イケニエのニッキ   作:チクワ

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終局へ進む

 

 仮眠を終えてダヴィンチちゃんに起こされ、マシュと語らい、遂に8人のマスターが管制室に集合する。

 皆一様にカルデア技術部、いわば科学者英霊達が技術の多くを掛け合わせて作り出した決戦用カルデア礼装を着込み、神妙な面持ちで開始時刻を待つ。

 胃が痛くなるほどの緊張感。 

 ここを勝てば全てよし、負けてしまえば無駄な一年。

 その重みが肩に乗るからこそ緊張をほぐす為── もとい、手を尽くす為に懐からある物を取り出し、Aチームやマシュに手渡して行く。

 カドックはどこか納得が行った様な表情をして、それを光に翳し見た。

 

 「......僕が行った時、机の上が汚かったのはコレか?」

 

 ご名答。

 メディアやエミヤに教えを乞いながら削って、黒曜石をネックレスに仕立てた物。

 せっかくだからと全員分作ったはいいが、かなり時間がかかってしまったのだ、本当はもっと早くに渡すべきだったのだが。

 ......ここにある八つのネックレスが、またこの場に欠けることなく揃う様に。

 何が何でも、だ。

 

 「ああ、勿論。

 帰って来たら野球(ベースボール)でもしよう、それとも別のレクリエーションをしようか。

 なんであれ、フルメンバーでの完全勝利を目指さなくてはね。」

 

 頼りになるキリシュタリアの言葉に頷いていれば、細かな事前準備を終えたドクター・ロマンから作戦の概要が話された。

 これはいわばノルマンディー。

 カルデアをソロモンの居城に無理やり接岸させ、そこを伝ってマスターやサーヴァントが突入。

 防壁(魔神柱)を破って心臓部を破壊し、走って帰還可能ポイントまで帰るのがラストミッション。

 

 ここで脆い所はまず自分とマシュが突入し、Aチームのレイシフトを安定させるための楔を設置しなければならない、という事。

 その楔を置いてAチームが来るまでに死ぬ様な事があれば作戦の完遂は困難となる、

 とは言え、それを聞いてやらないという選択肢は存在していない、やってダメかやり遂げるかの二択なら皆後者を選ぶはず。

 

 「あとはこれ。 魔眼を抑え込むためとは言え、眼鏡では少し大変だろう? と言うわけで作ったコンタクトさ、付けてみるといい。」

 

 ダヴィンチちゃんから受け取ったそれを四苦八苦しながら取り付ければ、なんと綺麗で邪魔物のない視界。

 やっぱり天才なのだなぁ。

 

 作戦開始時刻を告げるアラームが鳴り、Aチームの横を歩いて行く。

 彼らの激励に嬉しさと強くなっていく使命感を感じていれば、不意に横から縦の拳が突き出された。

 それはデイビットの物。

 

 「......」

 

 テスカトリポカに教えられたか? 彼がこう言う事をするかどうかで言えば...... まあ、するか!

 拳を返し、互いの健闘を祈る。

 帰って来たら遊園地に行く約束を忘れないように釘を刺せば、『わかっている』と。

 彼の記憶に自分はちゃんと残っている。

 それがちょっと嬉しい。

 

 「行きましょう、先輩!」

 

 「......うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終局時間神殿ソロモン。

 お出迎えと言わんばかりに現れたレフ...... いや、魔神柱フラウロスと戦闘。

 楔を設置する迄はサーヴァントの召喚も無理な以上、マシュと二人での戦闘になるわけだが、ここまで来たのだから魔神柱の一つ二つは問題ではない。

 

 攻撃の前に光る目を砕けば動きが止まる。

 非常に簡単で非常に難しい最適解だ、でもやる。

 幸いにも自分の持つ銃は神に近い増長天の骨から作られた弾丸を使用している。

 加えて口径も大きく、一点に対して正確に撃ち込めば前述の最適解を成すことは容易い。

 ──しかし、腐っても敵の本拠地。

 

 「ううっ!」

 

 マシュも耐えているが、正直ギリギリだ。

 自分も対ソロモンに向けてとっておくべき未来視を使わざるを得ない状況になってしまっている。

 どうにか倒す事こそ叶ったが、消耗はかなりのものになってしまった。

 

 こちらを嘲笑う様にフラウロスが高笑いを響かせる。

 それがイラついて仕方がない。

 

 「お見それした、まだこちらを睨む強がりができるか!

 だがその諦めの悪さ、意地の悪さが通用するのは昨日まで!!」

 

 周りを魔神柱が囲んでいき、カルデアとの通信も途絶える。

 一応楔の設置はやめないが、これが意味のある物なのかもわからなくなって来た。

 だが、まだ...... まだ。

 無理を通せ、道理を蹴飛ばせ。

 

 「君たちの旅路は失笑に値する!

 その全てを、大陸での繰り返しも、島国での──

 いや、これは愉快ではなかった、忘れよう。

 ──その道を、ここで終わらせよう!!!」

 

 ──そうだ、こんなのに負けて死ぬ道理はないのだから。

 託されてる。

 どうせなら最後まで、やり通してみせろ!!

 

 

 

 

 「......よく耐えた。」

 

 その声が聞こえた瞬間、自分の周りを取り囲んでいた暗闇が虚空へと霧散する。

 唐突に現れた無数の星から流れ込む光に眩しさを覚えながら瞳を擦れば、7人14足の足音が勝利への調べを奏でた。

 安心と自信から溢れる笑みを浮かべながら、よっこいしょと手を借りながら立ち上がる。

 

 氷の皇女。

 竜殺しの剣士。

 西楚の覇王。

 バラモン最強の戦士。

 海に愛され穢された者。

 ブリテンの魔女。

 そして──全能者(モヨコヤニ)

 

 

 「おお、おぉぉお!?

 何故私が消えて──!」

 

 魔神柱を消し去り道を切り開いてくれた彼らを筆頭に、各所に見えるのは召喚の光。

 マシュの盾を借り、何処からともなく吹いた様な風に息を吐いて手を置いた。

 

 そして現れたるは七騎のサーヴァント。

 

 ヨーロッパの父であり、冒険者。

 西部開拓時代の少年悪漢王。

 300(スリーハンドレッド)の王。

 ノーチラスの船長にして海の子。

 世界に愛された童話作家。

 その死を喜ばれた戦国武将。

 不老不死の死を追い求めた導師。

 

 ──原初の一(アルテミット・ワン)

 

 

 勝つにはちょうどいい。

 心臓部に向けて走り出した中、デイビットから肩を叩かれて疑問符を返した。

 彼はその手にさっきのネックレスを持ち、キラキラとそれを輝かせる。

 

 「この黒曜石は鏡── ()()()()()()()()()()だな?」

 

 さすが、と言うほかないだろう。

 確かにこれはテスカトリポカの足から削れたり、戦いの中で落ちた物を集めて作った物。

 いわば曇る鏡、未来を映す物。

 これを通じてテスカトリポカに見てもらい、危機管理に努めるためのアクセサリーだ。

 

 「......よく考える物だ。」 

 

 手を抜いていないと言って欲しい。

 これは電撃戦で、出来る限りのリスク管理をしなければならない。

 そして、最初に言った通り── このネックレスは全員が持ち帰って来てくれる事を考えて作っている。

 

 「今日の時間には余裕がある。

 ......ならば、こちらもそれに応えねばなるまい。」

 

 

 

 

 

 

 I /溶鉱炉ナベリウス。

 ジャンヌダルクやジークフリートは勿論、かつては敵であったサンソン達と共闘する。

 しかし魔神柱というのは斬り倒しても斬り倒しても、焼いても焼いても増えてくる。

 デイビットが時間を気にするように、自分も未来視出来る回数や時間は限られている。

 ここで止まっているわけには── と、目をひとつひとつ潰していた所に翠色の閃光が走り、強烈な衝撃波と共に一本が斬り倒された。

 

 何事かと目を凝らしてみれば、そこにいたのは宝具を発動し、霊基を限界まで進めたシグルドの後ろ姿。

 その背を追う様にオフェリアは眼帯を外して歩いて行く。

 

 「私が止める。

 Aチームとマシュ、それにアナタは先に行って。」

 

 そうは言っても、だ。

 と反論しようとしたが、その目を見て止めることなど出来はしない。

 自分は純粋な家系に生まれた魔術師ではない、彼女と同じわけでは決して無いが──

 

 それでも、互いの魔眼を見つめたのだから彼女の心がわかった。

 これは勇気。

 彼女がここで受け止め、そしてその想いを自分達に託して背中を押してくれる。

 

 それを無駄にしないためにも、僕達は彼女に背を向けて走らなければ。

 

 「頼んだよ、オフェリア。」

 

 

 「ええ勿論、アナタも無事で、キリシュタリア。」

 

 

 

 

 

 

 「ふう。 ええ、大丈夫。 大丈夫......」

 

 手の震えが止まらない。

 何度も自分を奮い立たせる言葉を吐き出しては飲み込むが、まるで飲み続けて効果が薄れて来た睡眠薬の様にそれらの力は弱く、その場しのぎにもなりはしない。

 だが、不意をついて背中を叩いた大きな手があった。

 その主であるシグルドは幾重にも重なる魔神柱の前に立つと、まるで雑兵を蹴散らす様にその剣を振るう。

 

 「当方はマスターにこの身を捧げると誓ったが、捧げられるものは余りにも少ない。 求められたものも剣術の指導だったが......

 その様な当方にこうして場を与えてくれた事、貴殿に感謝しよう。」

 

 「......いいえ、ただの自己満足。

 色々と見せてもらったものもあるし...... 何より、『魔眼の先輩』なんて言われたのは初めてだったもの。」

 

 前線から攻撃を受け止めたジークフリートが飛び退いてシグルドの横に立った。

 至高にして最高の竜殺し、並び立つ。

 

 「ジークフリート、同一の存在か。

 貴殿の頑丈さが当方には少し羨ましいが、戦いにおいて引けを取るつもりはない。」

 

 「......すまないが、余裕が無い。

 ここは宝具で切り開く。」

 

 「分かったわ、セイバーも私の眼を合図に宝具を。」

 

 未来にピンを刺して、それを止めて。

 ──希望を前に進める、それが今の私に出来る事。

 

 「──────事象、照準固定(シュフェン・アウフ)。」

 

 「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る。

 撃ち落とす!」

 

 「絶技用意。 太陽の魔剣よ、その身で破壊を巻き起こせ!」

 

 

 

 

 

 

 「私は、それが輝くさまを視ない!!!」

 

 「幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!」

 「破滅の黎明、(ベルヴェルク・)壊劫の(グラム)天輪!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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