俺の呪術師アカデミア!(完)   作:かりん2022

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問題児(改)

「悠くんの力の事も含め、一旦戻りましょう」

 

 ということで、元人間である化け物をつめたケージを持って、医者である硝子の所に向かったのだが。

 処置室で調べるということで、直は台の上にケージを置いた。

 蓋を開けて、一体取り出す。

 

「じゃあ、とどめ刺したら戻すんやで。出来るな、悠」

「あっ 俺がしたい。したいしたいしたーい。ポキポキする」

 

 直が首をポキっとすると、悠が駄々をこねる。

 直が台の上に化け物の死骸を置くと、それは元の大きさに戻っていく。

 その後ろで、吐く悠仁の背中を七海が摩っていた。

 並行世界組の2人の問答は続く。

 

「軽く言わんといて、元人間やぞ」

 

 そう、元人間だ。なので直も、筍を折る感覚で折らないでほしい。

 

「この場合、人間とは看做さず速やかに処分がルールだろ。俺も直先生も戻せる個性持ってないし」

 

 ああ、特級なのだな、と七海は思った。少なくとも、ただの子供ではない。

 

「先生としては、良心の呵責を感じて欲しいんや。というか、これが止めさすん初めてのはずやろ? 初めてであってほしい」

 

 前言撤回。止め刺すのが初めてってマジか。初めてであってほしいってマジか。

 実は悠が呪詛師だった可能性も急浮上である。

 

「なんで?」

 

 そう問うてくる悠はどこまでも無垢で純粋で無邪気で分かってなさそうだった。

 

「呪詛師やヴィランを前に躊躇はあかんけど、死を悼む心は持って欲しいんや」

「ご馳走様みたいな?」

「……もうそれでええわ」

 

 よくない。とってもよくない。諦めないで。

 この間も、ポキポキと化け物の首を折る手は止めない。そんな様子に、七海と悠仁は堪えきれずに口を出した。

 

「直さん。悠くんの教育について物申したいのですが」

「ど、どうしてそうあっさりしてんだよ! 元人間だぞ!」

「でもこれ、もう戻せないように見えるけど。ヴィラン相手に迷ってるとこいつと同じになるぜ?」

 

 心底不思議そうにいう悠。事実だ。事実なのだが。

 

「ごめんな、悠仁くん。こっちとそっちでは多分常識が違うから、迷惑かけん限りは許したって。悠くん、見たやろ。町、凄く綺麗で静かやったやん? 多分、こっちでは犯罪がすごく少ないんや。だから、こっちでは悠仁くんの反応が当たり前なんや」

 

 キョロキョロしていたのはそういうことか。しかし、どこまで治安が悪いのか。

 本当に、この並行世界組を受け入れて大丈夫なのか。七海が不安になるのは当然のことだった。

 

「でもヴィランはいて、悠仁はそれを倒すヒーローなんだろ?」

 

 子供みたいな事を言う悠。呪術師はそんな綺麗事ではないのだけれど。

 

「まだ学生やからね。勉強中や」

「じゃあ、俺一歩リードだな!」

「むしろ周回遅れかな……。乗り越えるのと気にせんのとでは違うんやで」

「難しい……」

 

 そこで躓かないでほしい。とってもとっても初歩の道徳だから。

 ついに七海は我慢しきれず、名門出の直哉に文句を言ってしまった。

 

「悠くんの善悪に不安があること、悠くんの力には報告が必要だったと思いますが。個性とはなんですか?」

「えっとな。個性嫌いで人間ちゃんの五条家以外の人間八割が持ってる力! 直先生は爆破! すげーの! 爆殺する!って」

「悠くん黙って」

「はい」

 

 五条家以外の人間八割が持っている力。爆破とか小さくするのが?

 それは大変な事なのではないか。八割はインパクトがある。まさか全人類?

 

「なるほど、八割。五条さんの前で力を使うのを嫌がったのは」

「六眼で個性発動を見ると気分悪くなるらしいんや。誰かてきっしょ言われたくないやろ? 悟くんかて体調崩すし、嫌われたくないし」

「そこまでですか?」

 

 しかし、だとしても報告は必要だろう。気持ち悪いと言われたくないからと報告を怠れては敵わない。

 それに、いくら五条悟でも任務に関わることでそんな事をするわけがないと思うのだが。

 よほど気持ち悪いのだろうか? 報告ができないほど? そんなわけはないだろう。

 

「色々あったからトラウマもあるのかもしれへんけど……吐いたこともあるって聞いたわ」

 

 そんなわけあった。

 そこまで実害があるなら、確かに考える。それでも報告はすべきだが。

 物理的に六眼と相性が悪いのだろうか?

 

「なるほど。しかし、人間ちゃんですか」

 

 あの五条悟に偉いいいようである。

 

「個性を持たん人間は無個性で、そもそも個性因子をもっとらん人間を人間ちゃんって呼ぶことはあるな。両方に対する侮辱になるからあんまよくないんやけど」

「呪霊ではないんですね?」

 

 真面目な顔をして聞く。七海は六眼持ちではないのでわからない。

 不思議な力を使われれば、術式とは区別がつかないし、そんな五条家に拒否されるような存在、呪霊しか知らない。

 

「ハーフ悪魔なんじゃねーかって割と真面目に」

「その説は好きやあらへん」

 

 悠の言葉に顔を顰める直。悪魔と呪霊は違うらしい。

 

「じゃあ妖精さん?」

「人間でいる努力と自覚を持って」

 

 直のお願いに心から同意する。

 人間である自覚と努力は必要である。常に。全力で。人の世で生きたいと思うなら。

 

「……報告はします」

 

「とりあえず、お前ら2人調べさせて」

 

 硝子は一つ頷き、注射器を取り出した。

 

「自分らすぐ帰るし」

「調べさせて」

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで、七海が報告をあげた結果、上層部の会議にご招待とあいなったのだった。

 もちろん、五条悟はお怒りである。

 

「直さあ。バカにしてんの? どうせ見ることになるんだから、事前に言っとけよ」

「ごめんな、悟くん」

「悟。そろそろ始まるぞ」

 

 夜蛾が声を掛ける。

 上層部のメンバーも揃い、早速個性のお披露目をする事になったのだった。

 呪霊なども用意されている。

 

「じゃ、自分から見せるわ。自分は汗腺から特殊な物質を分泌して爆破することができるんや」

 

 直が手の平を上にすると、ボンッと火花が散った。

 

「ちょっとなら爆発に呪力を乗せる事も可能、やけど」

 

 ちらっと五条の方を見る。言うまでもなく、心配しているのだ。

 

「こっちはお構いなく」

 

 もう一度、爆発がする。

 五条の体が少し揺らいだのに、全員が気づいた。

 そもそも、五条が弱みを見せることなどなきに等しい。

 並行世界の五条が吐くほど苦手だと言う前情報から、直哉の小さな花火よりな五条に注目していたものが大半だった。

 

「六眼から見てどうなのだ」

「……確かにこれは見たことがないですね。違和感が凄い」

「椅子持ってくる?」

 

 悠が気遣いを見せる。

 

「いや」

「無理せんで。多分、悠仁の個性はもっとえぐいと思うし」

「大丈夫だよ。僕最強だしね」

 

 ということで、悠の個性のお披露目である。

 

「一個一個、ゆっくりするんやで」

「はーい」

 

 まず、テーブルを小さくして大きく戻す。

 

 

 次に呪霊に触れ、小さくして戻す。

 

 もう一度、小さくして戻す。

 

「嘘だろ」

 

 そう呟き、五条が目を抑えてふらついた。

 

「椅子を持ってこい」

 

 直ちに夜蛾が指示する。五条は首を振ったが、六眼がふらつくなど大事である。

 何せ、吐くほど気持ちが悪いという前情報は予めあって、覚悟もしていたはずなのだ。

 さわさわとざわめきが上層部に広がる。

 

「そのまま小さくすることはもちろん、呪力ごと小さくする事が可能みたいだね。人間もできる? よな」

「やってみる?」

「何、悟くんに向かって手ェ出しとるんや、自分にせぇ自分に」

 

 五条に向かって伸ばされた悠の手を無造作に自分に向けて引っ張る直。

 

「呪力そのままと小さくするの両方やるなー」

 

 小さくして、元に戻す。小さくして、元に戻す。

 

 小指ほどの大きさにされてしまっては、踏み潰されるだけで死んでしまう。

 呪力ごと小さくするなど冗談ではない。

 

 それを為す個性の持ち主、悠の凄まじさ。

 

 それを我が身に受け入れてみせる直。

 

 そして、あの最強の六眼を揺らがせる個性の得体の知れなさ。

 

 五条が体調不良で会議は一時中断となった時のざわめきは、夏油が呪詛師になった時よリよほどの困惑を持ってして長く続いた。

この中に読みたい話はありますか?

  • 直哉が人間の振りで五条を庇う話(幼少期)
  • 直哉がヴィランを父と呼んだ事件
  • 虎杖がドールハウスで遊ぶ話
  • 五条さん学生時代(単発)
  • 五条さん学生時代(連載)
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