二葉と別れ、自分にあてがわれた部屋に戻る間にも、俺は考えていた。
「...どうしようか...」
二葉にバレて、たぶん倉田を攫うように仕向けた犯人もわかってしまった。
どうしたらいいんだろうか。
「...かと言って、お前が犯人だろとは言えないし...」
仕事人としてのキャリアはあれど、そこと年齢相応のメンタルは反比例している。
俺には、ここまで育った経歴の記憶が一部消えている。
それもあってか、年齢相応の行動以下しかできない。
「どうしたら...」
悩んでいる間にも、あの教師は何か事を進めている。
どうにかしなければいけないけど、一体何をすればいい?
倉田の部屋に行って、「お前は狙われてる」とでも言えばいいか?
そんな怪しさ満点の忠告なんて、聞いてもらえないに決まってる。
そもそも前回の拉致未遂ですらわかってなかったんだ、今回だって同じ手を使うに決まってる。
「くそッ...」
何の権限も持たず、ただ護衛の真似事をしている俺が憎い。
結局俺は、現地にいる人間ってだけで、別段何ができる訳でもないのだ。
追跡技術も、追い詰める術も、上の人間が全部持ってる。
「はぁ...」
「お、カノンおかえり」
「あぁ...ただいま...」
丁度部屋を出て行く怜人とすれ違うようにして、俺は部屋に入る。
そのまま寝転んだ後、俺は意識を落とした。
「もう少しでデータを手に入れるための鍵がそろったのに...おや?」
部屋に入った男は、部屋の端で眠りこけている男を見て、口角を吊り上げる。
「ダメじゃないかァ...ちゃんと護衛しなきゃさァ...」
男はポケットから注射器を取り出した。
中身は筋弛緩剤。
「さて、暴れてくれるなよ...すぐに楽になるからな...」
注射器を男の右腕、関節に見える血管に刺し...
「...なに?」
注射針が入らない。
そんな訳はないのに、先端1㎜しか入らない。
「...どういうことだ?」
針の先端が曲がっている。
「...まさか、こいつ...?」
「しばらく姿を見ねえと思ったら、何してんだ?」
「...っ」
男が目を覚ましたと同時に、注射器を持った男は窓から飛び降りた。
「...変なもの打とうとしたな...なんでやめたんだ...?」
『...起きているか』
「あぁ、昼寝しすぎて目パチパチだよ」
『ならば、外に出れる準備をしておけ』
「...了解」
位置情報は動いていない。
「...?何か、いる...?」
感じたと同時に外に飛び出した。
悠長に部屋から出ていたら間に合わないと思ったから、窓から飛び出た。
「...っ、てて...」
2階からとはいえ少し堪える。
受け身で衝撃は逃がしたけど、受けきれない痛みは我慢する。
『補足した。2時方向50m先』
「追いつけるな、間に合って良かった」
近づいてくるのか、遠ざかっているのか確かめるため、いったん止まる。
複数の足跡がこちらに向かってくる。
「また、同じ手法か...!」
箱を担いだ4人組。
石を投げて注意を向ける。
「...誰かいるぞ」
「辺りを捜索しろ。見つけ次第殺せ」
「了解」
近づいてくる。
2人が、一緒に。
「...」
例え、俺が現地にいるだけの者でも。
俺には、ちゃんと戦えるだけの力があると信じて。
「...のわっ!」
「なんだ!?おいどうした!」
まず一人。
「おい!返事を...ぐあっ!」
もう一人。
『1人が部屋に入っていった』
「こっちは2人片付けた。2人なら箱は持てないはずだ」
『さすがだ。援護は必要か?』
「...少しくれ。増援でも来たら厄介だ」
『了解した』
今の俺にできるのは、自分の力量を見誤らないこと。
今の自分ができる最大限のことを常に意識する。
結局上が片付けられるほどの戦力を持っているなら、現地勢の俺がすることは、可能なまでの無力化だけのだから。
『降りてくるぞ』
「...っ!」
正直に入ってきたところから出てきてくれた。
意外にも、お嬢様だっこと呼ばれる奴で出てきた。
もっとこう、肩に担いでくると思ってたけど。
出てきた男は、周りを見て、
「...これは?」
と、箱の番をしていた男に聞いた。
バレないように聞き耳を立てる。
「分かりません。姿が全く見えず...」
「ふん。まぁいい。これで交渉材料はそろった。あとは彼に頼みに行くだけだ」
交渉?
いや、考えるのは後ででいい。
今は倉田が最優先だ。
「2人では少し堪えるが、まぁ運べんことはない。それに傷をつけるなよ。大事な素材だ」
「はっ」
2人が箱に倉田を入れ、手をかけた瞬間に飛び出す。
「なんだ貴様!」
「護衛だ。箱の中身を取り返しに来た」
「できると、思うかァ!!」
箱の番の男が殴りかかってくる。
どうしてこんな任務に駆り出されたのか不思議なほど、彼の殴りは雑だった。
向かってくる拳はスローに見える。
それを掴んで後方に投げてやれば、簡単に無力化できた。
「...貴様」
「なんだ?降参する気になったか?」
「...いや、他人の空似だ、気にするな。箱は好きにするといい」
「ご親切にどうも」
箱を開け、倉田が無事であることに安堵。
周りを見て、誰も見てないのを確認してから、倉田の部屋に彼女を置いて、俺は自室に戻る。
「...やはり、あいつが...?」
箱を明け渡した男は、胸元のポケットから一枚の写真を取り出した。
「...空似にしては...いや、それならば、もうすでにこんなにも進歩が進んで...?」
迷走気味なこの時期
中弛みしがちなこのくらいの話数
頑張ります
では、次回もどうぞよろしく
あ、サブタイを2文字で統一しました