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……たくさん小説を書くのは、いい文明
カルデアの管制室は、騒然としていた。
当然である。自分たちのマスターが、まさかISを動かしてニュースに取り上げられることになろうとは思っていなかったからである。
「え?え?え?」
「おおお落ち着き給えよロマニくん。こういう時は素数を数えて落ち着くんだ。1、2、3……」
「所長、1は素数じゃないです」
動揺の広がる管制室の主たち。
さらにその配下たちにも動揺は広がり、波紋のごとくそれは伝播していく。
「ウソダドンドコドーン!」
「なあ~にい?」
「立香がISを動かすなんて……畜生めぇ!」
「うるさいぜ!(半ギレ)」
「なんか飛んできたぁ!?」
「パーリィピーポォ」
「あぁぁ!やばい!あぁぁ!でもね!生きてたぁ!(SAN消失)」
愉快なカルデアスタッフたちの動揺は止まらない。
何とかして正気に戻ったロマニが、あわあわしながら場を落ち着かせようと走り回る。
ちなみにこの会話を電話越しに聞いていたエルメロイⅡ世の胃は吹き飛びかけていた。
「君たち、落ち着け!立香くんが変なことを起こすなんて、いつものことだったじゃないか!」
「いわれてみれば確かに」
「だって俺たちのカルデアのマスターだしな」
「別の世界線では女性だし」
「ISを動かすくらい余裕か」
「ちくわ大明神」
「取り敢えず先ずはバイタル値の計測から始めます」
「おいいまなんかいたぞ」
魔術的な力を込めて声を飛ばしたロマニの手によって、カルデアスタッフに平静が戻ってくる。
いつものエリートたちの顔つきに戻った彼らは、立香が腕にいつもつけているカルデアとの秘匿通信回線を復旧させる。同時に、パスとなっている端末から、バイタルデータ他の各数値の再計測に移る。
状況把握のために、ロマニはエルメロイⅡ世との通信から、当時の状況を知るために動き出した。
「エルメロイⅡ世、そちらで何があったかを聞かせてほしい。今後の立香くんの扱いとか、今の状況とかもできる限り詳細に教えてくれないかい?」
「ああ、承知した。順番に語っていくが、質問は最後まで待っていてほしい。それでいいかね?」
「うん、問題ないよ。それじゃ、よろしく頼むよ」
「ああ。事の始まりは、……」
東京都○○区の、藤丸家。
荷物を自分の家の中に置いていき、さてひと段落としようとすると、呼び鈴が鳴る音がした。
「……?」
帰宅したばかりというのに、何なのだろうか。
そう思いながら外に出ると、黒いスーツを着たエージェントのような人間が家のドアの前で待っていた。
「あの、どちら様ですか?」
「これは失礼。私たちは日本国政府のものです。帰宅したばかりだとは思いますが、ISの適性試験を受けてはいただけませんか?」
外にいるエージェント曰く、自分が帰宅している最中に男性のIS操縦者が見つかったらしい。なんでも、IS操縦者で世界大会を優勝した、織斑千冬の弟だったらしい。
血縁はともかくとして、男性操縦者が発見されたことは震撼を齎した。男には動かせないものとして神聖視されていた節のある、IS。その常識を打ち破る発見は、全世界を驚愕されるとともに、新たな旋風を巻き起こした。
それに伴って、他の男性IS操縦者が居ないかを確認するべく、全国で検査が行われている……というのが、黒服たちの話だった。
「……なるほど、わかりました。行きます」
「そうですか!それではこちらに。先ほど帰宅する際に長蛇の列があったところが、検査会場となっています」
話を理解し、黒服たちについていく。特に噓を言っているような様子は見えなかったし、何よりも男である立香は、未知のロボットに対する興味が大いにあった。
検査会場はこのあたりでも有数の大きさを誇るドームであり、そこには埋め尽くさんばかりの男が敷き詰められている。
あまりの密集具合に、目が回る心地がするのを抑えながら、列の最後尾に並んだ。
「この程度の人数ですと、1~2時間程度がかかると思われます。……どうぞゆっくりお待ちください」
「はい、案内ありがとうございます」
並んでみると、肌に熱気を感じる。
それだけ、ISを動かしたいと思う人間がいるとわかった。
暇を持て余しながら、カルデアの万能の天才から貰ったスマホで神話を読んでいると、人の列が消えていく。一人、二人、また一人。歓声が上がらないところを見るに、どうやら新しい操縦者はまだ出てきていないらしい。
目の前に並んでいた人は瞬く間に消えていき、なんと予定よりもかなり早い時間に藤丸のもとに検査の順が回って来た。
「──はあ、次の方、どうぞ」
大きなため息を吐かれながら、ISコアの元に案内される。
目の前に鎮座する"それ"は、主人を待つかのように、堂々とそこにあった。
日本が誇る第二世代機、打鉄。奇しくも、それは初の男性操縦者が動かしてみせたそれと、同じ型の機体であった。
黒々としたそれに、無意識のうちに手を近づける。まるでそれに取り憑かれたかのように、夢中で。
そして、ついに指先がコアにつく。
心地よい熱が、指先から広がっていく。ぐっと押し込めるように、ISコアに右の手のひらを触れされた。
すると、空鳴りがした。
キィィィィン、という音と共に、脳裏に数多のビジョンが浮かぶ。
「──ぐっ」
さながら、パソコンのウィンドウを無限に展開し続けるように、大量の知識が襲ってくる。脳裏にビジョンが浮かんでいく。
視界が赤く染まる。目がチクチクと痛み、頭がガンガンと痛む。正しく、一方的な暴力と呼ぶに相応しいそれは、容赦なく身体を傷つけていく。
(──閉じろ)
それは、防衛のための無意識下の反応だった。あまりの量に耐えきれなかったそれを守るために、その三言を紡ぐ。
すると、先ほどまでのデータ量が嘘のように鎮まる。映るのは環境データや機体のパーソナルデータ、そしていつもよりもよく見える視界だった。
そして、遅れて理解する。この状況の異常さに。
まるで自分の身体じゃないみたいな、明晰感。それでいて、普通のようにも見える自分自身。
それらに困惑が隠しきれなくなる。
すると、誰かの悲鳴にも似た、大声が響き渡る。
「あぁ、二人目の男性操縦者だ!」
瞬く間に困惑は伝播し、混乱に昇華し、そして場を包む空気は異様なものへと転じる。
あるものは怒号をあげ、またあるものは歓声を上げ、果てには気絶するものまで現れる。もはやこの場を鎮められるものはどこにもおらず、そしてISを動かした藤丸自身は、さらなる混乱の最中に身を投じた。
エルメロイII世がそれに気づいたのは、とある約束の時間──集合の時間になったにもかかわらず藤丸が現れなかったからだ。
帰国後、少し休んでから秋葉原散策と洒落込む予定だったエルメロイII世は、日本到着後少し予約してあったホテルで仮眠をとったのち、藤丸と合流する約束を果たして配下たちにその後を任せて寝ていた。
妙に思ったエルメロイII世は、すぐに配下たちの携帯に連絡を掛けて状況を把握した。把握せざるを得なかった。
顔から血の気がサァ、と消えていく感覚を久しぶりに味わった、とは彼がのちに語ったことだった。
そうして、速報が世界中に一斉に流れ、場面は冒頭のカオスへと戻るのだ。
「……と、ここまでが一連の流れだ。私が監督責任を怠ったところもある、本当にすまない」
「いや、まさかこんなにもあっさり動かすとはボクたちも思っていなかったしね。それに藤丸くんも男だ、気になるのもわかるぞぅ!」
一連の話を終え、もう話すのは懲り懲りだ、という声色で語り終えたエルメロイII世に、誰よりもロマンを理解する魔術王が精一杯のフォローを入れる。
管制室ではロマニの隣にいるダヴィンチちゃんが激しく首を縦に振っているし、他の管制室スタッフ(主に男性スタッフ)もロマニのそれに同意するようにヘドバンをしている。割と気持ち悪い光景にも見える。
「……ところでだねエルメロイ氏。その肝心の立香くんはどこにいるのかね」
そんな雰囲気をぶち壊す一言を放つのは、我らが所長ゴルドルフであった。
こいつ空気読めてねえな、という圧を放つカルデアスタッフたちにあわあわしながら、彼は続きの言葉を放つ。
「いや、だって彼は私たちにとって真っ先に安全を確保する必要のある重要人物だぞ!?彼は何せ、人類史最後のマスターでもあったんだからな。それにここにいる皆ならわかってくれるだろう?彼は時計塔における最重要人物でもあるのだ、何かがあってからではもう遅い可能性もある!」
その言葉に、カルデアスタッフたちが背筋を伸ばす。
藤丸立香は凡人だ。ただの、どこにでもいる一般人だった。
魔術なんて
それでも彼は人類を救って見せた。そして次は、異聞の人類を殺した。世界を救い、その過程で世界を滅ぼした。
人類の滅亡と白紙に目の前で立ち会った、地球上でただ一人の人間なのだ。
それ故に、全てを取り戻してからの立香の処遇は、大いなる論争を巻き起こした。
記憶消去による一般人化、ホルマリン漬けで保存、英霊の縁をもつモノとして解剖する。それ以上の悍ましい提案も数多くあった。
それらから藤丸立香を守り抜いたのが、カルデアスタッフとその所長だった。
あの手この手を尽くし、藤丸立香を守り抜いた。財力で黙らせたこともあった。最終手段として、武力の行使を躊躇うこともなかった。
その結果守り抜かれたのが、南極の天文台としてのカルデアス天文台と、人理継続保証機関フィニス・カルデアの二つなのだ。
「彼は今、日本政府からの事情聴取を受けているよ。
「……そうか。モニター班、バイタルデータの取得は行なっているな?」
「はい。腕章との秘匿回線の復活も終わっています。位置座標データの更新も抜かりありません」
「よし!引き続きモニターを続けてくれ。今は、彼が帰ってくるのを信じるしかあるまい。エルメロイ氏、すまんが立香くんを頼んだ」
「ああ、今度は目を離さないようにしよう。では、また何かあったら連絡する」
IS学園、大会議室の中は、言語化しにくい圧力で包まれていた。
議題は、新たに発見された男性操縦者の扱いに関してだった。
──藤丸立香。南極の国際的観測基地、カルデアス天文台のスタッフ。
スタッフの中でも特に重んじられるポジションの“実務”所属であり、かなりのエリートとして勤務しているらしい。
彼の扱いをめぐって、意見は二分された。
一つは研究材料として、国際研究機関に提出するというもの。その場合、彼はおおよその人権を剥奪され、モルモットよりも酷い短い余生を過ごすことになる。
そしてもう一つは、IS学園への入学。
一人目と同じように扱い、その扱いへの貴賤が生まれないようにするべきだ、という意見。
最初は前者の考え方が大半を占めていた。強固な後ろ盾を持つ織斑一夏と、あまり後ろ盾の強くない(ように見える)藤丸立香。
未だに未知の多い男性操縦者の研究材料として使うにはあまりにも都合の良い存在であるように見えた。
その流れが大いに変わることとなったのは、この会議で誰よりも大きな発言力を持つ女傑の一言だった。
「私としては、IS学園に入れる方向性で行きたいと思っている」
──織斑千冬。
通称世界最強。二度の世界大会のうち、一回を優勝、もう一回を決勝戦でとある事情のため棄権。
その後は選手としての現役から引退し、教育者としての道を歩んでいる。今でも大いに畏れられる、偉大なる人だった。
鶴の一声とでも呼ぶべきそれは、一気に場の空気を変貌させた。
先程まで研究材料としての使用に肯定していた国々が旗色を翻すように、意見を変えていった。
やがて研究材料として用いるという意見はなくなり、満場一致でのIS学園入学が決まることとなる。
(……はあ)
内心で千冬はため息をついていた。
自らの愚弟に続き、まさかの二人目の発見に、彼女は疲れ切っていた。
(あいつに続いて、二人目が出てくるとはな)
自分という後ろ盾を持つ弟と、何も持たない彼。
だからこそ、扱いの差が生じるきっかけになったのだ。有り体に言えば、藤丸立香は生贄に等しい存在でしかなかった。
「やれやれ、これでは寮の編成もし直しか。あと、クラス分けもどうするべきか……」
ゆっくりと女傑は席を立ち、ゆるりと歩き始めた。
藤丸立香。自らの弟と同じ、運命を狂わさせた者。
彼に、ただの平穏な暮らしはもう訪れはしない。
故に彼女は祈る。それしか、彼女にできることはなかった。
南極は晴れ渡っていた。
蒼空が顔を覗かせ、氷は豊かな光を反射し、ダイヤモンド以上の輝きを込めている。
美しく、綺麗な、透き通った世界だった。
「―――─塩基配列ヒトゲノムと確認─―――霊器属性善性・中立と確認」
「ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。ここは人理継続保障機関カルデア。」
「指紋認証声帯認証遺伝子認証クリア。魔術回路の測定……完了しました。」
「登録名と一致します。貴方を霊長類の一員である事を認めます。」
「おかえりなさい、藤丸立香さん。貴方は本日最後の来館者です。」
「どうぞ、善き時間をお過ごしください。」
懐かしいアナウンスの後で、これまた懐かしい景色が目の前に飛び込んでくる。
あの日から整理整頓され、綺麗になった廊下。血の跡は消え、崩された壁もすでに治され、南極の中であっても凍えないための断熱は完璧に動いている。
「──あ。お帰りなさい、先輩」
目の前の菫色が、ゆっくりと噛み締めるように呼びかけてくる。
それに応えるために彼女に正対した男──藤丸立香は、こちらもしみじみと話す。
「うん。ただいま、マシュ。カルデアで何か事件はあった?」
「大きな事件は何一つありません!……あ、強いて言うとすれば、ニュースに乗った先輩に困惑する方が大勢いらっしゃいました」
頼りになる後輩──マシュ・キリエライトは、思い出すようにゆっくりと語りながら、立香の隣に駆け寄ってくる。
マシュの言葉に、立香は困ったような表情で少しだけ笑った。
「まさか、俺がISを動かすなんて思わなかったよ」
「わたしもニュースを拝見して、驚きました。先輩は実は女性なのではないか、とも考えてしまいました。
──あ。そう言えば先輩、所長とドクターたちからの伝言がありました。管制室で待っている、とのことです」
「ん、わかった。一緒に行こう、マシュ」
それからは、いつものように雑談しながら管制室へと向かう。
カルデアにいない間に起こったことを、余すことなく話すマシュ。
テレビに映った先輩をみて、子供組のサーヴァントたちが大はしゃぎしていたこと。
食堂のエミヤとカドックが胃の辺りを抑えていたこと。
愉快な古代王たちが大笑いしていたこと。
語っても語っても、語りきれないことをたくさん話すマシュ。
立香はそれの一つ一つにリアクションを返しながら、これが己の日常であったな、と後輩との会話を噛み締めていた。
「……先輩。管制室前まで到着しました」
そんな話をしているうちに、どうやら管制室に到着したらしい。
心は至って穏やかだった。いつもとは違う形での危機であるにも関わらず、特に焦りも、気が逸ることもなく、ただ平常心で藤丸立香は立っていた。
「うん。それじゃ、入ろうか」
「……はい!」
ドアを開く。
目の前飛び込んでくるのは、
「霊長の世が定まり数千年。
神代は終わり、西暦を経て人類は地上でもっとも栄えた種となった。
我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。
そのために多くの知識を育て、多くの資源を作り、多くの生命を流転させた。
人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理――人類の航海図。
これを、魔術世界では人理と呼び、我らカルデアは其れを尊名として守り続けている。
……さて!おかえり、立香くん!ボクたちは皆、君が無事で帰るのを待っていたぞぅ!」
どこか仰々しく、見た者を圧迫させるような、白髪のローブの男。
魔術の開祖──ソロモンは、そう語りながら、立香のことを出迎えた。最後の最後で、ゆるふわっとした感じで締めるのは彼らしい。
「Mr.リツカ。まさか君がこのようにして、ISを動かすことになるとは私をしてもわからなかったよ。流石に全ての真実を見透す身であっても、こればかりは難解が過ぎる!」
その次に彼を迎えるは、カルデアのサーヴァントの一人のシャーロック・ホームズ。
『明かす者』の代名詞的存在にして、探偵という者の結晶。
彼は愉快そうな顔で、ひどく楽しそうな声で、さらに語る。
「ああ──だからこそ、非常に楽しいとも!この謎、必ずこの私が──いや、カルデアの全員で解き明かして見せようではないか!」
いつもの三十倍ほど上機嫌なホームズはそう語りながら、一人思考の海に落ちてしまう。
彼のそんな様子を見ながら、立香は笑う。これこそが、これでこそ、我らがシャーロック・ホームズという感じがする。
ふと、マシュに袖を引っ張られると、そこには眉を顰めて困った様子の男がいる。
「……あのだね。そろそろ本題に移らないかい?」
常識人──ゴルドルフ・ムジークは、これって本来私の役目ではないよね、と思いながら、場を整えるのであった。
ご読了ありがとうございます。
次回はカルデアメイン(しばらく続きそう)。話の中で出てきた古代王が来るぞ(予定)(予定は未定)(it's判断力足らんかった)
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