IS×FGO   作:如月/Kisaragi

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大変長らくお待たせしました、夏月です。
まず初めに。……本当にすみませんでした!
あまりにも筆が乗らず、納得のいく文章を書き上げるために時間をかけていたらこんなにも遅れてしまいました。誠に申し訳ございません。
あとFGOだったりブルアカだったりヴァロだったりに逃げてました(こっちがメイン)、本当にすみませんでした。

それはともかくとして、本編をどうぞ!


#9

IS学園、競技アリーナ。

一人目のIS操縦者──織斑一夏は、静かに佇んでいた。

 

いや、静かに佇むしかなかった。先ほどまでは、この後に待ち受けている戦いへの興奮と緊張が確かにあった。

 

だが今の一夏にあるのは、そのような感情ではない。

今の彼にあるのは、恐れだった。藤丸立香に対する、恐れ。

 

彼自身が善良であることは言うまでもなくわかっている。その目に、心に、一片たりとも悪意がないこともわかっている。

わかっている、はずなのだ。

 

それでも、どうしても彼のことが恐ろしい。

自らが受け取った純白の機体、()()()()()()()()()()()()の『白式』を受け取ったプレッシャー。

同時に、なぜか彼の顔が脳裏に浮かんだ。

そしてまた襲いかかる恐怖。完全に坩堝にハマってしまっていることを、認識せざるを得なかった。

 

『まもなく第二試合を始める。織斑、オルコット、アリーナに出る準備をしろ』

 

管制室からのアナウンスをボーっとした気分で受け取る。

今はともかく、目の前に迫る戦いに全てを賭けるしかない。

左手を握り、開き、軽く跳躍する。それだけの行為であるのに、身体が軽くなるのを痛感する。

 

大丈夫だ。なんとかなる。なんとかして見せる。

なんて言ったって俺は織斑一夏だから。この恐怖と、それから新しいISのすべてに、順応して見せる。

 

ふと、ピットの中をみる。

広々とした、鉄筋コンクリート構造の冷たい部屋。

そこに今いるのは、自分と、それから幼馴染の──篠ノ之箒のみ。

 

彼女はピットの中で瞑想していた。自分が試合に出るわけでないのに。

だが思考の落ち着いた今ならばわかる。彼女は瞑想しているわけではなく、どちらかと言うと祈りを捧げているようにも見える。

そう思うと、心の奥が温かくなるような、そんな感覚に包まれた。

 

息を吸う。出撃口にいつのまにか身体は動いていた。

不思議と身体は軽かった。戦の女神が俺に微笑んでくれているのか。わからないが、先ほどまでとは違った気分でいれる自分。

 

「一夏」

 

瞑想していた彼女から声を掛けられる。いつもよりも数倍優しく、落ち着いた彼女の声。

 

「勝ってこい」

 

思えばこの数日間、彼女にいろいろと助けられた記憶がある。

ISのことも、自分が随分昔にやめてから全く触れてなかった剣道のことも、再び教えなおしてくれた箒。

彼女に教えられたことを、無駄にしないために、俺は――負けるわけには、いかない。

 

吸った息を鋭く吐きながら、奮い立たせるように足を踏み出して宣言する。

 

「織斑一夏──白式、行きます!」

 

純白が、アリーナの空に駆けた。

 

 

 


 

 

 

「……いらっしゃいましたか」

「ああ、あれだけボロクソに言われておいて憤らないわけがない。……やれることは確かに少なかったけど、できるだけのことはしてきた」

 

アリーナにて、次の試合に臨む両者が向き合っていた。

純白と、水色。すでに戦いは始まっているかのように、互いが一挙手一投足に注意を向ける。

 

「そうでしたか。……先に一つ、言わせてくださいまし。

あの時は、血族の方を貶すようなことを言ってしまい、申し訳ございませんでした」

 

二人にしか聞こえないその声。

突然の謝罪を受けて一夏は少し戸惑いながらも、それを態度に出すことなく受けた。

 

「いいよ。きっと何かの意味があったことなんだろ?それなら気にしない。でも――」

 

右手に白色の刀が浮かぶ。

その武器の名称を見て、一夏は歓喜に包まれる。雪片弐型。系譜を繋ぐ業物──

 

「──お前には、絶対に勝つ」

 

力強い声。そこには、確かなケツイが漲っていた。

対面のセシリアはその立ち居振る舞いに、とある人物を重ねてから、毅然として返した。

 

「それはこちらの台詞でしてよ、織斑さん。この戦い──」

 

試合開始の合図が轟くと同時に、互いの機体が急加速する。

セシリアは後ろへ、一夏は前へ。互いが口を開いて、ただ一言を交わした。

 

「「俺/私が、必ず勝つ!!!」」

 

セシリアのビットがそれを皮切りに、一斉に火を吹いた。

さらにスターライトのライフルでもって、一夏を穿つ。

 

光線の数は五本。瞬時に一夏はそれを把握して──一気に飛び退いた。

 

「ッ、ミサイル──!」

 

先ほどまで立っていた位置が爆風で吹き飛ぶ。少しの耳鳴りと、引き撃ちで降り注ぐ光線の音が混ざって、耳に不快を届ける。

幸いなことに被害はなかった。だが、二度も同じように避けられるとは限らない。ISに関して言えばズブの素人である一夏が先ほどの攻撃を避けられたのは、ほぼ奇跡に近いだろう。

 

故にセシリアは、もう一度同じように攻撃を仕掛ける。

ミサイルの落下タイミング、相手を追い詰める位置、そこまで自然に誘導するために掛ける時間。それらを一瞬で計算すると、すぐさま行動に移した。

 

光線がひたすらに降り注ぐ。

右手を、左脚を、首筋を、右脚を、左手を、胴体を。狙いを合わせて撃たれるレーザーを、すべて間一髪ながら避けていく一夏。

 

(攻撃が強すぎる──!これじゃ、武器が雪片しかない俺が近づくことなんて不可能に等しい。どうすれば……どうすればいい──?)

(動き方からして、あの機体にはブレードしかない。であれば、IS戦に於いて初心者の織斑さんに、私は逃げ続けて撃てば問題はないですわね。……というか、IS初心者の織斑さんにブレードオンリーの機体を組み上げるとは。倉持技研は何をしていらしたのかしら)

 

思考が回る。互いの機体は一定の距離を保ちながら、戦場は均衡へと縺れ込んだ。

セシリアの思考は正しい。正面の敵機が──一夏の駆る白式が、射撃戦用の兵装を持っていないという読みも当たっている。

 

だというのに、未だ一夏に対する効力射が入らない。

 

偶然……にしても、出来すぎている。

ここまででセシリアの攻撃は掠っているだけにとどまっていた。目がいい、といえばそこまでなのだが、慣れないISを操縦する中で、武道の心得があったとしても、ISという分野においては間違いなくセシリアが上手だ。

にも関わらず、今の今まで一夏に攻撃が当たらない。

 

──次第に焦りが出てくる。

精密に放たれていた光線に、少しずつではあるが乱れが生じる。

何度もそれを自制しようと試みるが、簡単にはいかない。先程までの交戦で、セシリアは集中力が途切れつつあったのだ。

 

唐突に、崩壊の瞬間がやってくる。それは必然か、それとも運命か。一瞬セシリアの放つ弾幕が薄くなった。

ほんの少しの空白。僅かな噛み違い。そこに光明が刺す。

 

繰り返すようだが、織斑一夏はIS操作に関して言えば全くの素人である。稼働時間も当然代表候補生に全く及ばず、その力量差は明白だ。

 

にもかかわらず──一夏は、この土壇場で、瞬間加速(イグニッション・ブースト)を使って見せた。

一瞬の光明を掴み取る『勝負強さ』を思う存分に発揮するその姿は、かの世界最強(織斑千冬)が乗り移ったような、そんな錯覚さえ覚えるほど。

 

「ッ、」

 

セシリアは思い切りライフルを振りかざす。乱暴であることも、リスクがあることも重々承知で、それを受け止めるために全力でそれを振り抜く。

当然銃身は綺麗に切断されて飛んでいくが──その頃には、右手にインターセプターが握られていた。

 

一閃。金属音同士のぶつかり合い。

不協和音で耳がギシギシするのを気づかぬふりしながら、互いは力を込め合う。果たして均衡は、すぐに打ち破られた。

 

一夏が鍔迫り合いに勝る。弾かれた力で、セシリアは空中でわずかな隙を晒してしまう。それでもすぐさま脳波を飛ばしてビットを動かすのは、代表候補生としての誇りか、或いは反射で咄嗟に出た行動だったのか。

追撃を仕掛けようとした一夏はビットの思わぬ追撃により、一瞬の間逡巡してしまう──

 

──ことはなかった。

 

「ここで、負けるわけにはいかねえんだよ────」

 

一夏の右手が白く光る。いや、正確には"刀"が白銀に染まる。

その光は、かつて織斑千冬を世界最強へと導いた刃。一撃必殺の、シールドバリア無効化攻撃。

 

「起動しろ、零落白夜──!

 

この剣は諸刃だ。使えば使うほど、己のISのシールドエネルギーを消耗していってしまう。

しかしその対価は充分すぎる──もはや過剰と呼べるほどに。

零落白夜の真価は、この惑星上の『エネルギー』を()()()()()()()ことだ。それはもちろん、一部の人間にしかわからない"魔力"であっても同様にである。

しかし今の出力では、サーヴァントの霊核を砕くことなどはできない。精々が対魔力Dか、それ以下の真似事くらいであろう。

 

しかし──IS対ISの勝負であれば、この力は過剰なまでに力を発揮する。

 

白銀の刃が、主の命令を受けて煌めく。

そしてその刃は──セシリアの放つ弾幕を、己への直撃弾のみを見極めながら接近してくる一夏が無力化していく。この期になって、一夏は人間離れした第六感とセンスを覚醒させていた。

 

しかも無意識下で、一夏は零落白夜を()()()()()()()()()()()()()()()発動させている。その剣の本質を、どうやら無意識のうちに一夏は知っていたようだった。

何処かの世界線では、白刃を後先考えず出して自滅していただろう。しかしここでは、ネックであるエネルギー問題を強引にねじ伏せるような形で接近戦のレンジにまでセシリアを追い詰められていた。

それでも彼女はビットでの攻撃をやめない。彼女にはまだ、勝算があった。

 

半ば賭けのような勝負。分は圧倒的にセシリア側が不利。そして失敗すれば、この試合における勝ちは得られない。

──そんな状況下にあっても尚、セシリアの優雅な笑みが潰えることは全くない。

 

 

 


 

 

 

(なるほど、これは確かに──)

 

管制塔。先ほどの藤丸立香の一件があり憔悴しきっているスタッフたちを脇目に、更識楯無は眼前で繰り広げられている一戦に注目していた。

 

織斑一夏。前の入学テストでは、試験官の自滅により合格の判定を得ていた──というより、元から合格になること自体は決まりきっていたのだが。

そのため戦闘力についての情報は全くなく、この度こうして試合をする中で実力を見極めようとしていたのだが。

 

(──強いわね、それもかなり。私が思っていた力よりも遥かにセンスがずば抜けて高い)

 

この一戦のみを見て、楯無は織斑一夏の評価を大幅に変更していた。

IS操縦者としてまだまだ荒削りな上に、おそらくあれは()()()()()()()()()()と一目で看破した彼女は、同時に彼を鍛えれば面白いことになるとわかった。

彼はセンスの塊、伸び代しかないスポンジだ。だからこそもう少し関わりを増やしていきたいが──

 

と、頭で考え事をしていると、戦局に変化が生じる。

零落白夜が眼前に迫っている中で、セシリアは一歩も動かない。ただ弾幕を張り続けるのみで、逃げの一手を打とうとはしない。

 

諦めたのか、と一瞬思ってしまうほどにセシリアは動こうとしない。

──そう、あまりにも不自然なほどに。

 

(……なるほど、ミサイルピットを配置して、そこに織斑くんを持ち込む。自らにとっても必殺の間合いに、ね)

 

そして楯無は彼女の目論見をものの見事に看破して見せる。

織斑一夏の意識の外に置かれたミサイルピットの銃口は、白式を捉えて離さない。すでに軌道の計算は終わり、敵対者を屠る準備は万端のそれ。

 

(セシリア・オルコット。名門オルコット家の現当主。数年前──()()()()()()()()()()()()()()()()先代の跡を継いで当主となった女傑、ね)

 

セシリア・オルコットは英国圏において、最も高貴なる貴族として有名である。

先代のオリバー・オルコットの時代から、彼らオルコット家はイギリスの大貴族として権威ある一族の名を冠していた。

彼らはイギリスの()()()()()に拠点を構え、多くの名士たちと盛んに交流し、さらに名声を高めている。

さらに驚くべきことに──彼ら一族は、南極の天文台機関との関わりがあったのだ。

 

(……人理継続保障機関・フィニスカルデア。オリバー・オルコット卿はカルデア初代所長マリスビリー・アニムスフィアと公私において良好な仲を持っていた、とされるけど……)

 

楯無の胸には一つの疑問が、いや、それ以上の疑問が胸中にあった。

それはすなわち、南極の天文台機関のことだった。

 

(彼らの今の名称は、単純に“カルデアス天文台”。カルデアっていうのは古代バビロニア人……確か、天文学が盛んだった時の人々たちのことだったはず。だから名称に違和感はないのだけど)

 

どうしても、楯無は“カルデアス天文台”と“人理継続保障機関”のことを単純にイコールで結びつけることができないでいた。

あまりにも大きな謎が、この奥に隠されているように思えてならない。

やはりもう少し、この謎を探らなければならないか、と思いながらアリーナに視界を移す。その瞬間、二つのISが赤く爆ぜた。

 

 

 


 

 

 

「……してやられた、ってことかよ」

「危ないところでしたわよ?危うく私も負けを覚悟するほどには」

「……やっぱり強いんだな、代表候補生は……いや、この場合は、イギリスの女傑って言った方がいいのか?」

「あら、お褒めいただきありがとうございます。ですが織斑さん……いえ、一夏さんも十分に強かったですわよ」

「そいつは、光栄だな……」

 

クラス代表決定戦、セシリア・オルコット対織斑一夏。

試合終了──試合時間6分13秒。勝者、セシリア・オルコット。

 

 

 


 

 

 

父は、誇り高い人でした。

 

父は、いつも不思議なことを見せてくれました。ある時は手から火を出したり、またあるときは空気から水を掬い出したり、またあるときは──

 

その度に、私は父のことを“魔法使い”だと思うようになりました。

 

幼かった頃、父はよく時計塔の中に私を連れて行ってくださいました。

境界の竜と呼ばれたモノの残骸を見せられたり、またある時は古典な列車(レールツェッペリン)に乗せられたり。

 

そして父との最後の思い出は、南極の天文台にある「天球儀」を見たこと。

 

……父との思い出は、全てが輝いた綺麗な思い出でした。

 

そしてちょうど一年前。空白の一年が終わり、世界が形を取り戻しつつある頃。

私の尊敬する父は、物言わぬ骸となって帰ってきたのです。

 

……空白の一年が過ぎている間だったのでしょうか、それともそれより前からでしょうか。

私は夢を見ていたのです。悍ましい、紅蓮の夢を。

 

真っ赤な世界を、父は駆け抜けていました。私の見たことのない、何かの制服を見にまとい、そして──何処かで見たことのあるような、東洋のヒトに何かを教えていました。

 

側から見てもわかる、深い信頼と安心感。

お父様と、そのお方は、正しく"相棒"と呼ぶに相応しい貫禄を持っていました。

 

今になってみれば……あれが、明晰夢というやつだったのでしょう。

記憶の中の父は、お父様は──彼を庇い、そして静かに息絶えていました。

そしてそれを境に夢は覚め、私は父の亡骸を見届けてから、こうしてオルコットの当主となったのです。

 

東洋の少年……私の、そして父の、英雄。藤丸立香。

今はまだ、私の血族のことも、思い出も、想起できなかったとしても。

いつの日か、かつての父とあなたのように、戦友になれなら良いと私は切に願いますわ。

 

そして、織斑一夏さん。彼もまた、誇りを持って生きる人であるならば。

私は、彼の成長の手助けをさせていただきましょう。──好敵手として。

 

 

 


 

 

 

それからの展開は怒涛だった。

男性操縦者同士で行われた第三戦は、圧倒的な力を見せつけた立香が一夏を3分と経たないうちに完封。こうして呆気なく一年一組のクラス代表決定戦は終了を迎えた。

 

「ということで、一年一組の代表は織斑一夏くんに決まりました。『いち』繋がりで縁起がいいですね」

 

翌日のショートホームルームの教室。副担任の山田先生がクラス代表を告げると、教室中から拍手が飛んでくる。

同じ土俵で共に戦ったライバルたちも同じように手を叩いている。一方で、指名された当の本人は完全に放心して動かなくなっている。

 

「って、俺ですか!?どうして俺が……」

 

放心から我に帰った一夏が焦ったように問う。周りのクラスメイトのうちの何人かもそれが気になるようで、あの日アリーナで戦ったメンバー──セシリアと立香に視線を向け始める。

それを受けて、まずは英国淑女のセシリアが席を立って質問に答えた。

 

「それはあなたに、クラス代表としての『素質』が一番あると感じたからですわ。初見の武装に対する動き、そして戦いの間合いを理解し喰らい付くそのバイタリティ。そして──いかなるとき、いかなる状況下であっても勝利に貪欲な姿勢。

これらを考えた上で、私は()()さんが代表として相応しいと思ったまでですわ」

「加えて言えばセシリアさんは当主としてのお仕事もありますからね。しばらくは手を離せそうにないですから、妥当でしょう」

 

完璧な回答。文句のつけようもない模範解的なそれに、言葉が詰まる。

しかし一夏はすぐに気を取り直して、もう1人の方に目線を向ける。

 

「じゃあ立香は!?どうして代表じゃないんだ……?」

「俺も概ねセシリアの言うことと同じだけど。それ以上に企業の仕事が忙しすぎてクラス代表に割ける時間はあまりないかな」

 

こちらもまた文句のつけどころがない回答であり、一夏は諦めたように席に着く。それから息を深く吸って、何かを決心したように告げた。

 

「やります。クラス代表を、やらせてください」

 

拍手の万雷が鳴り響く。

こうして、一年一組の決闘騒ぎこと、クラス代表決定戦の幕が閉じたのである。

 

「さあ一夏さん。次の試合に向けて訓練を怠らないようにしてくださいね」

「次は学年でのクラス対抗戦だからね。頑張ってよ」

 

……そして同時に、織斑一夏の訓練も始まることとなったのである。

 

 

 


 

 

 

「ただいま」

「ん。……おかえりなさい」

 

ルームメイトはテレビで特撮を見ていたようで、こちらに顔を向けて返答してからまたテレビに釘付けとなってしまった。

簪の机の上には細かく書かれたプログラムのコード──内容を見る限りだとあれはマルチロックオンシステムだろうか──が紙に載っている。

彼女も彼女なりに、必死で努力しているのだろう。元の自分の殻を打ち破って、新しい自分になるために。

 

「ね、立香。明日から、しばらく時間ある?」

 

キッチンに立って、いつものように料理を作る準備をしていると簪が話しかけてくる。いつの間にやら特撮の再生は終わっていたらしく、テレビではニュースが流れている。

カウンターからこうして話しかけてくる姿は非常に可愛らしいが、それを表面に出さないように努めてから返答する。

 

「うん。放課後の時間ならいくらでも」

「それなら……私の機体の組み立てを、手伝ってほしい」

 

少し逡巡したように告げる簪。その眼には、不安と恐怖が宿っていた。

それは、進むことへの恐れ。新しい自分を受け入れることへの、多少のためらい。

 

「いいよ。絶対に、簪のISをクラス対抗戦までに完成させるよ」

 

それを受け止めて、俺は彼女へと歩み寄る。

どうしてかわからないが、自分はこのルームメイトの願い事を積極的に叶えたいと思ってしまうようで、それでいて、彼女のことを思うといつもより力が出るのだ。単純なことだなって思うけれど、今はそれでいいだろう。

 

「ん。……ありがとう、立香」

 

綺麗な笑みを浮かべて、こちらに笑いかけてくる簪。

その笑みを見て──必ずこの子と、それからあの人を仲直りさせてみせる、と決意を固めた。




#9、ご読了ありがとうございます。感想、評価よろしくお願いいたします。皆様のコメントや評価が励みとなっています。
ここからはいつもの感想返しです。
あと、個別の感想返しができていなくて申し訳ございません。これまでの感想に対してちまちまと返信していこうとは思っていますが、返信がとても遅れる可能性があることをご了承ください。

それでは簡単な感想返信を。
>この試合(藤丸vsセシリア)の後に戦うことになる一夏くん……
はい。なのでちょっとした強化ということで、今回のこれです。
この強さの理由も、そのうち書けたらなぁと思います。

>縁の化物立香くんだからなぁ。呼び出し中に無力化しないと……
実は呼び出し中の彼は無敵状態です。厳密に言えば、英霊召喚の式を展開すると同時に対粛正防御が張り巡らされるイメージです。
ロマニ「僕が作りました」

>今後コロコロと変わっていく武装に驚きそうなIS勢
立香くんのISの仕様上、色々なサーヴァントが来れるのですが、しばらくは兆しの子と異世界のアーサー王とアーサー王モチーフのISが使われるでしょう。なぜならば私が2人の推しだからです。

>セシリア強化について
彼女が原作よりもはるかに強く、また大人になっているのは、偉大な両親の背中を見て育った故です。
この世界においてのセシリアの父は、貴族の家の当主であり、また偉大なる魔術師でした。彼はカルデアのマリスビリーと朋友であり、人理焼却の際に最初から無事だったスタッフの1人として、カルデアを支える屋台骨の一角として、カッコいい大人でした。

人理を取り戻した後、査問会のきな臭さに気づいていた父ことオリバーは、いざという時のために人類史最後のマスターを確実に逃す段取りを組み──そしてそれを成功させます。
代償として、自らの命を犠牲として。

その姿を、なんの因果かセシリアは見ていました。

時が過ぎ、空白の一年が戻り、セシリアは当主となります。
そして決意をするのです。──偉大な父のように、誰かを導き、そして支えられるような人物になる、と。

この小説のセシリアは、『美しく、格好いい英国貴族』『それでいて親しみやすく、ユーモアと思いやりに溢れた人』というコンセプトで書いています。今後もそんな素敵なセシリアを書いていきたいです。

>簪ちゃんしか勝たん!
それはそう!!!!!
あと簪ちゃんのIS関連で、カルデアの何かが組み込まれるのか?みたいな質問がありましたのでそちらについても。
簪ちゃんのISにカルデアの技術は使われます。今はこれだけお伝えしておこうと思います。

今回の感想返信はこの辺でしまいとさせていただきます。
今話の感想もお待ちしています。
あと、この小説に評価をつけてくださっている皆様、本当にありがとうございます!

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それでは、また次のお話にてお会いしましょう。

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