「ふぁ...」
眠い。
どうして人間は9時から1限というバカみたいなスケジュールに耐えられるのだろうか。
「合月君、ごきげんよう!」
「ん...あぁ、おは...じゃなくて、ごきげんよう、二葉」
慣れない挨拶にもちゃんと対応していく。
これが人間の学習能力という奴だ。
「合月君、クマひどいね?昨日夜更かしした?」
「あ?あー...いや、ちゃんと日付変わる前には...」
寝たことは確かなはずなのに、記憶が一切ない。
朝起きた時の状況は、スマホが充電されてて、タブレットはヘッドボードに置いてあって、勉強用のメガネはケースの中だった。
「...いや、覚えてないわ。もしかしたら寝落ちしたのかも」
「もー、健康に悪いんだからちゃんと寝ないとだめだよ?」
「気を付けるよ、学級委員殿」
「ふふーん。...って、からかわないでよ!」
「悪い悪い。早く教室行こうぜ」
人付き合いも慣れてきた。
オリエンテーションが効いてるな。
「ごきげんよー!」
「そのテンションおはようだろ絶対...ごきげんよう、怜人」
「ごきげんよう、蒼藍くん」
唯一の同性の友人に挨拶を返し、自身の席に着こうとしたところで違和感に気付いた。
「倉田は?」
この時間ならいるはずだと友人に声を掛けるが、
「や、見てないわ」
と。
「...そっか」
護衛対象が同じ場所にいなければ守れない...訳じゃないが、如何せんくっ付けたGPSも優秀ではあるが万能ではない。
「何もなきゃ、良いけど」
程なくしてチャイムが鳴り、担任が入って来た。
「はいじゃあ席に着けー、朝礼と点呼だ」
嫌な予感がする。
これが終わり次第、すぐにでも出なければいけない。
「今日は...ん、倉田はどうした?」
「え、先生聞いてないんですか?」
休みなら連絡が入る。
それがないなら...。
「これ終わったら電話するけど、今連絡取れる奴いるか?」
オリエンテーションの携帯禁止を律儀に守った結果がこれだ。
仕方ない、少し強硬手段に出よう。
「先生、俺電話してみます」
「お、頼んだ」
教室を出て、掛ける先は親。
「もしもし」
『...今日は学校ではなかったのか?』
「そうだけど緊急事態かもしれないんだ」
電話前に見たGPS反応は途絶えていた。
故障か、それ以外か。
『カノン製のやつは』
「死んでる、そっちでも追ってるんだろ」
『...残念ながら、そこに居なければいないぞ』
「は?」
そこ、つまりこの学園の中にいる。
それなのに登校してないということは?
『場所はそこと同一。高度は...上だ』
「...屋上か」
一目散に駆けだした。
階段を駆け上がって、古びた鉄製のドアを開く。
「...どこだ」
「ここだよ」
「っ!?」
後ずさった。
それはそう、後ろから音もなく声が聞こえたら誰だってビビる。
「お前は、誰だ」
「さぁ?誰でしょうね」
一定の距離を保ちながら疑問を疑問で返す。
「倉田はどこだ」
「探してごらん?ここにはいるよ」
必ず探し出す。
「...と、君は考えるだろうね」
「...は?」
「今、「倉田は俺が見つける」って考えただろう?」
「...何が言いたい?」
困惑する。
「いやいや、僕の実験はこれにて成功ってわけだ!」
「...実験?」
「そう、実験。君が僕の思い通りに動くかの実験だ」
「思い、通り」
思考した。
何を考え、何を会話し、何を行ったのか。
「気づいたかな?...いいや。頭のいい君ならば気づかなければいけないはずさ」
「まさ、か」
「そう!君の行動はすべて、僕の手のひらの上さ!監視しながら実況するの、楽しかったよ!!」
崖から飛び降りる
やっぱり楽しいなぁ。
人の思考を意のままに操る実験は。
最後まで読んだら
もういちどこの回を読んでみよう、ぞっとすると思うよ、多分。