今回も短いです
蒼い砲竜の牙を素材に作られた白い短剣と、竜鱗のような紋様がある黒い剣が打つかり合う度に、風が唸り、周囲に凄まじい暴風が吹き荒れる。
此方が「龍の手」のスキルで、身体能力や腕力に斬撃の威力を倍にして振るう短剣と打ち合っても、1歩も退かず黒剣を振るい続けるヴィーヴルの動きは止まらない。
寧ろ更に激しさを増す黒剣の使い手の剣撃は、一撃ごとに力強さを増していく。
まるで黒い閃光のように見える程の速さで、繰り出され続ける黒剣の斬撃。
黒剣を短剣で受け止める度に、鋼と鋼が打ち合うような金属音が絶え間無く鳴り響いていた。
魔法名を唱えるだけで発動する速攻窃盗魔法「スティール」を使う隙は無く、此方が魔法名を全て唱え終わるまでの間に5回は殺されてしまうだろう。
黒騎士のようなヴィーヴルと至近距離での白兵戦を続けている最中、禍々しい紫に黒騎士が光輝いたかと思えば、気付いた時には血を流しながら吹き飛ばされていた俺の身体。
胸部の裂傷と斬り裂かれたライトアーマーの状態から察するに、恐らくは視認できない速度で繰り出された黒騎士の斬撃で斬られてしまったらしい。
スキル「秘伝の治癒」を用いて裂傷を治療していくが、浅くはない傷から流れ出す血を止めることは可能でも、完全に治療することは出来ていなかった。
俺がそんな状態であろうがモンスターである黒騎士が待つ訳もなく、黒剣を薙ぎ払うように振るう黒騎士。
短剣を用いて黒剣の軌道を逸らし、前に踏み込んだ俺は短剣による斬撃を黒騎士に放つ。
しかし瞬時に身を翻して黒剣を操った黒騎士により阻まれて、短剣の一撃は届かない。
互いに斬撃を繰り出し続けていると黒騎士が再び光輝いたが、その瞬間にスキル「戦場の支配者」を発動した俺の反応速度が凄まじく引き上げられる。
上昇した反応速度で、先程は視認できなかった黒騎士の動きを、なんとか眼で見ることが出来たが、どうやら黒騎士は魔力を放出して運動能力を向上させていたようだ。
瞬発的に噴射された魔力により、格段に高まった運動能力で、凄まじい速度の斬撃を繰り出していた黒騎士。
「戦場の支配者」で反応速度を向上させていても、霞んで見える程の速度である黒騎士の動きは、とてつもなく速い。
魔力放出により機動力を増した黒騎士が放ってくる黒剣の斬撃は、破壊力も増加しているようで、斬撃を受けた短剣を握る手に凄まじい衝撃が届いた。
行われた魔力放出は1度だけではなく、更に連続で魔力を放出した黒騎士が繰り出す黒剣の連撃。
全てを完全には受けきれず、頑丈な脚甲に包まれた脚部以外の全身に裂傷が刻まれていく。
血を流す身体の傷を「秘伝の治癒」で癒しながら、倒れることなく立ち続けていた俺は、黒騎士の動きから眼を離すことはない。
何度か観察していると、黒騎士が魔力の放出を行って高速で行動する際に、右足で踏み込んでから動く癖があると見抜くことが出来た。
再度光輝いた黒騎士が、魔力放出を使ってくることは間違いないだろう。
氷と冷気を自在に操り作り出すスキル「寒氷陣」を用いた俺は、黒騎士が右足で地を踏み込もうとした瞬間に、氷柱を地面から生やして黒騎士の右足の動きを阻害する。
僅かに停滞した黒騎士の動きに一瞬の隙ができた時、瞬時に間合いを詰めた俺は、短剣を黒騎士の腕に突き刺した。
黒剣を持つ黒騎士の腕にダメージを与え、剣を握る手の力を弱めさせると、黒剣を奪い取ることに成功。
窃盗というよりは強奪といったところだが、短剣を左手に、黒剣を右手に持った俺は、2刀流で黒騎士を斬り刻んだ。
全身を斬り裂かれた黒騎士は、連続で魔力放出を行って此方から距離を取ると、自ら額の紅石を引き抜いて投げ捨てる。
黒騎士の身体が大きく脈打ったかと思えば、半人半蛇の姿へと変貌した黒騎士の肉体。
全身が鎧のような黒い甲殻に包まれて、鋭い刃のような5指の爪を持つ半人半蛇の身体には竜の翼まであり、異形だった黒騎士は通常のヴィーヴルの形に近付いていた。
それでも通常のヴィーヴルとは比べ物にならない程のモンスターと化していた黒い竜女。
半人半蛇の姿となっていても魔力放出は使えるままのようであり、ジェット噴射のように魔力を放出して突進してきた黒い竜女の速度は、先程の倍は速い。
避けきれずに黒い竜女の体当たりに撥ね飛ばされることになった俺の身体は、宙を舞うことになる。
完全な暴走状態となっている黒い竜女は、敵として認識している俺に対して執拗に攻撃してきた。
剣士のような黒騎士から一変して、モンスターとして襲いかかってくる黒い竜女の攻撃は凄まじく激しい。
短剣と黒剣の2刀流で、迫り来る黒い竜女の爪撃を受け止め、モンスターの本能が剥き出しとなった苛烈な攻撃を防ぎ続けるが、全ては防ぎきれず、此方の身体に傷が増えていく。
全身が傷だらけになりながらも短剣と黒剣を振るい、前へと進んだ俺へと振り下ろされた黒い裂爪の一撃。
短剣の剣身を滑らせるように裂爪を受け流した俺は黒剣で黒い竜女の胸部に突きを放つ。
黒剣は確かに突き刺さったが、片手だけの突きでは頑強な黒い甲殻を完全に貫く程の威力が出なかったようで、まだ黒い竜女の魔石は破壊されていない。
薙ぐように振るわれた黒い裂爪を跳躍して回避すると、黒い竜女に突き刺さった黒剣の柄を両手で掴む。
渾身の力を込めて押し込んでいった黒剣の切っ先が魔石を貫くと、ドロップアイテムらしき甲殻と黒剣と紅石を残して、黒い竜女の身体は灰と化したようだ。
黒い甲殻と落ちていたヴィーヴルの紅石を拾っておき、スキル「秘伝の治癒」で身体を少し癒しておく。
それから、倒しただけで放置していたフォモールの魔石を回収し、黒い甲殻と一緒に袋に詰めて、速攻縮小魔法の「リトルフィート」を使用して縮小させてから、バックパックにしまった。
ドロップアイテムや魔石の回収が完了してから50階層に移動した俺は、詠唱変化魔法「ムードメーカー」の空間操作で空間転移を使って、ダンジョンの50階層から青の薬舗にある自室まで移動する。
とてつもなく疲れたのでこのまま寝たいところだが、身体が血で汚れた今の状態で寝るのは問題がありそうだ。
とりあえず風呂に入って身体の汚れを全て落としておき、ハイポーションを使って身体の治療も行ってから、服を着替えて寝ることにした。
翌日、神ミアハにステイタスの更新を頼んでみたが、凄まじくステイタスが上昇していたみたいだ。
Lv8
力:E476→SSS1574
耐久:F324→SSS1486
器用:E493→SSS1591
敏捷:E461→SSS1537
魔力:F358→SSS1452
幸運:A
耐異常:A
神秘:A
精癒:A
格闘:A
敵感知:D→C
堅守:H→G
ステイタスは、こんな状態になっていて、更にランクアップもできるようになっていたらしい。
やはり黒いヴィーヴルとの戦いは、偉業だと判断されたみたいだな。