転生してもメガネで冴えない小デブなのでヤケクソ   作:リデルJr.

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ストックと文字数の概念は母の胎内に置いてきた。
そんな我に残ったのは剣への揺るぎない好奇心のみ。


斯くして、青年は青春を物語る
ヤケクソ1


 転生したという自覚を得て早15年。いよいよ翌日に迫る高校入学をドキドキ(心不全の予兆)しながら床に就く。高校こそはキラピカ☆な青春を送れればいいなぁ……。

 

 

 

 まるで走馬灯のように前世から今世にかけての人生を夢の中で駆け巡る。前世は一生を通して冴えないポッチャリ君で、運動も勉強も苦手な学生時代から無理くり時間を捻出して過労死した社会人時代まで。今世も冴えないポッチャリ君という客観的評価を覆すことなく、教室の端で静かに読書をするだけのボッチな中学生時代までを一気に振り返った。

 

 

 

 目を覚ますとまだ6時前で、登校時間までに余裕があった。それにしても嫌な夢を見たのか、全身寝汗でビッショリだった。このままシャワーを浴びても良いのだが、どうせならとジョギングの用意をする。帰ったら風呂に入ろう! 

 

 全身を黄緑色のジャージで包み、耳にイヤホンを嵌めた小デブが出来上がった。小さな一重瞼の目を隠す四角いレンズは今日もキラリと光を反射し、準備は万端。デブ特有の足元の蒸れを緩和する為に日常使いしているランニングシューズを履き、玄関を出る。

 

 たったかたったかとリズミカルに足を動かしながら住宅街を抜け、千葉県民なら皆大好きサイゼの角を曲がると大通りに出る。歩道に沿うように歩きながら、それなりの交通量を誇る車道を見た。すると、まだ朝も明けたばかりであるにも関わらず、運転手は一様に疲れ切った顔をしながらも死んだ目で運転している。「日本の未来は暗いぜよ、往生すべしブラック経営陣ども」と心の中に住むリトル坂本龍馬と前世の未練が叫びを上げている。やっぱり労働はクソだわ。

 

 高校入学当日の朝という清々しい朝には不似合いな不労所得で生きていく方法について考えながらジョギングを終えた。家に帰ると早速風呂で汗を流し、今世のお母さんが用意してくれた朝食を一緒に食べる。……流石に小デブでも朝から豚カツはきついよ、お母さん。

 

 

 

 7時30分。学校まで10分強で着くと考えればまだまだ余裕はあり過ぎるぐらいだが、初日ということも考慮に入れると、今日ぐらいは気合を入れて早めに家を出ても良いだろう。ちょっと大きめのサイズで購入した制服を身につけ再び玄関を潜る。

 

 黒を基調に白のラインを入れた制服はまるで仮面ライダーΔのようだと、今世でも通じる仮面ライダーネタを誰に振るでもなく胸中で処理し、ジョギングでも通った大通りに出る。

 

 歩道は右側通行が一般的だが、先程と違い目的地である学校が左手にあるので左側の歩道を悠々と歩く。すると道半ばで正面から犬の散歩をしている少女が現れた。げっ、犬アレルギーなんだよなぁ……。

 

 ポケモンの戦闘BGMを脳内再生しながら、野生の飼い犬(矛盾ポケモン・Lv.5)から逃げるコマンドを選択する。犬は少女の持つリードから逃れ、内心ビクビクな小デブに走り寄って来た。残念、回り込まれてしまった! 逃げられない! 

 

 目の前で犬が舌を出しハァハァしてるのを見ながら誰か助けてくれと神に祈る。人任せなのに神頼みとは、これいかに。少女が「待って〜、サブレ〜!」と声を上げながら目の前にやって来た。

 

 もうどうにもならぬと思考を放棄し周りに目を向けると、黒塗りの高級外車と自転車に乗った男の子、パジャマ姿で犬の散歩をしている女の子、そして小デブ。

 

 何故かスローを超えて一時停止レベルに認識速度と灰色に彩度を落とした世界で、目も体も全く動かせない中なんとか意識だけを動かして現状を確認した。車に貼られたスモークからうっすら覗く光景には同じ高校の制服を着た女の子。自転車に乗ってる男の子も同じ制服。パジャマのままだが目の前にやってきた同年代ぐらいの女の子。揃いも揃って美男美女で、場違いの小デブを除けば、周囲にそれ以外の人間が1人たりとも存在していない奇跡的な光景に巡り合った。あと犬。なんだかラブコメの導入シーンに遭遇したような気分だ。……あ、戻った。

 

 

 

 サブレ〜、というサブ郎の亜種のようなワンコを、ようやく追いついたパジャマの女の子が抱き上げ、苦笑いしながら会釈をして来た。どう反応すればいいのか分からないが、とりあえず軽く頭を下げておく。その後素早く犬と女の子を躱し学校への道を再び歩こうとした瞬間、「もう帰るよ、サブレ〜」という女の子の声が聞こえた。なので、小デブなりの早足でそそくさと小道を曲がり、その場から立ち去った。




剣関係ないじゃん。
サイテー!
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