転生したらゲド・ライッシュだった   作:色々残念

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思いついたので更新します


第35話、それは花屋から始まった

ファミリア以外からも商品の配達を頼まれるようになり、配達に向かった先の老夫婦が営む花屋には、最近花屋で働き始めたという小人族の少女が居た。

 

そんな少女の名前は、リリルカ・アーデであるようだ。

 

いずれ関わるかもしれないと思っていたリリルカ・アーデと遭遇したことには驚いたが、サポーターになる前のリリルカ・アーデが何をしていたのかを知らなかった俺としては、完全に偶然の出会いになるな。

 

しかし疑問に思うのは何故花屋で働いていたリリルカが、サポーターになるのかということだ。

 

元気な花屋の老夫婦に寿命が来るようには見えない。

 

それならまた別の理由でリリルカ・アーデは花屋を続けることが出来なくなるのかもしれないな。

 

リリルカ・アーデは、あまり良い評判は聞かないソーマ・ファミリアの眷族だった筈だ。

 

ソーマ・ファミリアの連中なら何をしてもおかしくはない。

 

そう思っていると老夫婦の花屋を見ていた怪しい男を発見。

 

俺が近付いてみると慌てて走って逃げていくあたり、見るからに怪しかった。

 

顔と服装は確認したので、怪しい男の特徴を話して何か心当たりがないか老夫婦とリリルカ・アーデに聞いてみると、リリルカ・アーデには心当たりがあるみたいだ。

 

リリルカ・アーデによると怪しい男は、ソーマ・ファミリアに所属している男であるらしい。

 

ソーマ・ファミリアの男が花屋を見ていたのは、リリルカ・アーデの居場所を確認する為だろう。

 

ろくな奴が居ないソーマ・ファミリアなら、リリルカ・アーデへの嫌がらせの為に花屋を壊すなんてことをする可能性がある。

 

ソーマ・ファミリアによって常連のお客さんでもある花屋の老夫婦の店が破壊されるようなことになったら、俺は物凄く不愉快だ。

 

今日のところは何もされることはないだろうが、いずれ手を出されるかもしれない。

 

とりあえず俺はガネーシャ・ファミリアに話を通しておくことにした。

 

ガネーシャ・ファミリアのホームに向かい、神ガネーシャとガネーシャ・ファミリアの団員達に、老夫婦の花屋がソーマ・ファミリアに狙われているかもしれないことを話しておく。

 

「そのような輩は許しておけんな。よし、その花屋には俺のファミリアの眷族を警備として派遣しておこう」

 

此方の話を聞いた神ガネーシャは老夫婦の花屋に、ガネーシャ・ファミリアの団員を警備として派遣してくれるらしい。

 

群衆の主を名乗る神ガネーシャなら、庇護すべき市民である老夫婦が営む花屋を守ることに手を貸してくれると思っていたが、ガネーシャ・ファミリアの団員が警備までしてくれるなら老夫婦も安心だろう。

 

俺は俺でソーマ・ファミリアについて調べてみることにしたが、ソーマ・ファミリアがかなり評判が悪いファミリアであることは確かなようだ。

 

様々な話を聞いていくと核心に迫る話を聞くことができたが、どうやらソーマ・ファミリアの団員達は主神であるソーマが作る完成品の神酒を餌に、ソーマの酒作りの資金調達の為に競走させられているようである。

 

商品として資金調達の成績上位者にだけ提供される完成品の神酒を求めて、ソーマ・ファミリアの団員達は金への異常な執着を見せているということだった。

 

完成品の神酒を求めるあまり、他者を蹴落とすことに躊躇いを無くしているソーマ・ファミリアの団員達は、まともな状態ではない。

 

そんなソーマ・ファミリアのある団員達が酒場で「サポーターが居れば、もっと稼げるのに逃げやがって小人族のガキが、後悔させてやる」と言っていたようで、リリルカ・アーデが狙われていることは間違いないみたいだ。

 

老夫婦の花屋で働き始めたリリルカ・アーデは、真っ当に働いて笑っていた。

 

優しい老夫婦の元で働けることを嬉しく思っていたリリルカ・アーデは新しい自分に変わろうとしているのだろう。

 

それは、完成品の神酒を求めて犯罪に手を染めるよりも、何千倍も何億倍も素晴らしいことだ。

 

ソーマ・ファミリアの身勝手な理由で、新しい道を歩み始めた彼女の幸せを壊していい筈がない。

 

たとえ後で救われるとしても、彼女の今が不幸せになってもいい理由はないだろう。

 

だったら俺がやることは決まっている。

 

それは、リリルカ・アーデを狙うソーマ・ファミリアの団員達を、あらゆる手段を用いて叩き潰すことだ。

 

ガネーシャ・ファミリアには既に話を通してあるが、ついでにギルドも巻き込んでしまおう。

 

まずは以前女神フレイヤが世間話に話していたロイマンの汚職について詳しい話を女神フレイヤから聞いて、ロイマンを脅すネタを手に入れることから始めてみるとしようか。

 

という訳でフレイヤ・ファミリアのホームに料理を作りに行った際に、女神フレイヤにロイマンの汚職について話を聞いてみる。

 

「そんなことよりも穏やかな火のようだった貴方の魂が激しく燃え盛って凄まじい炎になっていることの方が、私は気になるわ」

 

ロイマンの汚職をそんなことと言って気にしていない女神フレイヤは、俺の魂が炎になっていることの方が気になるらしい。

 

「炎になっていますか。自分ではわかりませんが」

 

「ええ、とても激しく燃え上がる炎のような魂になっているわよ」

 

魂を見ることができる女神フレイヤにしかわからないが、どうやら今の俺の魂は激しく燃え上がっているみたいだ。

 

「そうですか、やる気が満ち溢れているからかもしれません」

 

「何故、貴方の魂が炎のようになっているのか、その理由を私に教えてくれるなら、ロイマンの悪事なんて幾らでも教えるわよ」

 

微笑みながらそう言ってきた女神フレイヤは、俺の魂が激しく燃えている理由に興味津々だった。

 

「簡単に言えば、新しい道を歩み始めた女の子が、これからも笑って過ごせるように頑張ろうと思ったからですかね」

 

「貴方はその子のことが好きなのかしら?」

 

「出会ったばかりですし、恋愛感情は欠片もありませんよ」

 

「それでもその女の子の為に、貴方は頑張ろうと思ったのね」

 

「ええ、そうです。俺がそうしたいと思ったんですよ」

 

「ちょっと妬けるわね。その子が少し羨ましいわ」

 

「貴女でも羨むことがあるんですね。まあ、とりあえず魂が燃え盛ってる理由になりそうなことは話したんでロイマンの悪事について詳しい話を聞かせてください女神フレイヤ」

 

「わかったわ。まず最初に」

 

こうして女神フレイヤからロイマンの汚職について詳しい話を聞くことができたので、うまくこの情報を使えばギルドを動かすことができるだろう。

 

ギルドに向かい、ギルド長のロイマンに伝わるように、俺がロイマンの汚職を知っていることを匂わせておくと、呼び出しがあり、直接ロイマンと対面することになった。

 

ギルド本部のギルド長の執政室で対面したロイマンは、落ち着きがなくソワソワしている。

 

どうやらロイマンは自分の汚職を知られていることが、とてつもなく不安であるようだ。

 

ロイマンが行っている汚職について俺が事細かに語ってやると、顔面を蒼白にしていたロイマン。

 

完全に血の気がひいた顔になっていたロイマンの様子を見れば、ロイマンが汚職をしているのは事実であると理解できた。

 

ギルド長を脅すネタには充分だということも理解できたので、ちょっとした提案をロイマンには受け入れてもらうことになる。

 

勿論拒否するなら、汚職を全てウラノスにバラすと脅しを入れておくことも忘れない。

 

まるで悪魔を見るような目で此方を見ていたロイマンを従わせることには成功したので、ギルドはガネーシャ・ファミリアと連携してソーマ・ファミリアの面々が行ってきた様々な犯罪について、調査をすることになるだろう。

 

評判の悪いソーマ・ファミリアなら叩けば幾らでも埃が出てくる筈だ。

 

それから数日後、老夫婦の花屋に派遣されていたガネーシャ・ファミリアの団員が居ない隙を狙って、花屋を破壊しようとしたソーマ・ファミリアの団員達を俺が全員捕らえ、ガネーシャ・ファミリアに引き渡す。

 

ついでにソーマ・ファミリアの団員達には俺が「創薬師」のスキルで作成した自白剤を飲んでもらって、何をしようとしたのか、今まで何をしてきたのかを全て正直に神ガネーシャの前で話してもらった。

 

ソーマ・ファミリアの団員達から聞かされた様々な悪行に強い怒りを抱いていた神ガネーシャ。

 

犯罪者の巣窟となりかけているソーマ・ファミリアを、このままにしてはいけないと憤るガネーシャ・ファミリアの団員達。

 

そんなガネーシャ・ファミリアにギルドから協力の要請が届き、ソーマ・ファミリアの内部監査をギルドと共同で行うことになるガネーシャ・ファミリア。

 

内部監査当日、ギルドと連携したガネーシャ・ファミリアは、杜撰なファミリア運営をしている神ソーマに怒り心頭の神ガネーシャを先頭にソーマ・ファミリアへと突撃していったらしい。

 

俺が様々なつてを使って調べたソーマ・ファミリアの悪行についての詳細な情報を、ギルドとガネーシャ・ファミリアには提供していたので、ソーマ・ファミリアの犯罪者は全員捕縛されることになったようである。

 

捕縛された犯罪者の中には、ソーマ・ファミリア団長のザニスの姿もあったようで、酒作り以外のファミリア運営をザニスに丸投げしていた神ソーマは、罰則としてソーマ・ファミリアの状態が改善されるまで神酒作りを禁止された。

 

生き甲斐である酒作りという趣味を禁じられた神ソーマは、今度はしっかりと自分でファミリアを運営しなければ、酒作りを再開することができないみたいだ。

 

そして、犯罪者以外でソーマ・ファミリアを脱退したいものが居れば、無条件で脱退させるようにともギルドから通達された神ソーマは、それを受け入れた。

 

リリルカ・アーデは、ソーマ・ファミリアを完全に脱退したようで、これでソーマ・ファミリアに縛られることはない。

 

ソーマ・ファミリア自体がリリルカ・アーデにちょっかいをかけられるような状態ではないので、彼女が狙われることは、もうないだろう。

 

今日もリリルカ・アーデは、老夫婦の花屋で働いている。

 

笑顔で楽しそうに日々を過ごしているリリルカ・アーデは、とても幸せそうだった。

 

彼女のあの笑顔を守れたのなら、俺のしたことは無駄ではなかったと思えるな。


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