イケニエのニッキ   作:チクワ

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私と言う生贄は、ここに居た

 

 「「「おかえりー!!!」」」

 

 「わわわ。」

 

 家に襲来した友達集団の突進を受け、思わず倒れ込んだ。

 加藤は涙と鼻水でびちゃびちゃだし、誠は力が強くて痛いし、日向は『心配させやがって』と言わんばかりにボディブロー。

 こちとら弾丸帰宅の後なのでもっと気遣って欲しいものだが、これはこれで帰って来れたのだという気持ちが強い。

 

 体制を立て直し、ここは一つ『無事ですよ』ということをアピールしてやろう。

 座り、彼らを見据えて......

 

 「......あれ。」

 

 出てきたのは言葉では無く、目から流れる涙。

 ──ああ、なんだかんだでやっぱり僕は怖かったのだ。

 こうしてまた笑い合えなくなることが、今度は僕が彼らに傷を残してしまうかもしれないことが。

 こちらを心配してあたふたする彼らを抱き寄せ、ぎゅっと渾身の力でくっついた。

 

 

 「良かっだぁ〜......」

 

 

 「みんな心配してたんだよ、ホントに。」

 

 「帰って来ないかと思った! 良かった本当!!!」

 

 「よっし、飯行こう!! 今日は俺が悠太の分奢るからさ、サイゼリヤ行こうぜー!!」

 

 

 

 

 

 

 「元気だねー、ニフラはついて行かなくて良いの?」

 

 『私は良いのです! ......あの子の思い出作りを見られれば、それで。』

 

 「そう? じゃあさ、叔母さんの恋愛相談に乗ってよ。

 議題はハーフの人と上手く行ってる時の振る舞いかたなんだけど──」

 

 

 

 

 「......」

 

 「まだ気負ってるのか? 胸を張り、どの様な形であれ勝利したことに喜べ。

 少なくとも...... この結末は、兄弟が望んだことだ。」

 

 「だが、全ては此方の優しさが招いたこと。

 黒と戦った時に優しさを捨てていれば、悠太は...... と、こう話していればあの子に怒られてしまうか。

 ......此方に出来るのは、悠太が楽しくこの後を終えられる様に付き合うだけです。

 残り少ない、命だから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 『──高2の夏、みんなで海へ。

 危うく溺れかけたけれどやたら楽しかった。

 砂浜というのは素足で走ると予想外に熱くて、映画とかでよく見るウキウキで走る様なことは僕には出来なさそう。

 ともかく、綺麗な綺麗な一夏の青春だった。』

 

 

 

 

 『2度目の文化祭、残念な事にテスカトリポカ本人は来ることができなかったが、なんと強引な事に叔母さんのビデオ通話で参戦してきた!

 画面越しということもありシャルルやアースさんもおり、メイドカフェということもあって何故か女装させられたが悪くない経験だったと思う。

 ケチャップで絵を描くのは...... 練習あるのみ。』

 

 

 

 

 

 『修学旅行。

 岩手でスキー。 寒さこそあれ、それ以上に感じるのは滑ることへの楽しさや爽快感。

 ちょっと膝に負担がかかったが、それでもスキーの楽しさや部屋での談笑など魅力的な要素がたくさん。

 お土産は盛岡冷麺、叔母さんと食べたがなかなか美味だった。』

 

 

 

 『バレンタインはいい思い出がないのでスルーで......』

 

 

 

 

 「高校三年生。

 進路に関しては寿命のこともあるので就職を選択。

 アルバイト先である誠の母親が経営する花屋に縁故採用という形で雇ってもらえることが決まったので、どうにかはなりそう。

 日向はスポーツトレーナー、誠はもちろんサッカー選手。

 それぞれの夢に向けて歩き出したわけだが、加藤だけは未だ決まっていない様だ。

 今度、相談に乗ろうか。」

 

 

 

 

 「Aチームとの約束を果たすため、舞浜へ!

 数多くのアトラクションに乗り込み、楽しい1日となった。

 秋葉原ではさまざまなアニメ製品が売られているショップを周り、なんとキリシュタリアはでっかいフィギュアを購入! 流石に重かった様で自分が持ったが、見逃さなかった。

 一人隠れてフィギュアを購入するカドックの姿を。

 

 ......それと、デイビットには自分の状況がバレていたらしい。

 互いにどうしょうもない事だ。

 頑張ろうということだけ交わし、互いの健闘を祈った。

 その会話も、5分のうちに入ってるのだろうか。」

 

 

 

 

 「加藤の進路、というか夢が決まったらしい。

 舞浜のランドでキャストさんをやりたいから、手近なテーマパークでアルバイトを始めたのだとか。

 フェニックス何とか、みたいな感じだった気がする。

 ()に出来るのは応援だけだ、頑張れ、加藤。」

 

 

 

 

 「卒業式。

 これまでお世話になった先生方には感謝してもしきれない。

 サッカーのチームに入ることができた誠を皮切りに、日向も加藤も県外へといってしまう。

 バラバラになるだろうが、それでもここに記した思い出は消えない。

 たとえ、私の中から消えたとしても。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ、本日はどうしますか?」

 

 「えっと...... その、お見舞いに持って行きたいんです。

 あれと、それと──」

 

 

 

 「──はい、どうぞ。」

 

 「ありがとうございます。

 ......行こうか。」

 

 「そうだね。 暑そうだし、出来るだけ涼しそうなとこを行こうか、奏さん。」

 

 

 「ありがとうございましたー。

 ......ふう。」

 

 「──悠太くん、本当に辞めるの?

 その、またやりたくなったらいつでもいってくれていいからね?」

 

 「お心遣いありがとうございます。

 もしそうなったら......よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 『()()()()()()()()()()

 私の記憶はもう随分と消えてしまって、高校生活よりも前の出来事はこの日記を見なければわからない。

 部屋にいる喋る蛇さんとウサギさんがいうには四年前かららしいが、何一つとして覚えていないのだ。

 

 ......仕事を辞めたのは寿命の問題があるから。

 自分の体は自分が一番よく知っている。 もう少しで私は死んでしまうだろう。

 

 カルデア、というところで出会った仲間のことも、高校を楽しんだ親友の事も、自分のことも。

 蛇さんが言う。 私が止めておけばよかったのだと。

 でも、私はそうは思わなかった。 

 結局、やったのは私なのだから、その責任は私に帰結する。 蛇さんが気負うことはないのだ。

 

 

 ──ああ、月を見上げてどれだけ経ったのだろう。

 私は私がわからない。 誰かを記憶に残す事もできなければ、誰かの記憶に残るわけでもない者だ。

 ただ一つわかる事はある。

 私は...... 成すべきだと思ったからそうしたのだと。』

 

 

 

 

 

 

 「......ん、寝ていた......」

 

 「──どうも、よく寝てたな。

 気をつけたほうがいいぜ、外で寝るってのは、ちょっとだけ危険だからな。」

 

 「ああ、どうもありがとう、()()()()()()()()

 ......どこかで会いましたか? 何だろう...... 私はその優しい笑みを、知っている気がするのです。」

 

 「......さぁ。 アンタがそう思うんならそうだろうさ。

 ただ── ありがとうとだけは、言っておくよ。」

 

 「? どういたしまして。

 ......すっかり夜だ。 私は家に戻ります、それでは。」

 

 「ああ。

 ......じゃあな、俺の、二人目のマスター。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──インターホン? 誰ですー?」

 

 「......少し、構いませんか?」

 

 

 「わーすごい、お姫様...... って、感心している場合じゃないですね。 どうぞ。

 何か飲みますか?」

 

 「その、味噌汁があればそれを。」

 

 「あ、ちょうどありますよ。

 ......よし、どうぞ。」

 

 「いただきます。

 ......やはり、美味しい。」

 

 「それは良かった!

 ──でも、何ででしょうね? 今日はやけに、心のどこかに引っかかる方々と会うんです。

 先程の彼も、お姫様の様なあなたも。

 もしかしてですけれど、昔の私を知っていたりしますか?」

 

 「──ええ。 花火を見た仲でした。

 貴方とともに見た空の光華はとても美しく、それに負けない様、私も少々そうあろうとしたのですが...... 貴方には響かなかった様です。」

 

 「......どうでしょう、私は貴方に目を奪われていたと思いますよ。 

 そうじゃなければ、今私が貴女にドキドキしているわけがありませんから。

 ......少し、眠くなってきましたね。」

 

 

 

 

 

 

 「私は果報者ですね、美人さんに見届けてもらえるなんて。

 ......そうだ、日記に名前をつけようと思っていたんです。 少しペンを取ってもらっても?」

 

 「どうぞ。」

 

 「ありがとう。

 ......よし。 それではおやすみなさい。

 ああ、綺麗な月だ......」

 

 

 

 「......人は脆いのですね。

 私が私として『好き』と言う時間すら、貴方は与えてくれなかった......

 さようなら、いつか会えることがあれば、その時は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よう、来たか。

 ──おっと、名乗らなくていい。 今は焚き火でも見てただ休め、レジャーを楽しむのはその後だ。」

 

 「うわぁ、あったかい......」

 

 「満足のいく戦いだったか?」

 

 「満足かどうかで言えば、きっと永遠に不満足です。

 結婚もできなければ、自分の事を誰かに残すこともできませんでしたから。」

 

「それは結構。どんな勝利であれ、どんな勝者であれ、人間である以上は道半ばだ。

 やりきるなんて言葉ない。 残った未練はオレが聞こう。

 安心して目を閉じれば良い。」

 

 「......死神にしては、ラフな格好なんですね。

 もっと決めた格好でくると思ってました。」

 

 「あぁ…... 黒だの赤だの青だの、自分を安売りしているがな。

 今は、この姿が一番のお気に入り、決めた服装だ。

 もうお前は覚えていないだろうが、初対面の時に決めて来てやっただろう?

 あの時から、最後まで付き合うと決めてたのさ。

 ......お前の無くなった記憶を読み上げてやる。 神の読み上げなんて聞けるものじゃない、感謝しろよ?

 日記のタイトルは── おい、直球が過ぎるだろう。」

 

 「人の日記に文句言わないでくださいよ。

 ──私が辿った、私の知らない自分の話。 

 教えてくださいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 『それはひどく乱暴に、残酷に課された私の使命。

 それでも光があった。

 私は光に希望を見た。 

 

 光に走ってここにいる。

 私と言う生贄は、ここにいた。

 

 この日記に名前をつけるのなら── ()()()()()としよう。』

 

 

 

 

 

 

 










 終わりです。
 次作以降リクエストなどがあれば活動報告の方まで。

 ここまで付き合っていただき、ありがとうございました。
 またお会いしましょう。
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