転生したらゲド・ライッシュだった   作:色々残念

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思いついたので更新します


第26話、戦の野

フレイヤ・ファミリアの本拠地である戦の野では、女神フレイヤの眷族達が殺し合いのような戦いを繰り返しているが、オッタルさんにとっては見慣れた光景であるようだ。

 

派閥としては大手の中の大手と言えるフレイヤ・ファミリアの団員達は、いがみ合っている者達が多いようで、忠誠を誓っているのは主神ただ1柱だけらしい。

 

故に女神フレイヤの寵愛を求めて、その愛に見合う為に殺し合いをする女神フレイヤの眷族達。

 

女神フレイヤの神血を分け合う眷族など蹴落とすべき障害に過ぎないという考えを、フレイヤ・ファミリアの団員達が持っているのは間違いないだろう。

 

苛烈なまでのファミリア内競争が引き起こされていることで、他の派閥とは比べ物にならないほどの速度で更なる高みへと上がっていくフレイヤ・ファミリアには、仲間を顧みない強さがあるのかもしれない。

 

突き詰められた個の力の集まりであるフレイヤ・ファミリアは、一致団結して互いを補完し合う組織の力を持つロキ・ファミリアと並んで、迷宮都市の双頭と呼ばれている。

 

そんなフレイヤ・ファミリアの本拠地である戦の野にある調理場へとオッタルさんに案内されて向かった俺は、さっそく女神フレイヤに料理を作ることになった。

 

この日の為に集められた食材は、かなりの品揃えがあり、作ろうと思えば何でも作れそうだ。

 

監視役としてオッタルさんが見守る中で、まず最初に手を洗い清潔にした俺は、新鮮な野菜を使ったサラダを先に作ると、包丁を新たに2本用意して牛の塊肉に手を伸ばす。

 

2本の包丁で牛の塊肉を挽き肉に変えていき、牛の腎臓のまわりにある脂であるケンネ脂も刻んで挽き肉に混ぜていった。

 

ケンネ脂は熱に溶けやすく、クセのない旨みがある脂であり、ハンバーグに入れると味が格段に良くなって、ジューシーなハンバーグになる。

 

塩胡椒で味を整えてから、挽き肉を捏ね、ハンバーグの形を作ってフライパンで焼いていくと、良い匂いが漂ってきた。

 

焼き上がった大きめなハンバーグを1つ皿に乗せて、最初に作ったサラダも彩りを考えながら添えていく。

 

出来上がったハンバーグを丁寧に運んでいくフレイヤ・ファミリアの団員。

 

運ばれていった料理は、毒味役のLv1の団員が1口食べて問題がないと判断してから、女神フレイヤが食べるらしい。

 

迷宮都市の双頭の主神は大変だなと思いながら、食べたそうにしていたオッタルさんにもハンバーグが乗った皿とフォークを渡し、俺は次の品を作っていった。

 

イカのスミを使ったイカスミパスタを、パスタの生地にイカスミを練り込むことで歯が汚れないようにしたものを、美の神に気を使った1品として作成。

 

その次はトウモロコシを使ったコーンポタージュを作ってみる。

 

完成したコーンポタージュは、コーンの甘みを生かした優しい味わいのポタージュとなっており、胃にとても優しい品だ。

 

最後はデザートとして、アップルパイを作ると、料理をした後の後片付けも行っておく。

 

料理に使った調理器具は、洗った方が良いものは綺麗に洗って、水滴を拭いてから元の場所に戻しておいた。

 

作ってみた料理の感想を女神フレイヤに聞いてみようかと思った俺は、ちょこちょこ渡していた全ての料理を食べ終えたオッタルさんと一緒に食堂に向かってみる。

 

人払いがされていて女神フレイヤと毒味役しか居ない食堂。

 

女神フレイヤ用の豪華な席と机が用意された食堂の一角で、毒味役らしきフレイヤ・ファミリアの団員が、アップルパイをフォークで切り取り、一口食べている姿が見えた。

 

幸せそうな顔をしてから「大丈夫ですフレイヤ様」とアップルパイの毒味を終わらせた毒味役。

 

「やっと食べれるわね」

 

嬉しそうな顔でアップルパイを上品に食べていく女神フレイヤ。

 

とても美味しそうに食べているので、女神フレイヤがアップルパイを不味いと思っている訳では無さそうだが、食べ終わった後に感想を聞いてみよう。

 

数分後、アップルパイを食べ終わった女神フレイヤに近付いてみると、女神フレイヤは微笑みながら言った。

 

「ご馳走さま、どれもとても美味しかったわ」

 

聞く前から料理の感想を言ってくれた女神フレイヤは、今回の料理に満足していたみたいだ。

 

「満足してもらえたようで、良かったですよ」

 

「私の専属料理人になる気はあるかしら?」

 

笑みを浮かべたまま聞いてきた女神フレイヤは、間違いなく本気である。

 

そこまで気に入ってもらえたのなら悪い気はしないが、専属料理人になるつもりは無い。

 

「ありませんから、諦めてもらえると助かります」

 

「それはとても残念ね、貴方の料理がいつも食べられたら嬉しかったのだけれど」

 

本当に残念そうにしている女神フレイヤは、俺の料理を毎日食べたいと思っていたのだろう。

 

「料理人を本業にするつもりはありませんよ、俺は冒険者です」

 

「たまに貴方に料理を頼む程度なら良いかしら」

 

「まあ、それなら大丈夫です」

 

「報酬は1回1億ヴァリスにしておくわね」

 

凄まじい金額を料理1回の報酬として言い出した女神フレイヤは、明らかに金銭感覚がおかしい。

 

「それはちょっと高いんで、1000万ヴァリスぐらいにしてください」

 

「1億ヴァリスが貴方の腕の正当な価格だと思うのだけれど」

 

「評価されているのは嬉しいんですけど、1億ヴァリスは高過ぎると思いますよ」

 

「そうかしら」

 

「そうです」

 

その後、なんとか金銭感覚がブッ飛んでいる女神フレイヤを説得することに成功した俺は、やり遂げた気持ちで額の汗を拭った。

 

「料理中の監視役は、次も自分が務めます」

 

主神である女神フレイヤにそう言っていたオッタルさんに顔を向けた女神フレイヤは、悪戯っ子のような顔で話しかける。

 

「オッタル、貴方は彼の料理が、また食べたいんでしょう。調理場で監視役をしていた貴方にも料理は振る舞われていたみたいね。今日の料理は美味しかったかしら」

 

「美味であったことは確かです」

 

表情を崩すことなく素直に答えたオッタルさんの猪耳だけが元気に自己主張していて、オッタルさんの猪耳を見れば喜んでいることは一目でわかった。

 

そんなオッタルさんの元気な猪耳を見ながら笑いを堪えていた女神フレイヤが俺に向かって言う。

 

「貴方が料理している最中の監視役は、これからもオッタルに任せるわ」

 

「オッタルさんなら気が楽なんで助かります」

 

他のフレイヤ・ファミリアの団員とは、あまり関わりたくないと思っていたので、女神フレイヤの提案はありがたいものだった。

 

次の監視役もオッタルさんだと俺が安心していると、続けて女神フレイヤが言った言葉に驚くことになる。

 

「後は、貴方が戦っているところも見てみたいわね」

 

「戦っているところですか」

 

「そうよ。戦っている時の貴方の魂が、見てみたいと思ったの」

 

完全に女神フレイヤの興味本意ではあるが、女神フレイヤの眷族達なら主神の意志に従って行動を起こしてもおかしくはない。

 

此処で戦っておかないと、フレイヤ・ファミリアに後々襲撃されそうな気がする。

 

それは普通に避けたいと俺は思ったので、戦うことにした。

 

とは言え今回は料理を作りにきただけで、武器は何も持ってきていない。

 

「場所と武器を貸してもらえるなら戦いますよ」

 

「武器の用意はオッタルに任せるわ。戦う場所は問題ないわね、ここは戦の野よ」

 

武器庫に向かったオッタルさんを待たずに、楽しげな女神フレイヤが俺を案内する先は、フレイヤ・ファミリアの眷族達が殺し合いをしている場所。

 

そんな物騒な場所で、女神フレイヤは眷族達に言い放つ。

 

「彼を倒せたら、一晩だけ私の時間をあげるわ」

 

俺を指差して、女神フレイヤが言い放った言葉に駆り立てられるように、フレイヤ・ファミリアの眷族達が俺に襲いかかってきた。

 

オッタルさんが俺に武器を用意するよりも早く始まった戦い。

 

武器庫に向かったオッタルさんが戻ってくるのが遅いのは、何かトラブルでもあったのかもしれないが、笑みを浮かべながら此方を見ている女神フレイヤの差し金のような気がするな。

 

襲い来るフレイヤ・ファミリアの団員達を素手で倒して、奪った武器を振るい、Lvが低い相手が死なない程度に加減して攻撃しながらフレイヤ・ファミリアの団員達を倒していく。

 

第1級冒険者であるフレイヤ・ファミリアの幹部は混ざっていなかったので、スキルや魔法を使うまでもなく、襲いかかってきたフレイヤ・ファミリアの団員達を倒すことができた。

 

これで終わりかと思っていると現れたのは、オッタルさん以外のフレイヤ・ファミリアの幹部達。

 

団長のオッタルさんだけを除いて、勢揃いしたフレイヤ・ファミリアの第1級冒険者達は、全員が完全に武装している。

 

「さあ、貴方の輝きをもっと見せて」

 

とてもとても楽しそうな女神フレイヤが、第1級冒険者達を呼んできたことは間違いない。

 

真正面から突っ込んできた槍使いは「女神の戦車」の2つ名を持つ猫人のアレン・フローメルであり、狙いは此方の心臓。

 

胸部に迫る「女神の戦車」の槍を半身になって避けて、フレイヤ・ファミリアの団員達から奪った片手剣を振り下ろす。

 

「チッ」

 

舌打ちと共に後方に飛び退いて片手剣を避けた「女神の戦車」を嘲笑うような声が3回聞こえた。

 

「やはり腐れ畜生では駄目だな」

 

「発情猫では当然の結果だ」

 

「農家の家畜の方が、あの方の役に立っているな」

 

小人族の4兄弟「炎金の四戦士」の内3人が、そんなことを言っている。

 

「群れねぇと何も出来ねぇ小人風情が、殺すぞ」

 

「炎金の四戦士」達に悪態を吐いている「女神の戦車」も口が悪いようだ。

 

どう見てもギスギスしているフレイヤ・ファミリアを見ていると、自分がミアハ・ファミリアで良かったと心の底から思えた。

 

黙って此方を観察している「黒妖の魔剣」と「白妖の魔杖」は動くことはない。

 

連携することなど全く考えていない「女神の戦車」と「炎金の四戦士」は、互いを巻き込むような攻撃でもお構い無しに繰り出す。

 

先ほど倒したフレイヤ・ファミリアの団員達から奪い取っておいた片手剣2本を使った2刀流で、第1級冒険者達の苛烈な攻撃を捌いていった。

 

第1級冒険者達の攻撃を捌く為に使った武器には限界が来ていたが、この武器は使い捨てることを決めていたので焦りはない。

 

放たれた「女神の戦車」の槍による突きを受け流した瞬間、砕け散った片手剣。

 

飛び散る破片を気にせずに放った突き出すような中段の蹴りで「女神の戦車」の身体を強制的に後方へと下がらせる。

 

もう片方の手に持つ片手剣も限界が近いみたいだ。

 

砕ける前に投擲した片手剣を「炎金の四戦士」の1人が持つ大斧が砕く。

 

素手の此方に攻め時だと判断したのか大剣を持つ「炎金の四戦士」が1人で近付いてきた。

 

どうやら俺の能力を何も知らないらしい。

 

「スティール」

 

振るわれた大剣が此方の身体に触れる前に、唱えたのは速攻の窃盗魔法。

 

「炎金の四戦士」の1人が持っていた大剣が俺の手に瞬時に移動していく。

 

奪い取った大剣による一撃を大剣の本来の持ち主に叩き込んでやると、大きく吹き飛んだ。

 

第1級冒険者が振るっても壊れない武器を手に入れることができたので、そろそろ本格的に反撃させてもらうとしよう。

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