転生したらゲド・ライッシュだった   作:色々残念

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思いついたので更新します


第33話、薬用酒

「創薬師」のスキルを用いれば、どんな薬でも材料があるなら作ることが出来る。

 

作れる薬の範囲も幅広く、殆ど美容用の薬でも、薬であるなら作ることが可能だ。

 

いつも通りに各種ポーションや様々な薬を作っている時に、薬と名が付いているなら、薬用酒も作ることが可能なのではないかと思い付いてしまった。

 

「創薬師」のスキルを用いて試してみると、充分な材料があれば薬用酒を作ることは可能であるらしい。

 

薬用酒と言っても作り方によって色々と違っているようで、生薬や薬草を単純に酒に溶かしたものは加薬酒というそうだ。

 

薬用酒はそれ以外にも一定期間梅酒のように生薬や薬草を酒に漬けた浸薬酒などもある。

 

更には浸麹と仕込み水の中に生薬等を入れてお酒の醸造の過程から生薬を仕込む醗酵薬酒などがあるみたいだ。

 

流石に醗酵薬酒を作る場合は一から酒を作ることになるので、酒蔵が必要になるだろう。

 

そこまで大掛かりになると個人で作るには、かなりのヴァリスと酒蔵の土地と酒を作る時間が必要になることは確かだ。

 

醗酵薬酒に興味がない訳ではないが、それなりの時間を必要とする醗酵薬酒を作るのは後回しにしておき、今回作ってみるのは加薬酒と浸薬酒。

 

購入して用意した酒に「創薬師」のスキルを用いながら生薬と薬草から抽出したエキスを混ぜていき、絶妙なバランスでブレンドしていくと加薬酒が完成。

 

加薬酒を試飲をしてみると酒の味自体も格段に良くなっていて、血行が良くなったのか全身がポカポカしてくる。

 

食欲を増進する効果もあり、弱っている胃腸を癒す効果もあるようで、胃腸にも優しい薬用酒となっていたみたいだ。

 

次に作る浸薬酒に漬け込む生薬と薬草を用意して、購入しておいた酒に漬け込んでおき、密閉してしばらく放置しておくと完成する浸薬酒。

 

時間はかかるが、醗酵薬酒よりかは短期間で完成する浸薬酒の完成を楽しみにしておこう。

 

購入した酒で薬用酒を幾つか作成しておき、直ぐに飲める加薬酒を神ミアハやナァーザにも試飲してもらうと好評だった。

 

「これも売るの?」とナァーザに聞かれたが、流石に材料の酒を購入する必要がある薬用酒までは売り出すつもりはない。

 

薬用酒は試しに作ってみただけで商品にすることはないが、必要そうな人には少し提供するかもしれないな。

 

身体に優しい加薬酒が完成した翌日、ロキ・ファミリアの団長であるフィンさんが青白い顔で、ミアハ・ファミリアのホームである店舗にまでやって来た。

 

「やあ、胃薬を貰えるかな。切らしてしまって困ってるんだ」

 

しばらく忙しくて胃薬を買いに来れなかったフィンさんは最近食欲が無くなってきているらしい。

 

「ちょっと待っていて下さい。新しい胃薬を作ります」

 

「うん、頼むよ」

 

いつもの胃薬では効果が薄いと判断した俺は、フィンさんに新しい胃薬と昨日完成した薬用酒の加薬酒を1本渡しておく。

 

新しい胃薬は直ぐに飲むように伝えておき、薬用酒は食前に飲むようにと教えておいた。

 

直ぐに胃薬を飲んだフィンさんは、ストレスで荒れていた胃が胃薬で癒されて顔色が少し改善されたみたいだ。

 

「胃薬はわかるけど、これは何かな?お酒のようだけど」

 

「ああ、これは薬用酒ですね。生薬や薬草のエキスを抽出して酒に加えた加薬酒という薬用酒ですよ。身体に優しい酒ですから今の貴方でも飲めると思います」

 

薬用酒についてフィンさんに聞かれたので少し説明しておくと「そんなものまで作れるんだね」と笑っていたフィンさんは、まだまだ顔が青白い。

 

「胃薬だけじゃなくて、薬用酒もありがたく貰っておくよ。きみが作ったものなら安心だ」

 

「とりあえず胃薬だけじゃなくて食事もしっかり食べて下さいね。食欲を増進させる効果があって、胃腸も癒すその薬用酒を食前に飲めば大丈夫ですから」

 

食欲増進効果もある薬用酒を飲んで、しっかりと食事をするように伝えておき、フィンさんからは胃薬の料金だけ受け取っておいた。

 

「薬用酒は売り物じゃないのかい?」

 

「ええ、薬用酒は貴方に必要だと思ったから渡したんですよ」

 

「僕は、そんなに疲れているように見えたのかな」

 

「鏡でも渡しましょうか、何処からどう見ても疲れきった人にしか見えませんよ」

 

「やっぱりそう見えるんだね」

 

「自覚があるようで何よりです。次からは、疲れきった状態になる前に来て下さいね」

 

「出来ればそうしたいんだけど」

 

「それが難しいんですね」

 

「うん、そうなるかな」

 

「大手のロキ・ファミリアの団長ともなれば、仕事もそれなりの量になるということですか」

 

「まあ、団長としてやらないといけないことは沢山あるよ」

 

「恐らく貴方は他の人に割り振れる仕事を割り振った上で、その状態になっているんですね」

 

「書類仕事が出来る冒険者はね、ロキ・ファミリアでも貴重なんだよ」

 

「成る程、その一言で状況がわかりました。貴方と一部の人は、とても苦労しているんですね」

 

「たまに槍を投げつけたくなる時もあるけどね」

 

「そこまで行く前に、誰かに相談して悩みを吐き出した方が良さそうですよ。実際にやってしまってからでは遅いですし」

 

「悩み相談とかは受け付けてないのかな、ミアハ・ファミリアは」

 

「特に悩み相談は受け付けていませんが、俺で良ければ話を聞きますよ」

 

「それじゃあ、お願いしようかな」

 

ミアハ・ファミリアのホームにある俺の自室にフィンさんを案内して、俺が椅子を2つ用意すると悩み相談が始まる。

 

「まずは、そうだね。ロキ・ファミリアのある冒険者が、無茶ばかりするから見ていて心配になるし、あまり此方の指示を聞いてくれないことから話そうかな」

 

こうしてロキ・ファミリアの団員達に関する悩みから、主神である女神ロキに関する悩みまで、話せる範囲で話していったフィンさんは、よほど悩みを溜め込んでいたらしい。

 

小一時間は悩みを相談していたフィンさんの話を聞き、助言が出来そうなところは助言して悩みを聞いていると、全ての悩みを話し終えたフィンさんは晴れやかな顔をしていた。

 

「ありがとう、話せる悩みを全て話したらスッキリしたよ」

 

「それなら良かったです」

 

「僕は、きみに随分と助けられているね」

 

「困っている人が居たら助けるのは当たり前ですよ」

 

俺が自然と思ったことを言葉に出して言っておくと、フィンさんは嬉しそうに笑っている。

 

「そんなきみに会えて本当に良かったと思えるね。またミアハ・ファミリアに胃薬を買いに来ても良いかい?」

 

「ええ、いつでも買いに来て下さい。たまに俺は居ないかもしれませんが」

 

「きみに会えるように祈っておくとするよ」

 

そう言って、笑みを浮かべたままミアハ・ファミリアから去っていったフィンさんの青白かった顔は少しはましになっていたようだ。

 

更に翌日、ミアハ・ファミリアのホームにまで押し掛けてきた女神ロキが「薬用酒を売ってほしいんやけど」と頼んできた。

 

どうやらフィンさんが飲んでいた薬用酒を目敏く見つけた女神ロキは、フィンさんに頼み込んで少し分けてもらったようで、それで初めて飲んだ薬用酒という酒を気に入ってしまったらしい。

 

「美味しく飲めて、身体にも優しい、まさに夢のような酒や!神酒以来の運命の出会いっちゅうやつやで!」

 

やたらとテンションが高い女神ロキは、薬用酒がまた飲みたくてミアハ・ファミリアにまで思わず押し掛けてきたようだ。

 

「薬用酒は売り物じゃないんですが、そんなに欲しいんですか。今の薬用酒は市販されている酒に手を加えただけですよ」

 

「手を加えただけであれだけ美味いんなら別物やと思っとるわ。うちも薬用酒が欲しいから売ってくれって頼んどるんやけど」

 

薬用酒を手に入れるまで帰るつもりは無さそうな女神ロキに、いつまでもミアハ・ファミリアに居座られては困る。

 

「売り物じゃないんで、貴方に差し上げるという形なら大丈夫ですよ。幾つか種類がありますから試しに飲んでみますか?」

 

贈答品ということで薬用酒を提供して帰ってもらうことにしたが、実際に飲んでもらって好みの薬用酒を選んでもらおうと考えた俺は、作成した数本の薬用酒の試飲を提案してみた。

 

「飲む飲む、試飲まで許してくれるとは太っ腹やん」

 

用意した薬用酒の試し飲みをしていく女神ロキは、かなり酒好きの女神のようで、直ぐに薬用酒を飲み干していく。

 

「どれも初めて飲む味やけど良い味しとるやないか。この中からどれを選べば良いか迷うわ」

 

「別に全部持っていっても良いですよ」

 

「ほんまにええの?」

 

「構いませんよ」

 

「ちょっと連れて来とる護衛に持たせるわ」

 

一旦ミアハ・ファミリアの店舗から出ていった女神ロキが、ロキ・ファミリアの冒険者らしき相手を店内に引っ張ってきた。

 

「この酒頼んだでラウル。落として割ったらフィンに頼んで、ケツを槍の長柄で全力でひっぱたいて貰うから覚悟しときや」

 

薬用酒数本をラウルと呼んでいる冒険者に渡していた女神ロキは真剣な顔をしている。

 

「マジっすか」

 

薬用酒の瓶を落として割った際のことを想像したのか、顔を青ざめさせていたラウルという名の冒険者。

 

「マジや」

 

そんなラウルに真剣な顔で短く言い切った女神ロキは、嘘をついている様子はない。

 

「絶対に落とさないように気をつけるっすよ」

 

しっかりと薬用酒を抱えていたラウルなら、薬用酒を落として割ることはない筈だ。

 

「ほな、また来るわ」

 

「そう毎回来られても困りますから、来るなら月に1回程度にして下さいね女神ロキ」

 

「せやね、そうしとく。それと薬用酒が売り物じゃないんなら、お小遣いということで勝手にヴァリス渡しとくで。受け取って貰えたら、うちは嬉しいわ」

 

「そうきましたか、わかりました受け取っておきますよ」

 

女神ロキから「お小遣い」を受け取っておくと、渡した女神ロキは嬉しそうに笑っていた。

 

「来月、楽しみにしとくわ」

 

鼻歌を歌いながら上機嫌で去っていく女神ロキの後ろを、薬用酒を数本抱えたラウルが着いていく。

 

女神ロキに提供した薬用酒は加薬酒だけであり、まだ出来上がっていない浸薬酒は提供しなかった。

 

浸薬酒が完成したら、また女神ロキに試飲してもらうのも悪くはないだろう。

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