夜、何かの音を聞いて目が覚めた。
同室の二人は寝ている。
気のせいかと思い、再び目を閉じたところで、サブのインカムに連絡が入る。
『起きているな、心拍数で分かるぞ』
「...短めにしてくれ、同室は寝てるからな」
連絡はいつもの通り仕事を持ってくる俺の親代わり。
『保護対象がピンチだ』
「...っ!」
急いで彼女のカバンに仕込んでいた盗聴器のイヤホンを耳に突っ込む。
『...』
何も聞こえない。
ーーいや。
「喋れないの間違いか...!?」
『ご名答。すぐに救出に行く』
「わかった」
極力静かに着替え、音を出さずに部屋を出て行く。
『急げ、ここで取れなきゃもう次はないぞ』
「...っ」
保護対象がいながら寝れるなんて思っていた俺が間違いだった。
これまでで学んだはずだったのに。
宿のロビーを見て誰もいないことを確認し、ひっそりと出る。
学園にいないと守れないのは大前提だが、生徒が一人いなくなるのは痛手だろうし、多少のルール違反は見逃してもらおう。
『よし、外に出れたな』
気配のする方に進んでいく。
『そこの木陰で止まれ』
「...は、ぁ...」
武器もなく、生身のままで止められるのか。
いや違う、出来る出来ないじゃない、止めなきゃいけないんだ。
『前方100m先、見えるか』
「あぁ、黒服集団がなんか運んでる」
『ターゲットはその中だ』
「...箱のまま回収すれば、それでいいのか」
バッグごと放り込まれたのか。
それにしても。
「何をしようってんだ、あいつら」
『わからないが、取り返す方が先決だな』
言い切ったと同時に木陰から飛び出す。
箱を運搬してるのは4人。
そのうちの一人に近づき、耳元で囁く。
「止まれ」
そいつは体を止めた。
その隙に他の3人の無力化を敢行する。
「おい、どうした突然止まっーー」
「静かに箱を降ろせ、誰かいるぞ」
しくじった。
声をかけた奴しか無力化できなかった。
『そこで大人しくしてろ、俺の部隊がやる』
「...了解」
何とか誰にもバレずに倉田を部屋まで届け、俺も自分の部屋に戻ってきて。
翌日、朝。
詳細は伏せられていたが、拉致事件で話は持ちきりだった。
「なぁカノン、聞いたか?うちの生徒が拉致られかけたって」
「...あぁ、言ってたな」
その事件に立ち会ったのは俺なんだけどな。
で、その事件があって今日の予定は全てキャンセル、一日宿内で過ごすこととなった。
...セキュリティも甘ければ、対策もなしか。
とっとと学園に帰ったほうが安全じゃないか?
「何目的なんだろな、怖いわ」
「...身代金とかじゃないか?この学校、金持ち多いんだろ」
しかし攫ったのは外部生、あいにくと身代金ではないだろう。
では、何が目的だ?
何故あいつらは倉田だけを攫った?
同室には内部生もいただろう、なぜだ?
もしかすると、金目的ではない?
「カノン?どうした?」
「あぁ、いや...何でもない」
「心配か、倉田ちゃんのこと」
「...っ、知ってるのか」
驚いた、怜人は事件の概要を誰かから聞いたみたいだ。
「まぁ、なんとなくだけどな」
「...それ、口外するなよ」
なんにせよ、一層守りを固める必要があるみたいだ。
上に申請して、いっそ警備軍隊とか雇った方が良いんじゃないか。
「いや、それは」
それはだめだ。
俺の仕事なんだ。
俺が、きちんとしなければ。