を見れば、血塗れの手と融合している拳銃、それに加えて左手はピシャーチャの細いものになっていた。
思わず悲鳴をあげて、まずは銃を腕から剥がそうとすればシャルルマーニュの手がそれを止めた。
「マスター、マスター!
大丈夫だ、手に血はついてないし何もくっついてない!
それに身体に変化も起きてない、だから安心してくれ、いいか?」
彼の言葉で少し落ち着き、手をもう一度見ればそこに血も、銃もなかった。
安心し、ふと頭の中によぎった事を皆に問うた。
果たして侵攻は止められたのか?
この問いに対し、首を縦に振るものはいない。
しかし奥の方からあらわれ、事実を告げるメガネのかっこいい男性は存在した。
高そうなタブレットの画面を手慣れた様子で触ると、見やすくまとめられたグラフ表示を見せられる。
「まあ、こんな風に指令施設は壊滅だよ。
生き残りは関東方面に逃げたみたいだけど、正直持国と増長の術で大地の栄養というか、エネルギーを吸い上げて新世界というやつを作ってるからあの辺も農作物育たない不毛になるのは時間の問題だね。」
「やる喃広目! ......そいえば、汝が目をかけている女がそっちにいなかったかしら?」
「ん、いるよ〜。
ちゃんと復活してから会いに行ったし、可愛かった。
......ともかく、これはそもそも作戦側にも問題があったみたいだね。
恐らくこれ...... あの女豹は
は? と疑問の声が出る。
そもそも敵方がどこから出てくるのかわかっているのに、前線にはそれぞれ別の作戦を指示することでボタンのかけ違いの様な穴を作りやすくなっている。
そして敵はピンポイントにそこを通って来ている、と。
これまで勝利を出し続けて来た指揮官だからこそ、間違っていたとして兵士は文句を言えない。
悪知恵の働かせられた作戦だと。
机の上にあった端末を開き、感情の赴くままに電話をかける。
宛先はもちろん司令部。
ドクターの通信を間違えて開いても、訂正する余裕がないほどに自分を一つの感情が突き動かしていた。
「もしもし...... ああ、生きていたのですね。」
何故負ける作戦を組んだのか?
どうして指令施設が壊滅しているのに、そっちは無事な様子なのか。
怒りのままに問い詰める。
「そうですね、そもそもどのような作戦があったとて、最終的に敗北する事は予想していました。
ですので影武者を用意し、私は増長天側の新世界とやらに参加させてもらう条件として今後邪魔をしない、そういう契約を結んで車に乗っていますが、何の問題が?」
なんの問題が、ではない。
そちらを信じた人がいて、平和のために命を散らして残った人の平穏を守ろうとした人がいたのに、何故そんな事をしようと思った?
許されるはずが無い。
しかし彼女は冷淡なまま。
「これはいわば戦争です。
兵士は指導者を守り、指導者は兵士を上手く使い勝利へ導く。
そして指導者は生き残るため、兵士の思いを受けて生存策を取るのです。
それに私が導いた勝利への道を途中で逸れ、正道に乗ることができなかった、実力を出せなかったのはあなた方兵士の落ち度でしょう。
私はあなた方のミスを受け、屈辱の交換条件を飲んで嬉しくも無い車での移動をしているのです。
むしろ謝罪が欲しいものですね、カルデアの人。」
『まるで全責任をこちらに押し付けている様ですね。
逸れでは貴方に非は無いと?』
「逃げただけの、逃げただけのくせに!!
偉そうに物事を語るな!」
「先輩!」
止めることができず、マシュやシャルルマーニュに抑えられながらも殺意を押し出して彼女を否定する。
増長天と協力していたというなら、ピシャーチャ達が人間であることも知っていたはずだ。
渡された資料の中にそんな情報は入ってなかった。
「逃げるとは...... まるで敗戦の責任をこちらに押し付けているかの様だ。
ランナー満塁でリリーフ登板して、1人もランナーを返すなと言っているのと同様ですよ。
我々は勇気の撤退を選択している。」
「死んで行った......人の、事は!!?」
「......貴方はサンクコストに心を傾けてしまう人の様だ。
もう戻ってこないコストに心を傾ける必要がどこにあるのです?
貴方はマスターと、指導者に近しい者であると言うのに、あまりにもその思考が拙い。
その様だから友人という称号を持つだけの他人に脳を焼かれ、冷静さを失い妄信する。
スパイだったというのに、お笑いだ。
話になりませんね、それでは。」
立ち上がり、端末を地面に叩きつけて踏み潰す。
何度も、何度も何度も何度も何度も!!!!
「......しれっと......言った。
よくも......!」
「──しれっとあいつらを語りやがって!!
ぶっ殺すぞクソババア!!!」
「......そうなんすね〜、あの子達は彼の。
そりゃ怒る、そりゃ失礼だ。」
「兄弟にとってそれだけだって事だ。
......だが、あの死に顔は──」
「というかタモチャンあっちに置いてちゃ不味いんでは?
あの人ノンデリっすよー?」
マスターは部屋に篭り、出てこない。
全てに裏切られた様なものだ、疑心暗鬼になっても仕方のないもので、今のところ自決しても攻めることができないレベル。
人がとりあえずついているが、崩壊は時間の問題だった。
「なんて言った!? なんて言ったんだよ!!」
「むう、すまない......」
「先輩! ダメです!」
激情を抑えられない。
多聞天は言ったのだ、『楽園なぞ人世の中には無い、それを信じる事は利口では無い喃。
人の子で言う── バカ、というやつか?』と。
殴りたいけど殴ったところで効かない。
止められて引き剥がされ、布団を頭からかぶって叫ぶ。
「だって彼は、あの子は、自分をただそこにいるだけの人間というマイナスから、普通の学生ってプラスにしてくれたんだ。
だから...... だから、そんなふうにしてくれた彼らが普通に幸せになってくれる事を望むのは、おかしいの?
自分は当然だと思ったのに、あのババアは否定するし、多聞天は彼らを楽園なんて絵空事にうつつを抜かした馬鹿者だって。
馬鹿はどっちなのさ! 追い詰められた子供のことなんて何もわからず、ただ否定するだけのくせに!
カルデアの人もそうだ。
第五特異点の後に一対一で話して分かったよ、みんな喜びはするけどその目線の先にあるのはこちらの心配じゃない、特異点修復を完遂できるかどうかなんだ。
こっちの無事なんてどうでも良いんだ!!」
「──で、ですが、ドクターやダヴィンチちゃんは先輩の身を案じています!
勿論私も──」
「そうだね、ありがとうマシュ。
少し頭を冷やしてくるからついて来ないでくれると嬉しい。
......自分は、君の思う様な格好いい先輩じゃない。」
そう言うとドアが開く音がして、1人、また1人と消えていく。
最終的にまた1人になった。
これでいい。
これで......よかった。
──何時間経った。
わからないが空腹はどんな時であれ訪れる。
バカみたいだなと自重しながら、すっかり暗くなった外を横目に冷蔵庫から適当なものをつまむ。
料理する気なんて起きない。
数個の食べ物と水を一杯飲んで満足し、もう部屋に戻ろうかと言うところ。
窓に何かが見えた。
見覚えのある眼鏡の顔を見て、思わず飛び出す。
屋根を登って目を輝かせ、まだ信じれる人がいたことに気づいて抱きしめた。
笑って抱き返してくれる彼女の優しさに救われた気すらするのは気のせいじゃ無いはずだ。
「こんばんは〜、大変だったねえ。」
本当にその通りだ、大変なんてものでは無い。
色々と辛い事や大変だった事を吐き出そうと彼女の顔を見上げた時、あることに気づくと同時に一歩引いた。
眼鏡を外し、見覚えのある服装に帯刀。
まさかそんなはずは。
「どうしたの? 座って話そう、昨日までと同じ様に。
それとも俺が嫌いになった?」
そうではない、そうじゃ無いんだと冷や汗を感じ心臓が冷える感覚に加え、軽度の吐き気がくる。
そうだ、彼女は違う。
信じる。
心の中で第一次の結論を出し、その隣へ座った。
「キミは因果って知ってる?」
因果。
似た様な話を...... うん、誠から少しだけ聞いた。
特撮ドラマがどうとかの話だった気がすると借りてきた猫のように縮こまりながら言えば、彼女は昨日までの様に笑って。
その笑い声に安心したかと思えば、今度は冷たい声色にキュッとする。
ジェットコースターの様で気分が悪くなって来た。
しかしそんな自分を気にする事なく、彼女はその『因果』に関する話を続ける。
その横顔は何処か焦っている様に見えた。
「それは牙狼ね!
──その因果って言うのは、例えば銃を撃ったから弾が当たる、みたいな二つの物事にある『A=B C≠B』的な関係? なんだけど。 多分。
私はね、それが見えるの。」
彼女がいつだかの様にこちらの手首を掴み、その日その時の様に屋根の上からクレーン車で下ろすかの如くこちらを吊るした。
映るのは黄色の中に青色の輪っかが見える左眼と、青の輪っかが無い右眼。
全てを見透かす様にこちらを写す。
右眼に見える自分が、まるで自分じゃ無い様に見えた。
「前にこうやった時、偶然メガネが外れて見えちゃってさ。 キミはこれから碌な死に方をしない、誰の心にも残らない死しかキミの運命のゴールには無い。
そんなのやだよ。」
引き上げられ、2人1メートル程度の間隔で立つ。
誠が言っていた事を思い出す、確か『知った上で俺はお前を。 ......親友だと思っているお前を、このままの運命、因果に進ませたく無かったんだ。
だってこのまま行けば、お前は──』と、言っていた。
なら誠に因果、運命を教えたのは──
「そうだ。
俺で、私。 彼らは私の部下で、キミの未来を見たいって言うから教えてあげたら...... ああなった。
俺の行動は軽率だったと思ってるし、同時に彼らもそう言うことして連れてくるんだったら私の到着を待てばよかったのに。」
なんで、なんで。
信じていた最後の砦だったんだよ、心を休ませてくれる最後に残った、今を生きてる友達だと思っていたのに。
「......私がキミに向けていた友情も親愛も愛も、キミから俺に向けられる心地良い友情と愛情も。
どっちも嘘じゃ無い。
ここに生まれた関係性もこれから語る言葉も、ただのひとつたりとも嘘は存在しない。
新世界の指導者として約束する、増長天の娘としても。」
彼女は手を伸ばす。
誠や日向と同じ様に、嫌になる程魅力的に見えるそれを否定しようにも、もうどうにもならない程自分の心はボロボロだった。
同時に電波が悪いのか、ガサガサの通信がドクターより入る。
『......くん! ......かくから、ピシャ......ャが大量発......マシ......が対......!』
家の周りを見れば既にピシャーチャや鳩槃茶に囲まれており、遠くからは戦闘音も聞こえてくる。
これはどう都合よく解釈したとして、彼女がこの特異点における敵であることに変わり無いと言う因果だろうか?
最後の言葉と言わんばかりに目を見開き、月明かりに照らされて彼女が真の名を明かす。
「私の本当の名は、カドモン。
最も古く最も新しい命として導き手に選ばれ、今はただキミの親友としてここに居る!
彼らの在り方はまあ、サティスファイサー的なものだ。
既に君にバレていた時点で早々に引き上げて帰ってくるべきだったし、そうすればキミの友達的存在3人でこちらに引き込む事もできただろう。
しかし彼らはそこまでいけなかった。
だから君を説得して来てもらおうとしたんだろうがそうは行かなかったのが、ね。
──対して俺はマキシマイザーだ。
今できる最善ではなく、最高を目指した選択をさせてもらおうか。
というわけでキミにはこの手を取って欲しい。
こちらに来てくれればその先にあるのは理不尽な苦しみ、悲しみの無い新たな世界だ。
もう君が、以前聞かせてくれた様な事をされなくて良いししなくて良い世界。
これは私自身の願いでもある。
伸ばした手に偽りは無い、さあ、手を!」
どうするべきなんだ、どうしたら良いんだよ?!
手を取れば自分のここまでは?! ここで人理修復というクソゲーを投げ捨てて、誰が引き継ぐかって言われたら10/10でマシュだろうそれだけはダメだ!
でも逃げたい!! このままマスターで死にたく無い!!
生贄になりたく無い!!!
『でも託されたものは?』
僕は......
『逃げるんだ。』
嫌だ......
『私を食べたのに辞めちゃうんだ。』
『望まれたらやらなきゃねえ。』
『どうせ死ぬなら役に立とうよ。』
うるさい......
『どうせ死ぬんだから、ほら。』
『やれよ』
「煩い!!」
頭痛がする。
吐きそうだ。
やらなきゃ。
やらなきゃ、帰らなきゃ。
「──そう、かい!!」
自分の感情というよりは、受け継いできた蠱毒の様に煮詰まってドロドロになった使命感に突き動かされ、上から振り下ろす様に拳を振るった。
当たるはずもなく避けられて首を掴まれ、流れる様に抜かれた剣が目に突き刺さる。
──と、同時に身体が浮いて何者かの手の中に抱かれた感覚と目から流れる血液の感覚に身体が浸る。
目を開けられない、恐らく右目をくり抜かれた。
幸いなのは左目じゃなかったことか。
「ッ!」
「──星の頭脳体、弱体化しているとは言えジャミングをかけていたのに探り当てるのは流石。
......私も一応サーヴァントと戦えない事はない身体だけれど、流石に
未来予知の様な事を言ったかと思えば、言った通りにマシュが到着して背後からの一撃をまるで見た様に── いや、実際に見たものとして回避した。
マシュもこれには困惑し、こちらを守りながらも脅威の存在として加藤......ではなくカドモンを警戒する。
今更であるが、目から流れる血液がアースさんのドレスを汚している。
これではいけない、もう大丈夫だからと離れて立ちあがろうとするが、彼女はそれを毅然として拒否した。
「じっとしているように。
......手違いで焼かれたく無いのであれば。」
焼かれたくは無い。
絶え絶えの息を整えながらジッとする。
その様子を見て少し微笑んだカドモンの横に、今度は2メートル半はあろうかという巨体が来襲する。
戟を片手に着地したその姿を見てニフラと同じ雰囲気を感じ、すぐにわかった。
この男が増長天なのだと。
「......我を理解するか。
カドモン、汝の言う通り希望のある芽の様だが我らの新世界に仇成すのならば殺す。
だが今は気が進まぬ、今宵は退かせて貰うぞ、カルデアのマスターとやら。
......悲しき子よ。」
「......じゃあね、私の友達。」
そう言って消えていく2人を見送ることしかできない。
後悔はある。
果たして自分の選択は正解だったのか、間違いだったのでは無いのか。
それはわからない、終わるまでは。
今はただ、友達が全員いなくなったという絶望に近しい事実を噛み締めることしかできなかった。
『うん、この家に人はいない。
一夜城として借りようか。』
「マシュ、少し。」
「どうしましたか、アーキタイプさん?」
というわけで。
欠損部は医療用のスクロールでもどうにもならないので、包帯をぐるぐる巻きにして右目は乗り切ることに。
痛々しいが見た目ほどの痛みはない、44を四捨五入したら0になった感じだ、たいして変わらない。
「──マスター、ちょいと早いが朝飯、持って来たぜ。」
シャルルマーニュに礼を伝え、スープを受け取って少しずつ啜る。
......なんだろう、味がガッシャガシャだ。
塩胡椒とか入れてる? これ。
──とは、作ってもらってる身として言う気は無いのだが、やたらとシャルルマーニュが美味しいかを聞いてくる。
一応美味しいと答えると、『良かったぁ〜〜!』と心底安心した顔とため息で答えるのだ。
「いや、これな?
姫さまとマシュが近場の店から材料を取って来て作ったんだ。
マスターの味噌汁を真似たんだってさ!
良かった良かった、美味しいって言ってたと伝えとくよ......って、どうした?!」
ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
『美味いなこれ、やっぱちゃんとやってんだな!』
『チャーハンの作り方ってどうやってるの?
......へー、やってみよ。』
『おにぎり酸っぱいんだけど?!
また梅干しー?!』
「──楽しかったんだよ、凄く......!」
「......ああ、俺もだよ。」
「そろそろ奈良です。」
「......増長天は約束を守る者だったという事ですね。
今回はなかなか楽しめました、次は──」
悠々と車移動をする老婆の名前は橘 仁美、運転手兼ボディーガードを柏木 賢雄と言う。
その2人を乗せた車、そのフロントガラスにとある影が乗った。
「ッ!? 橘様、何かに掴まってください。」
「何事です?」
「前輪が何者かによりパンクさせられました、マスターの復讐でしょうか?
──何ッ?!」
影は人となり、銀に輝く剣を右手に左手に持った黒いボディに赤いヒビの入った様なカラーリングの拳銃を構え、柏木の胸を5度貫く。
肉塊が運転を出来るわけもなく、コントロールを失ったクルマは横転し、廃車確定と言わざるを得ない状況となった。
橘は頭から血を流しながらすんでの所で脱出するが、その先にいたのは導き手でもありストッパー。
「魔弾の射手は七発撃ったらヤな所に当たるらしい。
だから六発までだ。」
「何故です! 我々は契約を──」
「結んだのは増長天と持国天、私はソレをしていない。
──
「まっ......!」
六発目。
「......スッキリしないな。
お腹空いた。
おにぎり...... 上手く、作れないんだよなぁ......」
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