プランターで薬草を育ててみようと考えた時、こんな魔道具があれば便利かと思って試しに作成してみた魔道具がある。
それは栄養が豊富で植物が育ちやすい土を生成する魔法が使えるようになる魔道具であり、その魔道具の名前はアースメイカーと名付けた。
アースメイカーの形状は消火器に似ていて、管の付いた筒という形をしているが全体的に色は黒い。
誰にでも持てるようにアースメイカーの重さは軽くしてあるから、神の恩恵を受けていない女性でも普通に持てるし、子どもや地上に降りてきた神でも持てる筈だ。
このアースメイカーに設定された魔法の名前である「クリエイトアース」を唱えると「クリエイトアース」の魔法によって生成されたサラサラな土が管から勢いよく出てくる。
土が出る量は「クリエイトアース」を1回唱えただけで、1つのプランターが満杯になる程度なので、出てきた土に身体が埋もれるようなことはない。
実際に「クリエイトアース」で生成された土を入れた4つのプランターで薬草を育ててみることにして、プランターの土に薬草の種を蒔いていると、ミアハ・ファミリアにポーションを買いに来ていた女神デメテルが此方に近付いてきた。
「何を育てようと思っているのかしら?」
笑顔で聞いてきた女神デメテルは、農業を営む生産系ファミリアであるデメテル・ファミリアの主神だからこそ、何らかの植物を育てようとしている此方に興味を持ったのだろう。
「これは薬草の種ですよ、薬草の種類としてはポーションや薬の原料になるものです」
特に隠すようなことでもないので女神デメテルには正直に、育てようとしている植物が薬草であると教えておいた。
「とても良い土だから、よく育ちそうね」
一目見て、プランターの土が良い土だと気付いた女神デメテルは、土の良し悪しを見抜くことも出来るみたいだ。
「そうですね、よく育つと思いますよ」
「育つのが楽しみね」
女神デメテルとそんな会話をした数日後、4つのプランターの薬草は完全に成長して生い茂っている。
たった数日で薬草が立派に育っていたことには驚いたが、試しに1つのプランターから収穫した薬草は品質にも問題はなく、ポーションや薬の原料としても充分に使えたので、成長が早いことによる害がないのは確かだった。
栄養が豊富で植物が育ちやすい土を生成する「クリエイトアース」の魔法を使うことができるようになるアースメイカーは、作物を育てることにも使えそうだと思ったが、流石にミアハ・ファミリアのホームの近くに田畑はない。
「クリエイトアース」で生成された土で作物も急成長するのか確かめてみたいところであるが、勝手に他人の田畑に侵入して土を蒔いていく訳にもいかないだろう。
どうしようかと考えながら残り3つのプランターから薬草を収穫しようとしていると、通りすがった女神デメテルが此方に詰め寄ってきた。
「数日前から育て始めたばかりなのに、そのプランターで育てた薬草は、育つのが異常に早いと思うのだけれど」
種を蒔いて育ててから数日で、収穫できるまで成長したプランターの薬草の成長速度が異常だと気付いている女神デメテルは、理由を知りたいようだ。
「隠すようなことでもないので教えますが、栄養が豊富で植物が育ちやすい土を生成する魔法が使えるようになる魔道具を俺が作って、実際にその魔道具を使って生成した土で育てたからですね」
「その魔道具は、お幾らなのかしら?」
俺が作ったアースメイカーの値段を聞いてきた女神デメテルが、アースメイカーを欲しいと思っているのは間違いない。
「アースメイカーは売るために作った魔道具ではないので、土を生成する魔法が使えるようになるアースメイカーの値段は決めていませんが、実験に協力してくれるならアースメイカーを1つお譲りしますよ女神デメテル」
「実験とは何をすれば良いの」
「デメテル・ファミリアで空いている田畑に、アースメイカーで生成した土を使って作物を育ててみてください。薬草以外の植物も急成長するか知りたいので」
「そんなことで良いなら、空いている田畑もあるから大丈夫よ」
「それじゃあ、ちょっと待っていてくださいね」
女神デメテルに、少し待っていてもらって、俺の部屋に置いていたアースメイカーを1つ持ってきて女神デメテルに手渡す。
「思っていたよりも軽いけれどこれが、アースメイカーね。どうやって使えば良いのかしら」
俺から受け取ったアースメイカーを斜めに傾けたりして様々な角度から構造を確認している女神デメテルは、興味津々といった様子だった。
「アースメイカーを持った状態で設定された魔法の名前である「クリエイトアース」を唱えると管から魔法で生成されたサラサラな土が勢いよく出ます。1回唱えて出る土の量は1つのプランターが満杯になる程度ですね」
「なるほど、そうやって使えば良いのね」
「アースメイカーの「クリエイトアース」で生成された土で田畑の作物が、どう育ったかの実験結果は忘れずに教えてくださいね」
「わかってるわ」
「それじゃあ、実験結果を楽しみにしています」
女神デメテルにアースメイカーを1つ譲ってから数日後、満面の笑みを浮かべた女神デメテルがミアハ・ファミリアのホームにまで現れる。
どうやら女神デメテルはアースメイカーの「クリエイトアース」によって生成された土を畑に使って、作物を育ててみた実験結果を報告に来たらしい。
女神デメテルが空いていた畑で育ててみようと思ったのは、じゃがいもだったようだ。
さっそくアースメイカーを使って「クリエイトアース」で生成された土で畑を埋めつくし、デメテル・ファミリアの眷族達とじゃがいもの種いもを埋めていった女神デメテル。
水やりも欠かさず行い、数日間しっかりと世話をしていると、じゃがいもは凄まじい速度で成長し、たった数日で畑には立派なじゃがいもが埋まっていたらしく、女神デメテルは現物として大きなじゃがいもを持ってきていた。
見るからに立派で大きいじゃがいもを食べてみようということになり、女神デメテルがじゃがいもでフライドポテトを作ったが、じゃがいもの味は美味しくて何も問題はないし、中身がスカスカということもない。
実験として実際に畑でアースメイカーの「クリエイトアース」で生成した土を使ってみた結果は、立派で美味しいじゃがいもが数日で収穫できたという結果となるだろう。
女神デメテルは、これからもアースメイカーを使っていくつもりのようだ。
ちなみに「クリエイトアース」を1回唱えただけではプランターが満杯になる程度の土しか出ないアースメイカーで、1つの畑を満たすのは大変だったらしい。
元はプランターで使う土を生成する為に作った魔道具だったので、これからもアースメイカーを畑で使うのなら改良する必要があるだろう。
女神デメテルに実験へ協力してもらったお礼として、それぐらいはしても良さそうだな。
という訳で、オラリオ郊外にあるデメテル・ファミリアの田畑にまで向かい、作成した改良型のアースメイカーを提供してみた。
「クリエイトアース」を唱えると管から生成された土が出るのは一緒だが、出る土の量が数倍違う改良型アースメイカーなら、畑を土で満たすのも楽になる筈だ。
改良型アースメイカーでも限界が来れば壊れることもあるので、最低でも月に1回はデメテル・ファミリアの田畑に行って、改良型アースメイカーの状態を確認する必要がある。
その時は予定を空けておかなければいけないが、事前に田畑に向かう日を決めておけば問題はない。
とりあえず来月田畑に向かう日は決めておいたから、他に予定を入れないようにしておこう。
オラリオ郊外にあるデメテル・ファミリアの田畑からミアハ・ファミリアのホームに戻ってきた俺は、自室でベッドに横になって昼寝をしようとしていた。
重くなった瞼を閉じようとしたところで、俺の部屋の扉がノックされる。
俺の眠りを妨げるのは誰だと思って扉を開けると、そこにはアミッドの姿があった。
「師匠、不眠を解消する薬の作成方法を知りませんか」
寝ようとしていた俺に、不眠を解消する薬の作成方法を聞いてくるアミッドには、特に悪気は無さそうだ。
「じゃあ、とりあえず先に俺が作ってから作り方を教えるよ」
さっさと教えて今日は早めに帰ってもらおうと思った俺は、不眠を解消する薬を「創薬師」のスキルを用いて作成し、アミッドにも作り方を教えていく。
完成した不眠を解消する薬は、睡眠薬のような物になるが、大量に飲んでも命の危険はない。
それでも用法用量をしっかりと守るように伝えておき、俺が作った不眠を解消する薬もアミッドに渡しておいた。
「ありがとうございます師匠」
感謝をして薬を受け取ったアミッドだが、直ぐに帰る気配はなく、まだ何か俺に教えてほしいことがあるようだ。
「それで、次は何を知りたいんだ」
「以前師匠が作って持ってきてくれていたビスケットの作り方が知りたいです。どうしてもあの味が忘れられないんですよ」
どうやらアミッドは、以前パーティを組んでダンジョンに向かった時に、俺が提供したビスケットの味が今でも忘れられなかったようである。
俺が提供したビスケットを1番食べていたアミッドが、あのビスケットをとても気に入っていたのは確かだ。
俺に作ってくれと言わないで、作り方を教えてくれと言ってきたのは、自分で好きな時に作って食べたいからかもしれない。
まあ、俺が作る訳じゃないならアミッドに1000万ヴァリスを請求する必要はないだろう。
「菓子作りだけじゃないが、どんな料理も目分量は止めておけよ。作る度に毎回味が変わって安定しないからな」
アミッドにビスケットの作り方を丁寧に教えていき、目分量で適当に計量すると作る度に味が変わってしまうこともしっかりと理解してもらった。
材料をきっちりと計量して、毎回同じ量で作るように教えておくと納得して頷いていたアミッド。
正確に計量した材料を混ぜ合わせて、時間通りに焼きあげたビスケットは、アミッドが望んでいた味に仕上がっていたみたいだ。
「できましたよ師匠」
焼きあがったビスケットを差し出してきたアミッドの前で、ビスケットをかじる。
かじったビスケットは焼き加減も味も、特に問題はない。
「うん、よくできてる。これなら大丈夫だ」
「師匠のおかげです。ありがとうございました」
嬉しそうに笑っていたアミッドは、とても満足気だったな。
「このビスケットに関しては、教えることはもうないな」
「このということは、もしかして他にもあるんですか師匠」
「あるにはあるが、それはまた今度にしよう」
「それじゃあ、今度また来ますね。その時は、他のものも教えてください。約束ですよ師匠」
「ああ、約束するよ」
アミッドとそんな約束をしてから一緒に後片づけをして、キッチンを掃除する。
キッチンの掃除が終わったところで、アミッドは帰っていった。
それから自室に戻った俺は、ようやく寝られると思ってベッドに横になり、再び重くなった瞼を閉じていく。
瞼を閉じて数十秒、後少しで寝に入れそうだ。
寝る前の俺が最後に考えたことは、そういえば今生で初めて女性が作ったお菓子を食べたな、ということだった。
クリエイトアース
出典、この素晴らしい世界に祝福を、主人公のカズマ
カズマが取得した初級魔法
クリエイトアースはサラサラした土を生成する初級魔法であり、この土で育てた作物はよく育つ
カズマはクリエイトアースにウインドブレスという手のひらから風を巻き起こす初級魔法を組み合わせ、土を飛ばして目つぶしに使用したりする