氷の君へ   作:ナーク

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クライオ、ギリシャ語で氷…安直ですね。


熱い氷が凍った日3

 

 

 

 

 

 

アイツが空から消えた。

 

 

 

 

 

 「作業は終わりだ」と、その精巧から音を吐き、いつもとは違う紅を混ぜた夜を背に、一度俺の前にある()を視界に捉え、去っていった。

 

 残ったものは、変わり果てた白銀の幻想と、冷たさを取り戻しつつあるこの夜と、そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー!」

 

 君の元へ駆け出す。

 

 君の名を喉が血を吐く程、叫びながら。

 

 今までその身に起こった出来事を表すかのような、獣に裂かれたかのようにボロボロになった外套を纏って、赤を吐き出す体を動かし…、ただひたすら君の元へ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君の氷が俺を阻む。いつも感じていた冷たくも温かい氷が、今はただ、憎かった。

 

 厚く、高く、広範囲に広がる()。その後ろは、明らかにアイツからの被害は少なく見えた。守ったんだ…。

 

「畜生っ」

 

 破壊していく。もうこの壁には役目がないから。君の宝物は、この壁が守ってくれたから。だから早く君のところへ…。

 

 突き出す拳の皮膚が裂け、肉が露出し、骨が砕けていく。それでも止まってなんかいられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっとの思いで君の元へ辿り着いた。

 

 その時の俺の体は身に纏っているものと、いい勝負だった。

 

 しかしそんなものは俺の思考には介入する余地もない。

 

 君から氷を感じない…、君から光を感じない…、君から熱を感じない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遅かった。

 

 深淵から湧き出る怨念が、その身を蝕む業障が、都に接近しているとあり、享受する日常の為、いつもの様に戦いに出た。

 

 大丈夫だと思った。君だから。民を守る力を持ち、それに溺れる事なく、博愛の元、それを払うことのできる君だから。

 

 大丈夫だと思っていた。君だから。自身という確固たる芯を持ち、ただひたすらに、彼方の敵を屠り続けてきた君だから。

 

 大丈夫だと思ってしまった。君だから。いつも遠く力の及ばない俺を探して、微笑みと共にその優しい手を差し出してくれた君だから。

 

 

 

 

 

 だけど、忘れていた(死ねよ)。例え他人よりも強い力を持っていたとしても、強い信念を携えていたとしても、俺の手を引きながら「君もまだまだだなぁ」と寄り添ってくれたとしても…

 

 

 

 

 

 忘れていたんだ(死んでくれよ)。君はただ自分の大切なものを護りたいだけの、風花*1の似合う、ただの優しい女の子だったと言う事を…。

 

 

 

 

 

「死んでくれ…。クライオ(クソ野郎)…」

 

 

 

 

 

 俺の世界から色が消えていった。

 

 体がエラーをようやく感じとったのか、その場に膝から崩れ落ちる。

 

 半端に溶けた雪と、崩壊し塵へと変わった何かが、失った者へと纏わり付く。

 

 この悪夢が現実であると突き立てて来るように、

 

 守れなかったという自責を駆り立てるように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…あぁ、あアァ、アぁあ!、アァぁ!アアァ!、アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その場に存在するのは、地へと倒れながら、護りきれなかった夜空へと声を荒げ、あたかもこの世ならざるバケモノへと変わり果てようとする、真っ黒な男の子と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バケモノが愛した、物言わぬ、雪色の女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こう!」

 

 私達は森の中を走る。

 

 今さっき見たドラゴンは、この先の少しひらけた場所に降り立ったようだ。

 

 森の足場にある程度慣れた頃、ようやくあのドラゴンへと追いつくことができた。

 

「あっ、おい見ろよアレ!」

 

 いた。パイモンが声を出して指差す方向に、目的の存在が佇んでいる。

 

「しっ。蛍、パイモンこっちに」

 

 クライオがパイモンに注意を呼びかけると同時に、私達を丁度ドラゴンからは見えない、木の影へと案内する。

 

 木の幹に背中を預け、恐る恐る先の光景を確認すると、そこにはドラゴンと共に、ドラゴンに相対する人影があった。

 

 遠目では、はっきりとは確認できないが、全体的に緑を多く纏った服に、暗い髪色の上に帽子を置いている。

 

 そんな彼?彼女?がドラゴンと対話を試みていた。

 

 「怖がらないで…安 し 、僕は  て  よ…。」

 

 (何かをドラゴンと話している?)

 

 不思議とその光景を視界にとらえて感じたのは、謎の人物とドラゴンとの会話だった。それは、相棒(パイモン)も同じだったようで…。

 

「アイツ…、ドラゴンと会話してる?」

 

 小さく言葉を並べた。

 

 するとパイモンの反対からは「あぁ。」と言う同意の声が返ってきた。

 

 そちらを振り向くと、クライオも驚いた様子で先の光景をその目に捉えている。

 

 んっ?しかし、なんだ?

 

 クライオの視線は、その存在感を大いに放つ六翼のドラゴンではなく、その前にいる、かの人物へと向けられているように見てとれる。

 

 そんな事を考えていると突然、自身の内側から先程ドラゴンを初めて見た時に体験した、不思議な感覚が湧いて出た。

 

 それと同時に風元素が胸から漏れ出るように出現した。

 

 

 

 

 

 

直感した。ヤバい、バレた…。

 

 

 

 

 

 視線を向けると案の定、ドラゴンが此方を視界に収めている。

 

 すると、その顎門(あぎと)が縦に大きく開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

Grrrrrrrrrrrrr!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 空間を切り裂く様な圧と共に、力を存分に知らしめす咆哮が放たれる。

 

 後ろに押される感覚を味わいながら、腕を顔を前に交わる様に掲げて耐える。

 

 すると、その場で苦しみを思い出したかの様に暴れ出したドラゴンが自身の目の前にいる人影に襲いかかる。

 

 それをその者は、飛ぶ様に後ろへと避けながら

 

「誰⁈___えっ」

 

 此方に避難する様な目を向けて、声を発した。

 

 しかしその顔が、何か不思議なものを見た様な、驚きの顔を作り出した。

 

「君はっ!」

 

 

 

Grrrrrrrrrrrrr!!!!

 

 

 

 だが、暴君と化した六翼の竜は待ってくれない。

 

 再び襲いかかろうと、その巨大な爪を目の前の人影に振り下ろそうとした瞬間、その者は、逃れるように光となって姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ビックリした。なんだったのさっきのは、しかもこの世界ってドラゴンが居るんだぁ。あっ、パイモン大丈夫っ⁉︎」

 

 あの後、ドラゴンは何処かへと飛び立っていった。少し状況が飲み込めずにいたが、何とか落ち着きを取り戻せた。

 

 (あっ!家の子(パイモン)はどうなったの⁉︎)

 

 アップダウンが激しい心情のまま、私の隣にいた相棒(パイモン)の安否を確認する為振り向く。

 

 「うぇ〜、ビックリしたぜぇ〜。なんだったんだ今の〜。」

 

 浮かんでいた為大きく煽られたのか、少し酔った様な状態でクライオの腕の中にがっしりと収まっているパイモン。

 

 良かった。パイモンもクライオも怪我という怪我はしていないみたいだ。しかし流石相棒…、私と同じ反応だ。

 

「パイモンは大丈夫だよ。蛍は大丈夫?怪我とかはしていないかい?」

 

 クライオが不安げな顔をして、此方に話しかけて来る。

 

「うん、大丈夫。どこも怪我はしてないよ。心配してくれてありがとう。」

 

 彼の心配を晴らすかの様に、体を広げて無事だという事をアピールする。感謝の意を伝えることも忘れない。

 

「そうか、良かった。じゃあ取り敢えず落ち着けるまで休もう。ドラゴンを見つけてから今まで動き続けていたし、パイモンもまだ少しフラフラしているから。」

 

 クライオの提案に乗ろう。今になって少し疲れが出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはありがとな、クライオ!お陰でオイラ飛ばされずに済んだぜ!」

 

 相棒が回復したみたいだ。凄く嬉しそうにクライオへお礼をしている。

 

「ふふっ、どういたしまして。体調は良くなったみたいだね。蛍も、少しでも休めたかい?」

 

「うん、ちゃんと休めたよ。さっきまでの疲れもある程度取れたから、問題ないよ。」

 

 クライオの声が私を向いたので、返事を返す。

 

 お陰様で、落ち着けたことによって、さっきまでの緊張からくる疲れは消えたみたいだ。

 

 すると空を浮く相棒(パイモン)

 

「良かったな蛍!オイラも安心したぜ!しかし…、あれって…。」

 

 

 

 うん、ずっと視界にあった。だけど少し不気味な雰囲気があったから、敢えて触れないでいたんだ。

 

 だけど仕様がない、あれをずっとそのままにしておく方がこの先危ないだろう。

 

 私達は休憩場所からやおら立ち上がり、不気味の元へ歩き出した。

 

 

 

 

 

「なんだこの石、見たことないぞ?」

 

 それは雫の形をした、血の様に赤い石?だった。

 

「取り敢えず、危険な物であることは間違い無いだろうね。」

 

 クライオの言う通り、危険な感じがする。しかし、触る分には問題ないみたいだ。

 

 置いておくわけにもいかないので、血の雫を回収する。

 

「よし!回収できたな。取り敢えずは大丈夫そうだ!だけど蛍。何かあったら直ぐにオイラに言うんだぞ!」

 

 パイモンの言葉に頷きで返事を返し、この森を後にしようと歩き出す。

 

 しかし、彼は何かを考えているのか、その場から動かなかった。

 

「おいクライオ!回収も出来たし、モンド城に急ごうぜ〜!」

 

 パイモンがクライオに声を掛ける。するとクライオは考えていた態度をやめて、此方を向くと、己の思考を私達に提示してきた。

 

「いや、俺はさっきのドラゴンが飛んでいった方へ行ってみるよ。少し気になることがあるんだ。」

 

 その考えに我が相棒様(パイモン)

 

「えぇ〜、一緒に行かないのか〜。それに気になることってなんだよ!」

 

 不満らしい。

 

 それに対して、クライオは微苦笑を浮かべながら会話を続ける。

 

「ごめん。俺の中でもハッキリとはしていなくて、伝えることができるだけの考えが、まだ纏まってはいないんだ。」

 

 ガイドさん(パイモン)は…

 

「むぅ〜…」

 

 やはり不満らしい。しかしこのままにするにも行かない。

 

 私は、パイモンに声を掛けてこの話を進めようとした。

 

「パイモン、仕方がないでしょ。クライオにはクライオの考えがあるんだし、私達の旅に付いてきてくれるって訳じゃないんだから。」

 

 少しの間、顔に皺を寄せながら考えたパイモンは、地団駄を踏む様にして、決心を述べる。

 

「むぅ〜…、あぁもう分かったよ!クライオと一緒に行けば楽しい旅になると思ったけど、無理強いはできないもんな。」

 

 折れたようだ。しかし、パイモンは本当にクライオが気に入ったんだなぁ。優しいからかな?

 

 まあ確かに、クライオの近くは落ち着く感覚がある。そう言う意味だと、私もパイモンと同じく、クライオを気に入っている。

 

「ありがとう、ごめんね。でも、この先会えない訳じゃないんだ、また何処かで会えたら、その時は一緒に冒険をしよう。」

 

 そうだ、ここでは別れるけど、今度会ったら、色んな出来事を話しながら、美味しいご飯でも一緒に食べよう。

 

「そうだな。今度会った時な!」

 

 相棒が嬉しそうに笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またなぁ〜!クライオ〜!」

 

 私達は大きく手を振ってクライオと行動を別にした。

 

「あぁ!蛍とパイモンもまたねぇ!君達の旅が良いものになる事を祈っているよ!」

 

 そう言ってクライオは丘の向こうに姿を消していった。

 

 

 

 

「行っちゃったね。」「行っちゃったな。」

 

 

 

 さあ、切り替えていこう。

 

 

 

 

目指すべきは風が詠い、人の想いを運ぶ国。

 

 

 

モンドだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!あんた、待ちなさい!」

 

 あぁもう、今度は何⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「血の雫…、トワリン…、アビスの呪い…、風神バルバトス…、四風守護…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、以前彼が進めていたものだな、確かラグヴィンド家と言うのが関わっていたな。

 

 フッ、『闇夜の英雄』か…、まあいい、此方の計画は彼女に任せるとしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、まさか彼女に出逢うとは、まだまだ目覚めたばかりだが…、それは問題ではないだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君が旅の終点に辿り着くのを待っているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その者の腰には

 

 

 

 

 

雪色の瞳が

 

 

 

 

 

*1
晴天のなか、花が舞うようにパラパラと降る雪




こうして執筆していると、改めて原神の素晴らしさを実感することができますね。

パイモンが可愛い。
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