今回は短めです
携帯用風呂と入浴剤を、ほぼ毎日使っているフィンさんの肌は、凄まじく美肌になっており、女性に羨ましく思われるような肌となっていたようだ。
そんな美肌なフィンさんはロキ・ファミリアの女性団員達に美肌の秘密について喋るように詰め寄られても、秘密を喋るようなことはなかったらしい。
それでも女性団員達が連携して行った執念深い調査で、入浴剤を使っていることを知られてしまったらしく、青の薬舗まで押し掛けてきたロキ・ファミリアの女性団員達。
とりあえずロキ・ファミリアの女性団員達は入浴剤を求めて来たようなので、客として扱うとしよう。
フィンさんに渡した男性用とは違うが、美肌効果がある女性用の入浴剤を作成し、ロキ・ファミリアの女性団員達に商品として購入してもらった。
女性という一括りではなく、それぞれの種族に合わせた入浴剤も存在することを教えてみると「そっちも欲しい」と言ってきたロキ・ファミリアの女性団員達十数名。
それぞれの種族の肌に合わせてある入浴剤各種を、混ぜるのは良くないので、個別に風呂に入る手段が必要だが、そんな時の為に携帯用風呂がある。
商品になるかと思って量産しておいた携帯用風呂を、青の薬舗に来た女性団員達の人数分だけ購入してもらった。
入浴剤と携帯用風呂を実際に使ってみた女性団員達の肌は、とても綺麗な美肌となったようで、定期的に入浴剤を購入しに来るようになった女性団員達。
ロキ・ファミリアの女性団員達が更に綺麗になった理由が青の薬舗にあるとオラリオ中に広まったようで、様々なファミリアの女性団員達が青の薬舗にまで押し寄せてくる事態が発生する。
いずれこんなことが起こるんじゃないかと考えて、入浴剤と携帯用風呂は大量に生産しておいたので、品切れになることはない。
とりあえず様々なファミリアの女性団員達に入浴剤と携帯用風呂について説明しておくと、説明を聞いた全員が迷わず入浴剤と携帯用風呂の購入を決めた。
様々なファミリアの女性団員達が美肌になっていることを知ったオラリオの人々も青の薬舗にまで来るようになり、入浴剤と携帯用風呂が更に売れて、オラリオでは風呂に入る女性が増えたそうだ。
入浴剤には特に興味がなかった椿も携帯用風呂は買っていったので、簡単に風呂に入ることができる携帯用風呂は、女性にとって魅力的な商品だったのかもしれないな。
入浴剤と携帯用風呂の量産ばかりすることになる日々も落ち着いた頃、椿の工房に行って、以前渡せなかった漆黒のバロールの外殻を椿に渡しておくと「これは間違いなく良い防具の素材になるぞ!」と大興奮していた椿。
「ゲドに頼まれていた脚甲だが、蒼い砲竜と黒いバロールの素材を組み合わせたものにしても構わんか?」
「そうした方が良いものが完成するなら、好きにしてくれて構わないぞ椿」
「うむ、ならば少しばかり手前に時間をもらうが、良いものを作り上げてみせるのでな!」
それから数日後、作成を頼んでいた装備を持って青の薬舗にまでやってきた椿が「完成したぞ!ゲド!」とテンション高めに近付いてきた。
蒼い砲竜の素材を使って作られた短剣と脚甲を椿から受け取り、それぞれの名前を聞いておくことにする。
「短剣は「砲牙」で、脚甲は「蒼眼」という名だぞ」
蒼い砲竜の牙を素材に作られた短剣は「砲牙」と書いて「ほうが」と読み、蒼い砲竜の甲殻だけではなく黒いバロールの外殻まで使って作られた脚甲は「蒼眼」と書いて「そうがん」と読むようだ。
牙で作られた為、剣ほどの長さはない短剣である「砲牙」は、鋭利な白い短剣であり、ウダイオスの黒剣を素材に作られた短剣よりも鋭く頑丈な短剣であるらしい。
蒼い甲殻だけではなく黒い外殻まで使われて作られた脚甲の「蒼眼」は、蒼と黒が混ざったのか暗いブルーの色合いで、凄まじい強度を持っていた。
装備を作成してくれた椿には、しっかりと感謝をしておき、報酬としてヴァリスをちゃんと支払っておく。
満面の笑みでヴァリスを受け取った椿が笑顔のまま倒れて寝てしまったが、どうやら体力に限界が来ていたらしい。
このまま放置しておくのも良くないので、椿とヴァリスが入った袋を担いだ俺は、工房にまで椿を運んでいき、椿の目が覚めるまで待つ。
「ここは、手前の工房か」
鍛冶師である椿の工房にある仮眠用のベッドに寝かせておいた椿が目覚め、周囲を確認し始めた。
「起きたか、椿。笑顔で倒れた時は驚いたぞ」
「ゲドが工房まで運んでくれたのか。いやすまんな、どうやらエナジーポーションを飲み忘れておったようだ」
陽気に笑いながらそう言っていた椿は、疲労で倒れたことはそんなに気にしていないみたいだ。
鍛冶に夢中になっていることが多い椿は、力尽きていることも少なくはない。
これからも疲労に限界が来た椿が倒れることは、良くありそうだな。
まあ、椿に気を付けるように言っても改善されることはないだろう。
「疲れてる時は無理しないで休んだ方が良いと思うけどな。起きたなら俺は帰るよ」
とりあえずそれだけ言って椿の工房から出た俺は、ミアハ・ファミリアのホームである青の薬舗に戻る。
定期的に入浴剤を購入しに来る人々に入浴剤を提供した翌日、新しい短剣と脚甲という装備を手に入れた俺は、使い心地を実際にダンジョンで試してみることにした。
詠唱によって効果が変化する「ムードメーカー」の魔法を用いて空間転移を行い、自室からダンジョンの50階層まで移動。
階層を1つ上がり49階層に向かった俺は、現れるフォモールを短剣で倒していき、放たれるフォモールの攻撃を脚甲で受けてみたりして、実戦で短剣と脚甲の使い心地を確かめていく。
短剣は容易くフォモールの身体を斬り裂き、攻撃したフォモールの身体が逆に傷付くほどに頑丈な脚甲の強度は、とても高い。
大量のフォモールを相手に短剣と脚甲を活用して戦っていると上の階層から下りてきた相手が現れたが、それは人間でもなく普通のモンスターでもなかった。
まるで騎士のように、黒い鎧のような甲殻に全身が包まれた人型のモンスターは、竜鱗のような紋様が浮かぶ黒剣を片手に持っている。
黒騎士は巧みに剣を振るい、大量のフォモールを瞬く間に斬り裂いていき、僅か数十秒でフォモール達を全滅させた。
此方を見る黒騎士の額には見覚えのある紅い石が輝いており、あれがヴィーヴルの紅石であるとするなら、黒騎士のようなモンスターの正体はヴィーヴルで間違いない。
通常は半人半蛇のような姿をしているヴィーヴルだが、明らかにこの個体は異形であり、通常のヴィーヴルとは身体の形が違っているようである。
地を蹴って此方に接近してきた黒騎士が、真正面から振り払ってきた剣を短剣で受けたが、どうやら黒騎士は凄まじい腕力を持っているようで、Lv8の俺でも受け止めきれず身体ごと吹き飛ばされることになった。
剣を受けてみて理解したことは、まだこの黒騎士のようなヴィーヴルは欠片も本気を出していないということだ。
吹き飛ばされながら体勢を立て直して着地した俺は、深く息を吐いて短剣を構える。
相手がモンスターであるなら今の内に倒しておかなければ、更に強化されてもおかしくはない。
誰も倒せないようなモンスターになる前に、倒しておかないといけない相手だろう。
そう考えた俺に、瞬時に近付いてきた黒騎士のようなヴィーヴルは黒剣を振り下ろしてきた。
どうやら相手もやる気は満々らしい。
だったら此方も遠慮する必要はない筈だ。