輝く青春簿と不死者の書   作:伝説の超三毛猫

1 / 3
ブルアカ、始めました。
その世界観に「運命」を感じずにはいられなくなったので投稿。
ストーリー全般どころかアビドス編すら終わってないのに何やってんだコイツ…(呆)(自戒)


宴路の「トト神」 その①

「はぁぁ〜〜、ここに着任してからようやく2週間……ようやく仕事に慣れてきた気がするよ…」

 

 学園都市・キヴォトスのとある建物内のオフィスにて。

 書類の山と格闘していた若い男が一人、ため息を零した。

 年齢は20代前半。銀色の髪をストレートパーマに整えあげた彼は、年相応に大きめの上体をパソコンのある机に突っ伏す。

 

「お疲れ様でした、先生」

「あぁ…ほんとーに………君がいてくれて助かったよ、ユウカ」

 

 先生と呼ばれた男は、傍らにいた少女に礼を述べた。

 青い髪をツーサイドアップにまとめた、制服姿の少女は、どう見ても女子高生にしか見えない。だが、男と違うのは、彼女の頭上には、機械で出来た天使の輪のようなものが浮かんでいた。

 ユウカと呼ばれた少女もまた、手元の書類を片付けながら言葉を連ねる。

 

「もう2週間も経っているんですよ。そろそろお仕事に慣れてください」

「まだ2週間しか経ってないじゃあないか。しかもこちとらイキナリぶっとんだ仕事に就かされたんだぜ。もうちょいゆっくりさせてくれても良いじゃあないか?」

「そろそろ慣れても良い頃合いだと思います。『シャーレ』の先生として自覚を持ってください」

「まずその『シャーレ』って組織のトップに座ってる自覚が湧かねぇ」

「しっかりしてください。……もうこんな時間ですか。ひとまずお昼にしましょう」

 

 二人が口にした『シャーレ』というのは…キヴォトスを率いる連邦生徒会が創設した組織だ。超法規的な権限を持ち、あらゆる操作権を持つ……ざっくり言ってしまえば連邦生徒会所属の軍隊だ。連邦生徒会長が特例的に認めた故に生まれた組織であり、できて間もない――それこそ先生着任とほぼ同時期だ――ため、これといった目的がなく、現在はシャーレ付近のトラブルを何でも解決する仕事を受け持っている。

 

「それじゃあコンビニでも行って………」

「また栄養バランスが悪くなりませんか?」

 

 コンビニ弁当で適当に昼食を済ませようとしたのだが、先生は手元に置いてあった一冊の漫画本をおもむろに手に取って開く。

 サイズは、文庫本か手帳レベル。懐にしまえそうなソレの中身を読んだ先生は、ひと呼吸ぶんの時間をしっかりおいてから、立ち上がった。

 

「…いや、焼きそばを買ってあったのを思い出した。アレにしよう」

「自炊ですか?」

「珍しいか? あー、まぁこっちに来てからなかなか時間取れなかったし、久しぶりにはなるが」

 

 焼きそばの袋やキャベツ、人参、もやし、ベーコン、中濃ソース等を次々と引っ張り出しつつ、彼は得意げに微笑んだ。

 

「焼きそばは俺の得意料理なんだ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「こんにちわ。当番に参りました」

「お、スズミ!」

「先生、それは…」

「焼きそばだ。スズミも食べるかい?」

「…分かりました。いただきます」

 

 焦げたソースと炒まった野菜と肉の香ばしい匂いが満ち始めた頃、スズミと呼ばれた、銀髪に天使の輪をたたえた制服姿の少女がシャーレに訪問する。

 丁度昼時にシャーレの数少ない当番として訪れたため、そのままユウカと共に焼きそばのご相伴にあずかることとなったスズミである。

 

「美味しいですね…何か、手を加えていらっしゃるんですか?」

「そこまでじゃあない。市販のやきそばとほぼ同じだ。ちょっとソースを焦がしたのを混ぜてるだけ」

「塩分の取りすぎになりますよ」

「カタいなぁ。これくらい良くないか?」

「塩分は危険なんです。あらゆる病気のもとになりますよ」

 

 口酸っぱく「塩分が及ぼす身体の悪影響」について小言を言いつつも、三人の焼きそばをすする音は、三人分の皿から焼きそばが消えるまで鳴りやまないのであった。

 食事が終わり、食器を洗いにキッチンに向かったユウカとスズミを見送った後で、先生は焼きそばを作り始める前に読んでいた漫画本を手元に持ってきて、それを開く。

 表紙に「シャーレの奇妙な冒険」と書かれたそれには、独特―――というにはクセが強すぎる芸術的なタッチで漫画が描かれていた。

 

『今日のお昼ご飯は焼きソバです。コンビニには、強盗と鉢合わせるから行きません』

『エンジはコンビニに行かなかったので、強盗に人質にされずに済みました!』

『エンジが久しぶりに作った焼きソバは、生徒にも大好評! ユウカもスズミも、美味しそうに焼きそばを食べてくれました。やったネ!』

 

 そこから先のコマは、まるで質の悪い落丁本のようにまっさらで、なにも描かれていない。

 だが先生は、まるで先程まで行われていたことをそのまま――そのままと言うには漫画の画風が独特すぎてアレだが――描かれているような内容に、ひとつ頷いてから、呟いた。

 

「…こういう危機回避は絶対当たるんだよなぁ」

 

 彼は知っている。

 物心がついた頃から、この本が自身の身近に置かれていたことを。

 落丁本にしか見えないこの漫画本が、実は未来を予知する代物であることを。

 そして、漫画本に描かれた未来が、()()()()()()()()()()()()()()ことを。

 

「先生ー! お皿ー!」

「あぁ、わかった!」

 

 ユウカに呼ばれて皿を持ちながら、2週間前に、連邦生徒会の首席行政官に言われた事を思い出す。

 確か…「困っている生徒の力になってほしい」みたいな事を言われたんだったか。

 急な経緯で重要そうな仕事に就かされた彼だったが、凛としたあの少女に言われた事は全力で果たすつもりでいた。

 

「午後も仕事が山積みなんですから、早く片付けてくださいね」

「お昼休みが欲しいぜ……まぁ、そんな贅沢言ってられないんだけどな」

「頑張りましょう、先生」

 

 これは、少女達の青春を守るために一冊の(かみ)を手に奮闘する男―――四ノ本(しのもと)宴路(えんじ)の物語である。

 




先生/四ノ本(しのもと)宴路(えんじ)
スタンド「トト神」を生まれつき持っているが、某3部に出た弟とは違って善行に能力を使っていたため、性格が卑屈にひん曲がっていない。また、魔が差してちょっと悪いことにも能力を使っていたため、トト神の予言の性質もボインゴより詳しい。ブルアカの先生をモデルにはしているが、オリジナル成分を盛り込んだ事で、先生によく似たオリキャラになっている。名前の由来はOingoBoingoの楽曲「Dead Man's Party」とトト神のスタンド像から。
Dead Man's Party+本→死者の宴+本→死・本・宴→四・(の)・本・宴+(男っぽい名前にするための何か漢字)

早瀬ユウカ
ミレニアムのセミナー会計にして、ブルアカの先生たちの性癖を開拓した子No.1。なんだかんだでセクハラに対する寛容度が高そうなことで有名。宴路が「予知能力」を持っていることは本人から聞いたが、あまり信じていないし、常に宴路が奇妙な漫画本を持ち歩いている理由も知らない。

守月スズミ
トリニティの自警団で最も有名な子。彼女もまた「予知能力」について本人から聞いたけど、それが本の形をしていることを知らないし、ユウカ程ではないがあまり信じていない。

アロナ
かわいい。

小鳥遊ホシノ
ゆるいキャンプで聞きそうな声をしている。

砂狼シロコ
「落ちろカトンボ!」と言いそうで言わない。

空埼ヒナ
私の娘になってくれるかもしれなかった女性。

一之瀬アスナ
宴路のメイド1号。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。