次回の60話で最終話になりますので、よろしくお願いします
風印の歪みから現れた竜は、百足のような外見をしているが竜鱗に覆われた身体を持つ竜であるヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴン。
学区の網のような結界に絡まった身体を動かし、容易く結界を引きちぎる百足竜は通常の個体よりも明らかに巨大で、強化種であるのは間違いない。
ヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴンは67階層に存在するモンスターであり、通常の個体でもLv7相当の強さを持つモンスターだ。
確実にLv7以上の強さを持つ強化種の百足竜は、Lv5以上の竜の谷の竜であり、突起から光線を放つだけではなく汚染瘴気も撒き散らす。
汚染瘴気ドラグマは傷口から浸食し、回復魔法の効果を著しく減退させる竜の鱗悪素。
回復魔法以外の回復手段を持つ俺なら問題ないとしても、瘴気自体が身体に良いものではない。
スキル「健全化」を用いて状態異常回復の効果と、一定時間状態異常無効の効果を用いて瘴気を避せつけずに剣を構えて駆け出し、勢いをつけて高く跳躍。
更に俺は「寒氷陣」のスキルを用いて空中に作り出した複数の氷の足場を使い、連続跳躍を行い、上空の百足竜に迫った。
氷の足場を跳び回り、放たれる光線を避け、跳び乗った百足竜の頭部に黒剣を深々と突き刺したまま「龍の手」のスキルで斬撃の範囲を倍にした状態で、百足竜の上を駆け抜けていく。
黒剣に斬り裂かれて脳天から身体の半ばまで真っ二つとなっていった百足竜が地に落ちていき、絶命した百足竜が動くことはもうない。
これでギルドの緊急冒険者依頼は達成ということでいいんだろうかと考えていたが、歪みから出てきた竜は百足竜だけではなく、様々な竜が飛び出してくるようになった。
流石に俺1人だけでは手が足りないと判断して、スキル「粗悪複製」を用いて自分自身を30人ほど増やしてみたが、Lv10の俺の粗悪なコピーである為、Lvで言えばLv7程度の実力しかないようだ。
それでも30人のLv7が戦力として増えたので、次々と現れる竜達を協力して討伐していく俺と複製達。
倒した竜の数が300を越えた頃、凄まじい竜の咆哮が聞こえたかと思えば、風印の竜巻を引き裂くようにして現れた巨大な黒竜。
より強力な汚染瘴気を撒き散らしながら現れた黒竜は隻眼であり、竜の谷に封じられていた黒竜である可能性が高い。
暴風を纏う黒竜の突撃を避けきれなかった複製達の身体がバラバラになり、消えていく。
完全に破壊されると複製は消えることを知ることができたが、黒竜とまともに戦えるのはLv10の俺だけだと理解できた。
繰り出される暴風を纏う突撃と炎弾を避けて、試しに複製した黒剣を投擲して攻撃してみたが、黒竜の身体から放たれる強力な汚染瘴気により、黒竜に刺さった瞬間に腐蝕した複製品の黒剣。
黒竜を倒すには、直接触れることなく強力な一撃を叩き込む必要があるようだ。
スキル「雷霆招来」を用いて球体状の雷を放つと、黒竜に直撃した球体の雷は半球状に広がり、広範囲を雷撃する一撃にはなったが、黒竜を倒すには威力が足りていない。
今の「雷霆招来」の威力では、何発撃とうが黒竜を倒すことはできないだろう。
オッタルさんが身に付けていた技である飛ぶ斬撃を真似たものを飛ばしてみたが、それでも黒竜を両断するほどの威力はなく、斬り傷をつけられた程度だ。
刃のような嵐の風を繰り出した黒竜の攻撃により、切り刻まれた俺の身体からは血が流れた。
更に追撃として高速で振るわれた大木のように太い黒竜の尾が直撃して吹き飛ばされた俺の身体。
各部の裂傷をスキル「秘伝の治癒」で塞ぎ、骨折の痛みも和らげ、負傷した身体を動かして、複製達を使った陽動を行いながら戦いを続ける。
幾度も傷つき、それでも何度でも立ち上がりながら俺は戦った。
「粗悪複製」で複製した黒竜すらも操り、黒竜へと襲いかからせたが、粗悪な複製黒竜達では僅かに動きを止めることしかできていない。
だが、僅かな時間があれば充分だ。
これまで数え切れないほど「龍の手」のスキルを使ってきたが、このスキルには、まだ隠された力があると、俺は感じていた。
目蓋を閉じて「龍の手」のスキルに意識を集中する。
身体は既に限界が近い、それでも俺は、まだ戦いの最中。
風印を抜け出した黒竜は、ここで倒さなければいけない。
Lv10でようやく戦いになる黒竜と戦えるのは俺だけだろう。
人々を守る為には、黒竜と戦い倒さなければいけない。
なら、限界など超えてみせよう。
背の恩恵が熱を持つ。
「バランス!」
目蓋を見開き叫ぶように力強く。
「ブレイク!」
俺は限界の先へと到達する為の言葉を発した。
スキル「龍の手」が姿形を変えて、銀色の龍の手が俺の身体から4本生える。
「龍の手」改め「阿修羅と魔龍の宴」といったところだが、増えたのは腕だけではなく倍化の回数もだ。
通常の「龍の手」では2倍程度だった倍化が、16倍にまで強化されていた。
本物の黒剣に複製品の黒剣も加えた6本を、それぞれの手に持った俺は、6本の黒剣を構える。
確か飛ぶ斬撃には残光という名前があった筈だ。
残光と命名したのはオッタルさんではないみたいだが、今回は名前を借りておくとしよう。
6本の腕で6本の剣を用いて、Lv10が16倍に倍化された身体能力で繰り出す残光。
「六閃残光」
同時に放たれた6本の巨大な飛ぶ斬撃。
黒竜の風の防壁すら斬り裂いた6本の残光により、粗悪な複製黒竜ごと身体をバラバラに斬り裂かれた黒竜が絶命。
黒竜の魔石まで残光は斬り裂いていたようで、灰と化した黒竜の身体。
灰と化した黒竜が残したものは、ドロップアイテムの巨大な牙と鱗に、人間大の緑の結晶のような物体。
牙と鱗はドロップアイテムだと理解できるが、結晶のようなものは何だろうかと思っていると、結晶の中には女性のような姿がある。
結晶を割ってみて中の女性を出してみたが、かなり弱って死にかけていたので「ムードメーカー」の運命改変で、死の運命を改変しておくと元気になった女性。
かなり元気になった女性は、どうやら風の精霊であるようで、アリアという名前であるみたいだ。
金髪のアリアさんは、ロキ・ファミリアのアイズに似ていたが、何か関係があるのかもしれない。
とりあえず竜が出てくることがなくなった竜の谷からオラリオにまで、詠唱により効果が変化する「ムードメーカー」の空間操作の空間転移を使い、アリアさんと一緒に戻ってみた。
ギルドに向かい、竜の谷で竜を倒したことを報告すると、ホッとした様子で胸を撫で下ろしていたロイマン。
続けて、ドロップアイテムも見せながら黒竜も倒したと報告した瞬間に、ロイマンは卒倒していたな。
しばらくして立ち上がったロイマンは黒竜のドロップアイテムが本物だとしっかりと見抜き「これで世界は確かに救われた!盛大に宣伝しなくては!オラリオの冒険者が黒竜を討ったことを!」とまで言い出す。
「騒がし過ぎるのは、あんま好きじゃないから程々にしといてくれ」
それだけ言ってギルドを立ち去った俺は、待っていてもらったアリアさんを連れて、ロキ・ファミリアのホームにまで向かってみた。
ちょうどダンジョンから帰ってきたロキ・ファミリアと対面することになり、アリアさんを見て驚愕していたロキ・ファミリアの面々。
その中からアイズ・ヴァレンシュタインだけが「お母さん!」と言いながら飛び出してきて、アリアさんに涙を流しながら抱きつく。
「大きくなったわね、アイズ」
そんなことを言っていたアリアさんは、アイズの母親だったようだ。
家族なら一緒に居た方がいいかと考えて、アリアさんはロキ・ファミリアに任せることにした俺は、フィンさんにアリアさんを発見した時の状況を説明しておき、黒竜を倒したことも報告して立ち去っておいた。
まあ、黒竜倒したらアリアさんが出てきたことには驚いたが、風の精霊であるアリアさんを取り込んでいたから、黒竜は風を使ってきたのかもしれない。
阿修羅と魔龍の宴
出典、ハイスクールD×D、敵キャラのジークフリート
銀色の龍の手が身体に生える亜種の「龍の手」、更にそれがバランスブレイクしたものこそが阿修羅と魔龍の宴
4本の龍の手が身体から生えるだけではなく、16倍にまで倍化が可能となる禁手
禁手とは神器の力を高め、ある領域に至った者が発揮する神器の最終到達点とされる現象