俺の呪術師アカデミア!(完)   作:かりん2022

6 / 16
忌み名(改)

「ごちそーさまです! すげー美味しかった!!」

「ふふふ、いい食べっぷりね」

 

 お腹いっぱいになった悠と悠二と順平は、3人で話そうと部屋へと向かった。

 

「順平はさ。呪霊好き?」

「へ? どう、かな。最近見えるようになったから、わからないや」

 

 悠の言葉に、誤魔化しつつも順平は答える。

 嫌い、とは言えるはずもなかった。順平は真人が好きだ。人間よりもずっと。

 

「俺は好き! どれだけ力を振るっても、怒られねーもん!」

「……悠仁くんとはだいぶ考えが違うんだね」

 

 やや軽蔑を込めた言葉に、悠は無邪気に笑う。

 

「順平はさ。一生走るなって言われたらどうする?」

「ええ? 嫌だよ」

 

 当たり前である。

 

「力を使わないって、そういう事だろ。俺の体の一部なんだからさ」

「それは、確かに……」

「でも、わざわざ他に振るわなくてもいいだろ」

 

 流されかける順平だが、悠仁はしっかりと釘を刺す。

 しっかりした善を持つ男、それが悠仁である。ふわっふわしている順平と悠とは違うのだ。

 

「んー。人間ちゃんにはわからないかな、この気持ち」

「君は呪霊なの?」

「似たようなもん、なのかな。本当は」

 

 首を傾げて問う順平に、少し真面目な顔で答える悠。

 

「いや其処は人間って言おうぜ」

 

 是非ともそこは人間を主張し、人間の生き方を実践してほしい悠仁である。

 

「俺、呪詛師も好き」

「話聞こうぜ」

「だから、俺、順平が好き」

 

 悠仁は意味がわからなかった。好きと言いながら、殺気が出る。

 危険を感じた順平がバックステップで下がる。だが悠のほうが早い。

 順平を小さくして、ケージに入れる。

 

「悠、どうして!」

「真人といたろ。残穢ベッタリ。帰ってから話聞こうぜ」

「真人?」

「真人さん!?」

 

 悠はこれでも特級である。まだまだ不安なところはあるが、一応残穢は見れるのだ。

 真人のことを知らない悠仁は首を傾げ、順平は真人を案ずる声をあげる。

 

「じゃ、腹ごしらえもしたし、行こうかな」

「どこへだよ」

「真人の所。俺、自分が小さくしたものの場所わかるからさ」

 

 その報告をしなかったのは、忘れていたからか、七海を人間ちゃんと見下して認めていなかったのか、手柄が欲しかったのか。ただ単にお腹が空いたから一旦引くことに決めただけだったのか。

 最後が1番可能性が高いのが頭の痛いところである。

 そして、悠は悠仁にも力を振るおうとする。

 

【近づくな】

「運んでやるだけだって」

 

 宿儺の殺気混じりの言葉に、宥めるように悠がいう。

 ピリッとした空気が漏れる。

 その後、悠は笑った。

 

「連れてってあげようと思ったんだけど。じゃあ帰る?」

「順平は?」

「真人に会わせてみるから連れていく」

「俺も行く」

「じゃあ行こっか」

 

 2人は窓から大脱出。

 こうして、子供だけで特級呪霊の巣へ向かう暴挙を果たしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虎杖くんが行方不明とか……! 彼から目を離さなければ……!」

「ヒィィ、五条さんに殺される!」

「電話でろ電話でろ電話でろ」

 

 ここで3人の擁護をしよう。

 まず、七海は伊地知に悠を送らせ、送迎を頼んでいた。

 つまり、下の階で伊地知は待っていたのである。

 そして、様子がおかしいと上に行ったらもぬけのからだった。

 更に言えば、その後すぐに直先生に連絡をしている。

 3人はすぐに合流し、下水道から残穢を追っていた。

 後でしこたま怒られる3人だが、頑張ってはいたのである。

 問答無用で子供達が悪いのだが、それですまないのが悲しい世の中だ。

 大人は子供のやらかしの前提の上で頑張らねばならないのだ。

 さらに呪術界では、上層部の無茶振りも前提に入ってくる。ブラックである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、下水道の奥の奥で偽夏油と真人が会話をしていたその時だった。

 

「!!」

「こんにちは死ね!」

 

 挨拶は大事。だから悠はしっかり挨拶をする。

 気づかれたと同時に、偽夏油に石の全力投球。人間ならば呪力を込めない石でも有用である。

 無論、それを喰らう相手ではない。

 

「やあ。2人とも、どうしてここに?」

「順平もいるぜ! じゃ、再戦しよ!」

「えっと、あの小さいのが真人? 子供にもできんの?」

「そー。でも2人だけかー。残念ハズレ!」

 

 そろそろ味方と合流するかなーと思ったんだけど、と悠は付け足す。

 確信犯であることがここに証明された。

 ちゃんと報告するべき案件なので、ここに悠への説教スペシャルが確定した。生きて帰れればの話だが。

 

「真人、君、つけられてたね」

「ごめーん」

「脳無確認! 呪霊確認! 殺してよし!!」

 

 ビシシッと2人を指差す。

 バウっと擬音すらつきそうな勢いで、悠は順平の入った籠を放り出して走り出す。

 脳無ってなんだ。いい意味ではなさそうだ。偽夏油が口を開こうとしたそのとき。

 

「真人さん! この人、小さくしたものの場所がわかるって!」

「順平!」

 

 順平のアドバイス。ここに順平は呪霊側だと確定した。

 ここに順平への説教スペシャルが確定した。生きて帰れればの話だが。

 

「おっとすごいね君」

「俺が小さくしたの潰してって! 出来るか!?」

「できる!!」

 

 偽夏油が出した呪霊が悠の手で小さくなる。弾かれたそれを、悠仁が踏み潰した。

 

「厄介な」

 

 そもそも姿を見られた時点で大誤算である。

 そうして、偽夏油は呪霊に指を食わせる。

 呪霊は凄まじい勢いで成長した。食わせた指の数、2本。

 

「ねぇ、悠。改めて、勧誘したいんだけどどうかな? 君じゃあ、人間の世の中はつまんないんじゃない?」

「全然! すげー楽しい!」

「そっか。でももっと楽しくなるよ」

 

 真人の勧誘をきっぱりと断る悠だが、交渉の余地はかなりありそうなので、真人は勧誘を続ける。

 偽夏油は夏油ほどではないが、単体の戦闘技術も極端に高い。

 特級呪霊二体、そして偽夏油と真人。

 

 あっという間に囲まれた。

 

「んー。ちょっときついかも!」

 

 当たり前である。

 

「どうしよう!?」

「ちょっと待ってね。大丈夫、直先生近くまで来てる」

 

 悠は首に掛けていたロケットペンダントをあけ、中のそれを投下。

 

 轟音。白煙。

 

 そして、それが収まった時、いるのは悠だけだった。

 小さくした煙玉を入れていたのである。それで撹乱した。悠の奥の手だ。

 

「悠仁はどこかな」

「個性でどっかやった」

「個性。君の個性は小さくする事だろ?」

「それだけって言ったっけ?」

「……なるほど」

 

 これは厄介な。だが、多勢に無勢。そう思った時だった。笑顔のまま、悠は告げた。

 

「ところで、俺、親がすぐ死んだのと、名前封印されたのとで、自分の忌み名、学校に知られてねーんだ」

「忌み名?」

「そう。でも俺はいい子だから、自分の名前、教えてもらわなくてもちゃーんと言えるんだぜ。偉いだろ!」

「それは偉いね。名前を聞いても?」

「小喰羅(こくら)。小さいと書いて、難しい方の喰らうとかいて、羅刹の羅! 呼んでみて!!」

「小喰羅……?」

 

 偽夏油が思わず言葉通りにすると、ズァッと悠の気配が強くなる。

 

「なぁ、もっと呼んでよ、名前」

「うーん、何かの儀式かな?」

「真の名を呼ばれる時、本性が顕となる。本当は結婚相手にしか教えちゃダメなんだけど、お前ら強いから特別に俺の名前を教えてあげた! ねぇもっと呼んで?」

「私の知ってる忌み名と違うね、悠くん」

 

 術式開示みたいなものだろうか。随分と不思議な風習と力である。

 

「あっはははははははは!! 面白いじゃん、小喰羅! 小喰羅小喰羅小喰羅!!」

「イッタダッキマース!!」

 

 真人は大喜びで名前を何度も呼び、悠は楽しそうに飛びかかった。

 夏油はため息をつき、呪霊を暴れさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 式神で作った小さな鳥が、小さくなった悠仁と順平をまっすぐに直の元へと運んでいた。

 もちろん呪力はいじっていないが、宿儺は非常に御立腹である。

 

 直も悠の小さくした物を持っているので、式神を直の方に飛ばせて合流させるくらいは軽い。

 さすがは特級、できる子である。もうちょっと複雑なことをさせろと言われたら困ってしまうが。

 そして、直先生と合流をしかけたその時。

 直の持っていたペンダントが急に弾けて開き、中から直の装備が巨大化して飛び出ると同時、悠仁や順平も元の姿になる。ケージを壊す形で出た順平は七転八倒した。普通に痛かった。死ぬかと思った。

 個性の解除は悠がやったことではない。

 

 ただ単に、悠が倒されて力が解除されただけである。

この中に読みたい話はありますか?

  • 直哉が人間の振りで五条を庇う話(幼少期)
  • 直哉がヴィランを父と呼んだ事件
  • 虎杖がドールハウスで遊ぶ話
  • 五条さん学生時代(単発)
  • 五条さん学生時代(連載)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。