仕事人、護り人になる   作:ユイトアクエリア

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役得

さて、無事に班決めと部屋決めが終わり、1週間が経過した。

今はと言うと、宿泊準備の荷物詰め。

いわゆるパッキング、と言う奴だ。

 

「着替えと、アメニティ、それにサブ端末......あとは小型インカムと......」

 

連絡が来るかどうかもわからないが、一応上には「林間学校のため2日間連絡困難」とは提出しておいたが、急に来るというのもありえなくはないので、一応の常備。

 

と、メインの携帯が鳴る。

 

「はい、カノンです」

『明日からか?』

 

25という歳にしては低めの声が聞こえてくる。

それに、主語がない。

この人はたまにこういうところがあるからやりづらい。

それでもついていけるだけの人望が、彼にはあるけれど。

ため息をつきながら、

 

「そう言ったはずだし、一応書類提出はしたけど」

 

と言う。

 

『悪い悪い。本人から聞くのが一番手っ取り早くてな』

 

朗らかに笑いながら話してはいるがまるで話が見えてこない。

 

「......本題は?」

 

聞くと、思い出したように言う。

 

『あぁ、そうそう。補足資料の配布だ。今すぐには確認しなくてもいい。もし出先で確認できる時間があったら確認しておいてくれ』

「了解」

 

出先で見れるかと言えば、たぶん見れないが。

 


 

翌朝。

学園に集合ということで、いつもよりだいぶ早く家を出た。

集合時間一時間前に着いたが、それでもだいぶ人は集まっているようだった。

 

「お、カノン!」

 

呼びながら寄ってくる男。

怜人だ。

 

「はよっすカノン!早いな!」

「おはよう怜人。そうでもないだろ」

 

......なんというか、初めて話す同性がこいつでよかった。

親が金持ちってことを鼻にかけてひけらかすような奴だったら護衛対象と委員長に意識を全振りしていたが、こいつであれば暇つぶしの話し相手にはなりそうだ。

 

「にしてもカノンは良いなぁ」

「何がだ?」

「バスの隣。倉田ちゃんだろ?」

 

基本的にバスは真ん中に通路があって、両側に座席が二席づつあるが、隣り合う席は同性という決まりがあった。

けどまぁ、人数が奇数であれば当然あまり1は出てくるもので。

そのあまり1に選ばれたのが、俺と彼女だったわけだ。

と、噂をすればなんとやら。

 

「お!倉田ちゃん!おはよー!」

「あ、お、おはようございます」

 

引っ込み思案なのか、それともコミュ力お化けの怜人に押されてるのか、あるいは両方、もしくはあまり人と話すのが得意じゃないか、の4択だが、きっと4番目だな。

今までの護衛対象にも、そんな人間はいた。

殆どが1番目だったけれど。

 

「はい、集合!出席確認だ」

 


 

「よし、全員いるようだな。では、これからAクラスは右のバス、Bクラスは真ん中、Cクラスは左のバスに乗れ。バスの席順は覚えているな?その通りになるよう並んでおけ」

 

俺と彼女は一番前、つまりバスでは一番後ろに座る。

彼女が窓側、俺が通路側だ。

 

「よし、全員乗ったな?では、出発するぞ」

 

爆音の後、車体が小刻みに震え、体がわずかに後ろに押される。

 

「あ、あの」

「ん?」

 

隣の彼女が話しかけてくる。

何だ、話せるんじゃないか。

 

「ごめんなさい、私、隣で」

「気にするなよ。こう言っちゃあれだけど、外部生同士、仲良くしような」

 

ネガティブ思考の女子はそう多くない。が、彼女のそれは結構重度だ。

ふとしたタイミングで起きた事故も、「私のせいで」なんて言ってしまいそうな、そんな子だと感じる。

 

と、右肩に微かな重み。

見ると、少しうとうとしているようだ。

 

俺が見ていることに気付くと、はっとした顔をして、

 

「あ、ご、ごめんなさい......勝手に、肩」

 

と言った。

 

「眠いなら寝てるといいよ。窓は固いだろうし俺の肩使ってていいから」

「い、良いんですか......?」

 

なぜ同級生相手に敬語なのか。

距離感を測りかねているのか?

まぁ、何でもいいか。

緊張状態でリラックスできないのは、何事にもリスクにつながる。

 

「着いたら起こすよ。おやすみ」

 

言うと、不安そうに、けれど少し安心したような顔で、目を閉じた。

肩に重みが加わり、そちらを見てみると、穏やかな寝顔をしていた。

 

「(俺がもし、普通の男子生徒だったら)」

 

そう思わすには、十分な顔だった。

 


 

時は同じく、謎の場所。

黒づくめの集団が会合していた。

 

「なに!?やつが動き出しただと!?」

「はい......」

「情報は確かなのか!?」

「これを......」

 

部下が差し出した紙をひったくり、舐めるように見渡す。

 

「ふん、まぁいい。あいつのネガデータを回収するのだ」

「了解!!」

 

返事と同時に部下は部屋を出て行った。

一人になった部屋で、男は呟く。

 

「あいつのネガデータで、私はついに......!」

 

 

 

 

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