仕事人、護り人になる   作:ユイトアクエリア

1 / 15
新作!




入学(潜入)

深夜、世界の人間のほとんどが寝静まる時間、一人の少年の電話が震える。

少年が電話に出ると、少し低めの声が聞こえる。

 

「わりぃカノン、また仕事だ」

 

という声とともに、メールに送られる資料の数々。

 

また、という言葉の前には、「一昨日仕事が終わったばかりなのに」という言葉が省略されている。

 

「なるほど、了解」

 

少年は資料に目を通して、そんなことは気にしないといった風に短く答える。

 

「それで理解できんのがすげぇよ、まだ送って5秒も経ってないだろ」

 

彼が目を通した資料には「護衛任務」と書かれていた。

 

「慣れれば誰だってできるよ。()()()1()0()()()()ぐらい読めるさ」

 

飄々と少年は言う。

 

「......それが異常だって言ってんだ。まあいい、頼んだぞ」

「分かった。長くなりそうだね」

「あぁ、長くなるぜ。なんせ一年だからな」

 


 

「俺のクラスは......Aか」

 

護衛対象と同じクラス。

まぁ、護衛対象と一緒じゃなきゃ守れないから、当然と言えば当然だが。

仕事内容は「1年間護りきること」。

これは最初の1ページに書いてあったもの。

あとのページは潜入......失礼、()()する学園のデータ、護衛対象のデータ、その他諸々。

敵性勢力から、一見何の罪も、特徴も、家柄もない少女を護りきるミッション。

 

俺がやることは、たったこれだけ。

そこまで難しくない仕事。

 

「入学式会場は......こっちだったな」

 

事前に送られていた封筒の中身を思い出し、一般の高校では体育館と呼ばれる場所へ足を運ぶ。

あの広さでは、「館」というより「ホール」だけれど。

 

 

さて、無事に中に入り、席に着いた。

それにしても、すごい人の数だ。

 

今年から共学になった女子学園のため、まだまだ男女比率は女子の方が圧倒的に多い。

見た感じは1:9か1.5:8.5ぐらいだろうか。

現に俺の周りには男は一人もいない。

 

まぁ、どうにでもなる。

俺は味方を作らないし、仲間や友人などと言った軽く終わるような関係は作らない主義だ。

それに、仕事が終わればそんな奴らとは永遠の別れとなるんだ、作っても意味が無い。

 

『これより、月の森学園入学式を、始めさせていただきます──』

 


 

退屈だった、何より講師の話が長すぎる。

どうしたらあんな長尺な原稿を考えられるのか。

その英知は是非とも生徒たちに分け与えるべきだと思う。

いや、まあ実際は同じようなことを間隔を開けて2,3回言ってただけなんだが。

そして今現在、俺は1-Aの教室にいる。

自己紹介から始めるようだ。

 

「では、出席番号1番から」

 

俺だ。

こういう時、名字が「あ」から始まり、次に「い」が来るものは不便だ。

何かと1番最初になることが多い。

 

「はい。合月(あいつき)カノンです。趣味は音楽鑑賞。よろしくお願いします」

 

当たり障りな自己紹介をし、軽く会釈。

カノンという名前にはちゃんと意味があり、いろんないい意味を含むのだが、それは割愛しよう。

 

カノンがなぜ片仮名かっていうのは、その方が字画占いで良い方にあるんだとか。

花音とか、樺音とかあったけど、俺は片仮名が気に入ってるし、少しかっこよく思える。

ま、そんなことはどうでもいい。

 

「は、はい。倉田(くらた)、ましろ、です。よ、よろしくお願いしますっ!」

 

彼女だ。今回のあらゆるの対象。

 

護衛する対象であり、俺が逐一気にかけていないといけない存在。

 

白髪緑目。

女子らしい身長。

どこか何かを気にするような目線と、そのしぐさ。

階級や身分を気にしない男なら、惚れるまでは行かずとも、守る対象として気に掛けるような、そんな雰囲気の生徒。

ストレートに言えば、ドジっ子と言う奴だろう、きっと。

 

そんな彼女を、一年間護り続けるのが、俺の仕事だ。

さて、これからどうなるかな。

 




さて、終わらせることが出来るか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。