IS×FGO   作:如月/Kisaragi

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お待たせしました。第五話です。
前回の話の後書きでやったスタイルがいい感じだなと思ったので、今回も後書きで少しやらせていただいてます。たくさんのご意見、感想ありがとうございました!

小説の文字数に関しては、自分が書きたいと思ったエピソードを全てまとめて書いて放出、というスタイルでやらせていただきます。
なので今まで以上の長文になることや、逆に短い話が出てくるかもです。ご了承ください。

それでは本編をどうぞ。


#5

────視線が、痛い。

 

ここまで熱烈な視線を受けたのは、時計塔に行ってすれ違った魔術師たちに目を向けられた時以来だ。

それだけ、この場において自分は異質な存在なのだ。

 

4月8日。

一般的な小中高校の入学式の日。

新しい生活に胸を弾ませ、不安と希望を胸にして、学友と出会う日。

それは日本国から隔絶された洋上にある学園の、 IS学園であっても変わらないようだった。

 

……それにしても。

本当に周りは女子、女子、女子、といった感じだ。

一年一組の自分の席の周りには、多種多様な国から来たと思われる人々──主に日本人が多いが──が、こちらに視線を向けてきていた。

まるでこれから実験に使われる被験体(モルモット)をまじまじと見つめ続けるかのような、そんな居心地の悪さに襲われる。

 

それはどうやら、先に見つかった一人目の方も変わらないらしく、あちらもあちらで居心地悪そうにしていた。

だが彼の顔面は蒼白で、胃を抑えている。相当緊張に弱いのだろう。

 

──羨ましい、と思った。

 

「……あ」

 

一瞬向こうの男子──織斑一夏と目が合ったが、そっと逸らす。

すると彼は捨てられた子犬のような顔でこちらを見つめてきていた。流石に対応に困ったが、そろそろホームルームが始まる時間なので立ち上がることを躊躇った俺は、そのまま席で茫然として時間を過ごした。

 

キーンコーンカーンコーン。

万国共通であろう鐘の音、ウェストミンスターの鐘のチャイムが鳴り響き、静かになる教室。

ドアから、緑髪の先生らしき人物が入室してくる。

身長は低く、それに反してどことは言わないが大きい。

合法ロリとは彼女のために作られた言葉ではなかろうか。

 

少女のような先生は山田真耶、というらしい。

ただ彼女の身なりと声のせいで、どうしても先生のようには見えなかった。

が、こういうこともあるか、と納得して思い込むことで違和感をなくす訓練はしてある。

もと自分が居たところにはあれ以上のキャラの濃い人が居たから。

 

彼女の誘導で自己紹介が始まる。

活発そうな女子の相川さんから始まり、瞬く間に順番はこの教室で一番注目されている生徒の元へと向かっていった。

 

「織斑くん。織斑一夏くん!」

「はっ、はい!?」

 

織斑一夏。

世界最強たる姉の織斑千冬を姉にもつ、世界で初めてISを動かした男。

教室の視線を集めていたことからわかる通り、かなりの美貌。俗にいうイケメンという人種だった。

 

そんな彼は大きな声で呼ばれたことから、ビクッ!と遠巻きに見ながらでもわかるくらいに肩を跳ねさせた。顔色も先程以上に悪くなっている。

……彼は本当に大丈夫なのだろうか。

 

「あ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。でも、『あ』から始まって今『お』なんだよね。自己紹介してくれるかな?」

「あ、すみません…………ええと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

副担任の山田先生が申し訳なさそうに声をかけて、織斑くんはそれに応じる形で自己紹介……というより名乗りを果たした。

あれで自己紹介を終わらせるとなれば、どこぞの金ピカ王に怒られてしまうだろう。

 

周りの女子たちの様子を眺めてみると、やはり少し空気がおかしい。

嘲るような、小さな笑い声も聞こえていた。……何かがおかしいような気がする。

彼女らも自己紹介に違和感を抱いているのかもしれない。

そう思いながら待っていると、織斑くんが息を吸った。

 

「────以上です!」

 

大きな声が教室中に響いた。

綺麗な声だった。

椅子から滑り落ちてガシャン、という音が鳴り響いたような幻聴を覚えた。

 

自己紹介ってなんだったっけ、マシュ。

少なくとも俺たちが出会った時は、名前の名乗りだけで終わりじゃなかったよね?

心でそうごちて、ある意味で英雄となった彼のことを見つめる。冷や汗を流していた。

 

「……あ、あれ?ダメでした?」

 

小さく呟く織斑くん。

そんな彼の元に、一人の女性が近づいていった。

 

その手には、凶器にも等しいもの(出席簿)が握られていた。

女性はそれを振り上げて────織斑くんの頭の上に、シュー!という擬音がつくようなスピードで振り下ろした。

 

パァン!

 

それは、破裂音だった。

破裂音以外の、何物でもなかった。

 

「げえっ、関羽!?」

 

パァン!

 

二回目の破裂音。それを聴きながら、俺は『なぜ関羽なのだ』、という疑問を隠しきれなかった。

そこはほら、呂布とかいたじゃん。三国志の暴君。

呂布といえばそうだ、赤兎馬に会いたい。

 

そういえば関羽は赤兎馬の主人にもなっていたか、と思い返して女性と織斑くんのことを見る。

まるで漫才みたいだな、と思ってしまった自分は悪くないと思いたい。

 

にしても、本当に痛そうな音だ。

初めてカルデアにきて、説明会を寝て過ごしていた時にオルガマリー所長に殴られたときくらいの衝撃がありそうだ。

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

織斑千冬。

世界最強の女傑は、先ほど殴った弟にそう告げて教卓へと歩いていく。

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたのですか?」

「ああ、山田くん。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「いえ。副担任ですので、これくらいはしないと」

 

業務的な会話をしながら、生徒たちの前で話し合う二人。

なんというか、これがIS学園の日常なのだろうか。よくわからない。

生徒たちもこの急展開についていけない様子で、オロオロとして見守っている。

 

「諸君、私がこの一年一組の担任を務める織斑千冬だ。

君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育て上げるのが仕事だ。

私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者にはできるまで指導してやる。

私の仕事は君たち一五歳を一六歳までに鍛え抜くことだ。

それと『IS』を使うことの“意味“も伝えていくつもりだ。

逆らっても構わないが、私の言うことは聴け。いいな」

 

……これが世界最強の先生、と言うことなのだろう。

なんというか、軍隊顔負けではないだろうか。俺の所属していた組織でもこんなではなかったが、これではまるで軍人育成学校のようだ、と思えてしまう。

普通の人間なら、ドン引き確定だ。俺でも初見なら引く。なんなら若干引いてる。

最強の我様がカルデアにいたので、まあ別に気にしていることはないが。

 

「キャー!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

音響炸裂手榴弾もかくや、というほどに強烈な耳への一撃。

対粛正防御も無敵もつけていない自分の耳には、もはやうるさいではなく痛いだった。

 

それにしても。あのような現場を目撃し、頭を打たれた本人が沈黙している状況下で、こうしてはしゃぐ彼女たち。

……狂っている、と思った。狂っている、というよりもネジがずいぶんと外れているな、と思った。

カルデアでこれと似たような追っかけの方々(溶岩水泳部)に絡まれていたことはあった。あれの恐ろしさは、自分が追われる側だっただけによく理解している。まさかここにきて、あの方々に似たものを見ることになるなんて思いもしていなかった。彼女たちの狂信が恐ろしいと思う。

織斑先生の人気は途轍もないため、このようなことになるのだろう。

なんというか、アイドルの追っかけの気持ちとアイドルに追いかけられる側の気持ちの二つが、少しだけ理解できたような気がした。

 

「毎年、これか。……よくもまあ、これだけお調子者ばかりが集まる……

この反応が来るたびに、嫌でも新年度が来たことを体感させられる……」

 

渋い顔で語る織斑先生。

よほどこの反応が嫌いなのか、噛み締めるようにしみじみと語るその姿から嫌悪感がこれでもかと言うほどに滲み出ていた。

 

「きゃあああああああああ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そして、つけあがらないように躾をして!」

 

二回目の炸裂と同時に、俺の眼はきっと死んだ。

これから少なくとも一年間、こんなキャラの濃い連中と絡む必要があると思うと、なんだか色々考えるのが嫌になった。

 

「……で。挨拶も満足にできんのか、お前は」

「いや、千冬姉、俺は────」

 

パァン!

 

三回目の打撃音。

このままでは彼の脳細胞はどんどん減っていくのではないか、と漠然と思った。

 

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

 

他生徒の前では体裁が立たないので、この呼び方を直させる指導は理には適っているだろう。ただ、やり方に大いなる問題があるが。途轍もなく痛そうだし。

だがこの会話はもちろんクラスメイトの皆に聞かれており、当然、

 

「え……?織斑くんって、あの千冬様の弟?」

「それじゃあ、世界で唯一男で『IS』を動かせたのもそれが関係して……」

「あぁ……いいなあっ……()()()()()()()()……」

 

前の二つはまあ、そのようなことを思って当然であると思う。

世界最強の弟。大いなる名誉、期待、羨望。それらを欲しいと望み、また彼女と血縁になりたいと思う人間もまた多いことだろう。

 

しかし。

俺は、代わって欲しいな、という言葉に、突っかかりを覚えた。

 

確かに名誉、期待、羨望は誰もが望むものだと思う。

血縁でのつながりは唯一無二で、スターとして崇められる織斑千冬の弟、と認められる織斑一夏が羨ましく思えるのにも、まあ納得はいく。

だが、代わって欲しい、という言葉には賛同できなかった。

 

だってその言葉は、俺が吐きたくても吐けなかった“弱音”のように聞こえてしまうから。

 

きっと彼女にそういった意図はない。

ただ純粋に、彼の境遇が羨ましくなって放った一言である。それは頭ではわかっている。

わかっていても、マイナスに考えることを俺は止めることができなかった。

 

「さて、このまま授業に入る……と言いたいところだが、全員の自己紹介も終わっていないし、何よりもこのクラスにはもう一人の男子生徒がいる。先にそちらに挨拶をしてもらうとしよう。

……藤丸、自己紹介をしろ」

 

織斑先生の一言を聞き届け、俺は徐に席を立った。

さっきまで考えていたことは、全て忘れよう。今はただ、余計なことを考えずに皆の前で自己紹介をしよう。

 

「はい。みなさん、初めまして。俺は藤丸立香と言います。

南極の観測台、カルデアス天文台に高校一年生の時から勤めていました。今は18歳で、皆さんより年上ですが仲良くしていただけると幸いです。

南極の仲間たちからは立香と呼ばれていたので、そう呼んでくれると嬉しいです。これから三年間、よろしくお願いします。

何か質問があれば、休み時間とかに気軽に話しかけにきてください」

 

一通り語り終えると、拍手の声が一面に響き渡る。

だが周りを見渡してみると、やはり一定数の人間が嘲るように笑っていたり、小声で何かをしきりに言い合っている。

……ソレが良くない内容であることは、手に取るようにわかった。

 

「……よし、では残りの生徒もこの一限の間に自己紹介をしておけ。織斑の次の生徒から順番にな」

 

その一言から、順番に自らのことを紹介していく生徒たち。

一人一人の名前を覚えていくことに終始しながら一時間目のLHRを過ごした。

 

 

 


 

 

 

授業終わりのチャイムと同時に、席を立つ。

こんなところに放り込まれて、正気ではいられなかった。周りは期待の眼差しを、羨望の眼差しを、そして怨嗟の眼差しで俺を見つめてきていた。

 

気がどうにかなりそうだった。

自己紹介の時も色々とありすぎて、殴られた記憶だけが鮮明に残っている。

 

苦しみを紛らわせたくて、俺は席を立ち、とある人物の元へ行こうとした。

──藤丸立香。俺と全く同じ境遇に置かれた、()()()

彼に気持ちを共有したくて、俺は急ぎ足で彼が座っていたあたりへと向かった。

 

「藤丸くんは何が好きなの?」

「うーん、モノだったら本かな。色々読むよ、アーサー王物語とかね」

「嫌いなものは何かある?」

「ぱっと思い浮かぶものは特にないかな?何かあったら知らせてあげるよ」

「何かスポーツはやってたの?」

「古今東西の色々な武術をしてたよ、たとえば────」

 

彼の周りにはたくさんの人が居た。一人ずつ、丁寧にコミュニケーションしながらにこやかとしているのは、凄いことだと思った。きっと緊張に強いタイプの人間なのだろう。

また、クラスメイトの他にも、見覚えのない水色の髪の人もいた。リボンの色が違うから上級生だろうか?

 

「立香くん、生徒会に興味はない?」

「まだ入学したばかりだから特に考えて……え、楯無さん?」

「ありゃ、バレちゃった」

 

鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で驚く藤丸。

何故ここに、と思っているように見える。目を見開く様子も割とかっこいい。

……あの上級生は有名なのだろうか……?全くわからない。

上級生?の楯無と呼ばれた女性は、にっこりとした笑みを浮かべていた。

例えるなら、チェシャ猫のような、そんな笑み。悪戯心満載の魅力的に見える笑みだった。

 

「え、楯無って、あの更識楯無!?」

「あの、っていうのはよくわからないけど、多分想像通りの楯無よ〜」

「ってことは、ロシア国家代表の生徒会長ってことですか?」

「正解よ〜。生徒会長にして、ロシア国家代表の更識楯無よ。新入生諸君、よろしくね」

 

国家代表。

昔の千冬姉──織斑先生がそうだったという、あの国家代表?

そんな人が藤丸と仲が良さそうに話している。藤丸はすごい奴なのかもしれない。

 

「……ん?」

 

遠巻きに見つめていると、彼が俺の居る方向をじっと見つめ始める。

周りを囲っている女子生徒たちは、生徒会長の方に夢中になっているため、誰も彼の視線に気づいていない。

視線の先を見つめてみるが、そこには何もない。

 

「ごめん、少し席立ってもいい?」

「あ、いいよー!周り塞いでてゴメンね」

「気にしないで。……じゃ、ちょっと失礼」

 

藤丸は席を立って、こちらの方向に歩いてくる。

何をしに行くのだろうか、と注目していると、こちらに向かってくるではないか。

思わず身構えてしまう。何をしに来るのか、何をされるのか。ぐるぐるぐる、と思考が渦を巻くに連れて、視界もなんだかぐるぐるしだす。自分は混乱しているのだろうか。

 

「ね、ちょっといい?」

「ひゃっ、はい!」

「……もしかして緊張してる?」

「逆に緊張してないんですか……?」

「別にしてないかな。あ、あと敬語じゃなくていいからね」

 

舌が上手く回らない。

そんな中でも彼はニコニコとしながら、余裕そうに話している。

……これが、年上の余裕ということなのだろうか。

 

「藤丸立香。立香って呼んでくれると嬉しい。これからよろしく、織斑くん」

 

腕を伸ばしてくる藤丸……いや、立香。

それに応えるべく、俺もまた腕を伸ばして握手を交わした。

 

「よろしく、立香。俺のことも一夏って呼んでくれ」

 

なるべくいつもの通りの自分を出す。まだ緊張でぎこちなかったが、俺の中でのベストを尽くして見せた。

と、彼はすこしだけまた笑って告げた。

 

「うん、一夏」

 

────男の俺が言うのは変かもしれないが。

あのとき、立香の見せた笑みは。

 

なによりも格好良くて、輝いて見えたのだ。

 

 

 


 

 

 

二限目から早速授業が始まる。

前もって渡されていた『電話帳より分厚いISの参考書』をもとにして進んでいく授業。

 

はっきり言ってしまうと、退屈であった。

カルデアにはこれ以上の知識を持つ機械操作のパイオニア(万能の天才を筆頭とした方々)が居た。

そのため、この参考書の八割以上は理解できている。

 

なので、クラスを見渡す程度の余裕は全然ある。

試しに一夏の方に視線をやってみる。

 

そこには、先ほど以上に顔面を真っ青にして、細かく震える一夏がいた。

……なんとなくわかってしまった。あれは、参考書の内容が全てわかってないやつだ、と。

 

「ここまでの説明で理解できないところはありますか、織斑くん、藤丸くん」

「特にはありません。先生の説明はわかりやすいので、自己学習でわからなかったところも補強されてありがたく思います」

 

これは本心だ。やはりサーヴァントの基準ではわかりにくいところも、同じヒトである先生の説明ならわかりやすくて助かる。

 

「そうですか!ソレならよかったです。織斑くんはどうですか?」

 

山田先生が笑顔で問いかけを発する。

一夏は勘弁したらしく、息を吸って何かを言おうとしていた。

 

「先生!」

「はい、なんでしようか織斑くん!」

 

「ほとんど全部、わかりません!」

 

「「「……えっ?」」」

 

空気が凍った。本日二回目の静寂だった。

驚きのあまり口をぱくぱくさせる生徒や、怪訝そうな目を向ける生徒も多数いた。

 

「……織斑。入学前に渡した、参考書はどこにやった?」

「あの分厚いやつですか?」

「そうだ。"必読"と書いてあっただろう?」

「……古い電話帳と間違えて、捨てました」

 

パァン!

 

凶器が振り翳される。このままでは一夏の脳細胞はボロボロになってしまうだろう。

クラスメイトたちの評価も今の会話でほとんど決定したらしく、何人かの生徒は敵視する視線を隠そうともしていなかった。

特に顕著だったのは、イギリス国家代表候補生の令嬢のセシリア・オルコット。親の仇を見つめるかの如く、目だけで人を呪い殺す勢いが込められている。正直背筋が少し冷えた。

 

「参考書は再発行してやる。一週間で覚えてこい」

「え、あの分量を一週間ではちょっと……「やれと言っている。いいな?」……はい」

 

一夏にはご愁傷様、と言ってあげたいが、できることだとは思う。

何せ俺もそれくらいであの量を八割理解できたのだ。人間、追い詰められれば大抵のことはなんとかなる。だから理解するくらいだったら簡単なことだろう。

 

「藤丸」

「はい、なんでしょう?」

「織斑に手助けを求められても少しだけにとどめておけよ。力が身につかないからな」

「わかりました、そうさせていただきます」

 

 

 


 

 

 

この学校に来て、二度目の休み時間。

また周りに人が殺到する前に、一人の女子生徒が俺の方に接近してきた。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

──セシリア・オルコット。

イギリス国家代表候補生。イギリスに古代から存在しているという、貴族の系譜。

彼女からは驕りも見える。が、その心の真ん中には、決して揺るがない"誇り"が見え隠れしていた。

 

「えっと、セシリア嬢。何か御用でしょうか?」

「そんなに畏まらないでくださいまし。……あなたは一人目の方とは、全く違うようですわね」

「……」

「それではわたくしはこれで。もう一人の方とも御話しなければいけませんので」

 

セシリア嬢──いや、オルコットさんはそう俺に告げると、一夏の方へと歩いて行った。

それからは俺の周りに、さっきの休み時間のように人が集まり垣根を作った。

だが、耳で聞いた感じだとどうやら一夏はオルコットさんの地雷を綺麗に踏み抜いたようで、一波乱の気配を感じ取れた。

 

そして時は3限目へと移っていく。

教壇に立つのは山田先生ではなく、織斑先生。

出席簿を教卓の上に置いてから、クラスを見渡してから織斑先生は何かを思い出したかのように話を始めた。

 

「授業を始める。号令……ああ、そういえばクラス代表を決めていなかったな。ちょうどいい、今からクラス代表を決めるとするか」

 

クラス代表。代表、というからには様々なことをするのは確定だろう。

メモ帳を開いてから、ボールペンを手に持ちメモの用意をする。

 

「クラス代表は文字通り、クラスの代表として動いてもらう。そのため、学年行事など各種行事にクラスの顔として出てもらう。また、入学からの実力の推移を示す基準にもなる。代表にはクラス対抗戦の代表として出てもらうことになる。代表は一年間変わらないから、責任を持って行える者であるのが望ましい」

 

どうやら、かなりの重役であるらしい。

クラスの代表ということは、メディア露出も当然多くなることは明白だ。

IS操縦者はアイドル的な側面も持ち合わせているから、外部との接触も積極的にやることになるのだろう。

 

「さて。これらを踏まえて、自薦・他薦は問わんから申し出てみろ」

「はい!私は織斑くんを推薦します」

「お、俺ぇ!?」

「わたしも織斑くんがいいと思います!」

 

ヒートアップしていく教室。

騒ぎのど真ん中にいる一夏は突然の出来事に困惑しており、あの様子ではなし崩し的に一夏が選ばれそうだ。

ボーっと考えていると、耳を疑う一言が飛び込んできた。

 

「じゃあ私は藤丸くんを推薦します!」

「あたしも賛成です!クラス代表に藤丸くんを他薦します」

 

いまなんと?

俺をクラス代表に推薦する、と?

困惑で頭が回らない。

 

「ちなみに他薦された以上、拒否権はない。甘んじて受け入れることだな」

 

織斑先生の暴虐に等しい言葉の前に項垂れる。

この人にロマニの爪の垢を飲ませてあげたい、と強く思ってしまった俺は悪くないだろう。

 

「他に立候補や他薦はないな?……それでは、信任投票で二人の中から一人を選出────」

「──納得がいきませんわ!」

 

織斑先生が話を切ろうとしたその時に、彼女の声が教室に響き渡った。

机を叩く音と共に、イギリスの貴族──セシリア・オルコットは勢いよく立ち上がった。

 

その目線は、織斑一夏に対する敵意で満ちていた。

 

「思慮分別のあり知識の豊かな藤丸さんが代表に選ばれるならまだしも、参考書を電話帳と間違えて捨てるような方をクラス代表に選ぶのはいい恥晒しですわ!クラス代表には実力のトップの人間がなるべきですわ!

織斑先生、わたくし、セシリア・オルコットは自薦させていただきます。ただ珍しいという理由で男に代表を任せるわけにはいきませんわ!」

 

闘志の籠った目で彼女はそう宣言する。

それを受けた織斑先生は、瞑目してしばらく何事かを考えているようだった。

 

「……ふむ、そうなれば一週間後にクラス代表決定戦をこの三名で行うことになる。それでいいか?」

「わたくしは問題ございません」

「俺も問題ありません」

 

こうなることを予期していたのか、織斑先生は一拍を置いたのちに俺たちにそう伝えてきた。

俺としてはこの代表決定戦をうけることに何のためらいもない。それに、ここで俺の実力について少しくらいは誇示しておいたほうがいいだろう。

だからこそ、この提案は渡りに船だった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺は戦う理由なんてない!」

 

ただし、一夏はこの決闘に納得がいかないらしく慌てたような声でまくしたてる。

織斑先生がその様子に眉を顰め何かを言おうとしたその刹那、この教室にとんでもない一言が放たれた。

 

「……まさか、ここまでとは。織斑先生の弟君ということで期待していたのですが、まあ。――拍子抜け、と言わざるを得ませんわね」

 

空気が凍った。

教卓に立つ織斑先生もそうだが、それ以上に、織斑一夏が顔を赤くして怒っていた。

 

「…………」

「あなたは今、こうして世界で二人だけのISを動かせる男子として、ここに立っているのです。しかもあなたの血族は、()()織斑千冬。かつて世界最強と謳われた、史上最高のIS乗りです。

ですが今のあなたは、とても織斑千冬の弟のようには見えない。姉がすごいから、という理由で期待されるのは当然のことでしょう。それに理不尽に憤っているあなたは、ただの臆病者……いいえ、それ以下ですわ。

あなたがそれでは、あなたの姉の実力も疑われることに――」

「うるせえ!それ以上、言うな!

……やればいいんだろ、やれば!お前に勝って、俺が証明してやるよ!――俺が、俺こそが、織斑千冬の弟として相応しい存在であることを!」

 

まるで寸劇のようだった。

彼と彼女の話を見つめつつ、俺はそんな場違いな感想を抱きながら過ごしていた。

クラスメイト達もまたこの様子を固唾を飲んで見守っていた。

 

織斑一夏の目が、変わったように見えた。

意志のこもった、情熱の目。鋭い眼光に圧倒されているものもいる。

彼の放つ雰囲気が変貌したことを、当然織斑先生とセシリアは感じ取っているらしく、後者は感心したような様子で目を軽く動かしていた。

 

「……どうやら決まったようだな。それでは、一週間後に代表決定戦を行う!

それとオルコット。今回は見逃すが、次はあまり過激な発言をしないように」

「はい、申し訳ございません織斑先生。それと、織斑さんもですが」

「俺は次いでかよ……まあいい、オルコット、お前の発言は俺が勝って撤回させてもらう」

 

……さっきから、俺を置いてけぼりにしたままで話が進みすぎじゃないか?

そう思わずにはいられなかった。

 

兎にも角にも、決まったことだ。それに向かって準備を進めることを決めて、俺は授業を受ける態勢に切り替えていった。

 

それにしても。

オルコット、という苗字に俺は聞き覚えがあるような気がしてならなかった。

いったいどこで聞いた苗字であったか。頭の中でそれに関する思考が半分を埋め尽くしながら、俺は一日中思考の渦へと身を落としていった。




ということでご読了ありがとうございました。
ここからは前回のお話に寄せられた感想を一部ピックアップするコーナーです。

>藤丸君の過去バレ
すごく書きたい。今すぐにでも書きたい。
本編かなぐり捨てて今すぐにでも書きたい。

ちなみにIS勢の中で彼の過去を一番に知ることになる人はもうきめています。
何ならこの章の間に登場して、この章のうちに知ることになると思う。

>汎人類史ORT「おはよう」されたらカルデアでもどうしようもないぞ
偉大なる勇者王カマソッソと10億のカーンの民は本当に偉大。どうやって完全体ORTを止めたのか。
ORTおはようシナリオは書かない予定です。なお予定は未定。
でもORTに「わたしを殺した責任、ちゃんととってもらうんだから」って言わせたい。

>義理の妹って誰?
みんな大好き花のお姉さんです()。
彼女を選んだ理由は俺が好きだから。アルトリア・キャスターに次ぐ俺の推しです。

義理の家族の皆様がアップを始めました。

>神秘の秘匿
ISの機能で押し通す予定です。もしくはソロマニに強力な認識阻害をかけてもらいます。

>型月世界の外宇宙由来のものは確実に厄ネタでしかないのよなぁ
人類にとって善いことをしようとする藤丸君がもしかしたら出てくるかもです。

>ISって兵器だからコヤンスカヤ出せば勝てるのよな

……
…………
………………
筆者は考えるのを止めた。

今回の感想ピックアップはここまでです。
今回のお話の感想もお待ちしております。

↓ここからテンプレ
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Twitterでは主に下らないツイートとか作業進捗を気ままに上げてます。
それでは、また次のお話にてお会いしましょう。

ぶっちゃけ他作品同士のカップリング(NL)って許せる?

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