どうしてこんなことをしないといけないのだろう。
毎日教会へ連れて行く父さんの背中を僕はいつも不満げに見つめていた。
「いいかい。毎日祈りを捧げるんだ。主への感謝を忘れてはいけない」
それは父さんの口癖だった。こんな田舎では小さな教会しかないのに父さんは毎日祈りを捧げていた。昔、毎日何を祈っているの?と聞いたことがある。その時父さんは今日も母さんと僕が生きてくれていることに感謝しているんだよと言っていた。とても穏やかな顔をしていた。それからは僕も父さんと母さんが生きていることに感謝するようにした。けれど、そんな一言で済むはずの感謝を父さんは何分もしているから僕はいつも暇だった。だからいつしか教会に行くこと自体に不満を持っていた。
「ジャックは丈夫な身体をくださいと神様に頼んでもいいかもね」
父さんの祈りが長いから教会に行きたくないと母さんに言った時そんなことを言われた。
「神様には感謝をするって父さんが言っていたよ。頼み事をしてもいいのかな?」
「そうねえ…父さんは良い顔をしないと思うけれど母さんは良いと思うわ。神様だもの。少しくらい頼み事をしても許してくれるわよ」
母さんは大雑把な人間だった。
「もっと大きくならないとジャネットを守れないものね」
言葉に詰まった。母さんは面白そうに笑った。
「強くなるのよジャック。いつまでもジャネットに守ってもらっていてはダメよ」
母に頭を撫でられる。僕は、うんとだけ言った。丈夫な身体になりたい。すぐ息を切らせてしまうようなこんな弱い身体でなくて強い身体になりたい。そうすれば僕を虐めてくるアイツらにも勝てる。ジャネットに守ってもらわなくて済む。とても簡単な理屈だ。けれど、きっと僕がどんなに願ったところで叶わない。僕の身体の弱さは生まれつきのものだから治らない。
だからきっと一生僕はアイツらに勝てないのだろう。
「ジャック…?泣いてるの?」
「ぇ…あっ」
気がつければ涙がボロボロ零れ落ちていた。情けない。弱いこの身体が情けない。すぐに泣いてしまう自分が情けない。情けない。そう思う度に涙が零れ落ちていった。
「あらあら…もう、ジャックは」
母はぎゅっと僕を抱きしめた。
「泣かないの。いい、ジャック。身体を強くするのは難しくても心は強くなれるのよ」
「う、ぇ…っど、どうすれば、いいの…」
「まずは泣かないこと。泣き虫ジャックの汚名を返上することから始めなさい」
いいね、と母さんは言う。僕は頷かなかった。僕だって泣きたくて泣いてるんじゃない。涙が勝手に溢れてくるんだ。自分の情けなさや悔しさでいっぱいになった時、僕の意思に関係なく涙が出てしまうんだから。