冒険者として活動していた俺は、ダンジョンの上層であるなら問題なくモンスターを倒すことができていて、ひたすらヴァリスを稼ぐ日々を過ごしていた。
ステイタスの上昇も止まることなく上がり続けており、全てのステイタスの平均値が800まで到達していたりもする。
この調子だと直ぐにステイタスが999まで上がりそうだ。
やっぱり俺には成長を促進させるスキルが存在しているんじゃないだろうか。
冒険者が全員こんなにステイタスが早く上がっていたなら、もっとランクアップしている冒険者が多い筈だからな。
神ミアハは俺には「ステイタスの成長期だ」と言っていたが、明らかに嘘であることは直ぐに理解できた。
思わず温かい視線で、嘘を言うことに慣れていない神ミアハを見てしまった俺は悪くないだろう。
今日もダンジョンに向かってモンスターを倒すと、魔石だけではなく毎回必ずドロップアイテムを落とすのは、俺の運が良いからなのかもしれない。
ギルドのアドバイザーの人も口が固い人なので、俺のステイタスの上昇値が高いことも吹聴することはなかった。
神ミアハに紙に書き写してもらった現在のステイタスを、ギルドのアドバイザーの人に教えてみると驚いてはいたが、特に騒ぐことはなく、個人情報を漏らすようなことはしないアドバイザーの人。
「このステイタスならダンジョンの上層なら、どの階層に行っても問題ないですね」とギルドのアドバイザーの人にもお墨付きを貰ったので、試しに上層を制覇してみることにする。
という訳で大きめの鞄を用意してから、ダンジョンの階層を上から順に進んでいき、モンスターを倒しては、魔石とドロップアイテムを回収して先へと進んだ。
順調に足を止めることなく進んで行った先で、現れるモンスター達を長剣で切り裂いていく。
俺には剣の才能があるようで、元冒険者であった今生の両親よりも剣の腕は上だった。
いまだに今生の両親が使っていた長剣と短剣を使っている俺は、剣の消耗を最低限に抑えることができている。
それなりに質が良い長剣と短剣を長く使えるように、剣の消耗を抑えることは悪いことではない。
刃の立て方を間違えることなく必要最小限だけ切り裂くように、長剣と短剣を使う。
大きめの鞄に魔石とドロップアイテムを詰め込んで、ダンジョンの階層を降りていくと、11階層にまで到達した。
俺のようにソロではなく、パーティを組んでいる冒険者達がほとんどだったが、連携がいまいちなあたり、パーティを組んだばかりの冒険者達のようだ。
そんなダンジョンの11階層に現れたインファントドラゴンが、冒険者達を薙ぎ倒していく。
しかもそのインファントドラゴンは強化種であるようで、Lv2に到達している冒険者達の攻撃すらも通用しておらず、なすすべもなく逃げていく冒険者達。
武器すらも重荷になると判断したのか、武器まで投げ捨てて逃げていく冒険者までいた。
冒険者が投げ捨てた槍を1本拾っておき「リトルフィート」で小さくして隠し持っておく。
強化種のインファントドラゴンから逃げようとした冒険者の女性が、つまずいて転び、インファントドラゴンに襲われそうになっていたところを目撃した俺は「助けて」と言っていた女性を見捨てるようなことはしない。
通常のインファントドラゴンよりも強力で強固な強化種に長剣の刃筋を立てるように剣を振るう。
鼻先を深々と俺に切り裂かれて怯んで下がったインファントドラゴンと対峙する俺の背後には、まだ立てていない様子の冒険者の女性が居た。
「早く逃げてもらえると俺は助かるんだが」
後ろを振り返ることなく言ってみた俺に対して冒険者の女性は「腰が抜けちゃって」と言葉を返す。
深くため息を吐いて、長剣を振るい、剣に付着していた血を落とした俺は、長剣を構え直して言う。
「しょうがねぇなあ」
力強くダンジョンの地面を踏み込み、強化種であるインファントドラゴンと間合いを詰めて、長剣を振るった。
真正面から振り下ろすのではなく斜めに袈裟斬りにして強化種であるインファントドラゴンの鱗に覆われた胴体の皮膚を切り裂き、肉を断っていく。
インファントドラゴンの注意が冒険者の女性に向かないように、攻撃が俺だけに集中するように、派手に動いていき、長剣を休まずに振るい続ける。
強化種であるインファントドラゴンを相手に危うげなく戦えていた俺に対して、インファントドラゴンは仲間を呼んだ。
更に現れた強化種のインファントドラゴンが2頭。
インファントドラゴンは希少種だったんじゃないのかと言いたくなるが、そんなことを言ってもこの状況が変わる訳ではないか。
動けない女性の冒険者を庇った状態で、合計で3頭のインファントドラゴンの強化種を相手にしなければいけなくなるが、やってやろうじゃないかという気になっていたから問題はない。
インファントドラゴン達が狙う標的を俺に集中させる為に、手痛い一撃を入れ続けていき、ひたすらに止まらずに動き続けていく。
足を止めることなく駆けて、跳躍し、まるでピンボールが跳ね回るかのように動いてインファントドラゴン達を切り裂いていった。
インファントドラゴンという点を乱反射する線の動きで、連続で斬りつけていくと、インファントドラゴン達の動きが鈍ってきたのは間違いない。
力を込めた一撃で、1頭のインファントドラゴンの首を斬り落とすと、身体を回転させて尾を振るう攻撃を左右から行ってきた2頭のインファントドラゴン。
「大きさよ戻れ」
「リトルフィート」で小さくして隠し持っていた槍を元の大きさに戻し、大きさが戻った槍を足場に高く跳ね上がった俺は、インファントドラゴンの尾を飛び越えて、1頭のインファントドラゴンの頭部に長剣を突き刺した。
2頭が死に、1頭だけが残ったとしても戦うことは止めないインファントドラゴン。
口を大きく開いて突進してきたインファントドラゴンは此方に噛みつくつもりのようだが、俺はそれよりも速く、インファントドラゴンの開いた口内へと長剣による突きを叩き込んだ。
強化種であるインファントドラゴンの後頭部から飛び出した長剣の剣先。
こうしてインファントドラゴンの最後の1頭も倒すことができた。
3頭全てを倒しきった俺に驚愕の視線を向けていた冒険者の女性。
絶命した3頭のインファントドラゴンから魔石を抉り出すと、ドロップアイテムである爪や牙に鱗が残る。
ありがたくそれは貰っておくことにした。
今回は結構な稼ぎになりそうだ。
まだ地面に座り込んでいる冒険者の女性に「1人で立てるか?」と聞いてみると「無理そうです」と答えた冒険者の女性。
再び深くため息を吐いて、俺は言った。
「しょうがねぇなあ」
放置する訳にもいかないのでダンジョンを出るまでの間は肩を貸してやり、ギルドの職員に冒険者の女性を任せた俺は、換金を済ませてミアハ・ファミリアのホームへと帰る。
ダンジョンで俺が大量に稼いできたヴァリスを見た同じミアハ・ファミリアのナァーザが、とても喜んでいた。
俺がダンジョンで稼ぐようになってから安定して借金が返済できるようになり、ミアハ・ファミリアの生活には少し余裕ができていたらしい。
とりあえずヴァリスもナァーザに渡したので、神ミアハにステイタスの更新を頼んでおく。
神ミアハの自室でステイタスを更新してもらうと、大体が999にまで到達していたが、999を超えて1200まで到達しているステイタスまでもが存在していたようだ。
ついでにLv2へのランクアップも可能であるらしく、おそらくは強化種のインファントドラゴン3頭を倒したことが偉業だと判断されたのだろう。
ステイタスも充分なので、俺はLv2にランクアップをしておくことにした。
Lv2の発展アビリティは、耐異常と剣士と幸運の3つのどれかを選べるみたいだが、俺は迷わず幸運を選んだ。
既に運が良い俺が更に幸運になったらどうなるのかを確かめてみたかったからだが、悪い選択ではないだろう。
ついでにスキルも発現していたようで、それは「龍の手」と書いて「トゥワイス・クリティカル」と読むスキルであり、様々な力を2倍にすることができるらしい。
色々と応用ができそうなスキルだが、ダンジョンで検証するのは今度にしておこうか。
所要期間1ヶ月でランクアップした俺は、現在のオラリオでは最速でのランクアップになるそうだ。
近々神会が開かれるようで、それに参加するらしい神ミアハは「なんとかゲドには無難な2つ名を勝ち取ってみせる」と気合いを入れていた。
「頑張ってください神ミアハ」
流石に変な2つ名で呼ばれるのは嫌だった俺は、神ミアハに声援を送っておく。
それから俺はギルドに向かい、担当アドバイザーの人にランクアップの報告をしておいたが、アドバイザーの人は流石に物凄く驚いていたな。
流石に俺が1ヶ月でランクアップするとまでは、ギルドの担当アドバイザーの人も思っていなかったらしい。
どうやってランクアップしたかについて聞かれたので、インファントドラゴンの強化種3頭を、動けない冒険者の女性を守りながら倒したことを答えておいた。
「いや何でLv1で、そんなことできるの」
困惑を更に深めていながらも大きな声を出さない担当アドバイザーの女性は、個人情報を大切にしてくれているようだ。
それから悟りを開いたかのような顔をしたギルドの担当アドバイザーの女性は「うん、きみはもうそういう不思議なヒューマンだと私は思っておくことにするよ」と言って頷いていたな。
ギルドへの報告も終わり、ミアハ・ファミリアのホームに戻った俺を出迎えてくれた神ミアハ。
「なんとか頑張ったんだが、無力な私を許してくれゲド」
そう言って落ち込んでいた神ミアハに、神会で命名された俺の2つ名を聞く。
「ゲドの2つ名は、魔帝と書いてカオスエッジと読む2つ名に決まってしまった」
どうやら俺の2つ名は、そんな感じらしい。
まあ、そんなに酷くないような気がするのは俺だけだろうか。
龍の手、トゥワイス・クリティカル
出典、ハイスクールD×D、敵キャラのジークフリート
龍の手は神器と呼ばれている人に宿る力の1つであり、能力を2倍にするというシンプルな能力を持つ
ジークフリートが持つ龍の手は亜種であり、龍の腕が生えてくるというものになっている