「ここに帰るのは...1年ぶりか?」
目の前にそびえる城...のような、家。
この家は、俺の親代わりが住んでいる。
彼がクライアントと俺の中継を担っていて、俺に仕事が回ってくるという訳だ。
とりあえず帰るということだけは伝えたが、果たして出迎えはあるかな。
「ただいま」
家は静か。
いつものことだ。
「...
呼びかけるが、返事はない。
「んだよ、帰るって言ったのに」
出迎えもただいまの一言もなしなんて、親としてどうかと思う。
まぁ、本当の親じゃないけど。
「...ん、カノンか?帰ってたのか」
「ただいま父さん。ちゃんと帰るって連絡したよ」
「いやぁ、
「研究熱心なのは結構。ここ2か月分のレポートは送ったから見といてね」
親子としては異常な会話。
しかし、仕事人と仲介人としてみれば、何の変哲もない会話だと思う。
不思議な家庭だ。
こうして過ごすのに、何の違和感も持ってない俺も、少しだけ異質なのかもしれない。
「そういえばカノン」
「何、父さん」
1年ぶりの父との食卓、囲んでいるのは宅配ピザ。
俺も父さんも料理はからっきし、俺はちょっとだけできるけど、朝飯向きなので頼んだピザの方が夜飯って感じがしていい。
「花嫁候補は見つかったか?」
「ブフッ!!」
思わず飲んでいた炭酸を吹き出した。
「おいおい大丈夫か?」
「ゴホッ...大丈夫かじゃない!!いきなり何言いだしてるんだ!?」
第一、色恋沙汰なんて興味ないだろうに...!
「いきなりじゃあないさ。おまえにも浮いた話があれば、父さん安心してあの世に行けるんだから」
「あのなぁ...まだ25だろうが。死ぬとか言うなよ、縁起でもねぇ」
「いやぁ、失礼」
父さん、とは呼んでいるが、本物の父さんではない。
本当の両親の顔なんて覚えてないし、今いる彼は仕事上の関係で、帰れる家の提供者。
それでも、多少家族の絆なるものが結ばれてるのは確かだ。
「ご馳走様、後はカノンが食べていいぞ」
「あれいいの?まだ残ってるけど」
「父さん研究の続きがあってなぁ、明後日までにレポートをまとめなきゃいけないんだ」
「それは大変だ。俺のレポートは後ででいいよ」
「それじゃあ、たくさん食べて、明日ぐらいはゆっくりしなさい、おやすみ」
そう言って、父さんは妖しく光る部屋に姿を消した。
「おやすみ、父さん」
ゆっくりなんて、できる訳もない。
あの時の誘拐犯の『他人の空似』、倉田のことを『交渉材料』。
この二つが気になってしょうがない。
「...ご馳走様」
ピザの箱を畳み、ビニール袋にまとめて突っ込む。
手を洗って歯を磨き、あてがわれた自室のベッドに身を沈める。
「...なんで、あんな笑顔...」
目を閉じて浮かぶのは、オリエンテーション終わりの倉田の笑顔。
「あんな笑顔...何で俺なんかに...」
俺は仕事人なんだ。
感情は切り捨てろ。
そうじゃなきゃ、いつか死ぬ。
「...寝よ」
思考がまとまりきらないが、寝てる間に脳が勝手に処理してくれるだろう。
MyGO最終回良かったなぁ
Ave Mujicaだったなぁ
続編出るんだって、うれしいね