転生したらゲド・ライッシュだった   作:色々残念

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第44話、猛者

阿修羅バロールの3つの頭にあるそれぞれの単眼から連続で発射されていく光線。

 

まるで豪雨のように降り注ぐ光を、壊れることのない白大剣を盾に防ぐオッタルさん。

 

「銀月の慈悲、黄金の原野。この身は戦の猛猪を拝命せし」

 

白大剣による防御を行いながら詠唱を開始したオッタルさんは、魔法を使うつもりらしい。

 

「駆け抜けよ、女神の神意を乗せて」

 

短文の詠唱、僅かな時間で完成する魔法。

 

解放された凄まじい魔力。

 

短い詠唱の間に、連続で放たれていた光線の雨が止んだ。

 

「ヒルディス・ヴィーニ」

 

詠唱が終わり、魔法の名を言葉にした瞬間、発動した魔法によって、白大剣に黄金色の光が集束する。

 

ただでさえ巨大な白大剣が更に肥大化したかのように思える程の魔力光によって、激しい光を帯びた白大剣が黄金の色に包まれていた。

 

尋常ではない魔力の高まりが、発動した魔法が見かけ倒しではないことを証明していたのは間違いない。

 

光輝く黄金色の大剣を、担ぐように上段に構えたオッタルさんは、阿修羅バロールへと突撃していく。

 

近付くオッタルさんを迎撃する為に、三面六臂の鬼神の如き姿をしているバロールは、3本の腕を1本に束ねて鞭のように扱った。

 

1つに束ねられた阿修羅バロールの太く大きな腕が、凄まじい速度で薙ぎ払うかのように振るわれて、放たれる一撃。

 

1度は打ち負けたそれに、黄金色の光を帯びた白大剣を叩き込んだオッタルさん。

 

衝突した阿修羅バロールの腕による一撃とオッタルさんの黄金の斬撃が、凄まじい衝撃を巻き起こす。

 

今回打ち負けたのは阿修羅バロールであり、大きく後ろに弾かれたバロールの束ねた腕は、明らかに傷ついていた。

 

白大剣が打ち負けることなく段違いの威力を発揮できた理由は、オッタルさんの魔法だろう。

 

「ヒルディス・ヴィーニ」は恐らく純然な超強化の魔法であり、それによって強化された斬撃は、阿修羅バロールの腕による一撃に打ち勝った。

 

蓄力を介さない力の増幅、単純な力の上乗せだが、Lv7のオッタルさんの力が強化されれば、正しく必殺の威力となる。

 

バロールの腕を弾き返した後も、白大剣に宿った黄金の輝きは失われておらず、それは必殺の威力を持つ一撃が連発可能であることを現していた。

 

阿修羅バロールが腕を大きく弾かれて体勢を崩している隙を逃すことなく更に接近したオッタルさんは、雄叫びを上げて跳躍し、黄金の光を帯びた白大剣を振り下ろす。

 

バロールに叩き込まれる黄金の斬撃。

 

白大剣でも僅かに削ることしかできていなかったバロールの頑強な身体が、黄金の輝きに斬り裂かれていく。

 

阿修羅のようなバロールの身体から流れ落ちる血液。

 

確かにダメージを与えられて、損傷したバロールの身体。

 

与えられた痛みで、怒りに満ちた阿修羅バロールが咆哮を上げる。

 

原始的な恐怖をもたらすモンスターの咆哮の中でも、阿修羅バロールの咆哮は特に強烈なものだったが、それでもオッタルさんは揺らぐことはない。

 

3つの頭にある単眼で、オッタルさんを見ていた阿修羅バロールの3つの単眼が光輝くと、バロールの全身が光に包まれていた。

 

巨大な2足の足で地を蹴り、躍動する阿修羅バロールがオッタルさんに近付くと、左右合わせて6本の腕を連続で振るう。

 

放たれる拳の弾幕。

 

速度を重視した凄まじい連撃。

 

殴打を喰らい、打ちのめされて吹き飛ぶオッタルさんを追って、阿修羅バロールは再び打撃を放つ。

 

標的に目掛けて繰り出され続ける阿修羅バロールの攻撃が止まらない。

 

反応速度を上昇させる「戦場の支配者」のスキルが無ければ、Lv7の俺でも視認できない速度の連続攻撃が放たれ続けている。

 

身体が光に包まれてから、明らかに上昇している阿修羅バロールの速度。

 

白塊のような白大剣による防御も間に合わず、巨大なバロールの拳を連続で受け続けているオッタルさんは、見るからにボロボロになっていた。

 

それでもオッタルさんの眼差しから力強さは失われていない。

 

響き渡った獣のような咆哮。

 

発動されたのは獣人にのみ許された獣化のスキル。

 

逆立った頭髪、歯は牙に変わり、筋肉が隆起して、より強靭になった身体。

 

獣化により強化されたオッタルさんは、凄まじい速度で放たれる阿修羅バロールの拳に白大剣を叩き込んだ。

 

白大剣に斬り裂かれて、深々と裂傷が刻まれた阿修羅バロールの拳。

 

ランクアップに等しい力をもたらす獣化によって、阿修羅バロールの上昇した速度に反応できるようになったオッタルさんの反撃が始まる。

 

白大剣の斬撃が、阿修羅バロールに幾度も叩き込まれ、傷だらけとなったバロールの身体。

 

阿修羅バロールの単眼から光線が放たれ続けようと、白大剣を盾にして前に進み続けたオッタルさんは、雄叫びを上げながら跳躍し、光線を放ち続ける単眼へと白大剣で斬撃を繰り出す。

 

凄まじい轟音、強烈な爆発。

 

白大剣で繰り出された斬撃の威力と暴発した魔力により、砕けて爆発した1つの単眼。

 

完全に破壊された阿修羅バロールの1つの頭部。

 

光線を放つ部位である頭部が1つ減ろうと致命傷には程遠く、残り2つの頭部を持つ阿修羅バロールは、まだ生きている。

 

オッタルさんは明らかに先程よりも体力を消費している様子であり、いつまでも獣化を発動したままではいられないようだ。

 

獣化している最中のオッタルさんは、体力と恐らくは精神力を大幅に消費しているのは間違いない。

 

速度が上昇した阿修羅バロールの動きに、獣化でステイタスが強化されていなければ反応できていないオッタルさんは、獣化を発動していられる間に阿修羅バロールを倒す必要がある。

 

それをオッタルさんも理解しているようで、阿修羅バロールとの戦いに決着を着ける為に、魔法の詠唱を開始した。

 

「銀月の慈悲、黄金の原野。この身は戦の猛猪を拝命せし」

 

詠唱を行うオッタルさんが盾として構えた白大剣に叩きつけられるのは、阿修羅バロールが束ねた腕。

 

響き渡った激しい金属音。

 

速度が上昇したことで威力も高まった阿修羅バロールの豪腕により、身体が吹き飛ばされようと続いていくオッタルさんの詠唱。

 

「駆け抜けよ、女神の神意を乗せて」

 

解き放たれる尋常ではない魔力。

 

「ヒルディス・ヴィーニ」

 

完成した呪文、発動した魔法によって、再び黄金の輝きを纏う白大剣。

 

握った白大剣を上段に構えたオッタルさんは咆哮を上げながら阿修羅バロールへと突撃していく。

 

オッタルさんの一撃を止めようと、阿修羅バロールが腕を振るって攻撃を放つ。

 

直撃したバロールの腕、しかしそれでも止まることなく前へと進み続けたオッタルさん。

 

黄金の光を帯びる白大剣の柄を両手で握ったまま跳躍したオッタルさんから、必殺の一撃が放たれる。

 

輝く黄金の光を纏う、白大剣の斬撃。

 

阿修羅バロールを脳天から斬り裂いていく斬撃には、獣化と超強化が合わさり、尋常ではない威力があった。

 

真っ二つに両断された阿修羅バロールは魔石も砕かれていたようで、完全に灰と化す阿修羅バロールの身体。

 

阿修羅バロールの腕から生えていた腕刃だけがドロップアイテムとして残っている。

 

鍛えられたミスリル以上の強度を持つ阿修羅バロールの拳に、数え切れないほど殴打された身体であろうと、しっかり2本の足で立っていたオッタルさん。

 

阿修羅バロールとオッタルさんの戦いは終わり、勝者となったのはオッタルさんだった。

 

戦いを見届けることはできたので、身体がボロボロのオッタルさんを治療しておくとしよう。

 

「心理之王、御調子者、調子者」

 

素早くバロールの腕刃を回収し、治癒をしている間に、モンスターの邪魔が入らないようにする為、魔法を詠唱していく。

 

「眩い星よ、重なりあえ」

 

発動するのは後半の詠唱を変化させると魔法の効果も変わる詠唱変化魔法。

 

「ムードメーカー」

 

今回発動する効果は多重結界であり、半径が5m程度の大きさである半球状の結界内には、俺とオッタルさんだけが入れるように設定してある。

 

たとえ深層の階層主であろうと破壊できない多重結界の中は、完全に安全だ。

 

多重結界の中で俺のスキル「秘伝の治癒」を発動し、スキルの自動回復効果でオッタルさんを癒しながら怪我の状態を診ていく。

 

「これは、身体全体の骨のどこかしらにヒビが入っていて、折れている骨も何本かあります。それに全身が重度の打撲状態ですね」

 

身体の全ての骨にヒビが入っていて、折れている骨が何本もあり、全身が重度の打撲状態だったオッタルさんの身体。

 

「そうか」

 

短い言葉を発したオッタルさんは身体が痛んでいようと、いつもと変わらなかった。

 

「とりあえず治療していきますね」

 

本人が平気そうな顔をしていても怪我人であることは間違いないので、オッタルさんには治療が必要だ。

 

「すまんな」

 

短い言葉だが、オッタルさんが申し訳ないと思っていることは確かに伝わったので、俺ができる限りの治療を施すとしよう。

 

ハイポーションよりも効果が高い濃縮ポーションをオッタルさんには何本か飲んでもらって、濃縮し過ぎて飲めないが回復効果は更に高いポーションを塗り薬に加工したものをオッタルさんの身体に塗る。

 

ジェル状の塗り薬となったポーションを丁寧に塗っていくと、オッタルさんの打撲が癒されていくのがわかった。

 

その間にも「秘伝の治癒」を発動し、スキル「龍の手」で自動回復の回復効果と持続時間を倍加しておき、オッタルさんを癒す。

 

内側からも外側からも回復効果の高いポーションで癒して治療していき、俺のスキルである「秘伝の治癒」で自動回復もされていったオッタルさんは、動いても身体に痛みがないぐらいには回復したらしい。

 

それからオッタルさんにはマジックポーションとエナジーポーションも飲んでもらい、精神力と疲労も回復してもらった。

 

多重結界を解除し、元気になったオッタルさんと一緒に49階層から下に降りて、安全階層の50階層で休憩することになったが、俺が用意していた燻製肉を見たオッタルさんは目を輝かせていたな。

 

顔の表情は全く変わらないが、燻製肉をほうばるオッタルさんが幸せそうにしているのは、猪耳を見ればわかる。

 

「沢山用意しているんで、まだまだありますからね。水もどうぞ」

 

「感謝する」

 

夢中になって大量の燻製肉を食べていたオッタルさんに、ウォーターボトルのクリエイトウォーターで出した水もコップに入れて渡しておくと、言葉少なめに感謝してきたオッタルさん。

 

簡単な食事を終わらせてからテントを2つ用意して、1人1つを使って就寝。

 

眠りから目覚めたところで、朝食の用意をする為にテントから出ると、オッタルさんは既に起きていて白大剣で素振りをしていた。

 

怪我をしていたオッタルさんが元気になっているのは良いことなので、剣の素振りを止めさせることはなく、手早く朝食を作っておく。

 

燻製肉と乾燥野菜を入れたスープにパンという簡単な朝食だが、オッタルさんは美味しそうに食べてくれたので、味に問題はなかったようだ。

 

今回の遠征の目的はオッタルさんが偉業を達成することだったが、オッタルさん1人で通常よりも強力な亜種のバロールを倒したことは偉業で間違いないので、目的は達成されたのかもしれない。

 

「貴方は既に偉業を達成したと俺は思いますけど、これからどうします」

 

手早くテントを片付けて、リトルフィートで大きさを縮小し、鞄にしまいながら、次はどうするかをオッタルさんに聞いてみた。

 

「急ぎ、ダンジョンを出るぞ」

 

試練に挑むという目的を達成したオッタルさんは、ダンジョンに長居するつもりはないらしい。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

ダンジョン内を高速で駆けていき、遭遇するモンスターは魔石を狙って一撃で始末し、上の階層へと上がっていく。

 

止まることのない移動を可能としたのは、移動しながら飲んでいたエナジーポーション。

 

疲労を回復するエナジーポーションを定期的に飲んでいたおかげで、立ち止まることがなくても身体は全く疲れていない。

 

止まらず移動を続け、ついにダンジョンを出たところで、俺が鞄から取り出したのは深層のモンスターから回収した魔石とドロップアイテムが詰まった大袋が2つ。

 

リトルフィートで小さくしていた大袋を元の大きさに戻し、オッタルさんに大袋を1つ差し出したが全く受け取ろうとしないオッタルさん。

 

「お前のおかげで、俺は試練に挑めた。施された治療にも感謝をしている。それは全てお前が持っていけ」

 

どうやらオッタルさんは、今回深層のモンスターから回収した魔石やドロップアイテムを俺に全て渡すつもりのようだ。

 

「それなら、あの亜種のバロールから回収したドロップアイテムぐらいは受け取ってください。これは貴方が勝ち取ったものです。貴方が持っていくべきだ」

 

そう言いながら俺が亜種のバロールから回収しておいたバロールの腕刃を、元の大きさに戻してオッタルさんに差し出すと、俺の言葉を正しいと思ってくれたのか、このドロップアイテムだけは受け取ってくれたオッタルさん。

 

その後、フレイヤ・ファミリアのホームに戻っていくオッタルさんと、ギルドに換金に行く俺は別行動となる。

 

深層のモンスターから回収した魔石とドロップアイテムは中々の稼ぎになり、今回の遠征で使用したアイテムの費用を20倍にした程度は稼げていた。

 

それでもこれはオッタルさんに渡す筈だった魔石とドロップアイテムを譲られた結果なので、実際は半分の10倍程度だったのは間違いない。

 

オッタルさんの付き添いとはいえ一応は俺も深層に遠征したので、ステイタスが上がっているか確認する為に、神ミアハに頼んでステイタスを更新してもらった。

 

Lv7

 力:I0→F374

耐久:I0→F352

器用:I0→D581

敏捷:I0→D537

魔力:I0→C695

 

 幸運:A

耐異常:B

 神秘:A

 精癒:B

 格闘:D→C

敵感知:I→G

 

リトルフィートをよく使ったからか魔力が特に伸びていて、器用と敏捷も伸びているようであり、発展アビリティの格闘と敵感知も伸びていたみたいだ。

 

遠征の結果としては悪い結果ではないだろう。

 

それから数日後、ギルドから正式に、オッタルさんがLv8に到達したことが発表された。

 

ランクアップしたオッタルさんの2つ名は、変わらず猛者のままであるらしい。

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