だからきくりさんを甘やかすキャラが書きたかった。
少し古びたアパートの階段をギシギシいわせながらのぼって1番奥の部屋のドアを開ける。開けるとすぐに強いアルコールの匂いがする。
取り敢えず帰りのスーパーで買った食材や日用品を冷蔵庫や棚に入れて、一息ついたらある人を起こす。
「きくりさん、もう夕方ですよ?起きてくださ〜い!今日はライブあるんでしょ?遅刻したらまた岩下さんに怒られちゃいますよ。」
「んぁ、まひろちゃん?もう朝?」
昨日も沢山飲んで帰ってきたので記憶が曖昧な様です。一応朝布団をかけておいたのに布団は今、部屋の隅に追いやられています。洗ったばっかなのに......もぅ。
「違いますよ〜。もう学校から帰ってきたところです。ご飯作っておいたのにまた食べないで寝て!ちゃんと食べないと体に良くないですよ?ただでさえお酒をたくさん飲んでるのに」
「えへへぇ〜、ごめんねぇ?ご飯は今食べるからさ。そういえば今日は入学式だったんだよね?どうだった?」
「自己紹介の時にクラス中の人に驚いた目で見られました。不本意です。」
「まぁまぁ、初めての人はびっくりするのもしょうがないよ。まひろちゃんはとっても可愛いしね!」
「か、可愛くなんてありません!普通です。フツー!」
「もー照れちゃってかわいいな〜」
きくりさんは大抵酔っ払っていつもへらへらして居ます。酔いが醒めると思考がネガティブになってしまうから常に酔っ払って幸せスパイラルをすているらしいです。
飲み過ぎは体に良くないので過剰に飲むのをやめて欲しいと頼んだ時少し我慢した後に大変なことになってしまったのでお酒の制限はなしになりました。
最近は朝イチに青魚を食べさせてお気に入りの上着にナッツやチーズのお菓子を入れたりきくりさんのお友達に協力してもらってお酒を飲む時に肝臓にいい食べ物を摂らせるように工夫しています。
最近少しだけ顔色が良くなったのでちょっぴり嬉しかったり。
「まひろちゃんは今日ライブ見る?」
「今日は明日の学校の用意などをしたいのでやめておきます。あ、打ち上げはいいですけどお外で寝ちゃダメですからね?きくりさんすぐ吐くので窒息しちゃいます。」
「は〜い!善処します!」
「心配なので帰る時は連絡してください。いえ、やっぱり大丈夫です。岩下さんに連絡入れてもらうことにします。」
「えー?信用ないなぁ。私は君より年上のおねぇさんなんだぞぉ?」
「はい、でもきくりさんは大事な家族なので。」
「・・・そっか。わかったよ。ちゃんと帰ってくるから大丈夫。」
「あ、でも私の貯金箱のお金を使ってお酒を買ったのは帰ったらお仕置きなので。」
「えー、ちゃんとお金入ったら返すから許してぇ〜」
「駄目です。何回言っても直さない子にはお仕置きです!」
「むわぁ〜、怖いよー!」
大袈裟にリアクションをするきくりさんを横目に部屋を片付ける。きくりさんは変なもの持ち帰ってきたりお酒のゴミをポケットにぱんぱんに詰めて帰ってくるので、すぐ部屋を汚す。私が来るまではちょっとしたゴミ屋敷のようだった。
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そもそもなんで私がきくりさんと暮らしているかというと、私の母が不倫していたことが分かってDNA鑑定したところ私が不倫相手との子供だったことが分かったことが原因だ。
父は母を訴え、離婚した上での賠償金を求めた。母と不倫相手は逃げた。
親権は父が持っていたが母似の顔の私の顔を見るとよく悲しい顔をしていた。遂には精神を病み首を攣ってしまった。第一発見者は私。小学校から帰ったらリビングにお父さんが吊り下がっていた。頭の中がぐちゃぐちゃになって涙がぼろぼろ出た。ただでさえ父方のお爺ちゃんとお婆ちゃんはお母さんのことを怒っていたのにお父さんが死んでしまってからは元気が全部なくなってしまったみたいだった。私を見る目は嫌悪感に満ちていたけど。
最終的に私のことを引き取ったのはお母さんの姉だった。昔、事故で夫と娘さんを亡くしていたらしい。私と娘さんが似ていることで感情移入してしまっただとかなんとか。
まぁ、そんな人が普通の精神状態な訳もなく、私は4年間ほど『かな』と呼ばれていた。服は可愛らしいピンクや水色などのパステルカラーのものが多くプリ◯ュアのおもちゃやプリンセスのドレスなどを沢山着せられた。子供用のメイクセットとかヘアゴムやヘアピンとか私が欲しいものというより『かな』が欲しかった物を買って与えられていたんだと思う。私は自分がわからなくなっていくのが怖くなって『かな』ではなく『まひろ』だと主張した。するといつも笑顔だった表情が能面の様に変わってしまった。母方のお婆ちゃんはお母さんの姉を精神病院に入れた。四年も一緒に過ごした人だ。一応は愛されていたのでお母さんと呼ぶのもあの人が1番しっくり来る。
でもその頃には母方の家族も父方の家族も私を見る目が厄介者を見る目だった。そろそろ中学も卒業だしどうしようかなーなんて考えているところに話しかけてきたのがきくりさんだった。
その頃の私の様子がきくりさんが言うには「将来が不安でしょうがない、寂しい、怖い」みたいな雰囲気がぷんぷんしていたらしい。
それで最初に話しかけてきた言葉が「大丈夫?お酒飲む?」なのはどうかと思うけど。多分きくりさんの言う幸せスパイラルで私を助けようとしていたのだろう。まぁ犯罪だけど。
ぽつぽつと出てくる私の愚痴にそっか、そっかと聞いてくれたきくりさんは優しい人だ。私のとこ来る?と聞いてくれた時は本当に嬉しかった。
まぁ、その時の話を後々したら酔っ払って殆ど聞き流してたから覚えてないらしいけど。でもその時いつもより顔が赤くなっていたのを私は見逃さなかった。
きくりさんは私自身を見てくれた大事な家族なのだ。
続くかは気分次第です。続くとしたら高校編とかかなぁ?