ダンジョンに潜ってからミアハ・ファミリアのホームに戻り、ポーションとエナジーポーションを作成しておくのが日課になったが、そこまで負担にはなっていないので問題はない。
疲労回復効果があるエナジーポーションの売れ行きは好調のままであり、ミアハ・ファミリアの借金返済は順調だ。
数量限定の新作ポーションとは違ってエナジーポーションの方は大量に売り出している。
それでも疲労回復効果だけがあるエナジーポーションは他のポーションの需要を奪ってはおらず、基本的には他の医療系ファミリアから文句を言われるようなことはなかった。
唯一、借金の回収に来た神ディアンケヒトがいちゃもんつけてきたりもしたが、何だかんだ言いながらもエナジーポーションを買っていった神ディアンケヒトは、最近大人気のエナジーポーションが気になっていたらしい。
神ミアハに対して当たりが強い神ディアンケヒトだったが、エナジーポーションを気に入ったようであり、頻繁にエナジーポーションを買っていくようになった。
ダンジョンに潜ってからホームに戻って、忙しそうな店舗の手伝いもしてみたが、神ディアンケヒトが来る度に、ナァーザは物凄く嫌そうに接客していたな。
「エナジーポーションを買いにきてやったぞ、ミィーアァーハァ」
という感じで神ミアハに積極的に絡んでいく神ディアンケヒトは、借金回収の時も毎回のように、神ディアンケヒトが直接ミアハ・ファミリアまで来て回収していくそうだ。
大手の医療系ファミリアの主神である神ディアンケヒトは、決して暇な神ではない筈だが、借金回収の為に態々予定を空けておき、神ミアハに対して、マウントを取れる機会を逃さないようにしているのだろう。
最近だとミアハ・ファミリアの借金返済が安定してきているので、神ディアンケヒトとしては面白くないのかもしれない。
ちなみに神ミアハがミアハ・ファミリアに居ないと露骨にテンションが下がる神ディアンケヒトは、ミアハ・ファミリアの眷族相手には高圧的に出ることはなかった。
「ミアハはおらんのか。エナジーポーションを20本だ、ミアハの眷族」
今日もミアハ・ファミリアの店舗に来た神ディアンケヒトは、神ミアハが居ないとわかっていても目当てのエナジーポーションを大量に買っていく。
「わかりました、ディアンケヒト様」
そう言いながらエナジーポーションを用意しようとしていたナァーザは、とても嫌そうな顔を隠しもしていなかった。
やはりナァーザは神ディアンケヒトが好きではないらしい。
「ええい、そんなに毎回嫌そうな顔をするでないわ!客に対しては、もっとにこやかにせんか!おい、もう1人のミアハの眷族、お主が用意しろ!」
ポーションの品出しをしていた俺に向かって言ってきた神ディアンケヒトは、ナァーザではなく俺にエナジーポーションを用意してほしいようだ。
「これで良いですか、神ディアンケヒト。いつもエナジーポーションを買っていただいてありがとうございます」
とりあえず丁寧にエナジーポーション20本を梱包し、神ディアンケヒトに渡しておいた。
「うむ、あの娘は、接客態度がなっておらんかったが、お主は悪くないな」
満足そうな神ディアンケヒトは、俺の接客態度を気に入ったようである。
俺にとって神ディアンケヒトは、神ミアハにウザ絡みする神ではあるが、そこまで複雑な感情を抱いてはいないので、普通に接客することが可能だ。
神ディアンケヒトがそういう神であると割り切れている俺と違ってナァーザは、割り切れていないのかもしれない。
それから俺がミアハ・ファミリアの店舗で手伝いをしている時に神ディアンケヒトが現れたら、基本的には俺が接客するようにした。
何度も接客している内に神ディアンケヒトと普通に世間話をする程度には打ち解けてしまったが、話してみるとそこまで悪い神であるようには思えなかったディアンケヒトという神。
多少ヴァリスに執着するところがあるが悪神という訳ではない神ディアンケヒトは、オラリオには必要な神の1柱であるのだろう。
「今日はエナジーポーションを30本だ。用意するのは、ゆっくりで構わんからワシの話を聞くのだゲド」
頻繁にエナジーポーションを買っていく神ディアンケヒトは、そう言うと話し始めた。
「最近他の医療系ファミリアもエナジーポーションを真似たポーションを作成しとるようであるが、ここのエナジーポーションに遠く及ばぬものしか作れておらん」
「そうなんですか」
「ある程度の疲労回復効果があるポーションが作れても、ここのエナジーポーションと比較すれば、効果は段違いに低いものだったようだ」
「まあ、そう簡単には真似できないと思いますよ」
「何を思ったか他の医療系ファミリアは、最大手であるワシにミアハ・ファミリアに圧力をかけるように言ってきおった。どうやら目的は、エナジーポーションのレシピを公表させることらしい」
「それって俺に話しても良かったんですか神ディアンケヒト」
「構わん。他の医療系ファミリアが何を言おうが黙らせる力がワシにはあるからな。ワシのファミリアがミアハ・ファミリアに圧力をかけることはないが、他の医療系ファミリアには注意しておけ。手荒な真似をしてくるかもしれん」
「ご忠告ありがとうございます」
「ワシはエナジーポーションが買えなくなるのが困るだけだ。ミアハを助けた訳ではないから勘違いはするでないぞゲド」
「わかっていますよ、それでも助かりました。エナジーポーション30本、お買い上げありがとうございます」
ゆっくりと話を聞きながら梱包しておいた30本のエナジーポーションを神ディアンケヒトに渡した俺は、感謝の気持ちを込めて頭を下げる。
重そうにエナジーポーションを持ちながら帰っていく神ディアンケヒトは、ミアハ・ファミリアに危険が迫っていることを確かに教えてくれた。
ならば備えておく必要があると判断した俺は、神ミアハにもこの話を伝えておき、ナァーザにも警戒しておくように言っておく。
日課のダンジョン探索を早めに切り上げて、ミアハ・ファミリアのホームに戻った俺は、ステイタスを更新してもらうことにした。
神ミアハが驚きながら教えてくれたが、どうやら俺には新しい魔法が発現していたようで、その魔法は「スティール」という名前の速攻魔法らしい。
詠唱がなく、名前を呼ぶだけで発動する「スティール」の効果は、対象となった相手から何かを奪うという効果のようだ。
実際にモンスターを相手に検証してみた結果、モンスターが持っていた天然武器を瞬時に奪うことに成功した。
「スティール」が天然武器を使うモンスターや対人戦で役立つ魔法であることは間違いない。
ある日、ミアハ・ファミリアのホームでもある店舗で、1人だけで店番をしていた俺は、店内に侵入してきた不審な人物達に襲われることになる。
恐らくはLv3の荒事に慣れた人間達が顔を隠した状態で、邪魔者である俺を排除しようとナイフを振るってきた。
「龍の手」のスキルで身体能力を2倍に上げた状態で、俺は連続で振るわれたナイフを避けていく。
確実に人体の急所を狙ってきたLv3の人間達。
「スティール、スティール、スティール」
俺は速攻窃盗魔法を連続で唱えていき、3人のLv3が持つナイフを奪い取っていった。
「リトルフィート、リトルフィート、リトルフィート」
続けて速攻縮小魔法を連続で唱えて、ナイフを小さくしておく。
これでナイフが襲撃者達に武器として使われることはない。
武器が突然手元から消えて奪われたことに戸惑っていたLv3達を相手に距離を詰めた俺は握りしめた拳を振るう。
拳が当たる瞬間に「龍の手」のスキルで拳の威力も2倍にした俺は、Lv3の人間達の正中線に連続で拳を打ち込んだ。
Lv2とLv3でレベル差があったとしても、ステイタスがSSにまで到達している俺が「龍の手」で身体能力を2倍にするとLv3を圧倒することが可能だった。
2人のLv3を拳で沈めた俺に対して、短剣の魔剣を取り出した最後の1人。
「スティール」
当然のように魔法で魔剣を奪い取った俺から、逃げようとしたLv3に容赦なく拳を叩き込んだ。
全員倒したところで「創薬師」のスキルを用いて、自白剤を作成しておき、3人のLv3全員に飲ませる。
耐異常が効かない自白剤で、軽くなった口で話し出したLv3達が言うには、ある医療系ファミリアにエナジーポーションのレシピを回収するように頼まれたらしい。
その医療系ファミリアは、あまり良い評判は聞かないファミリアだったが、今回の1件が明らかになれば、処分が下ることは確実だ。
という訳でガネーシャ・ファミリアとギルドに話を通しておき、口が軽くなっているLv3達3人を引き渡しておいた。
それから数日後、他にも余罪が判明したその医療系ファミリアはギルドから重い処分を下されて、何人かが犯罪者としてガネーシャ・ファミリアに捕まったようだ。
その後、残った眷族達によってファミリア内部で争いが起こったことで、問題の医療系ファミリアの主神が強制送還されてしまい、ファミリア自体が解散ということになったらしい。
今回の1件で、ミアハ・ファミリアに手を出そうとする医療系ファミリアは居なくなったらしく、エナジーポーションのレシピが狙われることもなくなった。
ちなみに俺はLv3を3人倒しても偉業とは判断されなかったようなので、ランクアップするにはもっと強い相手と戦う必要があるのかもしれない。
スティール
出典、この素晴らしい世界に祝福を、主人公のカズマ
盗賊が持つ窃盗のスキルであり、冒険者になったカズマが最初に覚えたスキルでもある
効果は対象となる相手からランダムに何かを1つ奪うというもの
成功率は本人の幸運が高ければ高くなる
ちなみにカズマは、初めて使ったスティールで女子のパンツを奪い取った