今回も短めです
単純に強度を向上させるだけではなく、瓶に不壊属性を付与することも試してみて、不壊となっているか確認する為に力一杯握り締めてみたが、割れることのない瓶。
幾度も試行錯誤して、ようやく割れない瓶を作成することに成功した俺は、早速作成したポーションを割れない瓶に入れてみる。
瓶は割れることはないが蓋が外れたり壊れることがあり、瓶の中身を保つ為には更に工夫が必要になりそうだった。
壊れない瓶だけではなく簡単に外れずに壊れない蓋も作成することになったが、瓶よりも簡単に作成することが可能だったので、そこまで労力はかかっていない。
次は長期保存が可能なポーションが作れるかを試してみたが、スキル「創薬師」を用いれば、長持ちするポーションを作ることも不可能ではないみたいだ。
という訳で作成した腐りにくく長持ちするポーションは、商品にするには問題がありそうなので個人で使用するだけにしておくとしよう。
商品を求めて訪れるお客さんを相手に今日も行う接客。
閉店の時間が近付いて、訪れるお客さんも少なくなった青の薬舗。
そんな閉店間近の青の薬舗にやってきたオッタルさんは、どうやら俺に用があるらしい。
てっきり燻製肉の作成依頼かと思っていたが、今回はそうじゃないようで、オッタルさんはLv8になった俺と戦いたいと考えているようだった。
フレイヤ・ファミリアに同格の相手がおらず、ダンジョンのモンスターも並みの存在では相手にならないオッタルさんは、Lv8になってからはステイタスが伸び悩んでいたようである。
俺がLv8になったとギルドから公表されたことで、同じLv8で同格の相手が現れたと思ったオッタルさんは、俺と戦って今よりも強くなりたいと考えたみたいだ。
「自分勝手な頼みだとは承知しているが、俺は強くならなければいけない。あの方の眷族として停滞することは許されん」
真っ直ぐな眼差しでそんなことを言ってきたオッタルさんは、女神の為に強くなりたいのだろう。
「引き受けても構いませんが、1つ貸しにしておきますよ」
オッタルさんの手伝いをすることは嫌ではないが、タダで手伝うのは止めた方がいいと判断して、貸しということにしておいた。
地上で戦うのは問題がありそうだと考えた俺とオッタルさんは、戦う場所をダンジョンの深層に決めておく。
翌日、互いに本気の装備を身に纏った俺とオッタルさんはダンジョンに入ると、深層に到達するまで立ち止まって休憩することなく進んだ。
道中のモンスターは魔石を破壊して倒し、ドロップアイテムを回収することもない。
疲労を回復するエナジーポーションを合間に飲みながら止まることなくダンジョンの階層を降りていき、到着したダンジョンの50階層。
安全階層である50階層ではモンスターが出現することもなく、ロキ・ファミリアが遠征中でなければ他に冒険者が居るということもない。
此処ならば地上とは違って、思う存分戦うことが可能だ。
複数の大剣を背負い、1本の大剣を構えたオッタルさんと、複数の武器を用意して、まずは銀の短槍を装備した俺は50階層で対峙すると、真正面から打つかりあった。
ミスリル製の大剣を振り下ろすオッタルさんの斬撃に合わせるように、銀の短槍による刺突を繰り出す。
鋭利な銀色の穂先が、鍛錬されたミスリルの剣身を容易く穿ち、大剣に大きな亀裂を走らせると、破壊されたミスリルの大剣。
「流石だな、この剣では相手にはならんか」
砕けた大剣の柄を放り捨てたオッタルさんは背負っていた白大剣を構えて、剛撃を放つ。
銀の短槍で受け止めた横一閃は力強く、Lv8となったオッタルさんのステイタスが十全に発揮された一撃だったのは間違いない。
それからは白大剣と銀の短槍を幾度も打つけ合うことになり、強度の高い武器でなければ瞬く間にへし折れるほどの力が込められた連撃を互いが繰り出していく。
武器が触れ合う度に迸るような火花が散り、激しい金属音が連続して響き渡る50階層。
休憩無しで、スキルによる強化も魔法も使わずに、己の肉体と武器だけを用いて戦い続ける。
一撃ごとに激しさを増す攻撃を迎撃していき、銀の短槍で連続突きを放つと白大剣を盾に防がれた。
それから互いに距離を取り、深く息を吐いた俺とオッタルさんは、微かに笑みを浮かべて武器を構え直す。
「やるな」
「そちらこそ」
白大剣による斬撃と銀の短槍の槍撃が激しく打ち合わされる度に、鳴り響く金属音。
止まらないその音は、更に激しさを増していく。
放たれる白大剣による回転斬りに、銀の短槍の穂先を叩きつけて止めた。
Lv8となった互いの一撃が打つかり合う度に凄まじい衝撃波が周囲を破壊していくが、戦いが止まることはない。
オッタルさんと違って此方はLv8にランクアップしてからそれほど日数が経過しておらず、ランクアップしたことによる身体のズレがあった。
思いっきり身体を動かすことで身体のズレが少しずつ改善されていくと、此方の攻撃を防ぎきれなくなってきたオッタルさん。
槍撃による裂傷で、身体のいたるところから血を流したオッタルさんに、大きさを元に戻したハイポーションを投げ渡す。
ハイポーションを身体にかけて裂傷を治療したオッタルさんは「続けるぞ」と言うと再び白大剣を構えた。
その後、しばらくの間は50階層に留まって戦いを続けたが、何故か安全階層である50階層に現れた漆黒のバロールによって中断となった戦い。
拡散する光線を放つ漆黒の怪物の攻撃を、オッタルさんは白大剣を盾に防ぎ、俺はスキル「龍の手」を用いて身体能力と反射神経を倍にして避けていく。
光線の豪雨が途切れたところで、漆黒の怪物へと突撃したオッタルさんが白大剣を叩きつけるが、傷1つ付かない漆黒の身体は強度が高いようだ。
今のままでは攻撃が通用しないと理解して、迷わず獣化したオッタルさんの判断は早く、獣化に続けて行われた魔法の詠唱。
「銀月の慈悲、黄金の原野。この身は戦の猛猪を拝命せし!」
「駆け抜けよ、女神の神意を乗せて!」
白大剣を構えたオッタルさんの詠唱は止まらない。
脅威を感じ取ったのか単眼に光を充填し始めた漆黒の怪物は、再び光線を発射するつもりだろう。
スキル「龍の手」を用いて槍の鋭利さを、破壊力を、投擲力を、身体能力に腕力を倍にして、全力で投擲した銀の短槍が漆黒の怪物の単眼を穿ち、光線の発射を中断させると同時に爆発を引き起こした。
爆発で頭部が半壊していても肉体の再生が始まっている漆黒の怪物を倒すには、魔石を破壊する必要がありそうだ。
「ヒルディス・ヴィーニ!」
魔法名が唱えられると同時に黄金の光輝が白大剣に宿り、黄金の光剣と化した大剣を構えたオッタルさんが疾走する。
振り下ろされた単眼の怪物の腕を、身体能力と脚力と蹴りの威力を「龍の手」で倍にして蹴り飛ばして跳ね返し、オッタルさんの進む道を開いた。
漆黒で単眼の怪物へと繰り出された黄金の光剣による一撃。
魔法で威力を超強化された大剣の一撃によって、完全に粉砕された漆黒の怪物の上半身。
オッタルさんによって倒された漆黒のバロールの外殻がドロップアイテムとして残っていたが、オッタルさんは「不要だ」と断ったので、俺が貰っておくことにした。
漆黒のバロールを倒した後、ダンジョンを出ることにした俺とオッタルさんは止まることはなく階層を上がり、エナジーポーションで疲労を回復しながら上に向かう。
最速でダンジョンを出た俺とオッタルさんは、それぞれの主神が待つホームへと戻った。