氷の君へ   作:ナーク

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熱い氷が凍った日2

 

 あの氷の日。俺の視界が君の氷で染まった日。

 

 自分はなんて無力なんだと感じた。

 

 空から奇妙な六面体が降ってきて、君の愛した、白銀の幻想に包まれた美しい都は、冷たい真っ赤に覆われていた。

 

 この場所では滅多に感じることのない不気味な()

 

 体の中を満たして行く経験したことのない()

 

 白と蒼を、黒と紅に犯して行く(六面体)

 

 その全てが、僕の愛した君との白銀を、漆黒の現実へと塗り替えていった。

 

 俺は変わり果てたいつもの幻想から顔を上げた。

 

 居るはずなんだ、この惨状を作り上げた、君から温かい氷を奪った元凶(アイツ)が。

 

 

 

いた

 

 

 忌々しいまでの存在が、今直ぐ喉元を噛みちぎり、握りつぶしてやりたい程の元凶が、無情にも輝く、君が俺にお気に入りだと微笑みながら話してくれた、俺の星(命の星座)の下で、佇んでいた。

 

 まるでここが、己の思考にも存在する価値のない物だと言わんばかりの態度で、ただ目的のついでにそこにあったゴミを、ゴミ箱へ投げ捨てるかのような表情で。

 

 元凶は存在している。

 

 元凶の視線が徐に俺へと進んだ。そして、その精巧な作りの顔面を変形させた。力無き者を憐れむかのような、しかし、そんなもの(感情)は一切含まないであろう冷笑へと。

 

 そしてその精巧から音が放たれる。

 

「この世界には、均衡を保たねばならない力がある。どんなに矮小なものでも、どんなに雄大なものでもそれは変わらない。そう、神でも等しくそれは働かなければならない。」

 

 今度はその精巧から出る冷笑が、感情のない能面へと変形される。

 

「しかし、その女はこの均衡を乱した、愚かにもこの世界を狂わせた。本来あるべき形が崩れたのだ。だから私が戻した。正しく整った箱庭へと。」

 

 そうだった。元凶はこういう奴だった。

 

 どうして今まで忘れていたんだろう。君の笑顔が当たり前ではないことに…、普通の幸せが永遠に続くなんて事は無い…、だって、元凶が俺を呼び寄せたのは、君を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此方こそ、こんにちは。お嬢さんと…、お嬢さん?」

 

 七天神像のある小島から放たれた音は、その顔に似合わず優しく、温かみを感じられる声だった。そのことに少し驚いていると、隣のガイド(パイモン)は違ったらしい…。

 

「なんで蛍に対してはお嬢さんって言い切ったのに、オイラに対しては疑問形なんだよ!」

 

 どうやら不満らしい。それを聞いた彼は少し目を開いて驚いた後、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べた。

 

「済まない。隣の彼女は一目で女性だと分かったのだが、君のようなマスコ…可愛らしい方とはお会いしたことがなかったもので…、どうかお許し願いたい。」

 

 とても綺麗な話し方だ。しかし今何か言いかけたぞ彼。

 

 まあ、そんな彼の言葉に引っ掛かりを持ったのは、案の定私だけで、隣で浮かぶ可愛らしい方(パイモン)

 

「へへっ、可愛らしいか…。ンッン、それなら仕方ないな。許してやるぜ!オイラはパイモン!宜しくな!」

 

 見事に聞こえていなかった。しかし、2ヶ月間行動を共にしているが、大丈夫だろうかこの子は。悪い人に直ぐ騙されそうで、少し不安になる。

 

「そしてオイラの隣にいるのは蛍。オイラと共にこのテイワットを冒険してるんだ!」

 

 おっと、考え込んでいる間に、話が進んでしまった。

 

「宜しく。」

 

 挨拶を口にする。しかし慌てたせいだろう、返事が淡白になってしまった。

 

 変に受け取っていなければいいのだが…。

 

「此方こそ宜しく。俺の名前はクライオだ。」

 

 良かった。問題なかったみたいだ。そう言って(クライオ)は、右手を此方に差し出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、君たちは離れ離れになってしまったお兄さんを探すためにここに来たのか。確かにパイモンの言う通り、モンドは吟遊詩人が多いからね。蛍のお兄さんがモンドに何かを残していたのなら、手掛かりが見つかるかもしれないね。」

 

 私達は互いの事を話し合いながら、モンドの中心にある城へと足を進めていた。

 

「そうだろ!クライオはオイラの考えをよく分かってるじゃないか!最初は冷たそうな奴だと思ったけど、優しいなお前〜」

 

 ご機嫌だな、このガイドさん。普段から少ない私の口数が更に減っていく。クライオはパイモンにとって凄く話しやすいのだろう。

 

 まあ確かに最初のクライオの顔は冷たそうに感じた。こうして話をしていると、その声の通り優しい雰囲気が伝わってくるが。

 

 だけどどうしてだろうか?クライオが私の顔を見た時驚いていたような…。

 

 そんな事を考えている私に対して、クライオが覗き込むようにして話しかけて来る。

 

「ははっ、よく勘違いされるんだ…初対面の人には特にね。しかし驚いたよ。蛍がテイワットの人間じゃなくて、しかも七天神像に触れただけで、風元素の力を扱えるようになるなんて。」

 

 そうだった。先程の可愛らしい挨拶が終わった後に、パイモンに言われて七天神像に触れたら、不思議な力が体に流れ込んでくる感覚があった。

 

 その後のモンスターとの戦闘で、この力がモンドの神の元素、《風元素》の力だと分かった。

 

 使い方を少し誤って、パイモンが巻き込まれかけたのは目を瞑ってほしい。クライオがパイモンを掴んでくれたお陰で助かった。

 

「私もビックリしたよ。いきなりこんな力が使えるようになるなんて思わなかったから。」

 

 不思議な体験だった。初めての筈なのに、元素の力が自分の体に馴染んでいるような感覚を覚えたから。

 

「だけど良かったと思うぞ。この世界の元素は蛍の祈りに応えた。オイラはいい兆しだと思うぞ!」

 

 パイモンは嬉しそうに私とクライオの周りを飛んでいる。彼女は本当に嬉しそうに喜ぶから、此方まで温かい気持ちになる。

 

 しかし、ふと思い出したかのように、その動きを止めて、クライオに話しかけた。

 

「そういえば、蛍の事でいっぱいだったけど、クライオはなんであの七天神像の場所にいたんだ?」

 

 そうだ、パイモンがいっぱい話すから触れていなかったけど、クライオの事を全く聞いていなかった。

 

 するとクライオは少し困った顔を作り、短い時間考え込んだ後、話し出した。

 

「あぁ…そうだね、俺のことを話していなかったね。俺があの七天神像の場所に居たのはーー」

 

 

 

 風が変わった……その時

 

 

 

 

Grrrrrrrrrrrrr!!!!

 

 

 

 

 途轍もなく大きな、地面を破るかのような咆哮がこの森一帯に響き渡った。そして突然、辺りが暗くなった。

 

「上だ!」

 

 クライオの声をなぞるように、顔を上空へと向けると、巨大なドラゴンがその六つの翼をうならせて、荒々しく空を、その巨体に見合う鋭利な爪で掴むように飛んでいた。

 

「なんだよあのデカいドラゴンは!」

 

 あの荘厳な空の支配者と比べるまでもない非常食スケールのガイド(パイモン)がその小さな体を震わせている。

 

 そんなパイモンを気に掛けながらも、私はあのドラゴンに不思議な感覚を覚えた。まるで先程、七天神像に触れて得たこの(風元素)のような…。

 

「行こう!」

 

 私の体はその言葉を口にすると同時に、あのドラゴンが向かった森の中へ動き出していた。




作者の中での主人公(弊ワットでは蛍)は毒舌キャラで固まっています。
あの食いしん坊に向ける呆れたような目が原因です。
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